`95.6.15寄稿
愈々(いよいよ)北海道を除いては全国的に「入梅』と成りました。北海道をのぞくとは言っても、やはりこの時期は、室蘭でも雨の日が多く、この頃にきまってモンタナ松に発生する「泡虫」を除去するのが私の早朝の仕事です。
それはともかく、雨の降り続くこの季節、考えようによってはまさしく「雨読」で、案外、読書にふさわしい季節かもしれません。そこで今回は、本にまつわる物を3点紹介しましょう。
最初は、文芸春秋発行の雑誌「ノーサイド』`95年5月号題して「特集読書名人伝1 」
稀代の知識人であった幸田露伴から始まって、星の学者にして英文学者でもあった野尻抱影(ほうえい)まで、明治・大正・昭和の3代にわたって生きた、読書家にして著述家の中「名人、奇人、変人」の呼び名に価する65人について、これ又、当代なうての読み上手達が一文を物してます。
もっとも今の時代ですから、評する側には昔程の変人、奇人、と言う面影は余りありません。
とは言っても、宮武外骨/吉野孝雄/内藤湖南/津田左右吉/高島俊男と言う具合に、評する者、評される者の取り合せは仲々妙を極めています。
65人中には、私自身、既に全集を持っている人も何人もいますし、又全集がないまでも、戸川秋骨のように、ほぼ古本で集めた人もいますけれど、読んだことのない人もまだかなりいる訳でその人達の書いたものを早く読んでみたいとの気持ちを押さえることが出来ません。
江戸通の第一人者と言われた三村竹清などもその1人ですが、かってこの人の「平々凡々四十印」を「〜四十年」と早とちりして、届いたのをみると文字通り「印譜」(いんぷ=種々の印影を集めた本」だったには参ったものでした。とにかくこの特集、本好きにとってはまことに良き刺激剤です。
次は幸田良輔の「奇妙な本棚2 」
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この人は「独身者の科学3 」(河出書房)と言う本を初めとして、奇妙な本を6.7点出している奇妙な人なのどですが、この本は「芸術新潮」に連載した(`90/3〜`92/11)者を中心に集めた面白く変わった本です。[tmkm-amazon]4887189648[/tmkm-amazon]
「お尻の王国」「浣腸の文化史]「女性器の定点観測」などといった目次をみれば、この本の奇妙さが予想されましょう。貴方が「ウワッー、読みたい」と言うか、「こんなのイヤダッー」と思うかは、私の知る所ではありません。紹介点数は50冊余。
読んでみて(見てみて)私の持っていたものも何点かありましたが、ヨーロッパの書店をめぐり歩くチャンスを持っている著者には口惜しいけれどかなう筈がありません。この本紹介されている書影をみているだけでも楽しめます。
三番目は、ラート=ヴェーグ・イシュヴァーン「書物の喜劇4 」これは「珍本奇談集」です。[tmkm-amazon]4480836195[/tmkm-amazon]
例えば618ページの本のうち470ページを前書きにあてた人の本だとか、「ああ、ただの一時間もゆっくりできないのか!あなたの乳房にかぶりついて胸と胸と心と心をあわせて」なる詩が、ワイセツだとされて「あなたと静かな時を過ごすことは出来ないのか!二人だけの時はいつもてるのか!話すことは山ほどあると言うのに」なるつまらぬ文句に直されたゲーテのファウストの話とか、etc. etc. 全部典拠のある実話集だから恐れ入ります。
既に読書の魔力にとりつかれている人にも、そうでない人にもこの本は面白い筈、先ずはお読み下され!!