◯月◯日/コロナ騒動で触れるのが遅くなったが、5月21日に画家の菊畑茂久馬(きくはたもぐま)が没した。85歳。私は「あんな本・こんな本」の2011年10月・11月の合併号でこん人の「天皇の美術ー近代思想と戦争画ー」(フィルムアート社1978年刊¥1,800)を取り上げたことがある。(第312回)画家藤田嗣治のインチキ性を指摘した人で、また筑豊炭鉱の坑夫の坑内の生活を描いた山本作兵衛の作品をユネスコの世界記録遺産に登録するにも尽力した。真面目な人が又一人減った。惜しい。
◯月◯日/去年6月封切りのフランス映画「アマンダと僕」は秀作だ。パリ市内の公園で起きた銃撃事件で姉を失った24歳のダヴィッドと母を失った7歳のアマンダ、つまり叔父と姪の話だ。残された2人にはこの先どうやって生きて行くのか。悲劇の二人の表情が飛び抜けていい。そこを「藤原帰一の映画愛」では青年役を褒めて「心のひだを文字通り顔だけで伝えてすこぶる上手」と書き、さらにアマンダ役の少女を「この少女が又良くて、その表情を追いかけるだけでもう映画になってしまう」とほめる。この評全くその通り。
◯月◯日/この2人の演技に通底する静けさ、それは悲しみの場面でも喜びの場面でも変わらない。観ていて人の心に響いてくる。それに比べると邦画は...例えば「7つの会議」。野村萬斎と香川照之他。となると、この2人のみならず全員、これ、どこかの病院から顔面神経患者を病棟毎借り出してきたのかと思われる程に、顔全体をひくつかせ、更に顔を相手の顔に触れるほどに接近させて、目をおっぴらいて怒鳴り合うと言うより絶叫する。怒鳴って大声となる上に、唇ひん曲がってるから何言ってるか聞き取れない。只々騒がしく大げさなだけだ。心に何も響いてこない。
◯月◯日/普段テレビをみない私でも、香川がナントカ言う焼肉のタレ(だったと思うが)の広告に出て百面相を演じたくらいは知っている。あれで悪い癖が出来たのだろう。今邦画全体にこの大げさな演技が広がっている気がするどこの世界にあんな顔を近寄せて、顔面引きつらせて怒鳴り合う人いるかーと思って、ひょっとして「半沢直樹」とやら辺りから流行ってきたのではないかと気付いた。しかし監督も何故こんな演技を止めさせないのかね。事、感情表現に関しては韓国、中国、欧州の役者達の方がはるかに上手と私は見ている。香川も提灯持ちの広告にばかり出ているから、あんな百面相男になってしまったんだろう。
◯月◯日/英国には英国を代表する音楽家達を称えるために記念硬貨を出す仕組みがあるそうで、7月6日に歌手エルトン・ジョンの硬貨が発表された由、これ第二弾で最初はロックバンドの「クイーン」だったそうな。「クイーン」と言えば去年観た「ボヘミアン・ラプソディ」は素晴らしかった。「クイーン」のボーカルだったフレディ・マーキュリーの半生を描いたもの。それで中国で公開となったはいいが、ゲイの描写はよろしくないと何ヶ所もカットされた。下らぬ事をする習近平だ。
◯月◯日/東京駅を設計したのは辰野金吾だが、その息子の隆(ゆたか)は東大仏文科最初の教授だ。日本のフランス文学はこの隆と同僚の鈴木信太郎によって先導された訳だ。隆は太っ腹の物にこだわらない人だったが、飛行機が嫌いだった。その理由は「あんな鉄の固まりが空を飛べる筈がない」と言う甚だ非科学的なものだったが、これはまあ、隆流のユーモアというものだろう。私も飛行機が大嫌いだ。その理由は離着陸前後に「これより先◯分間トイレ使用を禁じる。動くな」という指示が好きでないからだ。まあ、これは私個人の勝手だからどうでもいいとして絶対乗りたくない飛行機もあると最近知った。
◯月◯日/事が起きたのはパキスタン。過ぐる5月25日、国営パキスタン航空機が南部のカチラで墜落。97人が死亡したが、原因不明で出て来たのがパイロットの質。と言うのは2018年以降にパイロットと航空局の癒着が進んで、結果替え玉受験などでパイロットになったのが262人もいて、これは全パイロットの3割強になるというから呆れる。こんな出来の悪いパイロットが操縦する「鉄の固まり」には乗りたくない。しかし、偽パイロット本人自体が自分でおっかなくならないのかな。パキスタンには行かずにおこう。
◯月◯日/6月下旬の新聞に読者からの一枚の写真がのっている。「あざさ」が2つも咲いたよというもので、朝の気温が20℃以上にならぬと咲かぬ珍しい花とある。モノクロなのが残念だが実際は鮮やかな黄色い花だ。万葉集にも出るし、中国古典にも出る。色々と話題に飛んだ花でここで語り尽くすのは無理だ。そのうち室蘭民報連載の「本の話」で取り上げるとしよう。
◯月◯日/中国、香港締め付けの諸々が連日放送されているが、「国家安全維持法」施行となって、香港の公共図書館から民主活動家らの著作が消えた。つまり「閲覧不能」だ。これに対して民主派の区議達がこれは「出版と言論の自由の弾圧だ」との抗議を始めたが、この時彼らが手にしたポスターの大文字が如何にも中国振りだ。それは「今日禁書、明日抗儒」と言うもの。これはいい。説明不要と思うが若い読者のために説明する。秦始皇帝が言論統制を図って書物を集めて焼き捨て、儒者を捉えて穴に生き埋めにした事から学者が政治的に迫害に遭って学問が弾圧されることを言う。司馬遷の「史記」に出る話で生き埋めにされたのは460人だった。今の習近平を見ていると始皇帝以上のことをやりそうだ。
