`05.10月17日寄稿
室蘭民報に毎月2回(日曜日)載せている「本の話」第413回(下参照)で、私は学習院女子大学助教授、今橋理子(りこ)の「江戸の花鳥画」研究三部作についてふれた。すると、暫くして、洋書の丸善が出している、古くからある雑誌で、「学鐙(がくとう)」の秋号に、今橋の「江戸の花鳥画の時代(とき)を求めて」なるエッセイが出た。今橋は、16年前に始めた「花鳥画」研究を回想しながら、18世紀の江戸で、ヨーロッパと同様に「博物図譜』が制作されたが、花鳥画研究のためには、これらの図譜への検証が必要だと学会で訴えたところ、「博物図譜」なんてものは、「美術品」と呼べるのか?と大先達から反論されたと述べ、それを嘆きつつ、現在開かれている二つの「植物画」展についてふれ植物画=ボタニカル・アート=博物画がかくも自然に「美術館」で鑑賞されるようになった今を喜ぶのである。
今橋があげた二つの植物画展は、群馬県立館林美術館での「植物画の世界」展と東京芸術大学、大学美術館での「500年の大系、植物画世界の至宝」展を指すのだが、既にこの二つの展覧会の図録を取り寄せて、楽しんでいた私は、今橋に手紙をだして、エッセイを読んだことを告げ「先生の本を愛読して来た身としては、さもありなんと思うことしきりでした。〜」と書いた。すると全く思いがけないこに今橋から返事が来て、それには東大出版界の編集者は、今橋の本の書評を地方紙も含め集めてくれたが、「室蘭民報」のものは気付かずに「〜まったくもれていました〜」とあり、続いて「〜とても好感をもって私の三部作品を共に楽しんで頂けましたことが、心底嬉しく思っております〜」とあった。
全部で便箋5枚の長い手紙をもらって、私も心底嬉しかったが、さらに驚いたのは2冊の本が同封されていたことで、それは「〜山下様の『ふくろう文庫』の活動の話、まことに感動的で、そして心より共感致しました。〜その思いを形にしたく2冊の本を同封させて頂きました。」と言うものであった。
その一冊は、今橋が専門家として寄稿している高松の大名、松平頼恭が編纂したと言われる鳥類図譜の「衆禽画譜」の復刻版、そしてもう一冊は、比較文学、比較文化学者、東大大学院助教授、今橋映子著「金子光晴、旅の形象ーアジア、ヨーロッパ放浪の画集ー」だで。
私は、おややと思ったが、それはやはり「本の話」第408回で映子の「展覧会カタログの愉しみ」(東大出版会)似ついて書いていたからだ。そして驚いたことに、映子は理子の姉だと言うのだ。
私は金子光晴が好きで、その葬式にも出た位だ(と言っても、たまたま卒業生の仲人で上京してたのが幸いしてだが)その時、誰かが入って来ると、全員が、いかにも敬意を払うと言う感じで立ち上がったので、誰かと思ってみると、谷崎潤一郎の夫人の松子だった。
ところで、映子の「異都情景.日本人のパリ」は抜群に面白い本で、中にマリー・バシュキルツエフのことが出てくる。なつかしい名前だと言うのは、私もかつて彼女のことを書いたからだその文章をのせる。
さて、今橋姉妹の本はさっそく「ふくろう文庫」に入れた 。まづはこの共に「サントリー学芸賞」受賞の2人の「才媛=高い教養を身につ耿子ている女性」に多謝,々々!!