第463回トークショー(パート2)

去る9月21日、えみらん(室蘭市図書館)の多目的室で行われた南陀楼綾繁氏(なんだろうあやしげ)と山下敏明氏のトークショーの記録

第2部 休憩後

山下:小学校卒業の時総代になったんです。総代挨拶の時間がだんだん近づいてくるに従って、トイレに行きたくなって行かしてもらえばよかったのに我慢してたら垂れちゃて、その垂れた時に、当時は上靴が、ゴム靴だから、垂れたもんだからじゃぶじゃぶじゃぶじゃぶ溜まっちゃってね、総代と呼ばれて歩いて行ったらジャブジャブ、その時八幡ヤエ子って美人がいてそれが、私の顔を不思議な顔でみていた。トイレの失敗はそれが最初。だから今行ってきてよかった。本当にホッとしている。

  

南陀楼:とかなんとかそれを喋りたかったのでしょ。また始めさせていただきますが。そういう風に工大で30年間働きながら「本の話」もずっと連載して、で、地元では本好きの山下さんは有名なんですけど、この大学の学生さんともずっと付き合ってきて、仲人やったの7組とか。

今ここに山下さんに仲人してもらった人は?2組いらっしゃいますね。

なんでそんなに図書館の人が学生と付き合うようになったの?

山下: なんですか。 それはね、つまり、他の教授の話が面白くないから、こうやってね、そこに西方がいるんだけど、西方が一度怒られたことがあるんですよ。

西方が教授の講義中に途中で立って出ようとしたんです。そしたら、なんで俺の授業中にお前は立っていくんだって聞いた。そうしたら山下さんの話を聞きたいからって言ったもんだから、そう言うことを言ってくれたらしいですよ。そうしたら、その教授から目の仇にされた、私が。もう一人ね。水野って、この男が居てこれ死んじゃったんだけど、美術が好きで、美術が好きでね。無口な男で、うちに来ては、物一つ言わずに何時間でも黙って美術の本を見てるんですよ。我が家今の所、西方が面積は測って計算したら、3万冊あるんですけど、我が家に。そのうちだいぶ美術書も多い。でその水野っていうのが来てはもう毎日来て、本当に毎日来て黙って見てるんですよ。その水野がある時死んじゃったんですよ。室蘭市内のある医者にかかったら、誤診で、その医者が、いい若い者がこれは運動不足だって、もっと運動せって腰ポント叩かれたっていうのです。叩かれた腰がもう痛くて、そいつが仙台出身で家に帰った時、東北大学病院に行ったら、親が呼ばれて、この子は全身がガンで、生きて帰ると思わないでくれって言われたっちゅうんです。その時に、水野が山下さん来てくれないのかなって呟いたらしいんです。山下って誰だてことになって、仲間10人で駆けつけたんです、水野の病のところに。目がドローンとして、それで、生きて帰れないんですから。悪い言い方だけど、若いから死なないんです、体力あるから。みんなで、3交代で水野の元に集まって付き合ってたけど、死なないからみんな金がなくなって、それで1回帰ると言うことになって帰ろうと思ったら途中で電報が入って死にましたってこと。また戻って、みんなで、葬式やって、毎年その後から水野の命日に集まって、墓詣りした後、水野を偲んで、美術に関する旅行をすることになったの。それでこれが30回続いた。30回までで一番面白かったのは韓国の済州島に行った時、ガイドに美術が目的で来たんですと言ったら、私には美術関係はわからないと言う。そしたらこの男、今司会やってる根元ね、慎ましい男だが、自分が幹事になったから、韓国語を勉強してた。ガイド抜きで話して通訳できてた。で、それで30回続いた。30回やってこれで、解散しようって。後は別れていいよて言ったけどそのまま続いている。

南陀楼: それくらい山下さんと付き合いがいまでもつづいていると、そういうことですね。それで、その後山下さんは室蘭市図書館に呼ばれて、副館長から、館長を務めて、で、今では「ふくろう文庫」を運営されているわけですけれど、ちょっと、「ふくろう文庫」の話に行きます。

