第288回 蚊!蚊!蚊!の話

今日はお盆休みにの8月14日。金曜日。朝刊を見てびっくらこいた。

何かと言うと、「ガラパゴス観光地化、稀少種に蚊の脅威」なるヘッドラインで、イギリスのリーズ大学のサイモン・グットマン博士らの報告が載っている。読むと、かのダーヴィンの進化論で有名な南米エクアドル領のガラパゴス諸島に、観光客と共に蚊がやって来て、それが増えて、免疫のない亀・鳥などが蚊が媒介する病気で全滅するやも知れぬと言うもの。

この島に蚊が来たのは1980年代そうだが、何しろ、1820年代ハワイでは。外部から来た蚊のお陰で、鳥の間に、それまでなかったマラリアが広がった例もあるとて、要注意・・・と言う話なのだ。そして、その記事の隣に,あの奇怪な面構えと、あの触りたくもない皮膚と口を持つ、ウミイグアナの写真が出ている。えーっ??ウミイグアナまで蚊は刺すの蚊??(イヤ、マチガイ)刺すのか??

これには・・・びっくりこいたと言う所に戻るのだが,私はこれに刺されて(イヤ、マチガイ)刺激されて,久し振りに書庫から蚊の本を出して来て、ちょっこら季節外れかな?と思いつつ室蘭民報連載の『本の話』9月分2回目の原稿を仕上げた。

仕上げたけれども、字数の制約で、まだ書き足りない、書けない所が多々あるので、もう秋口なれども、今回は『蚊」の話でいく。おそらくは夏の間中、蚊に刺されたあとが沢山のこっているであろう皆様、そこをぽりぽり書きながら、或はなでながら耳傾けて下されよ!!

まずは「蚊の語源・・・簡単な説明をする本には、①貝原益軒編の「日本釈名(しゃくみょう)」(1700年刊)によって、「人のはだへ(=肌)を噛む(か)む虫他、を略す」。

②新井白石編「東雅」(とうが 1719年刊)によって「カとは齧也(かじるなり)カブレといひ、カユミというが如きは此物によりていひしと見えたり」・・・そして、ブーンと飛ぶから虫篇に文で蚊となった、なる説もあると。ところがそう簡単に行くもの蚊?イヤものか?派もいて、こちらに言わせると、蚊の語源は満州語のGalman或はプーイ―ロン


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ところで、その蚊退治となれば、あの禅宗の坊主が持つ「払子」(ほっす)。あれ、殺生は十悪の一つ故,蚊とても殺してはならぬ・・・蚊を追い払うためのものの由。まあ普通には蚊取線香をたく訳だが、その材料たる「除虫菊」はアメリカ原産の由。その「除虫菊」の種を取り寄せたのは、蚊取り線香の発明者で「キンチョール」の主たる,上山英一郎なる「大日本除虫菊株式会社」の創業者。最初の製品は,長さ20㎝、棒状で燃焼時間30〜40分位で明治23年作。それが明治28年になると,渦巻き型が完成。最初は(除虫菊+タブ粉+マラカイトグリーン+水)をこねて玉にし,これを20本の穴がある器から直系6㎜のうどん状に押し出す。それを女工が2本1組にして巻き合わせて,日干しにした・・・で・・・熟練工は1日に3,000〜5,000巻き作ったというから,驚き。これで火持ちが6時間。④2

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これが出来る迄我が祖先達は何をイブシて蚊を追い払ったか。ミカンの皮やらヨモギを燻(いぶ)した。

室工大の卒業生で我が家の飲み会では一番の酒豪だった市川君は今、郷里大分で高校の先生をしているが,彼から毎年「カボス』が送られてくる。すると,私はこのカボスを搾って熱燗にたっぷり注いで呑む。これが本当に美味い。余うまくて、ある晩なぞは我ながらハンカクサイとは思うけれども、7合も呑んだことが会ったが,悪酔いはしなかった。2級酒に入れると特急位の味に変わることは保証する。もっともこの使い方は邪道で,本来はフグ料理のためのもの。これの皮を昔は蚊いぶしに使ったので、「蚊無須」と名がついたのだと言う説がある。只,果物事典などには「臭橙」と出てるけどね。つまり,香りの強い(臭)橙=ダイダイ、と言う事だろうね。

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ここで一寸話を変えるが、蝙蝠(こうもり)は何故こうもりと言うか?こうもりは昔は”かは(ワ)ほり”と呼ばれた。これは、蚊を欲するところから来たもので、つまり「蚊ワ欲リ」が→「蚊欲リ(かほり)」→「こうもり」になった訳。そしてこの漢字読んで「へんぷく」は羽を広げる様子で、中国人がこう形容して、この字になったそうな。

別名「蚊食鳥」のこの「こうもり」のおかげで食べることの出来る(と言っても我々には無縁だろうが)料理がある。料理と言っても,酢をかけて食べるだけのものだが,食べるのは「蚊の目玉」。これ蚊を食べまくっているコウモリの糞を集めて水にさらす。糞は流れる。・・・と目玉は消化されずに残っているので、これを集めて,酢をかけて食べる・・・そうな。舌ざわり、歯ざわりを楽しむ料理と言うが、ハタハタの卵子の極小のを食べるような感じなのかなあ。

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料理と言えば、中国の李時珍(1596)が言うには、スッポンだの亀だのは蚊を恐れるので、スッポン料理を作る時には、蚊を数匹、鍋の中に入れてやると、スッポンがやわらかくなると。ウヒョー!!スッポン、亀まで蚊が刺すとなれば、やはり、ウミイグワナとても、やられてしまうのか。とてものことじゃ「蚊」なわないな。

逆に、免疫が出来て、ウミイグアナが「進化」したりする蚊もな!!。蚊蚊!!(イヤ、マチガイ呵呵!!)

  1. 奥井一満・いい虫わるい虫・国土社・(1983) []
  2. トンプソン著小西正泰訳・歴史を変えた昆虫たち・思索社・(1990) []
  3. カール・フォン・フリッシュ 桑原万寿太郎訳・十二の小さな仲間たち・思索社・(1978) []
  4. 岡本大二郎・中獣除けの原風景・日本植物防疫協会・(1992) []

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