第292回 上手なビジネスは最高のアート・福原一族

`09.12.16寄稿

太田黒元雄(1893〜1979)と言う名前を知っている人は,今どのくらいいるだろう。私より上の年配の人ならば、音楽評論の先駆者たるこの人を覚えている人もいるかも知れない。ロンドン大学中退のこの人は,評論雑誌「音楽と文学」を1916年に刊行して近代音楽の紹介につとめた。私の棚にも,ベッカーの「ベートーベン」やシューリッヒの「モーツアルト」などがある。だが,この人は,実は音楽だけではなく,写真にも手を出していた。属していたのは「写真芸術社」なる団体で,これを設立したのは福原信三(1884〜1948)で,大正10年(1921)のことだった。同人には福原露草(1892〜1946)掛札功(変わった苗字だ)などがいて,月刊誌「写真芸術」を出した.信三と露草は兄弟でこれ,誰あろうか?かの化粧品・資生堂の二代目とその弟なのだ。 続きを読む 第292回 上手なビジネスは最高のアート・福原一族

第191回 現世の謳歌文学「ルバイヤート」

`01.11.16(金)寄稿

いつ頃流行った歌だったか、調べずに書くのは、申し訳ない話だが、「俺は死んじまっただあ〜」と言う歌い出しの歌があった筈。タイトルも正確に覚えておらんし、このあとどう続くのかも判然とせぬが、確か「天国いいとこ一度はおいで、酒もうまいし,姐チャン(ねえんちゃん)もきれいだ」てな文句があったのではないあかしらん。 続きを読む 第191回 現世の謳歌文学「ルバイヤート」

第190回 グレアム・グリーン「第三の男」秘話

`01.10.31(水)寄稿

この頃のブッシュ,,,と言っても、bush=草むら、の事ではなくて、アメリカで一番偉いらしいブッシュのことだが、そのブッシュの言動も見ていると妙に、一人の作家を思い出させられる。その作家とは、Graham・Greene(グレアム.グリーン1904-1991)のことで。どうしてグリーンを思い起こすかと、言えば、グリーンは、カトリックを奉ずる作家であったけれど、1950年からこっちは、東南アジアや、南米での正義を振りかざすアメリカのやり方をはっきりと批判する態度に出て、世界情勢に明確な態度を取った人だったからだ。そうした態度から生まれた作品が映画にもなった「静かなアメリカ人1 」だ 続きを読む 第190回 グレアム・グリーン「第三の男」秘話

  1. グレアム・グリーン,静かなアメリカ人.研究社出版(1958) []

第189回 盲目の学者保己一と喜田貞吉 他2冊

`01.10.1(月)寄稿

他人のことは知らないが、私には絶えず気になルコトがあって、それは、あの人、又は,あの事について、もっと知りたいと思うのだが,仲々適切な本がないなあ,早く、あの人、あの事についてのいい本が出てくれないかなあ、と言う気がかりなのだ、 続きを読む 第189回 盲目の学者保己一と喜田貞吉 他2冊

第188回 色々な型の本と色々な3D Book

`01.9.15(土)寄稿

前回ふれたように,私は8月30日に「本室蘭小学校開港百二十周年」の記念行事をして、全校生徒200名余と,父兄に「読書」について講演した。年端もいかぬ子供達に「読書の効用」を語るのは、甚だ難事であることは容易に想像のつく所であるから,私はこむずかしい話はヌキにして、子供達が見たこともない、聞いたこともない,,,つまりは,この世にあろうとはおもってもいにであろう「物」を見せ、「話」を聞かせて,この世が、つまりは日々の生活が、どれほど面白いものやら話にとりまかれていて、その委細に気付くことが出来る物はそれらを細部にわたって楽しむことが出来るのだ、と言うことを伝えようと試みた。 続きを読む 第188回 色々な型の本と色々な3D Book