今7000点蔵書があるということですが、ご覧になっている方もいらしゃることと思いますが、美術書を中心に置いて、その美術書も、普通に作品集とか美術評論などもあるんですけど、美術書の複製でかなり貴重な物があって、それは私も昨日書庫を拝見しました。出版社が美術館に所蔵されている絵とか彫刻とか、水墨画とか、そういう物を写真に撮って複製版という物をつくるんですね。それはすごく部数が少なく50部、100部しか作らないような物で、定価がむちゃくちゃ高いんですよね。そういう物を山下さんは、前からこういう物が出ているよというのを調べておく。そして、室蘭の方に寄付を呼びかけて、寄贈するのも本で寄贈するんじゃなくて、お金を寄付していただく。例えばお子さんが生まれたとか、お孫さんが生まれたとか、結婚記念日だとか、人生の節目に寄贈していただく。

山下:岩田という市長が、もう死んじゃったけどその市長が、私が工大勤務終わったら、室蘭に来てくれって言われたんですよ。その後、新宮市長になってまた来てくれということになった。で行ったんだけども。当時10万都市が道内で34あったんです。34ある中で、室蘭が1番図書館の本代が少ないってなってたんですよ。

南陀楼:購入費がね。

山下:それで室蘭を全道の図書館の購入費の計算に入れないでくれと言われ、室蘭を入れると下がっちゃうから。

南陀楼:そんなことを言われた?

山下:それで、会計に電話したんですよ。そしたら会計が室蘭市図書館から、いくらくれと言ってきたことがないって言うんです。只、去年の何パーセント増しでよこせって言うだけ。だから何を買いたいのか一切ないから、はい、出さないんだってさ。それで、俺が本のリスト全部出して欲しいと言ったら、300万円でもよこすかと言ったら、会計が言うには300万円あるなら、出しますよっちゅうんですよ。

南陀楼:購入すべきリストを出してくださいって。

山下:それで、本当にね、ほとんど徹夜で、頑張って300万円分の本を書き出したんですよ。はい。で書き出して届けたらこれが100万円きたんですよ。200万円減らされているわけ。で会計に電話かけて、300万円くれると言ったから、300万円出したじゃないか、なんで200万円減るんだって聞いたら、いや、それはそっちから、図書館から100万円しか出てませんと言う話だった。それで、その時の館長に聞いたら大体今までくれたことがないから100万円て言ったってくれるはずないから、自分が減らしたって言うんですよ。200万円減らし、そのリストは自分が持ってるという。びっくりしちゃって、もう一回出せってことになったんだよ。それで、これじゃ埒があかない。何か集める方法はないかなあっちゅんで、それぞれの人に自分の人生の節目があるはずだからそういう時、孫が生まれたとか、結婚したとか、じさまが死んだとか自分の節目だと思われる日に記念にお金を出してくれと。それで美術書を集めますという話をした。そしたら、市から呼ばれて、お祭りの寄付なら1回集まるだろうけど、続くはずないからやめてくれって言われたんです。やめてくれって言われりゃ、やってみなけりゃわからないから、やりますよと。やり続けて今も続いている。

南陀楼:それはもちろんそういう市民の方が寄付をしてくれる方がいたからなんだけど、何を購うかってことにずっとアンテナを張ってたから、これを買うべきだっていうのが分かっているわけですね。古書目録とか色々なものがあるんですが山下さんは今でもインターネットとやらない、けどすごくそういう情報を持っているわけじゃないですか。

山下: その時に当時のNHK支局長に言われた。どうせ、「ふくろう文庫」なんて、複製だべってね。ほんで、複製だべっていうんでカチンときて、レプリカって言葉知ってるか。レプリカっていうのは限りなく本物に近いものを使って作ったものをレプリカというんです。コピーとる複製とは違う。知ってるかと言ったら知らないというから、それで、レプリカと言うのは例えば巻物が500年前にできたとしたら、500年前の絹でできているなら、一回分析して500年前の絹をつくるんです。そしてその500年前の絹を使って本物に限りなく近くつくる。それが分かってきてね、それともう一つは、市立図書館だから、市立図書館という公共図書館に収めるんだから寄付してくれと。ということで続いてきてます。7000点。

南陀楼:はい、聞いた話では、寄贈した方がもういっぺんね自分が寄贈したものを見に行きたいとか、お父さんが寄贈したものをお子さんがまた自分の親が寄贈した本をどんな本なのか見に来るとかね。そういうやっぱり、寄贈者の思い込みみたいなものがちゃんと受け継がれてるんだなと。

