◯月◯日/ 宇宙飛行士の毛利衛が1992年9月に「宇宙授業」を云々の記事が新聞に出ていて、昔の事を思い出した。
彼が宇宙から戻ってきた年(何年か忘れた)北海道の図書館大会があり、その記念講演で彼が来た。図書館員のみならず、図書館に協力している団体も参加OKと言う事で、会場は満員だった。登場した毛利は開口一番「私は生きた学問をしている者だが、皆さんは死んだ学問をしている」と言った。
◯月◯日/ 私は耳を疑った。ご苦労にも宇宙くんだりまで行くには確かに最新技術が必要だろうが、図書館が扱っている、歴史だの文学だの美術だのを「死んだ学問」だとはよくも言ってくれたものだ。これ以来私は毛利を好きではない。その唇を曲げて笑う表情も最初から嫌だったが。
◯月◯日/5月29日にテキサスのヒューストンで「全米ライフル協会」の年次総会が開かれて、トランプが来賓として演説した。曰く「銃を持った悪人に対抗できるのは、銃を持った善人だけだ」。この言葉の前には18歳の犯人について「恐ろしい。容疑者の男は地獄の業火(ごうか)で焼かれる」とも。またまた馬鹿な事を言っている。「地獄の業火」に焼かれるべきはトランプではなかろうか。
◯月◯日/「全米ライフル協会」といえば今は知らないが、昔は、あの「ベン・ハー」でアカデミー主演男優賞をとったチャールトン・へストンが会長だった。死亡記事を切り抜いた記憶がないからまだ生きていれば99歳の筈だ。昔銃規制には反対だとなんだか弱々しい表情で語る記事が出た事があったけどな。
◯月◯日/ 昔、京都は山崎のサントリーの工場を見学した事がある。試飲で、私は知らなかった高級ウイスキー「響」が出た。美味いのでお代わりしたが、その値段を聞いて驚いた。試飲後アンケートに女性が来て「どうでした」と言うので「美味いが、この値では家計に響くね」と言うと笑わずに行っちゃった。私の「本の話」のイラストを描いてくれたその名も「まどかり響さん」はこのウイスキーが好きでつけた画号で記念に「響」を送ったが確か1本一万円だった。
◯月◯日/ 私の兄は昔、北海道剣道連盟の会長を務めた強者だが、ある時室蘭での総会での話。会議が終わって宴会となり、サントリーウイスキーの瓶が並んだ。会場のプリンスホテルのボーイは室工大生がアルバイトで複数居た。で、兄は中の一人に「炭酸持ってきて」と頼んだ。やや暫しすぎて帰ってきたバイトの学生は「すみません遅くなって、単3切らして単1ならあるんですけど」と言った。席の一同皆ぽかんとして思わず顔を見合わせたそうだ。これ、室工大生らしき連想か?。矢張りとんまじゃないのか。
◯月◯日/ 私は、この話を或る時、講演の枕に使って、この単1をウイスキーに入れたら、予期せぬ味になったかも」と言ったら、皆笑ったが、中に兄の友達がいて、その講演会の帰り道兄の所に寄って「お前の弟が、この間の単3の話をしていたぞ」と告げて行ったそうな。
◯月◯日/ 5月下旬「赤旗が例のアベの「桜を見る会」の前夜祭で,酒類を無償で提供していたとすっぱ抜いて、これを「日刊ゲンダイ」がスクープとして褒めた。アベは5,000円の会費で全てまかなっていたと国会で大見得を切ったが全て嘘だった。しかもこの酒代¥15万円を毎年負担していたのはサントリーだとわかった。サントリーの今の社長新波剛史は、いわゆる「アベ友」の一人だ。実は「響」の話と「単3」の話を思い出しいたのはこの「アベ友」の寄付を知ったからだ。サントリー飲むのやめよう。悪酔いしそうだ。