◯月◯日/トランプが6月19日の「黒人解放記念日」の翌日オクラホマ州のタルサで選挙集会を開いた。ここ901年の石油発見で栄えた町。集会が揉めて退場となったトランプ側はバックにローリング・ストーンズの「無情の世界」を流した。これに対してストーンズの著作権管理代行の団体BMIが「禁止を破り許可されていない楽曲を演奏したのは訴訟に値する」と警告した、というのも2016年、既にトランプに対してストーンズは「自分たちの曲を使うのは許さない」とした既成事実があるからだ。
◯月◯日/これで思うのだが、我が国の星野源とやらも自分の曲にのっかって変てこな自家宣伝をやって笑われた安倍に対して「自分の曲は使うな」位の骨っぽい所を見せられなかったもんかね。それとも星野は中井貴一同様、安倍応援団なのかね。ところでこのサルタ、1921年に黒人の大虐殺があった所。それともう一つ、有名な黒人暗殺集団クー・クラックス・クラン=KKKの幹部デヴィット・デユークの出生地。父がシェル石油の社員だった。トランプの行きそうな所だ。
◯月◯日/7月8日朝刊に「高島屋初の赤字205億円」と出ている。あの天下の高島屋がだ。その隣に出ているのは西川前社長に4億円超支給・日産自動車」との見出しで、御存知ゴーンの後を継いで、しかもゴーンと同じく報酬不正問題でやめた西川廣人が4億1200万の退職手当他をもらったというのだ。ゴーンは2万人の首を切って日産を立て直し(?)その挙句2018年の11月29日に逮捕され、とナニシロにぎやかな男だが、私が不思議でならないのはその日産の車に乗る人。単純な言い方だが日産のユーザーなる人はゴーン、西川に体現される日産と言う会社に腹が立たぬのだろうか。
◯月◯日/私はは女性のスカートが短ろうが長かろうがその足が太かろうが細かろうが全く関心がないが、去年の6月下旬、朝日だったか毎日だったかに「娘よ、短いスカート反対です」との投書が載り、これに対して賛否両論が出て一時賑やかだった。いわゆる「ミニスカ」と言えばそれを発表したのは1960年代、フランスのアンドレ•クレージュなる服飾デザイナーで「クレージュの白」と言われた白の色使いで有名だった。こんな事を思い出したのは長雨続きの後、ミニスカの若い娘を見て単純に「こりゃ,きれいだわ」思ったからで深い意味はない。
◯月◯日/ゴーンは故郷レバノンに逃げ帰ったが、そのレバノンから素晴らしい映画が生まれた自身レバノン出身の女性ナディーン・ラバキ監督による「存在のない子供たち」。レバノンは150万人を超す難民を受け入れている国だが経済の悪化は尋常でない。その中で悪戦苦闘する失業者の子沢山一家の物語だ。日本人には想像もできぬ児童婚、里子ビジネスetc。出生届がない為に年齢不詳(12歳位らしい)ゼインは如何にしてこの理不尽な世界に立ち向かうのか。この少年の怒りと悲しみの表情が素晴らしい。さっきも書いたが、香川だの野村だの最近の中井の「記憶に御座居ません」などの百面相+絶叫型の演技が心底馬鹿に見えてくる。
◯月◯日/ついでに言うと、児童婚とは18歳未満の女児、少女が親の借金の代わりなどの理由で、エラク年の離れた男と結婚させられる事で、「世界人口白書」によると、世界各地でいまだに毎日3,3000件起きている由、おまけに児童婚の犠牲になった少女たちの数は全体で6億5000万人に上るというのだから想像を絶する。「存在のない子供たち」でもゼインの妹が僅か11歳で家賃代わりに年上の大家に渡される。絶句するのみ。
◯月◯日/安倍は1機236億円するF35ステルス戦闘機を105機トランプから買った。〆て2.5兆円。この数2010年に約3兆1500億円で84機買ったサウジアラビアに次ぐ額だと言う。こう聞くと、前にサウジアラビアで起きた米国人記者の惨殺事件にトランプが深入りせず知らん振りしたのもうなずける。
◯月◯日/日本図書館協会は5月14日発表のコロナ対策ガイドラインで、来館者の名簿作成と公的機関への提供を認めるとした。聞いて何を馬鹿な事をするのだろう、タガがゆるんでいるのではないかと思っていたら、図書館問題研究会が抗議した。その理由は言う迄もなく「図書館の自由に関する宣言」に反するというものだ。加えて6月30日になって、今度は日本出版社協議会が、これと同様、来館者名簿の作成は利用者の秘密を守るという「図書館の自由に関する宣言」に反すると反対の意を表した。心強い。それにしても各図書館の玄関先にかかげてある「図書館の自由に関する宣言」を真っ向からから否定するような動きをするとは、日図協もボケてきているのではないか。
◯月◯日/舞台関係者がコロナに感染した事について、石原の「当たらぬ気象予報士」と言われた息子が一丁前に批判して「〜のまくまにどうこうして」と発言している。
「まくま」なんて日本語あるものか「幕間」の読みは「まくあい」で「まくま」は文字に引かれた誤読だ。こんな字も読めぬとは!まあ三文文士息子ならこんな所か。
2020.7.11 山下敏明
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