山下:いますね。なんで今、ふくろう文庫に一点一点解説をつけるかっていうと、解説つけてね、前は1点増えるたびに北海道新聞に解説を載せてたんですよ解説を。それが400回続いたの。で400回続いたんだけど今、デジタル化で途切れたんだけどね。なんで解説をつけるかというと、下手すると焼かれちゃうからね、捨てられちゃうしね。でそれが、こういう本だ、これが世界で1点しかない本ですよって、こういうことを書いておけば、よほどの馬鹿でない限り、字が読めればね、これ捨てちゃならない本だってことがわかるはずだと思って一点一点つける。それともう一つは、くれた人の思いがね、何を思ってくれてるかってことを書きたいから。それに、全部にくれた理由と、くれた日時と、くれた人の名前を書くんです。それで、そのたんびに全員に礼状を書くわけです。だから、私のところには今まで7000点集まった人たちに対する礼状の一覧表と、解説の一覧表が全部あるんです。

南陀楼:「ふくろう文庫」のふくろうっていうのはご存知の通り知恵の象徴ですよね。その意味もあると思うし、それから山下さん自身がふくろうが好きなんですよね。

山下:まずご存知のようにアテネの守護神がふくろうなんですよ。アテネのね守護神がふくろうで、そういうことを知っていた時に、我妻さんが私の妻のことを我妻さんというんだけど、妻さん、いつかうちのやつって言ったら私はやつではないというから、それで、尊敬して、我妻さんっていうんです。

南陀楼:ちょっと余計なこというけど、この「本の話」の連載も普通に我妻さんって書いてあるよね、それで・・。

山下:その日鉄から出ている市議会議員で、我妻っていうのがいるんです。俺と間違えられるっちゅうから、よく読めってゆうか。ほんで、解説全部書いて、もう一つはね、思いがね、どういう思いでくれてるかっていうのが大事でしょう。その礼状も全部保管して、解説も全部保管してるから、誰か来て、しょちゅう来るんですけどうちのじいちゃん出した本どれですかって言ってくるんですよ。そうすると、これじいちゃんがくれた本ですよ、とか全部応じられるようになってるんです。それともう一つは、我妻さんが一人で海外旅行に行って、アラスカかどこかで天気悪くて帰れなかったその時にね買ってきたのがろうそく、こんな見事なふくろうの塊、ミミズクの塊、あんまり立派だからもったいなくて未だに火をつけてないけどこれはいいわと思って、ますますふくろうで行くべと。

南陀楼:ふくろうの木彫りとか、いろんなふくろうの置物をずっと集めてるそうです。

山下:それで、ついでに言うと、伊達に「ミネルバ」という精神病院があるんだけど、そこの人がね、あそこの院長が来て、トトロの森って名前をつけたいけどどうだべってきたそれで、それは登録されているからダメだ。商品登録でね。一体何を聞きたいんだと言ったら、アイヌのふくろうないかっちゅうんです。どこのアイヌを言ってんだと聞いたらどこのアイヌとはと聞く。アイヌは十勝アイヌ、日高アイヌ、全部違うんですよ。ふくろうにも種類がある。何を言いいたいのと聞いたら、ふくろうをつけたいっちゅうから、それじゃアテネじゃなく、「」ミネルバって付けろって言ったんです。「ミネルバ」ってなんだっていうから、「ミネルバ」はローマ神話になってからあらゆる知恵の後にふくろうが飛び立つその知恵が、英知の象徴なんだ。それがミネルバって言うんだと言ったら、その精神病院「ミネルバ」ってつけた。

南陀楼:あーじゃあ山下さんのアドバイス。

山下:それで、一切何もでないんですけどね、その時何を言ったかというと、何かあったらうちの病院にどうぞと言われた。本当に苦しいことばかり。

南陀楼:でも。そういうね別に謝礼がどうとかじゃなくて、本に関することだったら頼まれればやっちゃうわけでしょ山下さんは。

山下:本で儲けたことはない。今でもなんとなく金に縁が遠いっていうかそれで、この『本の話』もね、これ全部印税は、ふくろう文庫に入れているんです。ほいで、ついでに言うと、プリンスホテルは各部屋には私の『本の話』が置いてるんです。聖書かと思って開けてみたら山下さんの本が出てきた、で、ある時、九州大学の医学部の医科長とかという人が、室蘭に来て、プリンスに泊まったんですよ。聖書かと思って開けてみたらあんたの本が出てきた。これは地方出版にしておくにはもったいないから、6部送ってくれということで6部送った。

