司書独言(193)

○月○日 1月22日の記事。21日に多摩川で入水自殺があり、死んだのはナント保守派の論客の西部邁。去年の暮れ、昭和史のノンフィクション作家・保坂正康が、中学への汽車通学中に1年上の生徒が社会科学の事などを教えてくれたりして、彼こそ私の中学時代の「先生」だ。

そしてその人は評論家の「西部邁」さんと書いていたが、保坂も驚いた事だろう。当節の安倍政権について、「ゴーマニズム宣言」の小林よしのりでさえが「日本は米国のの属国。安倍政権は保守ではなく、対米追従勢力にすぎないんじゃないか」とし、枝野を「保守」と見て立憲民主党を応援する時代だ。保守を説いてきた西部も日本の現在にいい加減うんざりしたのではあるまいか。

○月○日 スパコンの開発会社「ペジー」社が、政府の支援事業の助成金4億円余りをだまし取ったとして、社長の斉藤元章が逮捕された。このペテン師、安倍発案の「2030年展望と改革タスクフォース」なる有識者会議の委員の由。ペジー社に流れた金は総計00億と出ているが、この男は「シンギュラリティ財団」の創設者だという。怪しげな横文字を並べた財団だが、そのインチキ臭さを証明するのが」代表理事の名前。「山口敬之」。左様。前にこの欄で取り上げたジャーナリスト伊藤詩織女を強姦したとして、同女から訴えられている男にして、かつ安倍ヨイシヨの本「総理」の著者。アベノミクスが言うトリクルダウン(金持ちの金が下層にしたたりおちてくる)は庶民には実感がないが,安倍「したたり」は安倍に群がる連中には確実にこぼれている訳だ。大した仲間意識だなあ!!

○月○日 前号で貴乃花を礼に欠けると非難した池坊のオバサンの事を書いたが、その後喉がいがらっぽくなったので、耳鼻科に薬をもらいに行って、待合室の週間誌を見ると、このオバサン、過去2度亭主(と言うことは池坊家元)から縁切りされそうになっていて、その理由の①は、子供の家庭教師の京大生と居間で半裸でナニヤライタシテオル所を帰宅した亭主が見つけて云々。②は、50歳過ぎてから米国の何とか誌に自分の半裸写真を出した事。2度ともオバサンが詫びて離縁とはならなかった....で、週刊誌の結論、「貴乃花に礼節を説く柄か!!」と。へえーとびっくらこいて帰路ツタヤで他の雑誌を見たら、皆同じ趣旨の記事が載っていて、結論オバサンout!!、たまげたねえ。

○月○日 我妻さんの誕生日と我々の結婚記念日は1日違いなので。毎年同時に祝う。で今年も記念日に温泉に一泊。台湾も韓国もヨーロッパも、皆嬉し気に湯につかってバイキングで喜んで...と翌朝ロビーで見た新聞に青山繁晴と百田尚樹共著の本の広告が出ていて「第三次世界大戦を覚悟すべきだ」とブッテいる。埒もない話で世を煽って自分の懐だけを肥やす困った連中。この青山、モリ•カケ問題の閉会中審査で、安倍をヨイシヨの質問をしていたが、たしかそのちょっと前位、どこぞの金を400万横領!とか週刊誌に出てなかったかな。A.ビアスの「悪魔辞典」風に言えば、「愛国者をよそう卑劣漢」が横行しておるな。

○月○日 2月15日のニュース。非常勤講師に大量の雇い止めを通告した日大を、組合が刑事告発したと。思えば1960年代の大学紛争も、発端は日大の古田学長の不正を学生が摘発した事だった。日大は変わっていないのか。それに較べると室工大は偉いぞ。昨年非常勤職員を無期限雇用にするとし、又防衛省の金をもらっての軍事研究に、大学として協力しないともした。大いに褒めるべきではあるまいか。

○月○日 必要あって伊丹十三の作品全部を見直したが、今時ピッタリなのが「マルサの女Ⅱ」。国税局vs悪徳政治家&ヤクザの構図(カマキリ男の佐川に是非にも観て欲しいものだ、と言っても観る筈ないか)。国税局の特捜班の果敢な戦いぶりが小気味良いが、結果は悪徳政治家の勝利に終わって、大物ぶっていたヤクザの三國連太郎は政治家に見放されて消される。籠池も入ったまま出てこないが、これと似た事にならないか。心配する筋合いでなないけどね。

○月○日 必要あって海老蔵の「一命」を観直した。関ヶ原の後,禄を失った武士が病妻の医薬料3両を稼ぐべく「ニセの切腹」を目論んで逆に詰腹を切らされる悲劇。当節の生活保護の問題にも思いが及んで腹立たしい。これ又必要あって三船と仲代の「上意討ち」を観直した。こっちは「拝領妻」をめぐる物語。馬鹿殿を頂点とする御家大事の思想に、最後に歯向かう父と息子(加藤剛)と嫁(司葉子)の話。これと一緒に中村錦之助と有馬稲子の「武士道残酷物語」も観直した。これは家族代々武家(=組織)の倫理(=只管上に従う)にしばられてきた一族と、現代に生きる末裔が最後にそれを破って己一個の幸せに生きようとする話。この作観て、日本人てのは組織の中にいて、歴代忖度に生きてきた人種なんだと思わせられる。安倍だ、石原だ、鳩山だ、小泉だ、橋本だ(順不同に)と、どう見ても日本を益せぬ事ばかりやっている連中に,してやられ続けているということは、、選挙においてさえまだまだ組織への忖度が優先した人間ばかりがいるせいではなかろうか。

○月○日 忖度通り越しての奴隷根性ぬけきらずに、今度の裁量労働制とやらを含む「働き方法案」なるものにも、唯々諾々と従うつもりなのかね。厚労省も我国民も?

○月○日 帰宅したら元北海道新聞社記者の名和昌介さんから「生前遺稿集 笑say(エッセイ)が届いていた。確か2000年に札幌転勤記念で「ふくろう文庫」に寄付してくれ、それで「山中常磐絵巻」と「輪島塗」の大冊を購入できた。文庫5000冊達成の時のパーティーにもお祝いに来てくれ、その時の話では早期退職して。その後は人類発祥と進化、移動、拡散の痕を訪ねる旅をしている云々。そのあと、世界訪問の写真展をやるとの知らせが来たので、札幌まで観に行った。各地の人々の生活を活写した、いい写真が並んでいて感銘した。20年程前、図書館で話し込んでいて感じた飄々とした人柄と風貌は今も変わらず、真にこのましく懐かしい人物だ。

○月○日 2月20日「アベ政治を許さない」の俳人・金子兜太が死去。哀しいね。

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