司書独言(239)

◯月◯日/「WHO」と言えば「世界保健機関」の事だが、その西大西洋地域の葛西健吉なる日本人で医師の事務局長が特定の国の事務職員に「人種差別的、侮辱的発言」をしたとして告発された、と1月末のニュースに出た。「WHO」程の所に勤めながら、馬鹿げた事をする人もいるもんだなあ、と逆に感じ入っちゃうね。

◯月◯日/差別と言えば去年の8月の事だが、Daigoなるメンタリストと称する男が「生活保護の人に食わせる金があるんだったら、猫を救ってほしい」と言い又「ホームレスの命はどうでもいい」「いない方がよくない?」「臭いしさ、治安悪くなるしさ」etcと発言したと報じられた。「くさい」と言えばこういう手合いを北海道弁では「ハンカクサイ」と言う。「薄馬鹿者(うすばかもの)」の事だ。この方がよっぽど「くさい」ぜ。

◯月◯日/ この男の「メンタリスト」なる商売がよくわからないが、ツタヤに行くと、呆れた事にこの男の書いた、結構な厚手の本が山積みされている。北海道弁には、馬鹿者を言うにもう一つ「タクランケ」なる表現があるが、この「ハンカクサイ」男の本を金を出して読む「タクランケ」もいる訳だ。私は最初「ダイゴ」と知って、あのいつも皮の手袋をして、英語の頭文字を並べる男かと思って図書館の女子に聞いてみたら、違ってた。

◯月◯日/ 2月に入ってから、米東海岸が最大級の暴風雪に見舞われ、気象台が「落下するイグアナに注意」との警告を出した由。これ、恐竜の親類のような見るからに奇怪なあのどうぶつのことだろう。これ「変温動物」と呼ぶそうで4度C−9度Cで死ぬ訳でないが動けなくなるという.2010年には寒波で大量に死んだ由。要するに、寒さで動けなくなり木から落ちるらしい。

◯月◯日/「猿も木から落ちる」と言うがイグアナが落ちるとは所変わればだなあ。「猿も木から落つるたとへの木の葉かな」(定之)なる句があるぞ。猿と言えば類人猿も猿の仲間だろうが、これで思い出す事がある。人工知能技術を使って、写真に写った人や動物を確認し分類する「グーグルフォト」なる機械が、黒人カップルを「ゴリラ」認定をして(これは一寸トランプ的感性だな)グーグル側が謝罪した事があった。2015年の事だ。AIだか何だか知らんが、機械に頼りきっているとこう言うバカを引き起こす

◯月◯日/ 1月8日に面白い(と言うと怒られるが)事件があった。オホーツクの遠軽と上川間を走っていた網走発札幌行き特急が斜面を登れず遠軽駅まで47Km後退して運休した。すると1月22日になって函館の95歳の女人からの投書が出た。昭和20年頃の冬の事。江差から函館行きに乗っていたら途中の坂で汽車が動かなくなった。すると、車内の一人の小父さんが「すがだねーな(仕方ないな)皆で押すが」と叫ぶと、吹雪の中、皆汽車から降りて、坂の上まで汽車を押し上げた。皆拍手した。おじさん達は「やんや冬はこれだから」と車内に戻ってダルマストーブの上で炙ったスルメをかじっていた云々。いいな、すぐれた風物詩だあ。

◯月◯日/ 私もこれに一寸ばかり似た体験がある。大学生の夏、姉夫婦が新調してくれた背広を着て、当時の彼女と伊豆に行った事がある。大雨の後で、途中で、ぬかるんだ所で路線バスが動かなくなった。すると車掌が、「すみませんが皆で押してくれますか」と言うので皆で押した。その時私は(今ではバッカじゃないかと思うが)何も知らずに、後輪の真後ろで押した。するとエンジンがかかったと見るや、大量の泥が胸から膝まで飛んできた。バスは動き出して無事宿までついたが、不思議なのは私にも、バスの運転手、車掌にも、背広が台無しになった事について何のアクションもなかった事。今の世なら背広のクリーニング代などと向こうが言い出すのかもしれんが、とにかく全く何もなかった。のんびりした時代だったのだろう。背広の泥はその夜彼女が丹念にとってくれた。背広はダメになったけどね。