未だにふくろう集めてるが、ふくろうを図書館に出すと盗まれる。

南陀楼:はいはい悪い奴はいっぱい。

山下:本当にね、とにかく対で出しておくとね、片方が盗まれる

南陀楼:なるほど、で、そのふくろう文庫も素晴らしいですけど、昨日私その図書館も見学しまして、郷土資料のコーナーもあるんですけど、郷土資料もすごく揃っていて、奥の書庫もきちっと見ましたけど、室蘭や北海道についての郷土資料すごく揃っている。これはご存知の方も多いと思いますけど、室蘭には、郷土史研究会があって、今でも雑誌を出したり、色々活動されているとか。そういう、やっぱり、室蘭って歴史や文学の伝統があるから、そういうものが受け継がれているなと思いますね。で、今日港の文学館を見てきましたけど、八木義徳をはじめとして、芥川賞作家が3人出てますね。そういう人たちの展示もやってるし、それから田中秀痴庵文庫というのがあって、田中さんて人が本が好きで雑誌の創刊号をあらゆる雑誌を集めている。やっぱり、ものすごいなって風に思いました。

山下:今の文庫はね、商工会議所に勤めていた田中が始めたもので、息子が私と同級生だった。田中は古本屋もやっていて、いつか、私の貸した本が売りに出ていたことがあった。これにはまいったね。

南陀楼:「本の話」の連載を読んでいると、室蘭に以前あった本屋の話も出てきて、その中に背文字屋って店の名前も出てきますけど、もちろん子供の頃から本屋通ってってたわけだけど、今室蘭の街中には本屋さんないんでしょう。

山下:本屋。本屋がなくなってね。それで、「背文字屋」ってのは東大出て中国文学をやった男がやってたのですよ。この兄弟皆死んじゃったけど、兄弟3人東大、長男が共産党、次男が神父。神父ってわかります。新教会の神これね、スターリンにいじめられて宗教がダメ。東大に入って中国文学やったんだけどなかな野心のある男で、その男、古本屋を始めたんですよ。始めたのは、戦後になってから。

南陀楼:なるほど。そういう本屋も今はない状態。でそうすると、図書館の役割ってますます大事になってくると思うんですよ。で、いまここの図書館は新しく建て替えて複合的な施設になってるんですけど、やっぱり、図書館施設は立派で、あと蔵書がいくらたくさんあっても、結局そこを運営する人と、司書の人とかそれからあとは、利用する人ですよね。それがちゃんと図書館の使い方考えないと、やっぱりなんだ、仏あって魂入れずでないけど、良くならいと思うんですよね。

ここの図書館をどういう風に生かしたらいいか、山下さんはどういう風に考えます。

山下:今ね、全国で流行っているのは民営化です。下請けに出しちゃって、指定管理とかっていう立派な名前つけるけど、要するに下請けに出しちゃうんですよ。そうするとね、図書館は民間のものになっちゃうから、どうしたもんだということがでるでしょう。1番我々にとって困るのはね、市立図書館が、民営化されてどこへ行くかというと、「ゲオ」だの、「TSUTAYA」だの、そういうところが手を出すんです。ついこの間、九州の武雄というところでは、「TSUTAYA」が入って民営化されたんですよ。そしたら、その「TSUTAYA」が,100万円とか200万円分とか知らんけど、その1年間の本代全部本を収めたんだけど、新聞が行って調べたら、「TSUTAYA」のブックオフで売れ残ってた100円もしないような本を全部正価に戻して収めたんです。これはもう許せないってなったけど、その「TSUTAYA」を導入した市長はそれで責任とって辞めるかと言ったら、やめないで「TSUTAYA」の役員になっちゃった。で、そういうことが今、全国で始まっているんで、今、室蘭の近辺ではっきりしているのはね、伊達だけ。伊達はね、伊達の市長は今どういう人か知らんけど、はっきり、民営化はしないと。それで、自分は直営で行くとやっているんです。今、これ以上言うと選挙妨害にもなるからやめるけど、、今室蘭もね民営化されかかっているんですよ。ただね問題はね、民営化された時にさっき言った「ふくろう文庫」にあるものがねどこへ行くのか。「TSUTAYA」とか、「ゲオ」のものになっちゃうわけですよ。民営化だから、むこうに経営権が行っちゃうんだから。市民が、市立図書館だと思ってくれ、市民が出した大宝ですよ。はい。「ゲオ」や「TSUTAYA」のものになってどうすんのってことに行き着くはずなんだけど、その辺りが、その、誰やらが気づいていない。

