第448回 渡辺 京二  ジョー・プライス他

2023. 7. 9.寄稿

6月に入ってからの報道だが、栗田勇(くりたいさむ)が5月5日に、老衰で死んだと出た。93歳。作家、評論家、と紹介された後に、「仏文学者としての顔を持ち,”ロートレアモン全集”の個人訳を手がけた」とある。

この人、実は私が大学に入って取ったフランス語の先生だった。その著作、例えば「一遍上人」(芸術選奨文部大臣受賞)「わがガウディ」「芭蕉」等殆んど持っているが、それらを置いてある2F書庫が,たまりにたまった本で足を入れることができないので、今は書影を示すことが不可能。それで、思い出だけを書いておく。

最初に「ロートレアモン1」(1840−70)本名はイジドールデュカス。詩人。19世紀象徴派の先駆として傍系に位し、文壇的には孤立、生前には全く無名。作品には散文詩集「マルドロールの歌」で、次は

「マルドロールの歌」、60の散文詩をを集めたもの。主人公マルドロールは悪の化身として神への呪詛を行動に表し、絶望と、不安と、恐怖との異常な感覚が全編にみなぎっている。各詩は長編小説の乱雑な断片の如く。何れも強靭な文体で青年の反逆を主題とするが、内容、文体の2点に於いて、ランボーと共に現代文学に大きな影響を与えた」(上記の解説は「東大フランス文学会」編「フランス文学辞典」(昭和30年全国書房刊)から

この「マルドロールの歌」を私は高三の時に知った。その頃アンドレイ・ジッドを青柳瑞穂訳で読んでいたのだが、その青柳が「マルドロールの歌」を訳している分かったので、取り寄せたのだ。その豪華版をここに見せたいが大きな本で、書影をとるには無理だから、代わりに栗田の小さな本と、表紙が面白のでエトワール・ペルゼの「ロートレアモンの生涯」を出しておく。さて、私は理解したかどうかはともかく、青柳によってロートレアモンを知って、今調べたら、関係書を10冊程読んだのだった。

そして明治学院大学英文科に入って、第2外国語としてフランス語を選んだのだが、先生が誰か何てことは、全然気にしちゃいなかったから、最初の授業に現れたどっちかと言うと小男に属する男が「栗田勇」と名乗った時は「アリャラ」思ったのだった。にこりともしない人で、授業は面白くない。それが原因かどうかは別として、私は一応Ⓐをもらったがフランス語を習ったと言うことははっきりしているが、フランス語を物にしたと言う方には自信がない。その「にこり」ともしない栗田は最前列に座ってた女子学生にたまに「にこり」とした(様な気がしたが)後に聞いた所ではこの女子学生と結婚したそうな。と言う訳で、この私の思い出は話は聞いてなんのためにも「ナンジャラホイ」みたいな話だが、私にとっては一応思い出だ。I am sorry !!

「週刊朝日」が休刊となった。それで23.6.9「休刊特別増大号」を買って来た。「日本最古の総合週刊誌」だと言う.101年続いたからたいしたもんだ。私自身は熱心な読者だったとは思ってないが、51年から始まった書評欄「週刊図書館」は出来るだけ目を通す様にしてきた。もう一つ楽しんだのは,1976年から2021年までの45年間続いた「山藤章二」の「ブラックアングル」。これは毎年、朝日から出版されたので、ここには「カラー版似顔絵2 」を出しておく。この週刊誌50年代は150万部超の売れ行きだったというからすごい。まあ時代の変化としか言いようがないな。

ある時、室蘭工業大学のS教授からTELが来た。Sは佐賀高専を3年で出て、東大に編入学し、その後、室工大の機械科に来て教授となった人。本好きという点で、私と仲良くなり、「ふくろう文庫」にも寄付してくれている人だ。TELの要件は「最近何を読んでも面白くない、読書欲がどんどん失せていく。これを直すのに何か面白い本を教えてくれ」云々。

それで、私は、熊本にいる人だが、「渡辺京二」という人を知っているか?と聞いた。すると、初めて聞く名だと言う。それで私は渡辺京二の「逝きし世の面影3 」(今、平凡ライブラリー¥2090)を読むようにと伝えた。これ「和辻哲郎文化賞」を受けた名著でこのタイトルは石牟礼道子の発案だという。

渡辺京二は昨2022年12月25日老衰のため92歳で死去した。生まれた時から本好きだとて、「桃から生まれた桃太郎」をもじって、「本から生まれた本太郎」と名乗っていたそうだ。因みに渡辺は子供の時に読んだ本で一番好きな物は「ブルターク英雄伝」だったと言う。これを知った時、私も嬉しかった。と言うのも私も「鶴見裕輔」(鶴見俊輔の父)の訳した「プルターク英雄伝」が大好きだったからだ。渡辺は法政大学を出てから「日本読書新聞」編集者を経て、戦後に母の故郷の熊本に戻った。この新聞は私も学生時代から毎号読んでいたが、今はない。熊本に戻って地域誌の編集をしていた渡辺は水俣に住む主婦を世に出した。「苦海浄土」の石牟礼道子だ。そして自らも「水俣病を告発する会」を結成して、窒素と闘った。渡辺の本はとにかく面白い。ここには大佛次郎賞を受けた「黒船前夜4 」を出しておく。そうだ、序でに「女子大生渡辺京二に会いに行く((渡辺京二. 女子大生渡辺京二に会いに行く.」も勧めておこう。忘れるところだった、S教授は渡辺を知って、とても良かったとTELをよこしてたな。

ジョー・プライスが2023 4.13日に93才で死去した。伊藤若冲を見つけた人だ。東大の辻恒雄名誉教授は次の如く語ってプライスを偲ぶ。「日本人が忘れていた天才画家、若冲のすばらしさを思い起こさせたと言う事、これが、プライスさんの大きな功績です。申し訳ないことに私の事を、若冲を現代に甦らせたなどと言う方がおられますが、実はタッチの差で、三つ年上の彼が、第一発見者だったと思います。」「プライスさんは作品をみせることで、私は”奇想の系譜”などの文章を書く事で、二人三脚の様に若冲キャンペーンを続けたわけです。」〜。と言う訳で、プライスコレクションがどんな物だったかを知る事が出来るDVDBookを紹介する。又辻の本は有名だから今は別の1冊を出しておく。わたしが好きなその全集も持っている「森 銑三」の「若冲小録」を筆頭に凄いメンバーが書いている一冊だ。澁澤龍彦他「若冲5

今回は「そのうちに書く」と予告していた渡辺京二のことと気になっていたプライスを書けて気が済んだ。もう一つ、先に渡辺が子どもの頃に読んだ「ブルターク英雄伝6」にふれたが、今は鶴見俊輔訳は無いので、代りに今入手可能な澤田謙訳を出しておく。

 

 

  1. 栗田勇.ロートレアモン.人文書院(1980) []
  2. 山藤章二.カラー版似顔絵 .岩波新書(2000) []
  3. 渡辺京二.逝きし世の面影.平凡ライブラリ(2090) []
  4. 渡辺京二.黒船前夜.洋泉社(20019) []
  5. 。澁澤龍彦他.若冲.河出文庫(2016) []
  6. 澤田謙.ブルターク英雄伝.講談社文庫.(2012) []

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