◯月◯日/ 新聞の文芸欄に,あの馬鹿タレプーチンの「脳」に天罰が下って死んでもらいたいと、この地球が望んでいると言った意の短歌が出ている。つまり狂った独裁者への「天誅」だ。
全く同感と思いつつ、この脳に「なづき」とルビがあるのを見て、こりゃ古語だわ、と居間の書棚から① 金田一春彦の「全訳古語辞典」（学研）
② 北原保雄の「全文全訳古語辞典」（小学館）の2冊を出して引いてみた。両方ともに、名詞で、脳、脳髄､脳蓋などの称、転じて頭とある。
◯月◯日/ 序でだから、あと③ 林巨樹の「全訳古語辞典）（大修館）と④ 鈴木一雄の「全訳読解古語辞典」（三省堂）を見たら、ウヘッーこの2冊には出ていない。オヨヨ！と思って最後に⑤ 大野晋の「古語辞典」（岩波書店）を引いてみたら、『脳』の脳髄とあって、「みづからの頭（こうべ）を割りてなづきをとりて〜食（くら）ふ」（考養集上）、「脳、奈豆枝（なづき）」（華厳音義私記）とあって、一件落着。勉強になった。
◯月◯日/ 室蘭の隣、温泉で知られる登別出身のアイヌで全国的に有名な一族がいる。知里家がそれで、先ず「アイヌ神謡集」の知里幸恵、幸恵の伯母で育ての親としても知られる金成マツ、この人は無形文化財「アイヌ叙事詩ユーカラ集」の伝承者。幸恵の弟で小樽商大を出て地元室蘭商業高校の英語の先生となった高央、その弟で、一高、東大を出て言語学者となった真志保（ましほ）etcだ。そして、幸恵や真志保の世話をしたのは言語学者の金田一京助だ。
◯月◯日/ それで私は、室工大在任中の30年間、毎年新入生を迎えてのオリエンテーションで、地元室蘭を含めて全国から来る学生らに、知里家の人とその業績を伝えて「室蘭に来て、知里を知らずして帰るなかれ」と説き続けたが、効果は余りナシ。と言うのはそもそも理工系に来る学生たちの頭には詩だの、言語学だの、歴史だのに対する関心が殆どと言っていい程にないからだ。
◯月◯日/ ところで最近、30代前半の男と語ることがあった。高校は真志保の出身校、大学は高央の出身校と聞いて、私は（止せばよいのに）「知里兄弟を知っているか」と聞いたら「知らぬ」との答え、それでいささかの説明をして「真志保の世話をした金田一京助は」と言うとこれも知らぬとの答え。矢張りね。
◯月◯日/ しかし、それにしても、この男は「辞書」というものを使ったことがないのだろうか。例えば金田一京助の名がついた三省堂の「新明解国語辞典」なんてのを引っぱった事がないのだろうか。全部スマホですますのか。とここまで書いて「そう言えば」と先日作家の五木が新聞に「この頃は字を忘れるとスマホで引いてみて〜」と書いていたのを思い出した。然し、字を度忘れした五木がスマホを使うのと全部スマホで済ます若者とでは話が違う。
◯月◯日/ ところで図書館の掃除に来る若い女が綺麗で気のいい面白い子で時々世の中の情報をスマホで私に解説してくれる。先日も当市の市長について「こんな事をぐちっているよ」と見せてくれた。この子のおかげで、私はスマホを知っているのだが、最近は地元の大学院生が「初めて新聞を読みました」とツイッターとやらで言ったのを教えてくれた。いつもスマホ派が、何かの事情があって、新聞を手にしたという事なのだろう。こうなると新聞の購読者が減っていると言うのも実感としてよく分かる。私がかかる30代のマッサージ師も新聞は読まぬと言っていた。
◯月◯日/ プーチンの狂気が募っていくばかりだがそのウクライナについて道内のある都市で、ユニーク（珍しくて他に類を見ない様）な事が起きた。市議が出したチラシによると、・・・・プーチンの暴挙、狂気の戦争に対する「非難決議を」を市議会として議決できなかった、というのだ。その理由の①は市議会の「全会一致の申し合わせに反するからだと。②は議会開会の2日前までに議会運営委員会に謀らなければならぬのに、それに間に合わなかったからだと。
◯月◯日/ この点についてこの議員は、プーチンがウクライナに侵攻したというニュースを知ったのは2月24から25日で、25日には議会に「非難決議」を提出した。だが日頃の取り決めに合わぬので、つまり、届け出が遅いので云々。これは大変な珍事件ではなかろうか。と言うのは、今や、日本国内だけでもあらゆる団体、地方の自治体が「非難決議」を出している。現に地元の「室蘭工業大学」も声明を出していてその記事が出た3月19日の見出しは「ロシアの侵略抗議」「大学人の声明100超に」だ。
◯月◯日/ 又、普段は政治に余り口を出さない傾向がある芸能人からもインターネットで反対の声を上げているとして、例えばお笑い芸人の田村淳が「戦争反対ぐらいは遠慮なく言わせろ」と発信したと。2月26日の記事だ。これに同調するのは、小泉今日子。shelly,ラサール石井、などなどだと。そう言えば、俳優のアーノルド・シュワルツネッガーもフランスのジェラール・ドパルデユーもプーチンを非難していたな。