南陀楼: 委託っていうもののいろいろ問題点とか、逆に言うと利点もあるはずなんですけど、やっぱり一番問題なのが、その図書館の独自性が薄れてしまうことですよね。画一化しないとコントロールしにくいんで、そこで、その委託によってどこでもあるような図書館になっちゃう可能性が結構あると。で、その「ふくろう文庫」のような、成り立ちから言ってもかなり、特殊なコレクションのあるのところがない。だから、そういう委託で維持できるかっていうと、かなり難しいだろうという気がするんですよね。その辺のところをやっぱり、もうちょっと根本的に話し合うべきだろうなっていう気は、見学して思いましたね。最近また、こどもの読書力が落ちているみたいな話もありますけど、確かにデジタル化ってものがこれだけひろがってきて、紙の本を読む人たちが減ってきているのは確かかもしれないですけど、だけど一方で、本好きの人達って根強くのこってて、私たちがやっている「一箱古本市」でも多くの本好きが集まります。

山下: 民営化されようがどうだろうが図書館を守るべき道はほかにもいっぱいあると思うんだけれど、今ここに名乗りを上げている中に、TRCと言うのがあるんですよ。図書館流通センターはどんな会社かってことを、この間来た教育長やなんかに聞いたら、しらないんですよ。

TRCは図書館流通センターっていうんだけども、これはどっから発生したかと言うと、公民館なんかね、本の図書館と言えないような規模のところでは、司書も少ないだろうから、本を選ぶことができないだろうっていうんで、その図書館流通センターってところに200人の専門家を集めて、科学だ物理だなんて事を分野別に集めて、こんな本が今出ている素晴らしいですよってことを教える仕事を始めたんです。教えているうちは良かったんですけど、今度その会社は本を売り出して来て、おまけに人材派遣になっちゃた。その一例を挙げると、新冠ってあるんだけど、そこに新しい図書館を建てようっちゅんで館長を公募したんです。そしたら、旭川の分室が5つある中で臨時で働いていた男が私が新冠に骨を埋めますから取ってくださいって言って採用された。そしたら、釧路の図書館も館長を募集した。その野郎が、新冠捨てて行っちゃったんです釧路にね。で釧路でやり始めたんだけど、うまくいかなくて、釧路で揉めたんですよ。釧路はやっぱり直営じゃなければダメだ、市がやらなければダメだっていうんで戻そうとしたんだけどもその直営話もうまくいかなくて、結局乗り出したのはコーチャンフォーなんです。だから、うまくいっているところと、うまくいってないところとかは当然あるけど、いたずらに、民営化していいってことにはならない。

南陀楼: 今日は民営化の話はここまで。それはこれから皆さんで話し合ってください。一応これで終わりますけど。山下さんはこどもの頃からずっと本と共に生きてきて、今でもね88歳になってもずっと毎日本のことを考えて、今でも読まれ、目が悪くなったっておしゃってますけどそれでもずっと読んできたわけじゃないですか。今更ながらかも知んないけど、そんなに引きつける本の魅力ってなんですかね。

山下: 本の魅力って、結局、そのついでに言うとね、この間朝日かどっかの調査で、今全人口の6割が、一冊も本を読まない、一年間に一冊も本を読まないっていう統計が出たんですよ。この人達何やってんのかなと思うけど、おそらく、スマホだかなんだか言って、色々過ごし方あるでしょう。けど私はスマホもパソコンも何も知らないから。で、本読んで新しいことを知るという喜びで生きてきたから、それ以外方法がない。私にとっては本っていうのは3万冊集めて、ええ全部読んでいるかという人がいますが、そんなことあるはずないんだね。

