2020.10.11寄稿
ステファヌ・クルトワと ジャン=ルイ・マルゴラン共著、高橋武智訳の「共産主義黒書<アジア編>」のP366に次の記述がある。
「シアヌーク殿下は、とくに左翼反対派に対して、暴力を広汎に使用することをためらわなかった。1959〜1960年以降、権力の腐敗を批判する親共産主義左翼の人気が高まるのを不安に思った殿下は…….週2回刊のフランス語新聞(ロプセルヴァトゥール)の責任者ー彼こそ後のクメール・ルージュの指導者、キュー・サムファンであったーを道路の真ん中でめった打ちさせた」。因みに「khmer Rouge」とはフランス語で「赤いクメール」でカンボジアの極左政治グループの総称。ポルポト派とほぼ同義。ポルポトの死亡により消滅した.又「porpot」はカンボジアの過激な共産主義者。ポルポトは1975年政権を握ると都市住民を農村に送り、多くの反対派を殺害した。その数ナント4年間余りで約200万人で、これ当時の人口の約1/4。もちろん、虐殺ばかりでない。餓死も入れての数だ。さて、P366に出ていたキュー・サムファンの話に戻る。過ぐる9月22日、この元国家幹部会議長で91歳になった男に終身刑が下った。下したのは最高幹部らを裁く特別法廷で、これ第二審=最終審。キュー・サムファンにはすでに2016年に政治的迫害などで終身刑が出ていたが、今回はそれに、チャム族とベトナム人の虐殺、強制結婚、強姦が加わった。因みにカンボジアでは「死刑」が廃止されているので「終身刑」が最高の罪となる。事の理解のために最初にあげたちくま文芸文庫の「共産主義黒書ー<アジア編>1) 」(講談社)を机上に出した。
これまでの記述で大方の読者は、「はー、あの写真の少女か?」と思い出している事だろう。全裸で叫びながら、5人の少年少女とこちらに走ってくる少女の写真だ。後ろには3人程の兵隊もいる。この少女がキム・フックだ。「napalm bomb」とは、ナフサパーム油、金属石鹸などを混ぜた強烈な油脂焼夷弾だ。ナフサとは原油を蒸留して得られる沸点の低い炭水水素で、ガソリンや石油化学製品の原料になるーだと。
これに全身焼かれた少女はナントカ一命を取り止めたが、その後北ベトナム側=社会主義政策の国策に利用され尽くされる。その想像を絶する人生は本著を手に取ってもらうとして、さらにもう一度最初の話題で取り上げた「共産主義黒書」を出して第2章のⅡ「ベトナムー戦時共産主義の袋小路」を読んでほしいい。いい忘れたが、学生会館のバザーではベトナムに落下された米軍の弾やら何やらを使った鍋などが売られていた。私をその場に誘った数学の山口格教授は定年になった途端に死んでしまった。
10月10日、友人の増岡敏三さんに呼ばれて、室蘭港町会、創立100年祝賀会で話をして来た。増岡さんは本職は米屋だが、室蘭では平和運動家として著名な人.無論「9条を守る会」の会長だ。町会長を20年勤めているが、地域に風呂屋がなくなると、年寄り達を自分の車に乗っけて、他の町まで届けるという動きに動き回っている人だ。で、私はそのお祝いの席で「統一協会」の話をした。それは多分あまり人に知られていない話だ。「統一協会」では、あの尊い文鮮明のお姿を世界の元首が拝み奉るーと言う秘密の行事があるそうだ。言い直すと、世界の元首が首を揃えた所に文鮮明とあのなんとかという奥方が出てきて姿を見せてくださる。すると居並ぶ世界各国の一番のお偉い方が一斉にひざまずいて、拝むのだそうな。この仕草を「拝跪=はいき」と言う。ここで笑えるのは世界の元首も忙しいだろうからそうそう雁首を並べる暇はないどうするか。ブッタマゲルナ!統一教会の幹部連中が役者よろしく各元首に扮するそうで、日本国の天皇の役は久保木修巳日本統一協会会長。所で「拝跪」はひざまずいて拝むことと先ほど説明したが、これは「神」にたいしてする行為だ。まあ文鮮明は神なのだろう。