第450回 コロナ戦争「秘闘」.水俣病と闘う医師.歯車にならないためのレッスン

2023.9.20寄稿

「新型インフルエンザ等対策推進会議」なるものがある。これ、新型コロナウイルス対策などを検討するところだ。

そこで、議長を務めた尾身茂が先日退任し、岸田に挨拶に行ったとのニュースが8月31日に出た。私はこの尾身をいつも「爺様」と内心呼んでいた。この「爺様」から、一度たりとも溌剌たる精気を感じたことがないからだ。

第一にあのしゃがれたと言うか、かすれたと言うかの全く通らない声。第2にその声での、もそらもそらと言うか、ごもごもと言うかのあのしゃべり方。私の小学校時代にあーゆうタイプの先生がいて、誰言うとなくそのしゃべり方を「風呂の中の屁みたい」と名付けた。その名付けの理由、意味は今、全く忘れているが、おそらく「つぶやくでもない」そのはっきりしないしゃべり方が「風呂の中でもらす屁」にそっくりだと、子ども心に感じたのだろう。

それはともかく、この「爺様」がコロナ対策に何か役たったのか、となれば、これは又はっきりしない。土台「爺様」は私の記憶では「ポリオ」の専門家でコロナについては素人だった筈だ。一方田代(たしろ)と言うころなの専門家が「爺様」について語った言葉が、田代の弟子だった岡田晴恵の本に出ている。「爺様」と共に厚生省に重んじられた岡部についての発言だ。「彼らは今も役所の肩書きを背負って〜僕にはあんな御用学者は出来ない。

岡田といえばコロナ発生時、「池袋大谷クリニック」の大谷義元とテレビによく出ていた人だ。大谷は元東京医科歯科大の准教授で肺炎のエキスパート、岡田はウイルス学者。この二人テレビに何故か出なくなったが-そのあたりのいきさつも岡田の本にくわしい。

岡田の本で一番呆れるのは「AED」に関する所だ「AED」とは「抗体依存性感染増強」のことで「体内にできた抗体によって、かえって感染や症状が促進される現象」の由。岡田は「コロナワクチン開発において、このAEDが一番恐るべき副反応だった」と書く。ところが「爺様」からTELが来て、「岡田さん AEDって何?〜BRDってなに?僕は細かいことは全くわからない、それはね誰かもっと専門の方にね、そういう人に聞いてくれないとね」だと。そこへ厚労大臣の田村から、「厚労省でAEDがわかる人、がいないわからないみたいです」とTELが入って-後略

これ以上素人の私が話を進めるよりは、一刻も早く読者自身で岡田の本を読んで、是々非々を判断してほしい。コロナについては「安部政権コロナ経済対策の大ウソ」と「コロナ感染爆破の全内幕」(2冊とも宝島社、2020年刊、¥980+税もあるが)岡田の本だけで十分だろう。「秘闘1

9月10日のニュースだが、「ノーモアミナマタ、第二次熊本訴訟」が8日熊本地裁で結着した由。弁護団は「不知火(不知火)海岸地域住民の健康調査すら行わず被害者を直接診察したことのない医師の証言を採用するなど”被害の実態に”即したものではない」と言う。患者の数は計144人。来年の3月22日に判決が出る由。さて、その水俣病に関して、佐高信の「原田正純の道2」を出す。私はこれ、名著だと思う。佐高が原田の心の襞に迫っていく過程が優しさに満ちている。しかも正確で読んでいいて心から納得させられる。辛口で鳴る佐高だが心根は優しいのだろう。

佐高と言えば、昔、私は佐高に褒められたことがある。信じられない、そんな話はうそだっぺと思う人は佐高の「田原総一郎とメディアの罪 (( 佐高信.田原総一郎とメディアの罪.講談社文庫(2009)))」をみてくだされ。

⎯ 第3章政経外科p177より

室蘭市立図書館長・山下敏明さんへの手紙

図書館という「知」の開放に喝采です

拝啓 山下敏明様

憲法行脚の旅の途中で、山下さんに逢えたのは望外の幸せでした。紹介してくれたのは,室蘭の地で米屋を営み護憲の集いを企画した増岡敬三さんですが、増岡さんにも感謝、感謝です。

室蘭に生まれ、商社マンから転じて室蘭工大付属図書館に勤務し、定年後に市民の熱望で室蘭私立図書館の主となった山下さんの話で、一番ショックだったのは、首都圏のある市立図書館で、市民のリクエストに応えてということで、渡辺淳一著「失楽園」を上下200冊ずつ、計400冊買ったということでした。その図書館には今も400冊が並んでいるのでしょうか。それともブームが去るとともに《処分》されたのでしょうか。もちろん、山下さんはそんなことはしません。図書館でしか買えないもの、あるいは図書館がそろえるに値するものを選書すると言っていましたが、そうした基本的機能を維持している図書館は、残念ながら少数派なのですね。

司書になりたいと研修に来る学生たちが、大江健三郎も司馬遼太郎も松本清張も知らないというのも驚きでした。知っているのは、女子学生の場合(吉本)ばななと(さくら)ももこぐらいだとか。何よりも本が好きで司書を希望しているのではないというのにガックリですね。

