司書独言(242)

◯月◯日/ 今日は4月20日。「穀雨(こくう)」の日だ。これ「百穀春雨」が縮まったもの。

「たくさんの穀物=百穀』を潤す「春の雨」で24気の一つ。それで序でに高橋順子の文+佐藤秀明写真の名著「雨の名前」(小学館2001)¥2,520を見たら、意外や「穀雨」はなくて「黒雨(こくう)」があり「工業地帯や都市の煤煙を含む雨,又は空を暗くして降りかかる豪雨」と余り有難くない雨が出ている。えらい違いだ。私がこの本を名著と言うのは、説明文が多いのと添えられている写真が実にいいのだ。どれも惚れ惚れする出来だ。

○月○日/ 私はもう一冊の「雨辞典」レインドロップス(つまりは雨のしずく)編者(北斗出版2001、¥2500)を日常使っている。これは「雨の名」だけでなく、雨全般を扱っているもので、先の「穀雨」は「日本の雨の表現」の項にまとめられ、前の頁には「美肌は水がつくる?」とて「美肌に良い都市」があり、後の頁は「アイヌの天候表現」と言った具合。特筆すべきは各項目に参考文献がついている事。これ全部集めたら千冊?になろうかという量だ。それを見ているだけで面白い。

○月○日/ 序でだから「百穀春雨」も見ておこうと「用例でわかる四字熟語辞典」(学研2005¥2,000)に当たったらこれは出てなくて、「百発百中」のあとに「氷肌玉骨」(ひょうきぎょうこつ)が出ていて、「氷肌」は氷のように清らかな肌、又は、寒中に開く白い花のイメージから梅の花、「玉骨」は高潔な風姿の形客で、つまりは「美しい女性の形客」で似た語としては「明眸皓歯」だと。「氷肌」ときては雪降る季節には余り抱きたくない感じ。まあ「明眸〜」の方は知ってたがひゃっこい身体の方は知らなかった。引いてみるもんだ。

○月○日/ 3月末のニュースにポップアートの代表格、米のアンディ・ウォーホルの(1928〜1987)の作品が23億円で落札されたと出た。国内では最高額だという。ポップアートは1960年代にニューヨークを中心に起きた前衛芸術運動で漫画も映像も取り入れて人気が出た。アンディ・ウォーホールについては加藤周一が書いてたなと、全3巻の「夕陽妄語(せきおもうご)」(ちくま文庫2016,¥1200)を探したが今手元に③しか見つけられぬのでその紹介は又にする。今回23億円作品のテーマはエリザベス・ティラーの顔だ。

○月○日/私はティラーのキンキン軋むような声と喋る前に一寸舌打ちするような感じの唇の動きが嫌で、ファンではないし、むしろ大根役者だと思っているが、まあ、リチャード・バートンと組んだ時のクレオパトラ役は流石に見せた。とは言うものの、この女優はむしろ、ウォーホルの作品に描かれた事で、歴史的に有名になるのではなかろうか。因みにこの1963年作の「Silver  Liz」は1m四方の大きさのシルクスクリーンだと。

○月○日/ 「ムーミン物語」の著者の伝記映画(と言っても全生涯ではなくて「ムーミン」誕生から次第に有名になっていくまでを描いた「トーベ』」を観た。私は「トーベ」の名は知っていたが、「ムーミン」を読んだ事はない。何の知識も先入観もなく観たが、その人間関係にかなり驚いた。まず市長の娘で舞台演出家ヴィヴィカとの同性愛、政治家で哲学者で妻君のいるアストとの不倫etc仲々複雑だ。監督のザイダ・パリルートは「トーベの人生を全部書こうとしたら10本の映画を作れる」と語る。いい機会だから、ムーミンを読んでみようかと図書館の児童文学辞典をみたらその記述の段階では未だトーベは生きていて最後に私が貼った死亡記事が貼ってあった。

○月○日/私は辞典に出るような人間が死んだらその死亡記事を切り抜いて図書館の本に貼ることを続けている。今時スマホでやりゃいいじゃないかと言われそうだが、それは個人的な作業で、多くの人が見る図書館の本には最新情報は載ってないから私がやっている作業が必要だ(と私は信じている)。死亡記事で辞典の記述を完結させるのだ。

