司書独言(235)

◯月◯日/ 私が室工大在任中に、庶務課の臨時職員で、学内各所に郵便物や連絡書類を配って歩く男がいた。私のところにもよく来たが、いつも「世が世なら俺はこんな仕事をしている男ではない」と言いたい事がありありと伝わってくる男だった。それである時話して行くようにすすめ、色々と聞いてみると、東北大の物理出身だと分かった。成る程気位の高いのはそのせいかと思ったが、いつしか辞めてしまった。

◯月◯日 それが、私が定年後市立図書館に招かれて移って或る日、その男が来て、今は市内の印刷会社にいるといい、「実は」と切り出した話に私はびっくりした。この男は東北大在学中から研究していることがあって、それは「マリア様の処女受胎」を実証することだと言う。世界には同じ事に血道をあげている人がいることは知っていたがこんな身近にその実物がいるとは思わなんだ。その後この「マリア様」奇跡の実証にこの男が成功したかどうかは知らぬ。

◯月◯日/  物理と言えば室工大の物理の講師だった男も思い出す。早稲田の二部を出た男で、私のところへ最初来た時コーヒーを出すと「飲めない」と言う。たまたま同席していたK子が「病気なのか」と聞くと「モルモン教徒だからだめ」と言う。成る程!と私とK子は納得(?)した。ところがこの男2年も過ぎると「統一教会」に入ってしまった。確か「オーム教」にも慶応の物理出の信者がいたと思うが、物理をやった上でのこの現象どう解釈すればいいのかね。

◯月◯日/ その「統一協会」は今「世界平和統一家庭連合」とやらに改称しているが、その関連団体が開いた大規模集会に、あの馬鹿で嘘つきのトランプがビデオメッセージで出て祝意を述べ、その後にこれ又先天性虚言症の安倍が登場して、協会の開祖故文鮮明の妻で現在同会総裁の韓鶴子に「敬意を表する」とのメッセージを出したと9月8日に報じられた。トランプの後に出て何が嬉しいのかね。

◯月◯日/ これに対して「全国悪徳商法対策弁護士連絡会」が、この安倍の行為は「今後日本社会に深刻な悪影響をもたらす」と指摘して激しく抗議した。賛成だ。しかしまあ、安倍のトンデモ妻君の昭恵はオカルト好きの女だから、安倍もそれに感化されて、「尊敬している」と言うのは案外、社交辞令でなくて、本気かもしれんな。

◯月◯日/ 今日は9月28日(火)。大谷はまだ9勝、ホームランもまだ2位、待ち遠しいと思いつつ新聞の切り抜きを整理していると、川柳欄に「ニトーリューきっと英語の辞書に載る」(尾根沢利男)がある。全くだ。うまいもんだ、英語辞典の最高峰「OED=オックスフォード英語辞典」にだってきっと載るわと思いつつ、ところで、「二刀流は」英語で何て言うのかなと「百科和英」(旺文社)を見た。すると、左右両手に長短の刀を持って戦う剣術の流派。宮本武蔵の創始と言われる。の後に「a school of fensing  with a sword in each hand」とある。そりゃそうだが、もうちょっと面白い説明があるかと思った,で余り面白くなかったね。

◯月◯日/ 9月上旬、国後島から対岸の標津まで約24kmの海を泳いでロシアから逃げて来た男がいたと報じらてた。38歳のフェニクス・ノカルド。「プーチンもう嫌」がその理由で、約23時間泳ぎ続けてきたという。何たる体力!!これで高2の時読んだアメリカ人の書いた「ロシア人」(だったか忘れた。今手元に岩波新書総目録がないのでわからない)を思い出した。ロシアの国民性他を書いた本で、例えば「ロシアの女の軍隊が行進して角を曲がる時には、まづ胸が見えてくる」とあった。ロシア女が皆々巨乳とは思えないが、まあ、その体格の良さを言ったのだろう。

◯月◯日/ 又「ロシアの軍隊は撤退するとなれば、追われる事を防ぐために、鉄道のレールを外して肩に担いで逃げる。しかも、三日三晩走り続けてもへこたれない」ともあった.読んで、古くはナポレオンの遠征、近きはヒトラーのロシア攻め、更に満州に侵入して来て日本人を平らげた。etcを思い出して、この体力相手じゃとても勝ち目はないなあと、高2の時にそう思ったことだった。日本兵の記録でも撃沈されて、海に放り出され、何時間も漂ったなんてのがあるが、この男は泳いで来たもんな。イヤイヤ驚き!!