ここで一寸話を変えるが、日本が戦争で負けるまでは、天皇は人間ではなくて、「現人神=あらひとがみ」と呼ばれる神様だった。その意味は「この世に人間お姿をして現れた神」だ。これはまあ、当の天皇初め、誰もが内心信じてはいなかったろう。そこへマッカーサーが乗り込んで来たので、天皇は「私は人間です」と宣言するはめになった。そこで、一寸話がこじれてくる気がする。昔は紀元2600年と称して天皇はかくも長く続いたとするために600年も鯖を読んで見せたが、それはともかく、一応天皇は昔は「神様」だった。その神様が事もあろうに金の亡者の文鮮明如きに膝まずかされる、これを知って私は国民の一人として腹が立つ。櫻井よし子とか、ケント・ギルバートとか韓国大嫌いの連中はこれを知らぬのか。天皇制がどうのこうの、右翼か、左翼かの問題以前に一個の人間が何の為に神にあらざるインチキ男に土下座せねばならぬのか。一番不可解で許せぬのがアベだ。しきりに靖国神社に参拝し、しきりに「天皇万歳」と叫びたがるアベが、事もあろうに、天皇をひざまずかせ我が身を神として拝ませる文鮮明にお祝いのビデオメッセージを送り、日本国民から金をふんだくるだけの文鮮明から、国民を守ろうともせずに、一統引き連れて文鮮明に「拝跪」している。ドウ、ナッチカラン!?と言いたい。アベを支える「日本会議」の基本方針の第一は「皇室崇敬」だ。となると、こっちもまた「天皇」をひざまずかせておいて「皇室崇敬」は成り立たないんじゃないのーと言いたい。私はこの「天皇」をひざまずかせる秘儀のことを5年前に鈴木エイトの「統一協会=勝共連合ーその右派運動の歴史と現在ー」で知った。この論文が出ている「徹底検証・日本の右傾化(( 塚田穂高.徹底検証・日本の右傾化.ちくま選書(2017))) 」は宗教社会学者の塚田穂高が著者となって21人の学者、ジャーナリストの論文を集めた、誠に教えられる所の多い本だ。そう言えば、鈴木エイトはこうも書いている「韓国中心である統一協会は、天皇皇室を低く見ており、日本の右派とは本来相容れないはずだった」「あーそれなのに」じゃないがそれが今、アベ一統靡(なびき)になびいていたとわかった。つまりこの連中損得勘定だけで「愛国心」なんて口先だけだった訳だ。紙幅がないのでここで説明なしに斎藤貴男の「戦争のできる国へー安倍政権の正体2 」を出しておく。安倍の死によって皮肉にも「統一協会」の正体がはっきりして来たことは確かだ。斎藤の本をもう一点出しておきたい「『心』と『国策』の内幕3 」(ちくま文庫)だ
- 高橋武智訳.共産主義黒書ー<アジア編>」を出しておく。又ポルポトの伝記が安田の本にある。
室工大在任中、学生会館でベトナム支援のバザーが開かれた、この「Bazaar」はペルシャ語で原義は「市場」でつまりは慈善市。ベトナム支援と言ったが、これは無論「ベトコン=vietcong」と呼ばれた南ベトナム解放民族戦線の方ではなくて、ホーチミンに率いられた北ベトナムの支援。この戦争はアメリカと組んだ南ベトナムと北ベトナムの戦争で65年〜75年と続き、南ベトナムの無条件降伏で終わり、1976年に南北統一となった。さて、過ぐる9月8日、朝日のオピニオン&フォーラム欄に「ナパーム弾の少女」50年と題して、見覚えある写真の前で両手を広げてニッコリする中年女性の写真が出た。見出しの後の副題は「戦火での大やけど,心身の止まぬ痛み、写真が強いた孤独」で、「ベトナム戦争の被害者、キム・フックさん」と続く。読んで私は、前に松山の俳人、栗原恵美子さんから送られた藤えりか著「ナパーム弾の少女−50年の物語 (( 藤えりか.ナパーム弾の少女−50年の物語.講談社(2022 [↩]
- 斎藤貴男. 戦争のできる国へー安倍政権の正体 .朝日新書(2014) [↩]
- 斎藤貴男.『心』と『国策』の内幕 .ちくま文庫(2011) [↩]