◯月◯日/1月25日のニュースだが自民党は「皇室の問題等についての懇親会」を開いて、今後の議論の進行は麻生に一任するとした。これ今流に言うと「ヤバイ」。選りに選って麻生とは!! 麻生の無学なる事は歴然としているし、発言すれば人を傷つける事しか言えない、その非人間性はつとに知られた所だ。加えるに麻生「皇位は男系のみ」の立場だ。安倍も菅も麻生も皇室に対する崇敬や親愛の情を表した事がないーというよりは侮蔑さえしている。こんな連中でまっとうな議論が出る筈がない。「愛子ちゃん危うし」

◯月◯日/ ナニシロ麻生の差別発言はお墨付きだ。と言うのは、2018年、8人の学者らが作る「公的発言におけるジェンダー差別を許さない会」が、政治家によるその発言を「ワースト発言候補」にして、ネットで投票を呼びかけた所、一位が麻生だった。そして、その発言は、当時財務省事務次官だった福田淳一のセクハラ疑惑に関してのもので、「こちら側も言われている人の立場も考えないと。福田の人権は無しって訳ですか」だった。

◯月◯日/ 去年の暮れに北九州の67歳の男性が「地元の麻生の発言を謝りたい」との投書を出したが、なんだか妙な感じがした。地元で批判すべきではないか。序でだから、麻生が一番で、差別発言の2位になったのは安倍の走狗の女。水田水脈で「LGBTなどの性的少数派は生産性がない」というもの。このお調子女は今、大阪大学の牟田和恵教授らから訴えられている。水田が牟田らの「慰安婦問題のジェンダー研究を誹謗中傷したことに抗する裁判」だ

◯月◯日/ 東京都が、先進的な精神科医療を行ってきた都立松沢病院を独立法人化しようとして、住民の反対運動が起きている。当たり前だ。何でこの歴史ある病院を潰すような事をせねばならぬのか。小池は公約を何一つ真面に実現していないくせに、頼まれもせぬ事ばかりをやっている。

◯月◯日/ 精神病院と言えば、かつて巣鴨病院で権力者による痛痛しい事件があった。岡倉天心に惚れた妻を,怒った九鬼男爵が当時の医学界の実力者呉秀三を使って、この病院に幽閉したのだ。妻が解放されたのは隆一の死後だった。

◯月◯日/ 私はこのエピソードを2007年(平成19年)6月10日の「本の話」第472回で書いたが、初耳の人のために荒筋だけだけ書いておく。明治20年の秋欧米視察の旅にいた文部官僚の九鬼隆一は、妊娠中の妻初子をボストンから帰国する岡倉天心に託す。船中で天心に惚れた初子は九鬼に離婚を迫る。片や天心の妻基子は二人の仲を裂こうとする。で初子は実に29年間も精神病院に閉じ込められた。

◯月◯日/ところで、私は2014年5月17日に第18回北海道学校茶道連絡協議会研修会なるなるところに頼まれて全道からの指導者300人余りに「茶経、茶の本、天心の恋」と題して講演した.300人余りの筆頭は(今残っている名刺でいうと)「裏千家」。一般社団法人、茶道裏千家淡交会総本部、事務局長、橋本一郎」であとは北海道各地の地区長なる人達だった。

◯月◯日/ 因みに「茶経」は中国唐代の「茶聖」と呼ばれる陸羽の本だが、これを13程集めて日本に持ち帰ったのは医者の諸岡存。講演後の懇親会では京都のエライさん始め指導者全員が、諸岡の話も、天心の悲恋も全く知らなかったと言って私としてはいい気分だった。この講演会の事は、2014年(平成26年)7月6日付け「本の話」第654回に書いた。おまけに言うと「ふくろう文庫」には「陸羽」を描いた額画が一点ある。言うまでもないがいい画だ。

◯月◯日/ 1月19日のニュースにアンネ・フランクを密告した人物が特定された(?)と出た。言うまでもなくアムステルダムの隠れ家にいてアウシュビッツに送られるまでの日々を日記に残した少女だ。密告者と名指しされたのは公証人でユダヤ人のアーノルト・ファンデンベルフ。自分の家族を守るためだったらしい。