そうなんです。ただ3万冊ある本の雰囲気ってものはねこれまた別の教養になるんですよ。さっき言い忘れたけどね、「ふくろう文庫」なんで美術書を中心にするかというと、人類が生き果ててもね、生き残っているのは美術なんですよ。生き残っているのはね。で、もう一つ、岡倉天心ってのがいて、あの人が言うには美術は人生の華也、美術と言うものは人生を助けてくれるもんであると言っている。私はそれが好きだからで、とにかく毎日新しいことを知りたくて本を読んで、それから美しいものを見たくて・・・。美術書で室蘭に「ふくろう文庫」を作ったのは世界に出ていかなくても室蘭の図書館に来れば世界中の美術を見ることができますよってことで集めたんです。岡倉天心の話も気に入ってるしね。それから、美術は人生の華也。先走って言うとね、「ふくろう文庫」これからどうすんだっていう。そろそろくたばるんじゃねえかってところがあるんだけれど、私は全然そう思ってなくて、なぜかというと、美術館ねいろんなところが潰れているんですよ。ボストンだって、一回も、二回もねダメになってるんです。原爆の図書館、原爆の美術館もダメになってね、だけど、ものが残って美術品が残ってると、必ずそれに関心を示す人がね新たに生まれて出てくるんですよ。「ふくろう文庫」どうなるのって、陸游っていう中国の詩人がいるんだけど、この人は具眼の士っていうことを言っている。具眼の士と言うのは本当に見る目を持った人がいる限り、美術は大丈夫ですよ。はい私はね「ふくろう文庫」将来どうなるのって聞かれれば、具眼の士が現れてくる。私が死んでもね。また誰か美術の好きな人が出てきて、必ず助けてその美術を生かそうとするに違いないから余計な心配しなくていいって。

南陀楼:美術って本当に世代に関係なく、言語を超えたりね、国と言語を超えて共有される。

山下:そうだね。「ふくろう文庫」で集めてんのはね、国宝級の絵巻や掛け軸なんかで、中国やなんかの絵巻だけでも何百点、見たでしょう。それで今出している絵巻も、与謝蕪村が書いた奥の細道の絵なんですよ。今まで見せたことがない、場所がなくて、とにかく全国にないものを集めてんだから。私が死のうが、何回も言うけど物があるかぎり誰かが助けに出てくる。だから一切心配していない。ただ、民営化なんてことになったら、それは死んじゃうよってことを言いたい。

南陀楼:ありがとうございます。せっかくなんで。山下さんなり私なりに質問とか図書館のことでお話ししたいって方がいらしたらちょっと手を挙げてください。

山下:ちょっとそのまえにもう一つね。「ふくろう文庫」今7000点あるんですよ。集めたお金は6000万円、6000万円の寄付で、7000点集めてんですよ。それを正価に戻すと2億2000万円の物が集まっているんですよ。なんで6000万円で2億2000万円集められるかというと、私が一所懸命値切るからです。100万くれる人が出てきたら、それで買える書を一生懸命探しまくる。そして、足りない時は値切るわけですよ。それをずっとやってきた。昨日から展示した曼荼羅は200万円を40万円で買った。値切って、値切って、室蘭で大事にするからって、そうやってずっとやってきたのが。今は、デジタル化で、古本屋の目録が冊子ででてこないので困っている。

南陀楼:今図書館、公共図書館の流れで言うと、そういう風に、まず複合化。施設の複合化で、図書館だけじゃなく公民館的機能とかそういう物で、人が集まる場所を作るってのは流れとしてあります。それによって、図書館の利用率を上げるというのが試みとしてあって実際そういう風にして、人が集まってコミニュケーションできるようなことによって貸し出し率も上がっているというデーターもある。あと、本の読み聞かせとか、読書会とか、ビブリオバトルとかで読書への関心を高めるという目論見がある。ある程度の効果を生んでいる面もあります。おっしゃるように、人が集まるってことと、コミュニケーションできるっていうようなことがちょっと前に出すぎな気もするんですね。一方、本っていうのは、本を媒介にしていろんなコミュニケーションが生まれるってことも1つあるんだけれど、もう一方ではやはり読書って個人が自分なりの読み方で本と向き合うってことがあるわけですね。で、図書館はそういう人たちの場でもあるわけですよね。やっぱり、空間をきちんと分けるっていうことは一つ大きいと思います。

