司書独言(238)

○月○日/ 新年になってからのニュースだが、今中国の西安市が、新型コロナ(と言うことはオミクロンか)の感染拡大で昨年12月23日からロックダウンが続いているという。それで、PCR検査の陰性証明がない妊婦が病院で待たされている間に死んだり、心臓病の患者が治療を拒否されてこれも死んだり、2年前にロックダウンしたコロナ発生の武漢市さながらの惨状を呈すしている由。

○月○日/ 西安は昔の長安で、つまりは楊貴妃のいた所だが、何年前になるか、室工大卒の建築家西方里見・耿子夫妻と一緒に行ったことがある。西方夫妻が学生時代からお世話になったお礼にと招待してくれたのだ。西方君は「21世紀の住宅を変えた50人の建築家」に安藤忠雄らと並んで選ばれた逸材で私達が仲人した。因みに「あんな本・こんな本」とこの「司書独言」を入力してくれているのは耿子賢夫人だ。行く前には手に入る玄宗に関するDVDを全部見て楊貴妃に関係する本も全部読んでから行ったから、行く先々どこもすこぶる興味津々だった。

○月○日/ 楊貴妃は安禄山(あんろくざん)が反乱を起こしたおかげで、玄宗と逃げる途中に馬嵬の駅でくびり殺されたが、今生きていたらコロナで死ぬのかな?ーなどくだらぬ事を想像しながら楽しかった旅を思い出している。楊貴妃は太めだったと言うぞ。

○月○日/ これも新年のニュースだが中国と英国の研究チームが行った指紋についての調査で、左右の小指の指紋が渦を巻くような「渦状紋」の人の小指は長いとの結果が出た由。だからどうした?と言いたいが、これでまたくだらぬ事を思い出した。確か「貴方が噛んだ小指が痛い」とか、歌ったのは伊藤ナントカだったと思うが、その仲間の園マリが千歳の飛行場で買い物をしているのを見た事がある。手にした財布はお札でパンパカパンにふくれ上がって、それこそこれ見よがしに閉じもせず、札束を見えるままに開いたまま店から店へと歩いていて、品のない女とおもた事だった。

○月○日/ 次もまた新年のニュース。北米には数千キロmの渡りをするオオカバマダラなる蝶がいるそうで、この蝶、毒蝶なんだと。そして自然はよくできたもので、この毒蝶を餌にして生きているネズミがいて、このネズミ、毒蝶が10万匹越冬する所にやってきて貪り食うんだと。所が如何なる訳か、昨年は10万匹が200匹に減ってしまって、そのため今度はネズミが生きていけなくなりそうだとの問題が起きているそうな。毒では死なずに餓死とは、自然はよく出来ていないなあ。

○月○日/ 日本には「アサギマダラ」なる渡りをする蝶がいて、私はそれについて「本の話」(第832回2021.6.12付)で取り上げた事がある。発端は安西冬衛の「テフテフが一匹韃靼海峡を渡って行った。」なる詩の蝶は何と言う蝶か?と言う新聞に出た投書に触発されてだった。

○月○日/* ところで、蝶の数え方には匹、頭、羽の3種があるが、頭は動物園で飼育されているものを「head」で数える。それで動物園で展示する蝶も西洋では「head」で数えて、昆虫学者も論文を書くときには「head」をつかう。その「head」を20世紀初頭に日本語に直訳(実は誤訳)して「頭」になったと「数え方の辞典」(小学館)の189Pに出ているぞ「羽」を使うのは雅語的だそうな。

○月○日/ 昨年11月に歌舞伎俳優の中村吉右衛門が死去した。そのニュースのどれもが人気時代劇「鬼平犯科帳」に触れている。私はテレビを観ないからこれを知らないが、ビデオ屋で見つけたのでまず1巻目を借りて観た。ナントカ観るには観たが、全く面白くないのでびっくりした。この程度のものが何故かくももてはやされるのか。それをこれから考える所。ズラリと借りてこず、1巻目だけにしてよかった。

○月○日/ カナダのキャサリン・リーブなる学者が学術誌「応用動物行動科学」に発表した論文によると、は人間が発する言葉を平均で89単語まで理解しているそうな。また、ボーダーコリーやジャーマンシェパードなどの牧羊種は他の犬に比べて、多くの単語を覚えると言う。読んで直ぐに連想したのは、今消えたスガ、あのボキャブラリーの無さには毎度ウンザリさせられたものだ。スガのしどろもどろを評して「文盲=もんもう=無学なこと」に近いと言ったのは誰だったかな。今考えているが思いだせなきゃにも劣るな。しっかりしなくちゃ!!

○月○日/ 私は新聞に出る映画評は全部切り抜いてファイルし、ほとんど毎晩晩酌しながら借りてきたDVDを観る。観終わった映画の批評は再読し、別にファイルする。封切られた映画は早くて3月もするとDVDになる。然し地方のビデオ屋のせいか、仕入れのせいかは知らぬが愚作、駄作は次々入荷するが、批評に取り上げられた秀作に類する作品の入りが悪いので,未観の映画評のファイルの方が厚くなるばかりだ。

○月○日/ それで知り合いのビデを屋の社員に事情を聞くと選んで仕入れではなく、送ってくるとのこと。となると、秀作の出具合が悪いと今時の本の仕入れと同じで、売れぬジャンル、借りられぬジャンルは以後はいってこないとなる。仕方ないから時々は買う。この間は、この社員に調べてもらって「鉄西区」買った「21世紀の幕開けを告げる画期的なドキュメンタリー映画」と評された中国映画だ。因みにこの作品の受賞歴の一端を書けば「2003年マルセイユ国際ドキュメンタリー映画際グランプリ」「2003年3大陸映画祭ドキュメンタリー部門グランプリ」etc

