第423回現代中国のタブー「天安門事件」科学者の論文捏造

私が室工大に在任中、北京から劉さんという人が留学生として来た。この人と他の中国からの留学生の違いが一つあって、それは彼が唯一「文化大革命」の時に高校生だったことだ。この人は私に「高校生の時は何も勉強せずに赤い本を振りかざしては、そちら、こちらと騒ぎまくっていた」と何度もいい、そのあと必ず「あの時勉強しなかったことを今になってつくづく後悔している」とつけ加えるのだった。「赤い本」と言うのは「毛沢東語録」で掌に入る程の、つまりは指先につまんで振り回せる程の小型の本だった。劉さんは自ら「何も勉強せずに〜」と言ったが確かに専門の金属工学の能力は知らず、いわば一般教養と言うものは殆どゼロ状態だった。例えば音楽、モーツアルトも、ベートゥヴェンも、チャイコフスキーもその名を知らなかった.又、例えば文学、これも、トルストイも、ドストエフスキーも皆初耳だった。まあ、文化大革命の間は西洋文化の吸収なんてことは望まれなかっ訳だから、これは無理もない、然しこの点は劉さんよりも先輩の人達もたいして変わらなかった。ここで、思い出を一つ。劉さんの姉は漢方の女医で、ある時劉さんが言うには姉が日本の病院で働きながら留学を望んでいるのだが、世話をしてもらえないかと。そこで私は市役所の前にあった池田耳鼻科の院長に聞いてみた。と言うのはこの医者は患者に漢方薬を出す人だったからだ。しばらくしてから院長より返事が来て、日本の大学には漢方を講座で公式に教えている所はない。(今は知らず)又北大で一人非公式に漢方をやる人はいるが、そこで、と言うよりも働きたいと言っても北京での医者の免状は日本では無効なので、雇うことは出来ない。云々。劉さんには気の毒ながらありのまま伝えた。

さて、今年4月は文化大革命後の「天安門事件」から32年目だとて、米の国務長官ブリンケンは、この事件は中国の民主化運動を武力で弾圧したものでつまりは「大虐殺=Genocide(ジェノサイド)」だと非難し、「“天安門広場は”人権や基本的自由を訴えた数万人の人々を黙らせるために、中国政府が取った残忍な行動の同義語となった」と指摘した。これに対して中国は「80年代末に起きた政治風波(騒動)、(つまり天安門事件)に対して、中国政府は明確な結論をすでに出している」とし、毛沢東が造った国は「(建国以来)の偉大な成果が、中国が選んだ発展の歩みが完全に正しかったと十分に証明している」として武力弾圧は間違っていなかったと主張した。私も文化大革命は「ジェノサイド」と取る方だが中国当局を代表して「何言ってんだ」とする中国外務省の汪文且斌(おうぶんひん)の言い分が正しいかを判断するにいい、格好の本が文庫化された。安田峰俊「 八九六四(完全版)―天安門事件から香港デモへー1 」がそれ。登場人物各々の人生模様にほとほと感じ入る。