○月○日/ 新聞の「放送時評」を読んでいたら、倉本聰(脚本家)の事が出ていて、今87歳の倉本が「生きているうちにしたい事、7つの中に,「おふざけタレントをテレビ界から放逐」があって、その名の所の音は消されていたとある。只それが①大物芸人である。②長くテレビに君臨し続けている。③俳優としては大根らしい、、、etcで(余計な事だろうが)私はこれビートたけしだと思う。昔私はタケシの映画を評価するのはタランチーノくらいで私に言わせるとその演技も見るに耐えず、台詞に至っては罵り言葉の連続で云々と書いた事がある。

○月○日/倉本と言えば何時だったか某ホテルの創業記念パーティで会った事がある。ニコリともしないでおっかねえと思ったもんだ。その時記念の色紙が配られたが、後で私のかかりの新聞社の人が欲しがったので呉れてしまった。文句は忘れたが、何か2文字書いてあったな。

○月○日/テレビに出ているタレントに腹を立てている人に科学史家の村上陽一郎がいる。近著「エリートと教養」(中公新書ラクレ)で芸人の「含羞」のなさを怒り、日本語の乱雑さを憂いている。

○月○日/ 私は先月の「あんな本・こんな本」で外交手腕ゼロのアベおかげで千島列島他日本の領土を失った話を書き、そんなのに「たかり専門」の田崎寿司郎が「アベはプーチンと合わせるのがうまいんですよ」とベンチャラを振る話を書いた。この無能なアベについて実に小気味の良い批判を見つけた。4月14日朝日の「なぜロシアは力ずくか」のインタビューに答える前北大 スラブ・ユーラシア研修センター長の岩下明裕の論がそれ。「北方領土問題」について岩下は言う

○月○日/岩下は、「島の引き渡し云々は今の戦争とは関係ありません」として「この問題は安倍晋三政権の時に終わっています。残念ですが淡い期待は捨てて下さい。プーチン氏にすり寄って翻弄された,安倍外交の失敗を真剣に反省する事です。」(下線山下)アベの失敗はこれだけはっきりしているのに,当のアベは今ヌケヌケと核武装を口にしている。こんな能無しの(生徒会長すらも務まらぬような)男を支持する連中の愚かさは一体何だろうか。

○月○日/ これを書いている今日は5月2日。朝刊にウクライナのブインツキー農業食料副大臣の発表が出ている。それはロシア軍が占領したウクライナの領土から数十万トンの穀物を略奪した、というもの。えげつなくせこい事をするものだ。これで思いすのは、去年の一月に観た映画「赤い闇」。これポーランドのアクニエシカ・ホランドの監督で、彼女はアンジェイ・ワイダ監督の「コルチャック先生」の脚本を書いた人。

○月○日/「ホロドモール」と言うロシア語がある。これ「人工的な大飢饉」の意味で、つまり、スターリンが1933年世界的な大恐慌の中に、ロシア人を救うためにウクライナの穀倉地帯から大量の穀物を略奪してモスクワに送った。つまりウクライナ人は餓死し、ロシア人は生き延びた。この映画のテーマは「ホロドモール」だ。プーチンはスターリンのやったことを繰り返している。観るべし。!!

○月○日/ 新聞の投書欄に八王子の人から「ケーン、ケーン」と雉の声が聞こえる季節になった」とあって、その文章の最後に「雉は国鳥なのに保護鳥ではなくて狩猟鳥と知って驚いた」とある。言われてみると確かにそうだ。雉は1947年国鳥に指定されている。「万葉集」の解説などには「奈良時代の狩りの獲物は主にうずらとキジ」だなんて書かれているが、それが今でも続いているわけだ。減ってはいないのかなそれとも誰も獲らぬのか。

○月○日/ 5月4日の朝刊で上海からのニュースに驚いた。養老院でコロナで死んだとされた75歳の女を火葬場の職員が引き取りに行き霊柩車に乗せようとしたら、女が動いていることに気付き〜で女は病院に送られ生きている由。当局は養老院の院長他5人を免職にしたと。これ、つまる所、養老院が面倒見るのが面倒くさくなり放り出したと言うことか。恐っそろしい話だ。