○月○日/ まあ見落としのないようにビデオ屋で丹念にチェックするほかないが最近切り抜いた映画評は「テレビで会えてない芸人」で「第29回FNSドキュメンタリー大賞」「日本民間放送連盟最優秀賞」他を受賞との由。主人公は松元ヒロ。私はこの芸人を角川新書で出た佐高信との対談「安倍政権を笑い倒す」で知っている。全編安倍批判の本で読み応えがある

○月○日/ その安倍だが、確か身体の不調を訴えて政権を放り出したが、その後、元気そうに見えるのでそれを問うた記者に、あの能天気の妻君が「安倍はお芝居が上手ですから」といって阿阿大笑したと週刊誌に出たのを読んだ記憶がある。そして元気になり過ぎた安倍は「アベノマスク=不良在庫」の責任も取ろうとはせず、それどころか、最近では「敵基地攻撃能力の保有は必須」だとか「台湾有事」などとキナくクサイ事を言い出している。先にあげた本で松元ヒロは「安倍」を「笑いがない人」と定義して「笑いを抑え、ますます軍国主義に進むということは真面目になれという事で、お笑いというのはそれと、一番対極にありますね」という。正しい。

○月○日/ これで思い出すのは現代史家の保坂正康が半藤一利との対談本「ナショナリズムの正体」での発言だ。保坂は言う「日本の政治家のタカ派的な言動は現実的にはかえって中国上層部の思うツボにはまっています。〜かれらは石原氏のタカ派な言動を捉えて、”ほらやっっぱり日本は危険だ”と言い立て、軍備拡大や、強硬な軍事行動の口実にしようとしている。」この石原の代わりに、安倍の名をはめても、この理論は正しい。

○月○日/ 1月8日、米国の黒人俳優シドニー・ポワチェが94歳で死んだ。「野のゆり」でアカデミー主演男優賞.「手錠のままの脱獄」でも同賞にノミネートされた。「招かれざる客」(つまり白人の娘が恋人を連れてくるというので喜んで待っている両親の前に現れたのはナント黒人でーという話)もよかったーと書いていると殆ど観て来た感がする。アカデミー主演男優賞と言えば、黒人2人目の受賞者となったデンゼルワシントンの「リトル・スイングス(little things)」をこの前見たが、何だか随分下手になっていたなあ。

○月○日/ 変わったニュースを読んだ。1月11日オスロ発のもの。/ノルウェーの軍隊がコロナのおかげで支給品の不足を補う金がない。それで除隊する兵士から軍が支給したパンツ、ブラジャー、靴下などを返却させ、これを洗ってから、新兵達にあてるとした、というのだ。今迄はもらったものは除隊時に着たままで帰ってよかったというから、余程の金詰まりだ。ナニシロ新兵8,000人に配る下着がないというのだから「戦さ」なぞやっておれんわ。ノルウェーの軍隊に、日本が駐留米軍に出している「思いやり予算」の額を知らせたら卒倒するに違いない。

○月○日/ その駐留米軍の沖縄の連中が今回のオミクロンの拡大の大きな原因になっていると言うことがはっきりしているのに、政府は何の対策もナシだ。報道によると米軍が出国する場合PCR検査が免除されているのは日本だけだとの事。これじゃコロナも収まる筈がない。それにしても、こう馬鹿にされっ放しの状態を見てて右寄りの連中は「お国ために」に腹立たんのかね。

○月○日/ 「岩波ホール」が7月29日で閉館すると発表した。他では観る事のできない映画を上映してくれる貴重な存在だったのになあ。私も上京した時には必ず寄るようにしていた。私が学生の時には「アートシアターギルド」と言う組織があって、確か「ATG」と言う冊子も出していた。我が家の第二書庫に2、3十冊はある筈だ。これを買いがてら新宿の伊勢丹の近くにあった映画館によく通ったものだ。その他よく通ったのはブリジストン美術館の中にあった、名前は忘れたが映画博物館的劇場.そう言う所へ通う一方「日本シナリオ全集」なんかを読んでいた訳で、映画のおかげでどれだけ人生豊かになったことか。

○月○日/ トンデモ市長の河村たかしとトンデモ整形外科医の高須克弥が組んだ「あいちトリエンナーレ2019」の愛知県知事大村へのインチキリコール運動で、署名偽造を担った広告会社の元社長に懲役1年4ヶ月の判決が下った。1月13日の事。一方東京での「表現の不自由展」の女性の実行委員に対して「髪を引きずり回される表情が見たいわ」などの脅迫のメールを5度も送った47歳の男が去年12月に逮捕された。

○月○日/ 署名の方は今おいて、脅迫の方は今はやりの、実生活でうだつの上がらぬ人間が、ナントカ目立ちたいとする「承認欲求」とやらからくるものなのか?人生目立っていいことなんてないのになあ。

○月○日/ 1月11.12は、大雪、大荒れ。窓にへばり着いた雪で庭が全く見えない。昨夜7時過ぎに除雪車が来て近所の人総出で雪を出していた。持病腰痛の年寄り=私は動かずにビールを飲んでいたら表から戻った我妻さんに睨まれて寿命が縮まった。老い先短いのに損した。まあ南極の雪もとけ、冬のアラスカも15.5度になって土砂降りの雨となる時代だ。いずれは解けるだろうーなんてことは言っちゃいけないな。

2022.01.13 本日も大雪

山下 敏明

 

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