◯月◯日/ 先の新波社長はアベの時代、「経済財政諮問会議」の民間議員だった。 イヤラシイ。このイヤラシイのに輪をかけたのが又出た。例の「イノセ」。例の、これ又イヤラシイ医療法人「徳洲会」から¥5,000万もらったのがわかって辞職せざるを得なくなった元東京都知事の猪瀬正樹。このチンチクリンをナント、ナント「日本維新の会」が来る参院選挙に比例候補として出すと5月26日に発表した。「鉄面皮」=「恥知らずで厚かましい」を通り越してるな。人間ここまで落ちたくないもんだ。
◯月◯日/ と思っていたら、この数日後、このイノセ、選挙の街頭演説での行為がセクハラに当たるとて、抗議されたとの記事が出た。何をヤラカスモンやら。
◯月◯日/ と思っていたら、と繰り返すが、今回は話題を毛利で始めたが、それを書いて3日ほど後、図書館の入り口が騒がしいので行ってみると、2、30人の固まりがいる。NHKもいたので、「これは何?」と聞くと「毛利の視察だ」と言う。なんと毛利は今、全国科学館連携協議会の会長だとかで、それで、今回、下は図書館、2Fは科学館の合同で新館落成となった科学館を観に来た訳だ。
◯月◯日/ 「ふくろう文庫」ではこの時、宮本二天(つまり武蔵)や仙厓他の作品を並べていたが、「生きた学問」の使徒、毛利が「死んだ学問」の図書館の展示に注意を払う気配はなかったようだ。毛利の頭の中には明らかに理工系の者に多い文系の知識への蔑視があるようだ。私が室工大に赴任してすぐに、土木工学科から、3000冊余りの本が「焼却してくれ」と渡された事がある。「白鳥大橋が建てられる時代に、こんな古本は何の役にも立たないから」がその理由だ。この本は「室蘭工業専門学校=室工専」が新制大学に昇格する時に北大の土木専門部から来た本だ。
◯月◯日/ 図書館人たる私には「本を焼く」などは「自身を焼く」にも等しいいからそれは止めてその3000冊余りを全部調べた。結果、その中には幕末オランダに留学した幕臣たちが持ち帰った本が複数含まれている事が分かって、今では「土木専門部文庫」として室工大図書館で貴重書扱いになっている。つまり,科学史、土木史への目配りに欠けるから「こんな役立たずの古本」となる訳で、生きた学問の毛利から見れば私が焼却から救った本は、死んだ学問の見本なのだ。幕臣たちが持ち帰った本については、私の「本の話」に書いてるので、興味のある方は読まれたし。但し、これは売り切れ絶版「本の話・続」は残部あるけどね。
◯月◯日「トライベッカ映画祭」はロバート・デ・ニーロらが設立した映画祭でインデペンデント(独立系)映画が対象の由.2001年に始まってその第19回目で福永壮志監督の「アイヌモシリ」が受賞した。これ、カンヌ国際映画祭の支援で製作されたというから変わっている。福永は室蘭の隣の伊達の出身で、アメリカで映画を学んだ人だと言う。「アイヌ=人間」「モシリ=住む所」は私の高校の校歌にも入っていた言葉だ。
◯月◯日/ 阿寒湖畔に住むアイヌの少年、カント(幹人)がアイヌ人としての己の「アイディンティティー(identity)=自分とはこのような人間であると言う明確な存在意識、自己同一性)」に目覚めていく物語だ。これ、いつDVDになるかと首を長くして待っていたが.漸く来た。観て満足した。観るべし!