6月2日、坂本龍一や、鎌田慧(さとし)や澤地久枝やいとうせいこう等(ら)67名の文化人がミャンマー市民への支援を直ぐに実行するように、との緊急声明を菅の政府に出した。その内容は「国軍の蛮行をやめさせミャンマーが民主主義の道を再び回復できるような支援策を直ちに講じて呉れ」と言うもの。声明に署名した人の中には先日ミャンマーで軍政府から虚偽報道をしたとして捕まったフリージャーナリストの北角祐樹もいて「今も4000人を超える市民が政治犯として牢獄に居る」と発言している。私もこの声明と動きは正しい、むしろ遅きに失したと思う位だが、中で奇怪なのは瀬戸内寂聴が加わっていること。何故奇怪かというと、この老婆、去年の朝日の10月8日の朝刊に「〜安倍さんは、居なくなると、まああんな見栄えのする首相もそうあるものじゃなかったな、と懐かしくなる。何よりあの方は、在来の日本のどの首相よりもスタイルが良かった。世界の首相たちが舞台に一列に横並びになった時など、どこの国の首相にも見劣りしないスマートさと上品さがあった。やっぱり一国の首相という立場は、国の看板のようなものだから見た目も引き立つ方がいいに決まっている。それで頭が空っぽだと悲劇になるけれど」(空っぽな頭の中に稀に見る虚言の才が詰まっているのが安倍ではないのか。色ボケしてんじゃないのかこの婆さんは、山下)と安倍をほめ、続いて「菅首相は立ち居振る舞いもお行儀のいい紳士に見える。容貌も整っていて品もあり、立派な首相づらをしている」とこれ又褒め上げる。そしてその同じ顔、同じ口で、今度は頼まれもしないのに共産党のオンライン演説会に投書して「共産党と私はともに99歳〜私は戦争にも原爆にも原発にも反対して来ました〜」としゃべくりまくる。聞いて呆れる。原発、原爆反対なら何故安倍、菅を褒めるのかそれもスタイルだの面付きだのと、あんたはミーハーか。一体あんたはどっち側に立ってんだ。土台最近の安倍の何様になったつもりのキングメーカー振りや、菅の尽きることのない無能ぶり見ているだろうが、それなら、朝日のベタ誉め、甘ったるい文章を一回はっきり打ち消して、明確に安倍、菅を批判せよ。そうしてから、ミャンマー支援の輪に連なれよ。そうでなけりゃ、あんたのやっていることは、二股膏薬通り越して、誰からもいい人と思われたい老婆、どこにも顔を出したい老婆になってしまって、そのうち誰からも相手にされなくなるんじゃないかと、私は思う。私ごとき老爺が老婆心から老婆に物申すというのも変なものだけどね。

長くなったが、ミャンマーがテーマの本「ロヒンギャ危機2 」を出す。アウンサンスーチーはロヒンギャが殺されるのに抵抗しなかった年て国際的に不評をかった。看過するだけの彼女の行為は何を語るのか。教えられる所の多い本だ。

私はテレビの連続ドラマを見る気が全くないがテレビ欄とテレビ評で大方の動きは抑えているつもりだ。それで・・・最近「今ここにある危機と僕の好感度」(NHKテレビ)というのがあったらしいが、その1、2話が「研究論文の不正の題材でした」と批評欄にある。作者は渡辺あや・・・でおやおやと思ったのは5月末に昭和大学で不正があったばかりだからだ。何でも医学部麻酔科の講師が発表した147の論文が疑われて調査委員会が調べた所、その大半に捏造があったと言う。そこで2017年の新年号の本欄で黒木登志雄の「研究不正」を紹介したことを思い出して棚から出してみた。2000年に旧石器の歴史を塗り替えた「神の手事件」と言うのがあって、私もその発掘記事が出る都度読んでいたが、ある時宮城県と山形県で発掘された石器が30㎞も離れた所から出たと言うのに断面を合わせてみたら、ぴったりとあったと言うことがあって、その時私はこれは誰かのやらせだインチキだと思ったものだった。これは結果として、「神の手と」呼ばれた藤村新一が事前に自分で埋めておいたものを自分で掘り出すと言うインチキで黒木の本にはつかまった藤村新一が直ぐに発見発掘するので「神の手」と呼ばれた自分の右手の指2本を自分でナタで切り落としたとある。まこと面白いが同じ本を2度すすめるのもナンダカラ、ここには「STAP細胞に群がった悪いヤツラ3 」と「背信の科学者たち4 」を出しておく。前者は御存知「STAP細胞はありまぁす!」の「エプロン娘」の話。この娘、自分のおばあさんのエプロンをつけて実験していると宣伝し、インチキと分かったあと、記者会見で「それでもSTAP細胞はありまぁす」とやって見せて、話題になった女だ。後者は「研究不正」に関する古典。面白いこと間違いなし。

 

 

 

 

  1. 安田峰俊.八九六四(完全版)―天安門事件から香港デモへー.角川書店(2015) []
  2. 中西嘉宏.ロヒンギャ危機 .中公新書(2021) []
  3. 小畑峰太郎.STAP細胞に群がった悪いヤツラ.新潮社(2014) []
  4. 牧野賢治訳.背信の科学者たち.ブルーバックス(2006) []

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