◯月◯日/それなのに、で、話をある都市の市議会に戻すとーいつかウクライナ侵攻が終わるとして、またその後プーチンの暴挙の歴史が書かれるとして、ある都市の市議会の非難声明出さず（拒否）の姿勢はプーチンを非難しなかった珍しい事例として取り上げられるのではないか。例えばこんな風に．「バイデン追従を是とする極東の小国日本の、北の亜ある都市の市議会はプーチンを非難するバイデンにも加担せず、又バイデン同様プーチンを非難する岸田にも従わず「プーチンを責めない」と言う独自の道を選んだ。もっとも、日本には安部晋三やら、橋本徹やら、鈴木宗男といった「プーチンに領土的野心はない」と弁護する先輩達がいるから、そちらに組したのかもしれぬ。トランプはプーチンがウクライナ東部の独立を承認した時「プーチン何て賢いんだ」と褒めたが、いずれ、室蘭市議会には、安部、橋本、鈴木そしてトランプに並んでプーチンの感謝状が届くことだろう。
◯月◯日/もっとも、それはプーチンが生きていればの話だが。私はプーチンは負けると思う。そしてロシア国民がプーチンの真の姿を知った時には彼は国民によって逆さ吊りにされると思う。思えばヒトラーとゲッペルスは自死したが、ムッソリーニは市民の手によって逆さ吊りになった。確か旧ソ連の威を借りて君臨したルーマニアの独裁者チャウシェスク大統領夫妻も最後は地下宮殿で逆さ吊りに合った（筈）だ。私はプーチンもこれを恐れてそれを避けるために戦争を続けているんだと思っている。私は習近平の意識の中にも独裁者の末路のイメージが浮かんでいる筈と思っている。
◯月◯日/ 我が家にあるのは本ばかりで金目の物は全くないから何も関係ない話だが、人の話では今は「金」の値段が上がっているそうな。それで、くだらぬ話を思い出した。3月初めだったと思うが、ベトナムのトーラム公安相なる御仁が世界的に有名なロンドンの「ヌスレット」なる高級ステーキ店で「金箔」に包まれた骨付きステーキを食べたと言うのだ。この大臣国際会議での出張中だったらしいが「共産党の指導者が国民の金を捨てている」と批判をあびている由。
◯月◯日/ 私は肉は好きでないからこんな物は頼まれても食べたいと思わないが、「金箔」なる物をつまらぬとする私とても「金箔」入りの酒を飲んだ事は何度もある。しかし私の友のドイツ語教師によると、酒中のこの「金箔」は体内を通過してウンチとして出るだけで、何の栄養のたしにもならんという。その真意を確かめる気もないが、身体の構造からしてそうだろうと思う。ウンチになって出るだけの「金箔」ステーキを食わしてベンチャラ（お世辞）ふる男と、それを食って喜ぶこう言う連中をを本当の「糞ったれ」と言うだろうな。
◯月◯日/ と書いて、この「糞ったれ」なる日本語いつからあるんだろうと気になって前田勇編「江戸語の辞典」（講談社学術文庫、1979）を引っぱったら「糞たれ＝人を卑しめ罵って言う語。「糞ったれ」とも。とあり、例として文化10年（1813年）「六阿弥陀詣」に出るとある。序でだから「くそったれやろう」を見たらこっちは享和3年1803年の「甲駅雪折笹」に出たとある。勉強になった。
◯月◯日/ 私はテレビは見ないから毎晩殆ど、DVDを観ながら晩酌する。最近見て期待はずれだったのは「キネマの神様」山田洋次には悪いが、大根役者が揃っての学芸会みたいな趣で途中で止めた。もう一つ期待はずれだったのが「ドライブ・マイカー」全3話のオムニバス形式だが三話とも不倫だ、不幸な生い立ちだと、陳腐極まる。アカデミー云々の作品らしいからと自分に納得させつつ最後まで見たが、見終わって腹の足しにもならなかった。
◯月◯日/ 腹の足しにもならぬは他にも多々あるが、そんな物を相手にするよりはこれぞ「見るべし」と思った物のタイトルを並べておこう。① モロッコ彼女たちの朝（モロッコ）② 偽りの隣人ーある諜報員の告白ー（韓国）③ 修羅の街飢えた狼たち（中国）
④モーリタニアンー黒塗りの記録（アメリカ）⑤ラッカは静かに虐殺されている（エチオピア） ⑥ ジャツリカットウー牛の怒りー（インド） ⑦ ペトルーニャに祝福を（北マケドニア） ⑧羊飼いと風船（中国）まだあるが来月まわしにして、腹の足しにもならぬのにもう一つ加えておく。ダニエル・クレイグの「007/ノータイム・トウ・ダイー」だ007は全部見てきたが一番面白くない。ダニエル・クレイグで言えば「ナイブズアウト」も退屈したね。
◯月◯日/ 腹の足しになる方を2つ足す ① 米軍がもっとも恐れた男・その名はカメジロウー② 米軍がもっとも恐れた男カメジロウー不屈の生涯 ①は2019②は2021の発売で連作だ
2022.4.18 山下敏明