◯月◯日/ 前にも書いた事だが、私の出た高校は、アイヌ人の言語学者知里真志保の出た学校で、私の棚には彼の著作集全6巻(平凡社)もある。室工大に在任中は毎年新入生を迎えてのオリエンテーションで「室蘭で学ぶからには是非とも知里家がなした仕事を知って卒業してくれ」と言い続け、又苫小牧の沼の端小学校で10年続けた読書指導では、5.6年生に大きくなったら必ず知里幸恵の「アイヌ神謡集」を読むようにと訴えたものだが、同じ気持ちで読者にこの「アイヌモシリ」を観るように訴える。
◯月◯日/ 首を長くして待っていたと言えば、もう1本ある。映画「パンケーキを毒味する」で、主役はもちろん「〜じゃないでしょうか」を連発する老害のスガ。監督の内山雄大によると「菅さんはどこかスカスカしている」そうな。スカスカとは「すきまの多いさま」で、「す」が入った大根と言うように大根やゴボウによく見る、多くの細かい穴のことだ。
◯月◯日/ この「す」の入った大根の「す」は漢字では「鬆」と書いて「まばらなさま、しまりがないさま」の意で骨に「す」が入ったようになって、もろくなるのが「骨粗鬆症」だ。私が以上をまとめると、スガには中身がないということ。只厄介なのはそのすの入った穴に「人をおとし入れる悪意の悪知恵」だけがつまっていることだ。何れにせよ(とはスガが矢鱈と使った言葉だが)スガの無能ぶりは今は誰でも知っている。この映画の中で学術会議の学者6人の任命拒否を巡っての国会での答弁を見ると、こんな男がよくも首相になろうとしたもんだと改めて呆れる
◯月◯日/ 事ここに至ってもスガを認める人はいるのだろうが、その人たちも、この映画を観れば、愚かなスガの正体に「気付くんではないでしょうか」。頭がスカスカでない限り、この映画を観れば分かる作品だが、矢張り分からんと言うしつっこい人のために、(しつっこいらしい)スガを真似て、参考になる本を並べておく。中でも望月の本はまるで、この映画のシナリオかと思えるほどの詳しさだ。
◯月◯日/ ① 菅義偉、不都合な官邸会見録/望月衣塑子/宝島新書/2021/¥800+税
② 菅義偉の正体 /森功/小学館新書/2021/¥1000+税
③ 総理大臣、菅義偉の大罪/佐高信/河出書房新書/2020/¥1750+税
④ クライテリオンー表現者ー/2021、1月号/特集菅義偉論ー改革者か、
破壊者かー/啓分社書房/¥1362
⑤ 紙の爆弾/2021,1月号/菅義偉「空虚なる政権」/鹿砦社/¥600
◯月◯日 /もうこの辺でスガは終わりにしようと思ったら、又あきれた事が起きた。神奈川県の教育委員会が、県立瀬谷西高校の3年生向けに「政治参加講演会」なるものを計画した。その講師がナントスガ。教育委員会に話を持ち込んだのは県議委員だと。スガを教科書的人物と考えるのはまちがいじゃないでしょうか。PTAや市民の反対を受けてこの授業中止になった由。当然だ、6月上旬の話だ。然しまあ、いまだにスガにベンチャラ振るう人間がいる訳だ。
◯月◯日/ コロンビア共和国と言えば麻薬王国だ。ボリビアやペルーで栽培されたコカを持ち込み、これをコカインに精製して欧米に密輸する訳だ。この国に6月19日の選挙で史上初の左派政権の大統領が当選した。私はこの記事を切り抜いて常用している「この一冊で世界の国がわかる!」(知的生きかたと文章。三笠書房)に挟んだ。
◯月◯日/ 我妻さんが病院に行って医者の説明を聞いたときの事、医者の横に色々の器具を入れた小棚があって紙が貼ってある。その一つに「鑷」があり、我妻さんが医者に「この字なんとよむのですか」と聞いたら、一寸考えて「セン」ですと言ったと。聞いて私は、「本当かいな」と辞典に当たってみたら「ジョウ」で「毛を抜いたり微細なものを挟みとったりする道具。又毛抜き」とある。どっちが正しいのだろう。「セン」のところを虫眼鏡で探したがなかった。
◯月◯日 前号の「あんな本・こんな本」でメトロポリタン美術館の話をした。それを読んだ大学の同級生でイラストレーターの渡辺純子さんから手紙が来た。かいつまんで書くと、私も行った。素晴らしい美術館だ。と来て、この後にびっくりした。メトロポリタン美術館の正面入り口の受付に座っているのは純子さんの妹だと言うのだ。やるね!! これ読んだ人も、もしもメトロポリタンに行ったら、声をかけてみてください。これ一種の文化大使だね。
20006.22 山下敏明