なんでもかんでも自由に過ごしていい場所じゃないっていう。

で、もっというと、学校の子供、小学生とか中学生の中で、図書館教育がないんですよ。図書館の使い方っての。学校図書館の使い方はやるかもしれないですが、公共図書館でどう過ごすかって教育が全然これまでなされてないわけですよ。そうすると、今の子供達が公共図書館にあんまり、接してないと、勝手に友達と話しいていいとか、受験勉強だけに来ればいいとかそれこそスマホで割と最近多いのは普通にこういう本の中をスマホで撮ったりしてるんだけど、あれ著作権法上ダメだとかね、そうゆうことを誰も教えてない。やっぱり図書館、公共図書館との付き合い方をどっかで教えるべきだし、大人もちゃんとわかるべきだと思います。

山下:だけどね問題は、さっきTRCの話したけど、どっかで持ってた郷土資料を全部捨てたところがあるんですよ。要するに、郷土資料なんてこんな古いもの誰も読むはずがないと言う観点で捨てたみたいなんです。そうなってくると、郷土資料が大事だって言ったってわからない人にはわからないから、水掛け論になちゃうところがあるんですよ。「ふくろう文庫」でさっき言ったように2億円超えるものが集まってても。関心示さない人は関心示さないんですよ。だから、これは太刀打ちできない、関心のない人には。この間読売新聞が取材に来て、すごく生意気な記者で、「ふくろう文庫」の取材に来て、何言うかと思ったら、どうせこんなもの複製だみたいなこと言うから、レプリカって知ってるかと・・。そしたらレプリカぐらい知ってるよって言うんですよ。じゃ理解してんじゃないかと思って、ふくろう文庫どうゆうふうにすんだって言うから、関心のない人にも見せるよう努力してんだと言ったら、そんなこと無理だって言うんですよ。そんなことできるはずない、関心ないやつに関心持たせようなんて無理なんだからやめろっちゅうんですよ。そうなんだろうけどね。そういう人に対しても努力しなけりゃならないぐらいしか言えないですね、今は。問題はね、図書館に司書が必要だっていうことの以前に、図書館に困った人間を配置してくるということがずっと続いているんですよ。館長で来た男がね、はだしのゲン知らないっていうんです。そして、アンネの日記も知らないというんです。それでびっくりしてアンネの日記しらいないということはヒトラーがユダヤ人を虐殺したこと知らないのかって聞いたら、そんなことあったんですか、っていうんです。これはどこを向いている人事か知らないけど、図書館向きではない。役所で図書館に行きたい人って募集するとやたらいるんですって行きたい人が。なんで行きたいかというと第一に暇そうだから。それで、図書館は暇そうに見えるんでしょうね。本当に本が好きな人をよこさないでどうすんだって。魚屋に魚見るだけでゾッとするような男を配置したんではしょうがない。図書館の配置の最大の条件は、本が好きで、本に関心のあるやつをよこせっちゅうんだけど、いるそれがいってないところが問題。

南陀楼:音更町に評論家でものすごくいろんなタイプの本書いていた草森紳一って人がいて、私生前お世話になってますけど、草森さんが亡くなった後に膨大な蔵書があってこれも3万冊ぐらい。で、その周りの人たちが協力して整理して、帯広大谷短大がそれを引き受けて、廃校になった学校の中に本棚を入れて、そこに蔵書を全部並べているんですよ。それを希望者には全部見せてる。目録もネットで公開して公開しているのでこれは見たいという人はいけます。これは公共図書館とは違う独自の分類になっているので、この評論家の草森さんっていう人の頭の中を見るようなことが体験できます。もう一つ同じ音更町には草森さん自身が生前に実家の庭に立てた任梟盧っていうちょっと白いタワー(サイロを利用したもの)みたいなところがあってここも別のグループが整理しているんですよ。そうすると、生前に集めた蔵書と、任梟盧に整理された蔵書の両方が町にあるので、合計6万冊ぐらいあるんですよ。今後それを使ってどう利用するか。個人の蔵書を基にした図書館にも注目してもらえばと思います。

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