司書独言(214)

◯月◯日/私が国民学校(太平洋戦争中の、今なら小学校に該当)1年の時、我が家の一軒おいて隣に石川さんという町工場があった。遊びに行くと、何を作っている工場か知らなかったが、いつも何本ものベルトがビュンビュン回っていて、「手をはさまれるなよ」と注意されたものだ。名前は忘れたが優しい職工さんがいて色んなものを作ってくれたが、中に潜水艦があった。木製で底に鉄の錘がはまられていてゴム仕掛けのスクリューもちゃんと付いていた。銭湯へ持って行って湯船の端から動かすとおもむろに沈んでいって、バネが緩むとうまい具合に向こう端の直前で浮かび上がるのだった。

◯月◯日/こんな昔のことを思い出したのは、他ならぬあの麻生が潜水艦に乗ったと報道されたからだ。この男は「老後2000万円年金」でも、「前財務次官のセクハラ問題」の時でも、必ず国民感情を逆なですることを言う。今回もそうだ。「防衛予算の査定に当たって、現場環境を知っておくことは大事なことだった」と、さもさもらしいことを言い、記者たちに「自衛隊の私物化ではないか」と突っ込まれると、「考えたこともない」と言い、その上「現場を歩かずに書く社会部記者とは違うからな」と憎まれ口をたたいた。

◯月◯日/読んでいてはがゆいのは、この時記者連中はどうして即座に反撃できないのかと言うこと。例えば「現場に行きもせずに捏造した記事があると言うなら、その事件名と記事を例示してくれ」とどうして応酬しないのだろう。どこぞの市長が公用車に外車を買って批判される時代に、遊覧船に乗るじゃあるまいし、潜水艦にただ乗りする馬鹿は世界広しと言えども麻生しかいないのじゃないか。この品性下劣な麻生は、パーティ集金額では政界一番という。なら、潜水艦に乗るくらい自腹でやってくれ。

◯月◯日/防衛予算と言えば、「対人地雷禁止条例」が1999年に発足して以来、締結国は164カ国、地雷の製造を停止した国は41カ国になった由。とはいえ、どの軍隊も地雷は置きっぱなしにしていくから去年1年間だけで、アフガニスタンだのマリなどの含めての死傷者は6897人、その71%は民間人、かつそのうち54名が子供だと。やりきれぬ。題名は忘れたが、ナチが占領したフィンランド(だったか)で、占領地の少年達をナチの部隊の前に歩かせて、つまり地雷をふます役として使ったという恐ろしいい事実をテーマにした映画があったな。

◯月◯日/「経済協力開発機構=OECD」なるところが018年度の「国際学習到達調査」なるものをやった結果が出た。79カ国の15歳60万人を対象としたもので、日本の「読解力」は昨年の8位から過去最低の15位に転落した由。文芸評論家乙部宗徳によると、文部省の視学官で「国語」の教科調査官を併任している大滝一登なる男が書いた「高校国語・新学習指導要領をふまえた授業づくり・理論編」は乙部のまとめでは「企業で働くために役立つ人づくりを狙いとした本」だと言う。政権寄りの文部官僚の屁理屈が教育界でまかり通るんでは、国語力なぞ上がる筈がない。こんな愚論なぞ相手にせず、現場で教えるものが日本と世界の文学を読ませる事に力を尽くせば「読解力」なぞ自ずと身に付くものだ。長年、日常「読書」を事としてきた身として、「読書=読解力=作文力」なる事自信を持って保障する。

◯月◯日/文部省と言えば、例の「身の丈」発言でこけた荻生田を、これまた「例の」とつけたくなる桜井よし子がかばっている。桜井は「”身の丈”の何が問題なのか分からない」と言う。我々庶民からすれば、この「身の丈」を「我々のこと」と受け取ってムッとするが、桜井がそこを分からないのは、なにしろ「庶民」じゃないからだろう。一方「週刊新潮」は11月14日号で、「荻生田氏の〜”非行”は10代の頃から今に至る全く変わっていないようだ」との前書きのあと、例の「民間試験」について「同試験は、試験会場の交通費等、離島や地方が不利になる地域間格差がかねてより問題されてきた」と指摘する。

◯月◯日/ところが面白い事に、この同じ号で桜井は自分のコラムで先の発言をし、更に荻生田を「非常に心優しい」人物とし、その証拠に荻生田は「業者側にできるだけ近くに会場を作ってほしいと要望している」とする。問題は大学受験の「民間委託」がそもそも間違っているのであって、それをおいて離島の近くに試験会場を作ればいいという個別の問題ではない。どこかピントがずれてないか。真に心優しいなら「民間委託」は不条理だと最初から分かる筈だし、地域間格差や経済格差にも気付く筈だ。

◯月◯日/11月29日(金)の「北海道新聞」の「アイヌ民族ヘイト過激化」なる見出しの記事にはびっくりした。国連で「先住民権利宣言」が採択され、日本も賛成したのは2007年、それなのにこのザマ!思うにヘイトに加わっている人間は、よほど自分に自信が持てない不安な連中で、こうして人を貶める事でしか自分を保てないんだろう。