◯月◯日/ 9月6日、ジャン=ポールベルモンドが死んだ。88歳。新聞に「従来のスター俳優とは似ても似つかない顔付きだったことがファンの熱狂に拍車をかけた」とあって、対して「端正な顔つきの代表たるアランドロン」とある。つまりドロンは美男で一方は〜と言うところを遠回しに言った訳だが、同じ日の川柳欄には「ブ男のヒーロー創った人逝きぬ」とあって、こっちはストレートではっきりとしている。何だか笑えたね。

◯月◯日/ これ書いている今日は9月30日。15号台風のおかげで室蘭も昨夜来から雨だ。ところで前号で私の高校時代の書道の先生「若干」のことを書いたが、思い出したことがあるので足す。それは漢字学者の「白川静」著「文字問答」(平凡ライブラリー2014年刊)¥900+税⑦p59)にある話。「いくらか」「多少」という時に「若干」といいますが、どういう意味でしょうか」がそれ。

◯月◯日/ 白川はこれは中国では古い言葉で、「礼記」に既にあり、それは天子様の年を聞かれた時は年齢を明示せず「衣の背丈は若干です」と間接的に答える。と言うのは,至尊(=天子様)のことは何事によらず明から様に言わないのが例だからだ。と説明して、更に幾つもの古典を引用して結論は「若干は誠に古い語ですが、今でも本来の意味のまま使われている、大変珍しい語の一つです」とくる。この話に若干でも興味を感じた人は読んでたもれ。

◯月◯日/ 今、北海道では熊による事件が頻発している。新聞の見出しは例えば「札幌の住宅地でクマに襲われ4人負傷」「犬襲ったクマ18、19年と同じ」「襲撃のクマ同一個体か、3年間で牛52頭死傷」「縄文遺跡、クマ出没で閉鎖」etc。それで思い出したのは中西進の「古代往還(中公新書、2008,¥840+税)。第2章が「森羅万象」で最初にクマが出て、アイヌ語のクマは「カムイ」、古代韓国語では「コム」で意味は両者とも「神」。中国では熊を祖先とし、一族の霊として崇めたらしい。この現象は東アジア3国だけではなく、英語のbearも本来の意味は神。

◯月◯日/ 日本に来たマッカーサーはマック・アーサーでつまり、アーサーの息子で、アーサーは「クマ」のこと、だと言うからびっくりだなあ。と言う訳で、この本も興味なる人は読んでたもれ。蛇足だが、中西進は、年号「令和」の発案者、あの歴史探偵の半藤一利が、東大で卒論に「万葉集」をやろうとしたら、やめろと言った同級生がいて、半藤は知らなかたが、同級生曰く「中西は万葉集の全4,700首を全部暗記している男だから」云々。敵わんなあ。

◯月◯日/ ジャーナリストの伊藤詩織に性的暴行を加えたのはTBSの山口敬之。この男は安倍のメンコ(北海道弁でお気に入り)。何故かこの男安倍ベタボメの「総理」なる本を書き、それを安倍の事務所が何百だか、何千部だかを買い上げたと言う仲だ。このことはこの欄で昔書いたことがある。この男、伊藤に訴えられて、確か米国から帰国して成田で捕まる前、どう言う訳か、この逮捕が取りやめになった。その理由を当時の週刊誌は安倍の意向を受けた当時の警視庁刑事部長の中村格が握りつぶしたのだと報じた。その中村が9月下旬警視庁長官に出世した。「メンコ」の威力だ。

◯月◯日/ ところで伊藤のことを「枕かせぎ」と貶めたのは、これまた安倍のメンコの卑劣な杉田水脈だった。非道い事を言う、と聞いて呆れ、かつ腹が立ったが、当時私の周囲の50代、60代のオバサンで伊藤に味方せぬ者が数人いたのにはびっくりした。彼女らの言い分は「山口も悪いが、伊藤も脇が甘い」とだった。これは相撲から来た言葉で「守りが弱い様」を言う。然し伊藤は酔って寝てしまった(らしい)所を昔風に言えば山口に手込めにされた訳だ。こんな卑劣な山口を非難せずにしたり気に伊藤を叱る女は仲々非情な者だなと想ったものだ。

