司書独言(231)

◯月◯日/ 5月23日、米の絵本作家エリック・カールが91歳で、マサチューセッツ州、ノーサンプトンの自宅で死去した.20余年前の事。私が室工大を定年になった年の6月に市立図書館に呼ばれて直ぐの頃、私の部屋で「読み聞かせの会」の女性達が8人程で打ち合わせ中で、丁度エリック・カールの話を始めた所だった。私は話には加わらず自分の机に座っていたが、その時私を訪ねて未知の女性が入ってきたが、その人を一目見て私は呆気にとられた。何故って、その女性は170cmはありそうな長身でかつ細身で頭にグリーンのターバンを巻き、スーツも上下グリーン一色のものだったからだ。わたしは本当に「はらぺこあおむし」が来たのかと思った。その人が来たのはこれっきりだからその名も用件も忘れてしまったが、うるさがたが揃っている「読み聞かせの会」の面々が一瞬どよめいたあと黙りこくってしまったことだけは今尚忘れていない。もっとも当の女性にしてみれば何故どよめいたのかは、思いもつかなかったろう。

◯月◯日/ この欄で今迄数度世界に共通するサッカーファンの行儀の悪さについて触れ、直ぐに騒ぎまくるファンは是非この本を読んで少しは勉強してくれと、陣野俊史著「サッカーと人種差別」(文春新書¥750+税)もすすめてもきた。ところが、5月29日ポルトガルの北部の都市ポルトで行われた男子サッカーの欧州クラブトップを決める決勝戦で又もや問題が起きた。この決勝戦を戦うのは共に英国のチームで、チェルシーとマンチェスター・シティ。コロナの最中、これを応援しようと英国人ファンが60機のチャーター機でポルトガルに来たと言うからすごい。

◯月◯日/ スタジアムの16,500人以外は街頭に出てマスクを無しで飲んだり、食ったり、騒いだりとなってこれを許した政府に非難が集中した。そして左派の党首マルティンスが「自国の市民に認めなかったイベントを他国民に許すとは理解し難い」と表明した。もっともだ。

◯月◯日/ 実はこれ迄は前置きで書きたいのはこれから。去年10月に封切られた「キーパー・或る兵士の奇跡」なる英独合作の映画がある。実話だ。第2次世界大戦で英国の捕虜となったドイツ兵バート・トラウトマンは実はキーパーの名手だ。その腕前を捕虜収容所で或る日偶然発揮する。これを地元のサッカーチームの監督が見て捕虜の身分のままスカウトして試合に出す.するとこれ又試合ぶりを見た名門マンチェスター・シティの監督が引っこ抜く。然し、マンチェスターはユダヤ人が多い町だから、ナチスの軍隊にいたトラウトマンへの怒りと攻撃が凄まじい。となるとドイツ敗戦後マンチェスターに残ってサッカーを続けるトラウトマンの運命やいかに??と相成る。実にいい映画だ。反戦映画の傑作と言ってもいい。

◯月◯日/ 周知のように大阪なおみの発言が注目されている.これに女子シングルスで4大会通算23度優勝のセリーナ・ウイリアムズが「大阪の苦しみがどんなものか私は知っているからなおみをハグしてあげたい」と発言。このセリーナが第1子の妊娠を発表した時、ルーマニアの女子チームの代表監督(男)イリ・ナスターゼから「どんな色の子が生まれるのか」とからかわれ、この余りの人種差別のひどさに「国際テニス連盟」が調査に入ったことがある.2017年の4月の事だ。この男といい、IOCのバッハといい「何様」のつもりの馬鹿が多すぎる。

◯月◯日/ 映画といえば「在りし日の歌」なる中国映画もそうそうない傑作だ。去年の4月封切り。中国は人口抑制で1980年代に「一人っ子政策」を採った。映画は2番目の子を妊娠した女を親友が当局に密告して、無理やり堕胎させられてしまう事から起こる悲劇だ。登場人物皆悲しみ極まるという面持ちで生きていて、観る方にも人生が抱える悲しみが迫ってくる。ところが中国はこの5月の末に、一組の夫婦は3人まで生んでいいとの方針に踏み切った。勝手なもんだ。

