第007回  渡り鳥の本

`92.3.16寄稿

北帰行  ① 窓は夜露にぬれて 都すでに遠のく  北へ帰る  旅人ひとり  涙流れてやまず

② 夏はむなしく消えて 今日も 闇をさすらう  遠き想い はかなき望み 恩愛 我をさりぬ

③ 今は黙してゆかん  何をまた語るべき  さらば祖国 いとしき人よ  あすはいずこの町か

詞.曲 宇田 博ここに北帰行の歌詞をのせたのは、最近、各紙に「北帰行」始まるとか「北帰行」例年より2週間遅し、とか言う記事がのるのをみての連想です。

新聞紙上の「北帰行」は、白鳥などの「渡り鳥」が北へ旅立つ行為を指しているので、上にあげた詩とは関係ありません。ーけれども、見出しに使ったこの「北帰行」なる言葉は、どうもこの歌詞からの借用のような気がします。と言うのも、私は「北帰行」は俳句で使う「季語」かなと思って調べたのですが、歳時記にはのっておらず、「渡り鳥」も「秋のみ』の季語のようで、それは、「春の渡り」は、「秋の渡り」ほどには目だたないからーとの理由らしい。

ともあれ、冬鳥が北へ帰り、夏鳥が南から来る、この時期、内田清之助の名著「渡り鳥1 」を読んでみませんか。「鳥」の本の中でも、絶品の一冊です。


  1. 内田清之助.渡り鳥.築地書館 (1983) []

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