○月○日/この記事の横にトランプのことが出ている.2020年「ブラック・ライブズ・マター」運動の時、デモ隊に腹を立てたトランプが国防長官に「あいつらを撃てないのか」とそそのかしたが当時のエスパー国防長官はこれを拒否して同年11月に解任されたと言うもの。同長官の回顧録で暴露されたと言う。私は、この記事、ボブ・ウッドワートの「恐怖の男〜トランプ政権の真実」にはさんだ。この著者、ニクソンを退陣させた「大統領の陰謀」の著者だ。

○月○日/ 養老院の話で思い出した。私が子供のころ父がやっていた料亭の板前の見習いに名前の意味は知らないが「ショッコ」と呼ばれる若者がいた。この男は中学生の頃らしいが、登っていた木から落ちて、打ち所が悪かったかして、死んだ。天理教の信者だったようだが、通夜となって、棺桶の中で生き返ってふたをを開けて出てきたと言う体験の持ち主だった。昔の死亡確認がどんなものだったかは知らないが、これが火葬場だったら手遅れだ。この話を聞くたびに皆笑っていたが、私は恐ろしかったね。気がついたら火の中だ!は嫌だね。

◯月○日/プーチンと一番近い日本人とかと持ちあげられていた柔道の山下(私と関係ナシ)がウクライナ問題が起きた途端に「それ程親しい訳ではない」とソッポを向いたのは見苦しかったが、それに輪をかけたのがアベだ。プーチンと27回も一緒に飯を食ったのを誇っていたのだから、すぐに出かけてプーチンに一言のたまえばいいのに、プーチンを見限ってウクライナの側に立つとはーとプーチンも怒っているに違いない。

◯月◯日/ 北海道新聞に「消えた四島返還」なる連載ものがあるが、山下がプーチンに日露関係の発展について触れると、プーチンが色をなして「何を言っているんだ、日本がやっていることは正反対だ。アベはロシアとの友好関係が大事で良くしたいと言うが、関係を悪くしているのはそっちじゃないか」云々、ウラジーミルはアベを信用していなかった訳だ。

◯月◯日/ しかし、こんな、日本のためにも世界のためにもならんアベにすり寄る人間がいるから世の中不思議だ。すり寄った人間は朝日新聞編集委員なる峯村健司。この男が「週刊ダイヤモンド」に妙なことを要求した。この雑誌にアベのインタビューが出る予定だったが、それが出る前に紙面を見せろと言ったと言うのだ。つまり、アベに代わって、このアベと親しい俺さまにチェックさせよと言う訳だ。しかもこの男「誌面を見てからのゴーサインは俺が出す」とも言ったそうな。新聞記者とは思えぬこの干渉ぶり。

◯月◯日/ この点についてジャーナリストの大谷昭宏は「記者(朝日)が単に権力と一体化(アベに頼まれて)するだけでなく、よそのメディア(週刊ダイヤモンド)の言論を弾圧しようとした点で、他の不祥事とは次元を異にします」と言う。

◯月◯日/ こっちは野球の大谷だ、鈴木だ、ダルビッシュだと連日米大リーグで活躍する日本人のニュースが出る中、トランプの事を思い出した。昨年大リーグの「インディアンズ」(先住民族)はチーム名を「ガーディアンズ=守護者」に変えた。これを聞いてトランプは「なんて不名誉な!チームの名前になるとは光栄じゃないのか」との声明を出したと言うから手に負えぬ馬鹿だ。どこまで人間性に欠けたやつだ。

◯月◯日/ 4月28日の月末休館日に「ふくろう文庫」の掛軸の掛け替えをしたのだが、一点、画面の中程が一寸反るのがあったので、隠れ画びょうで抑えようとしたが中々力が入らなくて上手く刺さらない。すると女子がカナヅチを持って来た。それが・・・5月3日の記事に画びょうを刺すのに力がいらぬ道具を発明した人の話が出ていた、この道具だと指で押している人が数枚張る間に、何十枚も張れるそうな。その人の名は山下具了(ともよし)。偉いなあ。私と関係ないけどね。連休明けにホームセンター、文具売り場、コンビニで売り出すそうな。買っておこう

2022.5.5       山下敏明

 

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