司書独言(237)

○月○日/私は地元紙「室蘭民報」に「本の話」なるコラムを月2回で33年間連載している。担当者によると地方紙連載ものとしてはギネス級だと褒めてくれるが、2004年には、その①から200回をまとめて「本の話」として出版した。全353P+索引28Pの本だ。2010年には「本の話」「続」を出した.201回から371回までを集めて、全401P+索引32P。いずれも¥2,300

①は売り切れて全部ナシ.続は残部僅少。新聞連載の方はこれを書いている今、2021年12月18日現在で、845回。原稿は来年2月5日分の849回分が既に新聞社に届いている。そこで、ある人が、売り切れた①をアマゾンで探した所、¥4,999で出ていたことを教えてくれた。

○月○日/ ところで、そのアマゾンだ。ご存知のように12月10日から11日にかけて、米国の南、中西部の6州で大型の竜巻が相次いで発生して、ケンタッキー州が最大の被害を受けた。この竜巻がイリノイ州にも出現して同州エドワーズビルにあるアマゾンの集配所がやられて、労働者6人が死んだ。アメリカでは公立学校で、竜巻を想定した避難訓練が行われているというのに、同社では一切それをしていなかったと言う。更に労働者の一人が竜巻発生を前に「アマゾンは我々を家に帰らせてくれない」と友人にメールしていた由。

○月○日 /これに対してRWDSU(小売、卸売、百貨店労働組合)が、「竜巻警報が出る中、労働者が仕事をさせられているのは許されない」とし、「従業員の安全と健康より利益を優先させるアマゾンの姿勢が又示された」との非難声明を出したそうな。当たり前だ。

○月○日/ 一方岸田がスガの跡をついで又又、富者が更に富めば、その富の一部が貧者にしたたり落ちてくるなる、いわゆる「トリクルダウン」なる妄説を唱えているが、これが有りえないことは、アマゾン一社の例でもよく分かる。私の友人に富者はいないが,知っている富者はいて、その連中はいずれもドケチで「したたり」なんぞおよそ期待できた話ではない。いつまでもこんなバカな経済論がまかり通るのか?。岸田達を支持する連中は自分も富者のつもりでいるのか。

○月○日/ 杉田水脈と言えば、安倍の「ひき」のおかげで国会議員になったことは誰もが知る所。この薄汚れた女については、かって東大の上野千鶴子が「杉田は安部の走狗で、用済みになれば安倍から放り出されるのだろう」と痛烈に批判したことがあり、私もそれを「本の話」で紹介したものだ。「走狗」とは言うまでもないが「人の手先となって働くいやしい者」の事で「権力の走狗となる」などと使われる。

○月◯日/ これは又ご存知のように「狹兎死して走狗烹らる」なる中国古典の「韓非子」又「史記」にもある格言から来ている。「狡兎」はすばっこしいウサギ。「走狗」(良狗とも)は飼い主に忠実な猟犬。ウサギが死ぬと猟犬は不要、と言う訳で、利用価値ある間はこき使われるが,無用となると捨てられてしまうことで、上野は杉田を「無用となるとなって煮て食われる犬」にたとえた訳で、ピッタリだ。

○月○日/ さて、その「走狗=杉田」だが、今同志社大の岡野八代教授らに訴えられている。事の発端は杉田が「日本軍慰安婦」問題やジェンダー・フェミニスムの問題について研究している岡野らを「国益に反している」とか「捏造している」とか「学術研究ではなくて反政府活動であるとか、と中傷したことにある。それでこの訴えは「国会議員の研究介入とフェミニズムバッシングを許さない裁判」と呼ばれる。杉田は裁判を欠席して逃げまくっているが、この「走狗」が煮られるのはいつか。「日本維新」の面々が、国会で「従軍慰安婦」の「従軍」をとれと主張している今、しっかり見届けたい。

○月○日/ 自民党が12月13日の党紀委員会なる所で山崎拓之副総理を1年間党員資格停止処分にした。これで党内の会議にも出席禁止だという。その理由は先の衆院選で,立憲の辻本清美を応援したからだという。自民の現状に不満があるからこそ立憲を応援したのだろうが、その点を反省もしないで、この長老ー過去にスキャンダルがあったにせよーを痛めつけるとは非情なもんだ。自民の自浄という事から言えば、山崎を切るよりアベやスガ・アソウを切った方が余程きれいさっぱりとなると思うけどね。

