司書独言(151)

○月○日 「ギャンブリング・ゲーミング学会」なる怪し気な集団の副会長で大阪商業大学の、これまた怪し気な「アミューズメント産業研究所長」の美原融が「カジノは賭博」との批判に「笑ってしまう」と言う。

どこが笑えるんだろう。辞典の一つでも引いて御覧。例えば小学館の「例文で読むカタカタ辞典」には「カジノ=フランス語=各種の娯楽施設を持った西洋流の賭博場」と三文字ハッキリと出ている。

○月○日 パチンコ依存症で夫婦別れだの退職金の前借りだのは普通の話しで、私の知っているのも2.3に止まらぬ。パチンコが役に立ったなんて事は、「パチンコの手の訓練が手術に役立ちました」旨の発言が出来る、天皇を手術したドクターナントカ位で稀な話しだ。土台、道徳教育を目論む安倍達が博打で経済活性化なんて不道徳な事を考えること自体矛盾している。

○月○日 ラスベガスで55億を使った大王製紙の井川意高が、呆れた事に懺悔録「熔ける(と)」を出版した。書評の見出しが「迫真のギャンブル依存描写」。思うに、カジノ反対派はいっその事、一度ならず二度、三度地獄に落ちた、かくの如き男を運動の会長に据えて、カジノによる明るい未来を説く御気楽な連中に向かわせては同だろう。井川にも生き甲斐となるのでは!!。

○月○日 因みに、カナダのケベックでは公的ギャンブル企業に対して集団訴訟が起こされ、依存症の治療費数兆円の支払いを求める決定がなされたそうな。カジノ誘致の面々に、こんな場合の覚悟は出来ているのかな。

○月○日 松山の俳人・栗原恵美子女より山椒が届き、我妻さんから蔕(と言えばいいのか?)、要は小枝から実を外すよう言われて....「辛辣」はいわゆる山椒の味で辛は入れ墨に使う針,辣は束ねたものを切る刃物を現す字だから、痛い程にピリリツとくるのは当然。中国ではこの実,暖気を与え、悪気を払い、かつ実は子沢山を意味するとて、例えば皇后の部屋の壁に塗り込んだから、皇后の部屋を「椒房(しょうぼう)」と言う効果の程はさておいて味のある話しだから、21世紀を代表する住宅建築家に選ばれた、美術愛好家の秋田の西方君に、どこかで使ってみたら?!(生活がシャキットするかもな)と言ってやろう...なんて考えながらやっていたら、蔕(?)取りも直に終わってしまった。

○月○日 4月29日、市民美術館の年次総会で「教養の再生」と題して講演をした。偉そうな題だが、要は「皆さん、もっと本を読みましょう。その結果民度(その地の文化度)を上げましょう」と言うこと。民度は文化の力ばかりでなく、市民の経済力も含む言葉だが、今は文化にしぼると、私には嘆かわしことが一つある。それは市内の大型書店の本の揃え方。全国で本屋が次々と閉店する今,品揃えが悪かろうが本屋があるだけで有り難い位のものだが、それは評価しても、大量に平積みされた本を見て御覧なさい。例えば新書版ベスト10なんてところにある顔ぶれは、安倍だ、石原だ、百田だ、桜井だ、曽野だと問題児(大人だが、その思考たるや児戯に類する意味で)ばかり。

○月○日 どう見ても国益を損なう式の発言を続ける石原,百田なんぞは言うまでもなく、桜井よし子も曾野綾子も今月号の「あんな本〜」で紹介した「保守論壇亡国論」で、保守の山崎が憂いている著者たちだ。全国的なベストセラーとの意味での平積みだろうが、室蘭でもこんな本ばかりが売れているのだろうか。不思議でならぬ。

○月○日 良心的な保守の論者達が憂い嘆くような、上記の本の他には何があるかと言えば、厳密には歴史小説とは言えぬ態のエンタメ的時代物ばかり。時代物に名を借りたポルノ風もめっきり増えている感じだ。(まるでグルメだ温泉だ馬鹿クイズだを並べている、当今のテレビと連絡を取り合っているような品揃えと思える程に教養の度が低く岩波新書を全く置いていない。これも民度を計るものさしの一つにはなると思う。

○月○日 5月17日,第18回北海道学校茶道連絡協議会研究会で、全道から参加した指導者の茶人達300人に「茶経,茶の本,天心の恋」と題して講演した。その時配った参考文献が下のリストだが、先程の話の続きで言えば、この本、新刊、旧刊問わず、全て室蘭にはなくて、全部過去に札幌圏内で入手したもの....と言うことで、今の所,読書人あるいは司書の身として言うと、万遍ない本の揃えで満足出来る一番近い店は、国道36号札幌へ向かって美し原の「コーチャン・フォー」で、つまりは手に取って見るためには、車で1時間半かかる訳。あれだけの本揃えなので、読書人が流れているのか、それともあの地区の民度が高くて、いわゆる固い本をあれだけ置いているのか下のリストで文庫と付くシリーズだけでも常備する店が室蘭にあればいいのだが...

書 名           著者名     出版社        刊年

茶経(全訳注)          布目潮風    講談社学術文庫    2012

「茶経」と我が国茶道の歴史的意義  千 宗室    淡交社            1983

茶 聖 陸 羽          成田重行                  淡交社                               1998

中国喫茶文化史          布目潮風    岩波現代文庫     2001

茶の本(英文収録)        岡倉天心    講談社学術文庫    1994

岡倉天心「茶の本」を読む     若松英輔    岩波現代文庫     2014

「茶の本」の100年         山徳庵他    小学館スクエア    2007

岡倉天心と五浦          森田義之他篇  中央公論美術出版   1998

五浦の岡倉天心と日本美術院    清水恵美子   岩田書院       2013

岡倉天心             木下長宏    ミネルヴァ書房    2005

 

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