第449回 「茶色の朝」「狭山事件」「ポール・ヴァーセンの植物標本」

2023.8.15 (日本敗戦の日)

私はスマホなるものを持っていないので、日常、インターネットの世界とは全く関係を持っていない。ところが,そのインターネットの世界で。「ナチスは良いことをした」と主張するバカ(としか私には思えないが)が増えているそうな。そこで、この風潮に危機感を抱いた2人のドイツ現代史家が本を出したとの知らせを読んだ。その本は「検証、ナチスは”良いこともしたのか”?」。現代史家とは小野寺拓也と田野大輔、岩波から出ている「岩波ブックレット」として出た。今注文しているが未だ届いていない。それを待っている間に「ヒトラーのための虐殺会議」を観た。全112分。マッティ・ゲショネック監督。

世に「ヴァンゼー会議」と呼ばれた有名な会議がある。「ヴァンゼー」とはベルリンにある湖の名。この湖畔にある大邸宅に1942年1月20日、ナチス親衛隊の偉いさんと事務方15人が集まって開いた会議だ。議題は「ユダヤ人問題の最終的解決」。つまり当時ヨーロッパにいた1100万人のユダヤ人をこの世から抹殺するための方法は何かを探り、結論する会議だった。結果600万人のユダヤ人が消されたことは読者既に知るところ。DVD屋にあるから、借りて観るべし。

これを見た人にすすめたい本がある.435p+24pの大冊で20年余り前に読んだ時私も疲れたが、この問題に疲れたもへちまもない。ゲッツ・アリー著、山本尤+三島憲一訳「最終解決ー民族移動とヨーロッパのユダヤ人殺害(( ゲッツ・アリー著、山本尤+三島憲一訳.最終解決ー民族移動とヨーロッパのユダヤ人殺害.法政出版局(1998))) 」法政大学出版局(1998年刊¥4700+税)気合を入れて頑張って読んでくだされ。

「司書独言」の方にも書いたが「未曾有」も読めない。無教養な麻生が、台湾くんだりまで行って「戦う覚悟が」必要だと言った。然しこれ、笑って済ませるまことではない。ナニシロ、岸田は今や憲法9条を無視した挙句、「敵地攻撃能力」やら「反撃能力」だのと大きな顔で言っている。その上更にあきれたことに増えている「防衛費」を補うために「国債」がいいか、それとも増税がいいかなんてことまで国民に問い始めている。国民もこれにのせられて、「9条を守るべき」「国債」「増税」問題外とやればいいのに、そうはしないで、もう一度言うが「国債」「増税」の論にとりかかっている。岸田の思う壺にはまっているのだ。こうして気づいたら、戦争が目の前に立っていた」となる訳だ。

「国債」といえば前の対戦に負けた時、それはただの紙切れとなったのを覚えている。確か「国民学校生徒のおこずかいで、買わされた「国債」もあったのではなかったか。

私は見ていないが。タモリが「新しい戦前」と言ったらしい。そん予言ももう古くなっているかもしれんぞ。「新しい戦争」がもう其処に来ているかもしれんぞ。ここに、いつの間にか、生活にしのびよるファシズムの姿を描いた本がある。「茶色以外の猫や犬を飼ってはいけない」のお触れが出て〜。「茶色の朝1 」「国債」なんてものを買う金があるなら、その前にこの本を買ってみて!!。

「袴田事件」の決着がまだつかない。検察側に「いつまで人をいじめるのか」と言ってやりたい。この事件のニュースは全部切り抜いてファイルにしてあるが、そんな折、岩波書店の広告で、鎌田慧の「狭山事件の真実2 」が「岩波現代文庫〉として再刊されたと知った。(¥1815)これはおそらく、昔 草思社から出て「狭山事件〜石川一雄、四十一年目の真実」の新版だろう。ここに書影を出すが、表紙裏の帯には「なぜ・石川一雄は自白したのか、なぜ死刑判決まで全てを認めたのか。なぜ、第二審になって、突然否認したのか。

獄中31年7ヶ月・仮出獄から10年。どん底から最高裁へ放たれた無実の訴え」とある。この事件を知る若い人はいないと思うが、この本は読むべき大変な本だ。一読を薦めたい。ところで、この事件を私が最初に知ったのは亀井トムと栗崎ゆたかの本からだった。

「14年間隠されていた”埼玉県警の事件前のなぞのうごき”が初めて県警内部からの証言によって明白になる。虚為の決定をした県警本部長らの行動と意味」云々と紹介する「週刊現代」や「週刊朝日」の書評で知って取り寄せたのだった。今、出して開いてみると、1999年7月9日(木曜日)の「室蘭民報」の切り抜き他が挟まっていて、「狭山事件に新事実!万年筆はなかった証処42集に疑惑、元警察員が新証言」などとある。ついでだからこれも出しておく
「狭山事件無実の新事実3

重苦しい話が続いたので、最後に気がスッとする本を出す。「ポール・ヴァーセンの植物標本4」だ。これをすすめてくれたのは、大学同期の渡辺純子さん。純子さんは染色家でイラストレーター。大学時代は新聞部で活動していた人で、ナマクラ学生の私とは出来が違う。その純子さんが「骨董市で偶然見つけた古い植物標本。それが一冊の本となり、堀江敏幸の文章と合わさっての素晴らしい本。東京大学博物館で標本貼りをしていた私には衝撃の一冊でした」との手紙を添えての一冊だ。

一寸と説明を加えると、骨董屋の飯村弦太がフランスの蚤の市で見つけた箱の中にポール・ヴァーセンなる女性の名と、100枚ほどの植物標本が入っていた。スイス、フランスの高山植物の標本だ。この女性と、その標本とを考証したのはフランス文学の堀江。そのまるで一つのを描いているような文章がすばらしい。純子さんならずとも「ショウゲキ」の一冊だ。

 

  1. フランク パヴロフ. ヴィンセント ギャロ.茶色の朝.大月書店(2003) []
  2. 鎌田慧.狭山事件の真実.岩波現代文庫(2010) []
  3. 亀井トムと栗崎ゆたか.狭山事件無実の新事実.三一書房(1977) []
  4. ポール・ヴァーセン.ール・ヴァーセンの植物標本.リトルモア(2022) []

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