○月○日/ そうかと思えば立憲は14日の常任幹事会とやらで、菅と野田を最高顧問にし、岡田克也と郡司彰を常任顧問にした由。素人目には立憲をダメにしたカンだ、ノダでは全くパッとしなくて、何やら敬老会の同窓会みたいな感じだけど、これでいいのかね。

○月○日/ ドイツの新首相ショルツが12月15日の初の施政方針演説で「石炭火力発電廃止」を2038年から2030年へ前倒しすると発表。一方11月13日まで開かれた「COP26」=(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)で「石炭火力発電の段階的削減の加速に言及する成果文書」を採択して終わった。この「脱石炭」で思い出す小さな私事がある。

○月○日/ それは、母子家庭で兄も東北大に行き次いで自分も東北大に進んだSの事。このSが卒業時就職試験で上京し、私の下宿に2週間泊まり込んで数社を受けた。その一つは北海道拓殖銀行(=拓銀)で、ここは母子家庭はダメ(とSは言っていた)とて不合格。(ここで思い出したが、”フクロウ文庫”を手伝っていた老女が昔、拓銀を母子家庭の児はダメと落とされたと言っていたから、そういう理不尽な時代だったのだろう。)

○月○日/ そのあと受けた数社で、Sが合格したのが太平洋炭坑(釧路)だった。その面接でSは聞いたそうな。「石炭はあと何年位掘ればナクナルんですか」と、すると人事係が色を成して、「馬鹿なことを聞くんじゃない、あと、2,300年掘っても無くならないよ。余計な事を考えるな」と言ったそうな。然し世の中わからないものだ。海の底に石炭は大量にあるだろうがその「太平洋炭坑」が閉坑になっちゃってSは失職。その後のSの歩みは省くが、ある時Sからペンネームで1冊の自著が送られてきた。見ると400冊の本の紹介でナント400冊全部競馬の本。

○月○日/ 私は全く気づかなかったが、Sはまあギャンブル好きだったのだ。これで思い出したのは,私の下宿から就職試験に通っていた時、 Sが時々いなくなることがあって、それが偶然にパチンコ屋に行っているとわかった事があった。

○月○日/ Sは先記の競馬の本を私に送るについて、東北大を出て高校の国語の先生になっている兄に聞いてみた。すると兄は、私の「本の話」を読んでいて「山下はお前のように競馬だ、パチンコだはしない。正統的なそれも長いものをじっくりと読んでいるようだから、この本は笑われるぞ」と言われたとて、それでも一冊送ってくれたのだった。

○月○日/ Sで又妙な事を一つ思い出した。それは……,先日中学生が①自分の会話最中に割り込んでくる。②生徒会の選挙応援を頼まれたのがイヤだった。etcで同級生を包丁で刺殺した事件があった。ところで、私は高2の時に数学の巻口先生から生徒会長に立候補せよと言われた。私はなる気がないし、噂ではTが立つと言っているからTがいいのではと答えた。すると先生はお節介にも私とTを「そば屋」に連れて行き。いわゆる調整をはかった。結果Tは立たない。私が一応政策(というと大げさだが)演説をすると、決まっって、私の責任者はSとなった。

○月○日/ 更に選挙公約の演説には応援弁士が必要とて7人が決まった。それが、イヤハヤ、演説会前日、Tが前言を翻して立ち、かつ、こちらの弁士を引っこぬいた。当日になって、これを知ってSと私は慌てるより、呆れるだけだったが、この弁士引き抜きはNの仕業だと分かった。Nはその後北大に進み、出てSを不合格にした「拓銀」に入って、東京勤務となり、在京の同窓生に声をかけて預金をあつめた。それが「拓銀」倒産となって、同級生の言うには金が戻らずとなって、Nは大いに恨まれた。倒産以来Nは同窓会はおろか、一切の会合に出て来ない(これない)と言う。