◯月◯日/ 山口は酔いつぶれた伊藤を〜と言う事らしいが、これで罪になるのか。私が暇な時に(と言っても私には暇な時など全くなく、暇を持て余すという経験は一度もないが)拾い読みする、「流行語・隠語辞典」塩田勝(三一新書1981)がある。その辞典の「強姦」の所に「気絶している女性を犯したら、暴行脅迫などの強制手段を用いなくても、相手が心神喪失抵抗不能の状態にいるのを”それ幸い”とばかりに犯した場合として、準強姦で処罰される(刑法178条)とある。この条項が変わっているかは知らぬが、何にしても山口の罪は許せるものではない。

◯月◯日/ この辞典を拾い読みすると書いたが、1.2面白いのを紹介しよう。日本には民謡で「コラ、サッサー」など色々古い囃子詞(はやしことば)を使う「ホイホイ」もその一つだ。ところがこの「ホイホイ」。ロシアでは性器を意味するスラング(俗語)だ。それで、ダークダックスがソ連時代、行って日本民謡を歌った時「ホイホイ」と手拍子でやったら満座の女性が赤面したと言う話が出ている。

◯月◯日/ 調子に乗ってもう一つ書く。「コ」の項に「コン」がある。これはフランス語で、スペルは「con」で意味は「女性器」。これで思い出した,真偽定かならぬ話がある。作家の今日出海が文化庁長官になって、渡仏した時、飛行場で起きたとされる事件だ。何の必要あってか、場内放送があって、「お呼び出し致します。今様、今様、おいでになりましたら」と言うこの「今様」は「monsieur   con」でムシューはMrだから「オー◯◯コ」様となる。聞くや満場立ち上がって、となって、これを教訓に以後苗字が「今」の人はパスポートに「イマ」とルビをつけるようになったという話。

◯月◯日/ 然し、今日出海は確か東大仏文の出だ。「con」を知らずに行ったとは考えられぬ。この話の出どころは知らぬが私は室工大在任中の30代に知った。それで我が家に飲みに来た学生達にこの話をしたら、中に一人「満場立ち上がるとは信じ難い」というのがいて「何故?」と聞くと、「con」を聞いて立つのは男だけです」と妙な理屈を言う。この学生、その年の大学院の試験に落ちた。屁理屈の論文でも出したか。私思うに、ナニカニツケ「理屈ぽい」のはよくない。

◯月◯日/ 今日は10月2日。昨日変わったニュースが出た。旧約聖書の「創世記」に死海周辺の都市ソドムとゴモラの市民が余りに不道徳なので怒った神の火で焼く尽くされたと言う話が出てくる。ところがー英の科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に国際チームの共同研究の結果として。約3,600年前、隕石が大気中で引き起こした爆発で、死海周辺の古代集落が破壊されたとわかったと発表したこの古代集落に当てはまるのが、例えば「ソドム」だと言いたいようだ。

◯月◯日/ 話を戻して、旧約聖書にはソドムとゴモラの市民達が悪徳にふけったとあるが、ではその悪徳とは何か。先に引いた辞典に「Sodomy」(ソドミー)なる言葉が出てて、その意味はソドムの市民が好んだ「男色」「獣姦」「鶏姦」だとあって、学名は「sodomia」「創世記の」「19」の「4」にこのことが書かれている。神からすればこれらの行為は正常ならざるもので、それゆえ神は劫火を持って両市の市民を焼き殺し尽くした訳だ。

◯月◯日/ 然し、思うに、これは神の仕業でなくて、自分達の行為のみが、正常で、かつ神の意に適得るものとする保守的な連中の思い上がった観点から出た行為だろう。「LGBT=性的少数者」を神の意志=自然に反しているとする者は未だにワンサといる。旧約聖書の時代の感覚まんまの人間は事欠かない。

◯月◯日/ 先の国際研究だが、チームの一人は「隕石の爆発が広大集落を破壊したことは確かだが、それがソドムだと言う科学的証拠はない」と逃げをを張っている。「ソドム」と断言して、世界中にいる旧約聖書至上主義者達から、攻撃されたくないのだろう。そのうち、ソドムとゴモラの美術史でも取り上げた見よう。

2021.10.2    山下敏明

 

 

第427回(ひまわりno243)内山書店76年ぶり復活。贋作事件簿他

2021.10.2寄稿

私は2004年に、地元の室蘭民報社から「本の話」を出した。これは同紙に平成元年(1989)から連載している専ら「本」に関する話を書いたエッセイ「本の話」の初回から1996年(平成8年)までの200回分をまとめたものである。 続きを読む 第427回(ひまわりno243)内山書店76年ぶり復活。贋作事件簿他