司書独言(216)
20202.12寄稿
◯月◯日/安倍がまたやらかした。1月末の衆院予算委員会での話。「桜を見る会」のテーマで「幅広く募ったが、募集はしていない」云々がそれ。如何なる辞典にも出る筈もない新定義の出現だ。そこで「漢字海」を引いてみる。「動詞、①つのる㋐広く求める㋑兵隊を集める」とある。ここまでは普通だが、これに続く「日本語用法」の説明が面白い。
◯月◯日/それは次の如し。「つのる=程度が激しくなる、ひどくなる」。日本語の「つのる」は字義の「人を集める」と重なっていたが、中世以来、盛んになる(する)意を生じた。例「不安が募る」。成る程なあ。この日本のみの用いられ方を見ると安倍が首相でいる限りは日本の行く末について「不安が募る」ばかりとなる訳だ。
◯月◯日/ついでだから「漢語新辞典」(大修館)も引いてみる「日本でしか使われない字義、熟語」の説明には「つのる㋐ますますひどくなる㋑つけあがる、増長する」とある。これも安倍にぴったりだ。安倍は「つのる」本来の意味を誤用、強弁して無知ぶりをさらしたが、皮肉なことに安倍行状は、「つのる」の日本語特有の意味、或いは和製の漢語」として正解だ。つまり「つけあがってしまって国民をして不安をつのらせる安倍」となる。辞書ってのは正確なもんだなあ。
◯月◯日/以上で終了と思いきや、安倍が又々やらかした。2月4日、「桜を見る会」の前夜祭について質した黒岩宇洋(共同会派)に対して「うそつき」と言ったこと。モリカケ問題から始まって安倍の諸々の返答こそ「うそつき」の最たるものと思っている私には「よく言うなあ」が実感で、思い出したのは「盗人の逆恨み」もしくは「盗人猛々しい」なる諺。
◯月◯日/もう一つ思い出した諺は「盗人に鍵を預ける」カワイアンリとやらに1億5千万円が流れて云々の話に関連して政党助成金やら使途自由の官房機密費などが問題視されているが、税金使い放題と言う意味では、アメリカからの戦闘機だトウキビだの瀑買い含めて、盗人=安倍(=政権担当者)に鍵を預けていることと同じだね。安倍一統ののおかげで漢和や国語や諺の辞典の「定義」が実に正しいと分かるのは実に皮肉な話だね。
◯月◯日/上智大学の三浦まり教授が属する「公的発言におけるジェンダー差別を許さない会」の調査によると、政治家の性差別発言(2019年度)のワースト・ワンは麻生で、2位は安倍の由。1位の麻生は性差別のみならず失言の度合いにおいても十分にワースト・ワンだが、その麻生もまたやらかした。1月13日福岡県直方市での国政報告会での発言。「2000年の長きにわたって、一つの民族、一つの王朝が続いている国はここしかない」がそれ。
◯月◯日/麻生はまた「天皇が126代続いた」なんぞとも言う。これも笑える話で、例えば笠原英彦の「歴代天皇総覧」を見ても、第1代の神武から14代の仲哀までは「神話時代の天皇」とくくられている。初代神武の即位日は2月11日と「日本書紀」にあるからとて、明治政府はこれを「紀元節」としたのだが、敗戦後1948年に廃止された。これを「建国記念と日」として1966年に復活したのが佐藤栄作。しかし、世界には神話をもとにした日を建国日としている国はほとんどないと言うのが常識。
◯月◯日/しかるに麻生は、神話まで入れて126代と言い、その上先述の如く「一つの民族」と言い切る。だが、麻生らが頼みとする「日本書紀」については、研究者宇治谷孟はこの書の編纂に「漢籍、漢字に通暁した、百済・新羅からの渡来者の教養人が関わっていたであろうことは否定できない」と言う(下線山下)また例えば、「持統天皇4年8月11日、帰化した新羅人らを下毛野国に住まわせた」なんて記述もわんさとある。
◯月◯日/こうした記事を読んでも麻生は、まだ「一つの民族」と言い張るのか。現代人が気づいていないだけで、日本のあちこちに渡来人の生活圏んがあって今に続いているのだよ。余程の馬鹿じゃなきゃ「単一民族」なんて事がありうる筈がないと思うのだが、その余程の馬鹿麻生を支持する連中がいるんだから、森の石松ではないが「馬鹿は死ななきゃ直らない」。
◯月◯日/やっぱりコウモリだったかと思った。と言うのは当節の新型コロナウウイルスの話.2018年5月末にインド南部のケララ州でニパウイルスに感染した人達が急性脳炎になって大勢が死んだ事をお覚えていたからだ。ニパウイルスは豚やコウモリから人にうつるもので、1998年にマレーシアで、インドでは2001年にも感染例があった。私はコウモリは苦手だ。あの顔にはゾッとする。
◯月◯日/コウモリは漢字で「蝙蝠」と書く。これは「偏ねき福」と通じるので中国人はコウモリが好きだ・・・と言うのは漢字学者の藤堂明保の説。因みに奈良市の広岡町に「コウモリ博物館」があるが、そこの奥村一枝研究員の話では、日本にはなんと35種のコウモリがいる由。只あり難い事に日本には血吸いコウモリがいないとのこと。