○月○日/ 先の中学生の殺人に戻ると、私は応援を頼まれたどころでなくて、弁士を引き抜かれるという、何のためか分からぬ裏切り行為にあったのだが、くだんの中学生なら、これで殺意を抱くのだろうか。私にはその怒りが全くわからぬ。私は万事「カッ」となる方でなくて「じわじわ」と腹が立つ組でそれよりも更に「悲しくなる」方だ。ナンデこんなことをするのかなあ、という「悲しみ」だ。今人前に出られぬNはきっとナニカの「罰」に当たったのだろう。Tも在京の同窓会に来るが、何故か周りから「浮いて」誰も相手にせぬそうな。気の毒に。

○月◯日/ 「連合」の新しくなった芳野友子会長が「共産(党)は指導部が決めたことを下におろしていくトップダウン型で、民主主義の我々と共産(党)の考え方は真逆方向を向いている」と発言したそうな。そうかなあ、一寸眉唾だなあと思っていたら、案の定、共産党の志位委員長が、事実と違う、として「具体的に根拠を示して欲しい。根拠なしにこういうことを言うのは、ナショナル・センターのトップの発言として私たちは認めるわけにはいかない発言になります。」と抗議した。12月17日の事だ。

○月○日/ 私が「そうかなあ」と連合トップの言に首をひねるのは当市でも「連合」に絡む事件が2度あったからだ。いずれも現市長にからむ事件だが、最初は市議上がりの現市長に対して定年を迎えた市職員が対抗馬として出た時、市職組は当初、定年を迎えた方を支持すると出たが、これが連合の口出しで現市長支持にさせられたというもの。2回目は現市長が連続するとなった時、この市長の下では仕事ができぬと市職組が、新聞で表明して、それを連合上層部が潰した事件で、2回とも地元紙他にも出たからうつろな話ではない。この二回を見る限り、下を上がつぶすという構図で、つまりは「トップダウン型」と言う事にならないのかね。潰した側に聞いてみたいものだ。

○月○日/ 小笠原諸島の海底火山「福徳岡の場」の噴火で生じた軽石があちこちで操業に害をもたらしている。そんなある日新聞の死亡欄を見ていたら、「軽石」という苗字を見付けた。どこの誰とは書かないが、時が時だけにびっくりした。おまけに言うと、その近くに「砂盛」という苗字もあった。いるもんだなあ。

○月○日/ 前号で「サハロフ賞」について語ったが、12月15日フランスのストラスブールで授賞式があった。受けたのはロシアの反体制派の指導者アレクセイ・ナワリヌイだが、目下プーチンによって収監されているので、変わって出席したのは、20歳になる娘のダリア。今プーチンの名をあげたが、目下驚くべきは、世界中で民主主義の国より、全体主義の国の方が数において勝っているという事実。こうした事を背景にダリアは「冷笑主義や、偽善、腐敗があるとはっきり言うべき時だ」と主張した。偉いものだ。全く同感。

○月○日/ さっき、連合に対する志位委員長の抗議に触れたが、そう言えば共産党から抗議された事件がもう一つあった。毎日新聞の12月6日に出た「風知草」なるコラムについて、連合同様根拠のない事を書かれたという抗議だ。書いたのは毎日の特別編集委員なる肩書きの山田孝男。このコラムは毎回私も読んでいて、時々違和感を感じていて、この違和感はどこから来るものだろうと考えていたが、ある時それが分かった。山田は安倍のお食事仲間なのだった。欧米ではジャーナリストは時の政府の要人と会食する事はあり得ぬとされているが、日本ではそうではない。

○月○日/ 有力者の金で寿司を食うのが大好きなので「田崎寿司郎」と仇名される爺さんは別格として、この山田も安倍の食事のメンバーとして新聞によく出る。又札幌出身でニューヨークの弁護士と名乗るナントカというテレビタレントも先頃「共産党は暴力革命を是とし〜」とかと事実無根説を述べて歯切れの悪い謝罪をさせられたが、この蜜に集まりアリみたいな連中、テレビのコメンテーター。新聞の論説委員たる役目のあり方をどう考えているのだろう。イヤシイやつらだ。

2021.12.17

山下敏明

 

 

 

 

 

 

 

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