◯月◯日/ ナニシロ、今の中国は一人っ子政策が裏目に出て、20代から40代では男が1,700万人余っている。つまり女が圧倒的に少なく、結婚したくとも男は相手がいないのだと言う。それを踏まえて今度は「3人生め」となった訳だが、前は産むな、今度は産めダナンテ「人間は機械じゃないわ」との反発が広まっているという。もっともだ。戦争最中のナチスも日本も「お国のためだ、産めよ、増やせよ」とやったが、それにウカウカ乗ってしまった人達は戦争に負けて、何一ついい事はなかった。国民皆そうだが。今も昔も国の言う事を聞いてはならぬ、という事を国民皆肝に命ずるべきだ、と私は思うがね。

◯月◯日/ 太平洋戦争中、汽車に乗って伊達の方から室蘭に向かう時、オコンシベ(今の黄金駅)を通る辺りから乗客は海側の木製のシャッターを降ろさねば成らなかった。室蘭港が一応軍港扱いで、国民が港内の様子(軍艦が入港しているか、工場では煙をだしているかなどを)を見たり、話したりしてはいけなかったからだ。又今では信じがたい事だが、室蘭郵便局(海岸町の本局のこと)の屋上には探照灯が設置されていて、戦争が始まるまでは近所の子供達はそこに上がって遊ぶ事が出来たのにそれも禁止された。この探照灯、空爆でB29が飛んでくると、それを狙って照らし始め、B29の姿が夜空にはっきりと写し出されると、高射砲が火を噴くーと言った具合で、子供の時の記憶では,その弾が届かない。B29のかなり下の所ででポンポンとはじけてしまって威力はなかった。

◯月◯日/ 函館山も今のロープウェイがある所は登山が禁止された。山へ登るもダメ、海側を見るもダメとは何故かとなれば、戦時中には「要塞地帯法」があって、港や飛行場や軍需工場などを写したり描いたり、それについて喋ったりする事を禁ずる「軍機保護法」とセットでこれを犯す市民を監視し罰した。前々前回の「あんな本こんな本」で北大生の宮澤弘幸が旅行中に聞いた飛行場のことを北大英語教師のレーン夫妻に喋ったことで懲役15年を科せられた事件を語ったが、宮澤は上記の2つの法律に引っかかった訳だ。ところで、今米軍や自衛隊の基地や原発周辺の住民を監視し、土地の売買や利用を規制する「土地利用規制法案」が成立しそうだ。これ昔の「要塞地帯法」によく似ているという。恐ろしい。「写メッチャオウ」なんてカメラかまえる小父さん達もこの法案に注目したほうがいいぞ。

◯月◯日/ 1億5千万円事件で議員を辞めざるを得なかった河合案里が、ろくに議会にも出ないくせにもらった議員給料を返せと広島市民が訴えた事件で、裁判所がこれを却下した。この裁判官連中何を考えてんのか。これに関して二階が「政治と金は綺麗になった」と発言した。このキビッチョ口(キビッチョ=急須=口とんがらかし)男も毎回毎回何たることを言うのか。地元民もこんな男に何故一票入れるのか。

◯月◯日/ いやあ驚いた。豊胸手術というのは聞いていたが。それには「豊胸シリコンバッグ」なるものを胸に埋め込むのだそうな。ところが、それに安い工業用シリコンが使われていて、これが老化して破裂する事件が相次いで、英仏などの女性2,700人がドイツの「製造安全認証会社」のテュフラインラントを訴えているそうな。その結果同社に賠償を命ずるとの判決がこの5月末に出たのだが、同社は上訴するという。ナニシロ、バッグが破裂するとシリコンが身体中に広がって、胸、腰、頭と激痛が走るというからたまったもんではなかろう。バッグを作っていたのはフランスの「ポリ・アンプラン・プロラーズ」なる会社。私の知り合いの女性はバスト98㎝だが、いつぞや東町のシブチンの外科にどこか痛くてかかった所、医者から「こんなすばらしい胸は見たことがない。だけどここにしこりがある。先生がきれいにとってあげるから」と言われたけどどうしたもんだろうと、その医者と旧知の私が相談されたことがある。私はあれはヤブだから止めとけと答えたが、今その医者は天国(地獄か)に行って98cmの方はナントモナクピンピンしている。このヤブ医者も工業用シリコン並だなあ。