自宅にテレビも置かず電話も引いていない山下さんが、ひたすら本にのめり込んでいる様がヒタヒタと伝わってくる山下敏明著「本の話」(室蘭民報社)は本好きにはたまらない本です。

例えば「大学図書館の開放」。1985年の夏に「朝日新聞」に東京の国立に住む市民から、アメリカではいつも近くの大学図書館を利用していたが、帰国して近所の国立大学に行った所、門前払いを食ったという話をマクラに振って、山下さんは当時勤めていた室蘭工大の図書館の開放に踏み切ったと書いていますね。その間のお役人の責任逃れは措くとして、準お役人の大学教授たちの権威主義もお笑いでした。ある教授は、利用するには教授2名の紹介状を必要とするとしてはどうかと提案したとか。それに対する山下さんの次の指摘に私は拍手喝采しました。

「この条件では図書館に来るなと言うに等しい。さらに教授の紹介もしくは保証と言うものに、それこそ何の保証もありません。以前ある教授の紹介、保証付きで、さる企業のお偉い方が専門書を4冊借りて行きましたが、両者とも甚だだらしのない人で返却してもらうために並々ならぬ苦労をしたことがありました。また身分証明書の提示、職業の明記といった意見もありました。しかし、主婦を始めとして身分証明書の類を持たぬ人は大勢います。また定年退職者や、たまたま失業中の人にとっては、無職と書くのはやはり寂しいいことに違いありません。土台、税金で成り立っていて、それ故当然、国民への知の還元を旨とする国立大学が、自ら敷居を高くして権柄ずくに振舞うのは見苦しいだけのことです」

ここに山下さんの知に対する姿勢、あるいは人柄がよく出ていると私は思います。それにしても「憲法9条の会」呼びかけ人では最も知名度の高いと思われるノーベル文学賞の大江さんでさえ、若い人には「オオエ・フー」(大江って誰)という状況だとしたら、「憲法行脚の会」を進める私も若い人向けの戦略を練り直さなければならないかもしれません。⎯

森達也の映画、「福田村事件」が完成したと報じられている。この事件は関東大震災(1923年9月1日)に起きた事件だ。関東大震災で多くの朝鮮人が殺されたことはそれを否定する小池都知事や松野官房長官は別として知性ある日本人なら皆知っていることだ。この時、千葉県葛飾郡福田村(現野田市)でも同様の事件が起きた。但し、殺されたのは朝鮮人ではなく、行商人の一行だった。その一行は香川県の被差別部落の人たちで、総勢15人。そのうち9人が殺された。9人の内には4歳と2歳の幼児もいたし妊婦もいた。朝鮮人ではなかったけれども、彼らの話す讃岐弁(さぬきべん)が日本人と違うと、決めつけられたのだ。香川から来た人たちから見れば千葉弁の方こそおかしかったろうにね。ここに、森の近著を出す。「歯車にならないためのレッスン3

本著で森達也は、最近しきりに使われるようになっている、いわゆる「同調圧力」に加わるな、と口すっぱくしていう。その上で、森はオウムの麻原を死刑にすべきではなかったと説く。麻原を処刑にしたのでは、麻原がめざしたことの本質が分からずじまいになってしまうからだ。私はこれは正しいと思う。因みにこの時死刑執行命令書にサインをした上川陽子法相は、前日あのアベらと共に酒席を設けてこの女の発声で「万歳」したと言う。私も森と同じく麻原を治療して、麻原のサリン攻撃の目的は一体何であったのかを追求すべきだったと思うがね。麻原を追求すべきだったことを説くのは森だけではないことを知るために。ここに別の本を出す。私は見ていないが、「NHKスペシャル」を本にしたものだ。NHKの記者たちが取材後一様に感じたのは、しかも強く感じたのは「オウム暴走の動機」に迫りきれなかった裁判の結果に対する落胆であった」つまり、麻原の動機を聞かずに先に殺してしまったのではダメという森達也の主張と同じところに立つ不満なのだ。本書を読んで私が一番呆れたのは坂本弁護士一家の遺体が発見されたのは、サリン事件が起きた後だったと言うくだり。本当に麻原は何を狙っていたのか、本人の口から聞きたかった。

前号で書名だけ上げた本を足す。9月19日のニュースだが第2次大戦で、ヒトラーはユダヤ人大虐殺=ホロコーストを実行した。ところが、これを当時ローマ教皇ピウス12世が知っていて黙認したとの資料が見つかったというのだ。新資料はピウスの秘書を務める神父に宛てて書かれた手紙で、ポーランドのペウシュッツ強制収容所で1日あたり、約6000人のユダヤ人やポーランド人が殺されているとしらせるもの。
「検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?4
さて、本書「微に入り細を穿つ」の、言及せざる所なしの良書。真の学者の論評とはかくも素晴らしいものかとおどろかされる。

  1. 岡田晴恵.秘闘 .新潮社(2021) []
  2. 佐高信.原田正純の道.毎日新聞社(2013) []
  3. 森達也.歯車にならないためのレッスン.青土社(2023) []
  4. 小野寺拓也・田野大輔.検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?.岩波ブックレット(2023) []

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