山下敏明さんのあんな本、こんな本

第215回 乳房史

`03.6月寄稿

今回は、久保館長の要請に応じて、既に別に別のテーマで原稿が出来上がっていたのだが、それは次回にまわし、言うなれば急遽予定を変更して、「おっぱい」について書く。

久保館長の要請と言うのは....本誌先月号に、館長は、フランス文学者・鹿島茂の「関係者以外立ち読み禁止」なる著書を読んでの感想を書き、...乳房史(こういうウジャンルの社会史があるのだそうだ)...などと引いて、後半で...いずれも山下副館長の得意分野なので、私の感想はここまで...としている。これを読んで私は館長に、「そう、乳房史と言うのがあるんですよ」と応じたことから、話は進んで、んじゃまー、この次はナンナラ「おっぱい」で行きましょうか、と言うことになったのである。

先に断っておくが、この話は私の得意分野ではなくて、この分野について話せるぞ、と言う程度であり、ついでに言うと、私は下ネタなる言葉は大嫌いで、第一この言葉は「日本語大辞典」にもない、下々が勝手に作った日本語だと言うことは知っておいてもらいたい。代わりに私が使うのは、艶笑小咄えんしょうこばなし)なる言葉で、これは、色気のあるおかしみを含んだ話を指す。

と言う訳で、サテ真面目人間のために、先ず地理学的おっぱいでいくぞ。

その①は、渡島管内知内町の「おっぱいまつり」これは、知内公園のなかにある樹齢700余年の「姥杉(うばす)伝説」に由来するもの。子供を産んでも碌に乳の出ぬ女性が、この木に祈ると、あら不思議や!“ポッタポタ”となるそうで、これにあやかって町おこしの祭りと言う奴。この祭りに登場するのが「おっぱいねぶた」。何しろ高さ・幅各3m、奥行き2mのものだから、乳飲み子を抱えた年若き母親のおっぱいの立派なこと。如何なる巨乳好みも満足させる出来。8月の14・15とやる筈だから行ってごろうじろう。

その②は、十勝の上土幌町の「オッパイ山大祭」有名なアイヌ山本多助によると、同町のビリベツ岳(1602m)と西マクネリ岳(1636m)は,アイヌのユーカラで「神々の手造りの一対の乳房の山」とうたわれている山の由で,これに因んで同町のウタリ文化伝承保存会が「神々と先祖の霊をあがめよう』とて,始まったもの。これ6月8・9だから,今からでも遅くはないぞ。ところで我が絵柄にも「オッパイ山」があるのをご存知かな皆の衆!!

地理的おっぱいはこの位にして、次は政治的おっぱいの話で...その①、`99年、埼玉県秩父市での市長選挙のときの話。大島孝子候補...これ、紛らわしい人で《たかこ》にあらず《たかたね》なる、レッキとした男。このバカタネ、いやたかたねが選挙民に宛てて出した葉書が、傑作と言うか駄作と言うか...ブラジャーだけの胸の写真があって,片方の乳房に投票用紙が入れてあって、それに付けた文句が「手を入れるな、票を入れよう」と言うもの。早速女性側から「不愉快」と抗議を受けて,この男めでたく落選!!。

その②は、清らかぶった営団地下鉄,固く言う帝都高速度交通営団での話で,93年の出来ごと。ことは...ドイツ文学者の高橋英郎が代表を務める「モーツアルト劇場」がオペラ、ドン・ジョバンニーを上演しようとして作ったポスターが,ダメとなった。縦70㎝・横50㎝のポスターの中で、頭上のオレンジを採ろうと手を伸ばしている女性の片方の乳房がチラリズムで、これがいかんと言う。これに遺憾の意を表した高橋曰く,「カトリック系のキャンパスに貼ってもらおうとしたら,芸術性が高いと,神父にほめられたのに」と、この反論をうけて営団側も隠すのはかえって嫌らしいと,「英断」して一件落着。

マシュマロの如きやわらかいオッパイの話がいささか固くなったから、ここでオッパイブレーク。「おっぱい川柳」で肩のこりを取って下され。*だっちゅーの 何回やっても  ないちゅーの(そう言えばこの2人組何やってんだろうね。乳房の生命は短くて...か)

* ギャーやせる  ジェルオッパイに  塗っちゃた

* オッパイを   机の上に  乗せ休む

* 特技欄    オッパイ動くじゃ  だめかしら

これでお目目パッチリしたかしら??

次は文化的おっぱい。  儒教の国・朝鮮でも、時々変なことはすると見えて、李王朝の末頃には,農村での話だが,世継ぎたるべき男児を無事出産すると、その誇らしき事実を世に伝えんがために,お乳で張り裂けそうな豊かな胸を,チョゴリ(伝統衣装)からはみ出させて皆に見せていた由。まあ“子なきは去れ”の裏返し的行為ではあるな。「乳房論1

もっとも、こんなんではなく、単に乳房の美を誇示するために、胸を出していた時代と言うのは結構あった。ゲーテの時代も確かそうだった筈。そうそうギリシャの昔,ラビリンス(迷路)伝説で名高いクレタ島でも,女達は誇らかに胸を出して歩いている。ここを発掘したエヴァンスは,壁画に残されたそれらの女を,パリジェンヌ(パリ娘)と呼んでいる位、きれいだったもんだ。「乳房の神話学2

ここまで書いて来て、私しゃ疲れた。もっと知りたい人は、ここに揚げた本なんぞで、もっと詳しく探ってちょうだい。この他にも伴田良輔編「chibusa−45人の美しい乳房ー3 」なる本(河出書房社/¥1600)もある。それでも足りない,乳房について奥義(おうぎ)を極めたいと言う人は、次の研究会に入ってちょうだい。京都大学名誉教授・星野一正を会長とする「乳房文化研究会」だ。問い合わせしたい人は「ワコール人間学研究会」へどうぞ。もっとも、この会96年発足だから、ひょっとして、涸れてなくなってるかも知れん。

「乳房の歴史4

えっ、何??貴方はどんなオッパイが好きかって?。よくぞ聞いてくれました!。私が憧れて止まぬ,目にし,手にしたら死んでもいいと言う私の理想のオッパイは,先述した,クレタ島から出土した,両手に蛇をささげた女のオッパイ。こんなオッパイの女になら蛇の生殺しに会ってもいい...ギャハハ!!


  1. マリリン・ヤーロム.乳房論.トレヴィル (1998) []
  2. ミロ.乳房の神話学。青土社刊.(1997) []
  3. 伴田良輔.chibusa−45人の美しい乳房.河出書房新社(1996) []
  4. 福田和彦.乳房の歴史。河出書房新書(1963) []

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