◯月◯日/2月5日カーク・ダグラスが没した.103歳の由。死亡記事をD・クインランの「世界映画俳優大辞典」に貼ろうとしたら、カークダグラスは96年に脳卒中で一度倒れた事がある。また複数のベストセラー小説も書いているともある。これは知らなかった。ロシア移民の子だそうな。トランプの移民排除がまかり通る世なら、入国拒否となってあの名作「スパルタカス」も生まれなかった訳だ。
◯月◯日/カーク・ダグラスの記事の横に沢尻エリカ有罪で謝罪と小さく出ている。私はこの女優「パッチギ」でしか知らないが、それでも謝罪するあたり、安倍、麻生、菅なんてのより余程「増し」じゃないのかね。
◯月◯日/12歳の倉持よつばチャンが書いた「桃太郎は盗人なのか?」(新日本出版社)の広告が出ている。椎名誠他の「おすすめ」付きだ。それらによると、この子「サンドイッチマン」他の「博士ちゃん」なる番組に出て、「この調べ学習は、私一人の力では完成出来なかった」と前置きして、図書館司書や学校の司書の協力があったとし、「今は、スマホとかですぐ調べられますが、沢山の人に図書館に行ってほしいいです」と発言した由。立派だねえ。
◯月◯日/私はスマホを持った事のない司書だが、司書の役割とその重要さについてこれ程明確に語るのを聞いたのは久しぶりな気がする。ナニシロ、そちこちで「図書館の外部委託」が横行している時代だ。そこらの自分は図書館を利用すらしないくせに直ぐに「委託」をしたがる無知な市長連中の「耳かっぽじって」聞かせてやりたい意見だ。
◯月◯日/仙台市の宮城県立美術館はコルビジェの弟子前川國男の設計だが、それが老朽化したとて、県側が市民に何の前触れもなく移転すると発表した。市民側がこれに反発して現地で維持改修を求めるとて、騒動になっている。私も過去に何度も行って知っているがいい美術館だ。本館の隣には佐藤忠良記念館もある。私はこの場所から動かす必要はないと思う。
◯月◯日/美術館があるのはいわゆる文教地区で大学もあれば博物館もあり、おまけに仙台といえば 皆が連想する広瀬川に抱かれている。知事の村井嘉浩は以前にもタレントで乙姫役の壇蜜と組んで浦島太郎に扮し、つまらぬ宣伝に出て県民の避難を受けた。私も呆れた一人だ。しかしいつも思う事だが、行政はなにゆえ住民に相談もなしに文化的なことにこうした要らざる口出しをするのだろう。博物館にも美術館にも図書館にも入った事なしと言う人は得てして「知らぬ者」の強さで妙な事を言い出すものだがこれぞ傍迷惑と言うものだ。
◯月◯日/当市の場合でも、人事異動で初めて図書館に来たという人が過去に結構いたし、市役所職員で「ふくろう文庫」を見た事もきいた事もなしと言う人に今までワンサと会っている。だけどそれが普通なのだ。つまり、日常的に本を読みたいだの美術に触れたいだのと欲する人はある意味稀なのだ。だから私は「ふくろう文庫を知らない職員にあっても違和感は殆どない。ただそうした欲求のない人、また知識のない人が事、図書館や美術館について発言することの”あやうさ”を憂うるだけだ。
◯月◯日/友人の奥さんから聞いた話。ナンデモ札幌出身のタレントの誰やらが、食べ歩きで行った店のメニューに「煮こごり」とあるのが分からず、「これ何だ」と聞いたと言う話。「北海道にいて”煮こごり”も知らないのよ、驚いたわ」。それにしてもテレビ欄を見るとタレントを動員して①食べに行く ②温泉に行く ③臆面もなく人の家に入り(泊まり)こむ④辞典で調べれば3分で済む字やら事やらを長々かかって答えさせるクイズetc.とまあ、大宅壮一(だったか)の言葉ではないけれど「一億総白痴化」を助長するばかりの番組の多い事よ。「煮凝り(にこごり)や闇の中なる父の家」(富田正吉)
第408回あんな本・こんな本(ひまわりno224)マスクはいつから?
2020.2.4寄稿
「新型肺炎①マスクを求め開店前から長蛇の列!②欧米で偏見」といった見出しの記事やら、テレビ番組の案内が毎日続いている。英語のmaskは小学館の「カタカナ語の辞典に①面②病菌の侵入、放出やほこりなどを防ぐために、鼻、口をおおうガーゼ製の衛生具とある。 続きを読む 第408回あんな本・こんな本(ひまわりno224)マスクはいつから?
司書独言(215)
◯月◯日/新聞の劇評欄を見ていたら、文学座がやった「一銭陶貨」なる芝居が扱われている。戦時中、金属不足のため金貨、銅貨が作れず、陶器作りの職人を動員して「陶貨=陶器の貨幣」を作らせたと言う話だ。読んで思い出したのは国民学校時代の陶製の校章とボタンのこと。 続きを読む 司書独言(215)
第407回あんな本こんな本(ひまわりno223)捏造されたベートーヴェン回想録。他4冊
2020.1.7寄稿
言われるまで気付かなかったが、今年はベートーヴェン生誕250年だそうな。それで「皇帝」を初めとしてピアノ協奏曲全曲をアンドラーシュ・シフが演奏すると新聞に出ている。成る程な! 続きを読む 第407回あんな本こんな本(ひまわりno223)捏造されたベートーヴェン回想録。他4冊