第182回 【修学】旅行と旅の書

`01.7.寄稿

先月頼まれて,苫小牧と室蘭で中学3年生を相手に話しをした.テーマは「修学旅行」.私が北辰中学校3年生の時は、それまで弘前方面に行っていたのが、突然変更になり,釧路方面になった。どうしてだろうと長いこと首をひねってきたが,昨年45年振りの同窓会の折に、あの頃は「朝鮮動乱」で機雷が津軽海峡にまで流れて来ていて,,,その危険をさけるために、陸路だけの旅になったのだ、ときかされて長年の疑問が解けた。

さて,「川湯」に泊まった晩、いわゆる不良のKが何処からか新婚夫婦が離れに泊まっているとのニュースを聞いて来て,何人も連れ立って中庭越しのその部屋,,,,どう言う訳かカーテンがなくて,豆電球が灯っていて,部屋の様子がナントワナク見えるような気のする部屋,,,を階段に腹這いになったりして見ている中に,,,と言っても,結局は何も見えはしなんだが...、小柄なIが、冷えたのか下痢ピーをしてしまって、それもガマン出来ずに,階段、廊下と点々とやったから,,,誠にバッチイ一夜となったのだ。

我ながら、これだけが修学旅行の思い出とは情けない,,,と言う自覚と反省があるから、私は3年生諸君に、質問形式で色々と問うてみた。

大体が「修学旅行」と言うものは,世界広しと言えども日本においてのみ行われているものなのだから,終わっての結果が”旅館での枕の投げ合いだけが思い出だ”なんて言うのでは困るのだ。

それで私は,卒業を控えての皆さんだが,卒業とは何だと聞いたが、これが答えがない。そもそも【卒】とは終わることで、だから卒業とは「規定の授業を学び終わること」なのである。

因みに卒論なるものがあって、これはもちろん卒業論文のことだが,今時の学生の卒論には碌なものがない、と諸大学の先生がなげく。私に言わせれば,それは当たり前で,,,,と言うのも「卒業論文」と縮めずに言えば,卒業の際に提出する論文、と言うことになるが、【卒】には,にわかに、とかあわててとか言う意もある訳で、つまり『【卒】論』と言うことになれば,当然あわててでっち上げた代物となるではないか,,,、何を驚く必要ありや?、土台縮めなさんな!と言うのが私の常の言い分である。

それは,それとして,今の中学校は大方、東北旅行で、私は盛岡や花巻に行ったら、向こうのものも食べておいで,,,と、例に「マタタビ」を出すと、「マタタビと猫」の関係を知っている者は何人かいたが、「えっ、人間が食べられるの?」と相成った。それで、「マタタビ」を食べると元気が出て,『又,旅が続けられるからマタタビと言う位だよ」と説明すると皆どっと笑って,ある者なぞは「悪い冗談だよなあ」とまで言う。

ところで経験から言うと,無知な人間程,自分の思いも及ばぬ事柄には、どっと笑って「まさか!!」と言う。私はこう言う人達を「まさか」へのお返しとて、「かさま族」とひそかによんでいるのだが,先日も、7・8人の娘っ子を相手に話しをしていて,何かの話しから、「インディアンのイロコイ族がなあ,,,」と言いかけたら,この連中、どっと笑った。Mなぞソプラノで笑った。その笑いが腑におちぬので、「どうした」と聞くと、矢張り「まさか!!」で「色恋族」などいる筈がない、と口を揃えて言う。

「いや、それがいるんだ。スペルはな、IROQUOISだ」と言うと、Aが、それじゃ「イロクオイ」じゃないの?、と言う。美人な上に英語の先生で、海外経験も豊かなAにそう言われりゃ、「こちらの発音が悪いー」と私も内心小さくなる。

と言うものの本当は「何を小生意気な!!この無知無知娘等!!」と、私が怒ったろうと貴方が思うと大間違い。女性崇拝論者たる私は、こんな時でも「あーナント可愛い,,知的なムチムチ娘っ子達よと思うだけなのです。

とんだところへ話しがそれた。と言う訳で中学校の修学旅行に触発されて、今回は旅に関する本を並べましょう。「イン1 」は面白い.ロンドンはヴィクトリア駅の宮殿のようなグロヴァナーホテルの朝食について、著者は文句をたれているが、私にも同じような経験があるから、今やイギリスでジョンソン博士の言う「朝食は豪勢に」との思いは夢だろう。

「亭主―酒場と旅館の文化史ー2 」は随分と面白そうだが、意外と面白くないぞ。

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話が雑過ぎる、とは言え、類書がないのだから仕様がない。「トマス・クック物語3 」は各駅停車並の600ページの大著。そんなもん読んでられるか!、と言う忙しい人には特急並みの、「トーマス・クックの旅4 」を勧めておく。これなら直ぐ読める。

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さて、男尊女卑の江戸の世に、女は旅が可能だったのかも、大事なテーマ。これに答え得る出色の旅日記を基に書かれたのが「姥ざかり花の旅笠ー小田宅子の「東路日記」ー 5」この破天荒な活発女,ナント高倉健の5代前の先祖由。これを読んだら「ホタル」も観よう。

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皆さん,大人になっても【修学】旅行しなければなりませんぞ


  1. 白田昭.インイギリスの宿屋の話.駸々堂出版(1993) []
  2. ウラ・ハイゼ石丸昭二訳.亭主―酒場と旅館の文化史.白水社(1996) []
  3. ピアーズ・ブレンドン石井昭二訳.トマス・クック物語-近代ツーリズムの創始者.中央公論新社(1995) []
  4. 本城靖久.トーマス・クックの旅.講談社現代新書.(1996) []
  5. 田辺聖子.姥ざかり花の旅笠.集英社(2001) []

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