◯月◯日/ おっぱいの後で何やら妙な気がするが、ポコチンのことを書く。昔「皮かむり」と言う言葉があった。いわゆる「包茎」のことだ。この包茎を歴史的観点から書いた本を東京経済大学の渋谷知美準教授が書いたので注文したがまだこない。この先生が言うには、あの高須クリニックのヤブ医者、あの何故か知らないが、ヘリの中で何故か知らないが、色んな国の美男美女と会議をして見せ、最後に一言OKで済ませるあのインチキくさい高須は私は美容の方だと思っていたが、まあそっちもするんだろうがナント包茎専門の医者ナンダト。しかもこの医者、男性雑誌に知り合いの女に頼んで「包茎って嫌い」だの「包茎って不潔」だのと言った投書をさせて、これを見て不安に駆られた馬鹿な男たちが包茎手術をしたくなるようにしむけていたという。

◯月◯日/ 高須は今「、あいちトリエンナーレ」に関して,偽署名の件で疑われているが、偽投書も似たようなものだ。「人の褌で相撲を取る」とは「他人の物を利用して自分の目的を果たそうととする事」だが、この男は「人の皮」でヘリに乗っている訳で大した狸だ。どこまでも欲の皮のつっぱった男だか。ここで思い出したのはこれも死んでしまった千歳町のこれまたシブチン泌尿器科の先生は、「包茎」をチョチョ切った先端の皮(と言っても私は見た事がないが)を日干し(だろうと私は思うが)にして指輪状になった物をキャバレーに行くと女給たちにチップ代わりに配って人気があったという。しかし、これ切られた方からすれば「所有権の侵害」ではあるまいか。この医者「アリナミン」だったかの会社が、使用した量によって医者をハワイに招待とやった時。ドラム缶だかに「アリナミンを仕入れて患者に食わせるほどに配ったという噂があった。真偽の程は知らん。

◯月◯日/ おっぱいでで倍賞美津子を思い出した。最初に観たのは「喜劇・男は愛嬌」(だったのではないか)で、少年院帰りの美津子が出所の手続きで、係員が拇印が要るよというと「あーボインか」と言ってセーターを脱ぎにかかる「そうじゃないよ。ハンコだよ」と言われてチラッと見えかけた”おっぱい”をしまう。この場面の乳房の威力はさほどでもなかったが、それから10年ほどして「復讐するは我にあり」に出た時はすごかった。殺人魔の緒形拳の相手役で、後ろから緒方が乳房露な美津子の「おっぱい」を揉みしだく。この時美津子は、レスラーの猪木と結婚していたが、その乳房はまさに豊満だった。

◯月◯日/ おっぱいはともかく、この映画は犯罪映画の傑作だった。原作は佐木隆三で、佐木はこれで直木賞を取った。西口彰と言う実在した稀代の殺人魔が主人公のモデル。読んでも見ても実に恐ろしかった。ここで思い出したのが西村望のドキュメンタル・ノベルの「鬼畜ー阿弥陀仏よや、おいおい〜」(徳間文庫、1981刊)この頃はあまり読まれていないようだが、この作家の書く物は殆ど犯罪小説で、実録も多い。この「鬼畜」も高知県生まれの梶尾卯吉なる実在の人物がモデルで、とにかく生涯、犯し、殺しの連続だ。恐怖にかられながら読み終えて、月並みだが「人間なるものの不可解さ」について考えさせられる。西村望の実録小説は皆すさまじい。

◯月◯日/ コロナワクチンで13:30に来いと言われて昨6月7日医院に行ったところ、ワクチンがまだ届いていなくて1時間ほど待たされた。プシュとやられて帰ってきたが、夜中言われた通り左腕が上げ下げする時多少痛かったが、後はなんともなかった。行った時、医者が「今日はどうしたんですか?」と聞くから、「コロナで来いと言われたから着た」と言うと「エッ、コロナですか、ワクチンあんのかな」と知らないでいた。看護士はナニモ伝えてないのか。ワクチンの副作用より、こっちの方が心配だ。

2021年6月8日寄稿

山下敏明

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