現在の「知の巨人」とも言うべき山口昌男が、実にワクワクするような本を書きました。本と言っても、この10月6日から、12月22日まで、12回に亘って話される、NHkの人間大学の講義録です。
何がワクワクかと言うと、取り上げられた人物が、すこぶる魅力的で、知ることを最大の喜びにする人間なら、山口の本を読んだあとに、これらの人々一人一人について、彼らが書いた本、彼らについて書かれた本を読む楽しさが控えているからです。
明治維新後に作られたピラミッド型の政府社会にあって、ひたすら社会的成功を目指すと言う競争原理にかりたてられて、目を血走らせた人達、山口は、そう言う人達には目を向けず、そうした、人を追い抜き、人を蹴落とし、と言った連中から離れて、確かな自信のもと、豊かな趣味と教養に、熱心に、かつ静かに生きた人々を紹介してくれます。写真家、横山松三朗/ ロシアに脱出した怪僧、橘 耕斎/ 北海道の名付親、松浦武四郎など〜。その魅力あふれる人物像ーたまらなーい!!
登場する全人物が、好きにならずにいられない魅力に満ちていますが、中でも本好きの私にとって、気になるのは、山中共古 大槻如電 石井研堂 斉藤昌三、内田魯庵と言ったところです。この人達についての本を全部あげたいところですが、今回は山中共古と内田魯庵の二人にしぼります。
山中については前に書いたものを見て下さい。内田魯庵については著作を2点と、「内田の伝記は自分が書かなくちゃ」との使命感に燃えた野村の評伝をあげておきます。他に山口昌男/坪内祐三編「魯庵の明治1」講談社文芸文庫 ’97 ¥950
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内田魯庵「文学者となる法2」図書新聞社 ’95 ¥2500もあります。
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近世近代期の学芸両界の人物研究に努め、彼らの隠れた業績を発掘し続けた森銃三(せんぞう)という民間学者がいます。この人は全国の図書館を渉猟して、人知れず眠っている貴重な資料を書き写しました。この膨大な記録によって成された数々の考証は、全十二巻別巻一の著作集として刊行され、昭和47年に第二十三回の「読売文学賞」を受賞しましたが、さらにその続編が、全十六巻別巻一として出て、私も全巻購読中です。永井荷風は常々、「森さんの様な人が本当の学者と言うんだよ」と周りの者に語っていたといいますが、今度は当の森が、「江戸通の三大人」として、これまた常々敬意を払っていたと言う人が、三村竹清(ちくせい)林若樹(わかぎ)三田村鴛魚(えんぎょ)です。この三人の中鴛魚には全二十四巻の全集があり、私もかねて重宝していますが、