◯月◯日/お節介だが「先住民の権利宣言」の中身は次の如し。「先住民の自決,自治権や、伝統的に占有してきた土地、資源の所有権などを認め、国家はこれらの権利保護に向け、法的措置を含む必要な手段を講じなければならない」。まあこのヘイト連中に「対決対談/”アイヌ論争”とヘイトスピーチ」小林よしのり/香山リカ(創出版、2015年刊、¥500+税)を勧めたい。それと世界的視野から「固有のアイヌ文化」を論じた「蝦夷島と北方世界」(菊池勇夫編、吉川弘文館、2003年刊、¥3,200+税)も。◯月◯日/「アイヌ民族ヘイト」でびっくりするやらウンザリするやらしていたら、又々あいた口がふさがらない話を知った。10月末同志社大学で開催された「女性・戦争・人権」大会の2019年度大会で報告されたもの。前田朗(東京造形大学)によると、ここ数年に渡って、所もあろうに国連人権理事会や国連差別撤廃委員会などに、自民党の杉田水脈衆議院議員らが出かけて、言うに事欠いて「アイヌ民族はいない」、「琉球民族は日本民族である」などの主張を繰り返しているというのだ。正気の沙汰とは思えない。

◯月◯日/前田は「今は相手にされていないが、今後彼らに対抗する組織的な運動が必要ではないか」と言う。杉田と言えば以前「LGBTには生産性はない。そうしたカップルの税金を使うことに賛同をえられるのか」なる差別発言をし、これを擁護したエセ文芸評論家、小川栄太郎の言うもはばかる熊の文章によって、それを載せた「新潮45」が廃刊となった事件の当事者だ。この杉田、国会議員として国費を使って「アイヌ民族はいない」などの妄説を吐くために国連くんだりまで出かけているのか。本質的に愚かなんだろうな。

◯月◯日/そういえば「日本は単一民族国家」などと言い「私もアイヌです」などとも言った中曽根が没した。いつだったか、事が何だったか忘れたが、中曽根が国会で答弁の際、自分を指して「この顔が嘘ついている顔に見えますか」と見栄を切った事がある。皆黙っていたが、私には充分「嘘つき」の顔に見えた。しかし中曽根とても「嘘つき」と言う一点では安倍には勝てぬ。中曽根が死んでほめる人が結構いるが、私に言わせりゃほめる事などないのじゃないか!杉田については、私も今まで2.3度批判の文を書いたが、その批判の気持ちは強まるばかりだ。

◯月◯日/「桜を見る会」の話。既にこの欄で、2, 3度、芸人は権力を茶化す側に立つべきで、権力側に取り込まれてはならないと訴えてきた。西洋の道化にしろ、日本の幇間(=たいこもち)にしろ、名人の名に価する人たちは皆、内心は「反権力」が骨頂なのだ。土台何の功績あって招かれたか不明なタレント連中が皆ハシャイデいる「俺は内心反権力なのだけれど、なにしろ商売が”たいこもち”だからね」と自覚している者も、中にはいるであろうけれども、それにしても皆嬉しげ。

◯月◯日/デープ・スペクターもいる。以前モデルのローラが沖縄問題で反政府的な発言をした時に、彼女に噛み付いたのは確かにこの男。そうか、そういう事かと分かった感じだ。爆笑問題もいる。大柄な方が今になって、「安倍とのツーショットを消去できんかね」と言ったというが、内心いくらかは恥ずかしかろう。石坂ナントカも写っている。とにかくこうして呼ばれて、こうしてヘラヘラしていたんでは、コメンテーターを勤めるに当たっても、まともな事は言えんわな。由紀さおりなんてのも、これから童謡聞いても、安倍の真隣にいる姿が目にダブついて、私としては素直に聞けんね。

◯月◯日/私はやるだろうと思っていたら、道知事が「カジノ断念」と出た。その理由は「区域認定申請までの限られた期間で環境への適切な配慮を行う事は不可能と判断した」。但し、未来にわたってしませんでななくて、「来るべき時には挑戦できるよう所用の準備をしっかりと進める」と足している。さしあたりは良かったが、「道民7割反対」の7割はこれで安眠とは参らない。週刊誌報道では「苫小牧総合型リゾート推進協議会」の副会長はノーザンファームの社長で、あと社台ファームと追分ファームが加わる「社台グループ」がカジノ推進の黒幕の由。36号線走るたびに子馬が跳ねたりするのを見て「きれいな景色だなあ」と社台ファームを眺めていたが、見た目のきれいさとは違うのか。

◯月◯日/室蘭にいて残念なのは、映画はDVDで見られるから良しとして、演劇を見る事が出来ぬ事。過ぐる6月、劇団民芸が日色ともゑ主演で「闇にさらわれて」をやった。ヒトラーの部下が殺人を犯す。正義派の若き弁護士がヒトラーを召喚して3時間余り尋問する。これを根に持ったヒトラーは、政権をとるとこの弁護士を拉致して強制収容所にぶち込み拷問にさらす。これを助けようと権力と闘う母。これ実話だそうな。みたいねえ。これ英国で2014年に初演でローエレンスオリヴィエ賞をとった由。ローレンスオリヴィエとはまた懐かしい。

◯月◯日/そうかと思えばまた民芸の奈良岡明子が井伏鱒二原作の「黒い雨」の朗読独り舞台を7月に始めた。我が書庫には全10巻の「井伏全集」がある。井伏の全集は他にもあるが、なかでこの筑摩書房版は各巻のオビに文壇の大御所達10人のオススメ文がのっているということで、古書価の高い全集だ。それはさておき「原爆禍」を訴えるこの舞台も見てみたいね。もう一回そうかと思えば、2011年ノルウエーで極右の男が起こした銃乱射事件をテーマにした「あの出来事」が11月に上演されて、その主演が南果歩ときた。皆ガンバッテいるんだなと思う反面、つくづく困ったもんだと思うのが「桜を見る会」の馬鹿タレ(ント)共。

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