○月○日/ 今言うまでもなくと書いたが、昨年「ホロコースト」を知らぬ、従ってアンネも知らぬと言う人物と知り合いになった。工学部出身の男で40代だが今までの人生、ナチもユダヤ人虐殺も知らずに来たとしたら、その精神生活は如何なるものだったのだろう。人との交わりの中でそう言う話題が1度たりとも登場しないのはどんな仲間のに囲まれていたのだろう。学生時代はサッカーをやっていたと言うのだがねえ。まあこう言うのが居るんだと言うことは知っておかなくちゃなあ。

○月○日/ 新聞の文芸欄に「寝つつ娘(こ)は何を怒るや叫びおり大寒気団わたる夜の空」(西勝洋一)なる句の解説が出ていて、怒りを表している寝言が荒れる大寒気団と呼応しているようだとある。成る程!と感心しての数日あと、今度は投書欄に3歳の娘が寝言で「おのれ〇〇」と叫んだのだが〇〇は私の名ですとの母親の投書があった。うなされている娘を起こそうかと心配した夫は「おのれ!」のあとに私(妻)の名が出たので爆笑したとある。それにしても娘もやるね。

○月○日/ 「朝日」に鷲田清一の「折々の言葉」が連載されている。先日は梶山季之の名作「族譜」から「どうして、名前だけの事なのに、そんなに目の敵にするんですか?」が採られていた。「族譜」は一族の系譜、系図・家譜の事で、朝鮮民族が殊の外大切に扱うものだ。所が、日本は朝鮮を植民地にした時にこれを無視して、「創氏改名」を押し付けた。

◯月◯日/  これは、朝鮮人の固有の姓を日本式の名前に改めさせようとしたもので、いわゆる皇民化政策の一つだ.1939年に初めて〜1945年の消滅まで続いた。名前を変えろ、日本語を使え、となって朝鮮人は抵抗し、多くの悲劇が生まれた.この「創氏改名」を「日本はそんな事はしておらんよ」と言ったのは又しても麻生だ。本当にアホと言うしかない男だ。これからは「アホの麻生」と呼ぼうと思ったが、確か大阪の喜劇人に「アホの坂田」と言うのがいたから、彼から「アホ」は俺の名だ麻生の方を改名せよと言われるかもしれんな。

◯月◯日/ 2月8日のニュースだが、フランシスコ、ローマ教皇がサン・ピエトロ大聖堂のミサの説教で「FGM」を非難したと報じられた。「FGM」とは「女性器切除」の事。今でも中東やアフリカで行われていて、現在世界で2億人の少女と女性が強制されているという。国連は2月6日を「FGM根絶の日」と決めていて、教皇の行動はこれに答えたものらしい。この非人間的行為について書いた本が1冊書棚にあるから、近々取り上げてみよう。

◯月◯日/ 瀬戸内寂聴が死んだ後、見た限りでは批判よりは持ち上げる文章が多かったと思うが、先日「寂聴批判に違和感を覚える」との投書があった。曰く「瀬戸内の不倫を批判する人が多いが、これがもし男だったらそう言われるだろうか」。私も寂聴批判の口だが、私は彼女の不倫なぞには何の関心もない。多情な女なのだから性欲ある限り相手が誰だろうとどうぞおやんなさいーだ。私が彼女を批判するのは、その対人関係に節操がないからだ。

◯月◯日/ 安倍を褒め、菅を褒め、石原慎太郎をを褒め、その口で、共産党を褒める。これでは褒められた共産党もとまどうのではかろうか。自分の作品で反逆を貫いた女達を描きながら、それを潰した権力側(安倍も菅も石原もこの側だ)をほめるのは恥ずかしくないか。八方美人もいい加減にしてくれと言いたいーのだよ。

◯月◯日/ 石原慎太郎が漸く死んでくれたーと言っても別に失礼と思わない。この男程、何処をどう見てもほめるに値するものがない男は珍しいのではないかーという辺りを末月号の「あんな本〜こんな本」で取り上げるつもりだ。私はこの男を殆ど公金泥棒だと思っているくらいだ。こんな男をつかまえて寂聴は「真の親友」と言っているのが聞いて呆れる。

◯月◯日/ ここで思い出したが、昔、寂聴と宮尾登美子が対談をしたことがある。その時の寂聴の態度が見苦しかった。最初から負けん気丸出しで、論争の場でないのに、いきり立つ感じだった。宮尾は軽く普通にかまえていたが、寂聴が気色ばむ程宮尾がおっとりと見えてくると言う事になった。品の違いが表れたと言う感じだったな。

2022.2.14

山下 敏明

 

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