司書独言(236)

◯月◯日/ 新聞の文芸欄に「穭田をむかしグラマン今ミサゴ」(稲垣長)なる句が載っている。「ひつじだ」?と記憶を辿って、あーあれだと古今集を思いだした。

NO,308の「かれる田におふるひつちのほに出でぬは世を今さらにあきはてぬとか」だ。、その意味は「刈り取りをした田に生えてきたひつちが穂を出さないのは、今あらためて、世の中に飽きてしまったと言うのであろうか」「ひつち」は今は「ひつじ」

◯月◯日/ へえー、こんな言葉が今も生きているのか〜と驚いて、常用している金子兜太の「現代歳時記」(成星出版)に当ると「穭(ひつじ)」=「稲孫田」(ひつじだ)とあって稲刈りのあとの稲の切り株とあり,放っておくと稲の出ることもある」とある。これ現役の季語なんだ、と感じて序でに滝沢馬琴の「俳諧歳時記栞草」を見たら「秣=(ひつじ)=再び生きる稲なり」を出して、先の古今のno308を引いてある。なるほどなあと納得して、もう一つ序でだから、この句を切り抜いて「西行全歌集」(岩波文庫)にはさんだ、こっちは「鶉(うづら)伏す刈田のひつちを生(を)い出でてほのかに照らす三日月の影」だ。

◯月◯日/ 最初の投句を補足すると、グラマンは太平洋戦争中、日本中を襲った爆撃機、ミサゴは魚だけを食べる大型の鷹で英語で言うとOsprey。

◯月◯日/ そのオスプレイとは御存知,矢鱈と事故が多いので、アメリカでは「未亡人製造機」と呼ばれているヘリコプターの一種。これが今、我が物顔に日本の空を飛び回っているが、何故そんな勝手な振る舞いができるのかとなれば、「配備自体はアメリカ政府としての基本的な方針で、日本がそれをどうしろこうしろと言う話ではない」とまるでアメリカ人のように答えた野田のせいだ。「野田って誰?」就任時自分を「ドジョウ(だったか)」にたとえた、あの顔まで鈍重な総理大臣、野田のこと。これ 孫崎享(まごさきうける)の「アメリカに潰された政治家たち」(河出文庫)に「オスプレイが示した野田政権の本性」として出ている。本書を読めば、日本がアメリカの属国たることがはっきりするね。

◯月◯日/ 10月に入って、北海道の太平洋沿岸に赤潮が発生、ウニ、サケの大量死が続いている。このウニ、私が小学生の頃は、バフンウニを「ガゼ」と言い、ムラサキウニを「ノナ」と区別していて、尚かつ、「ノナ」は一段下に見られていた。電信浜の隣りのポン・モイ(小浜)には漁師のせがれの、田嶋、岡、成田と言う同級生がいたが、彼らの話では「ノナ」なんてとれたって捨てちゃうよ、と言うことだった。ポン・モイの隣りには「黄金の滝」と呼ばれる所があって、そこの下でとれる「ガゼ」が一番肥えていると言う話だった。何故か、実はこの「黄金」は人の糞尿のことで、昔は肥(こえ)を集めた馬車が、この断崖絶壁に、ギリギリまで近づいて、上から肥えをしたの浜に捨てていたからの名称だ。一度その場面を見たことがあるが、馬車を後ろ向きにして、「バイキ、バイキ」と馬に号令する。「バイキ」は「バック」のなまりで、つまり「バック、バック」これ以上は馬車が落ちると言う所で肥えを流し落すのだ。

◯月◯日/ 今では考えられぬ話だが、これは本当の話で現に中学で私の一年上だった双子の父がこの馬車を引いて歩いて、各家庭をまわっては便所から長い肥柄杓で糞尿を汲んでは馬車の肥桶に入れていた。これ、つまりは今のバキュームカーだ。ところで北海道弁の「ガゼ=ウニ」の語源はと言うと「北海道方言辞典」で石垣福唯は「催馬楽」(さいばら)に出る「御肴(おさかな)に何良けむ、鮑、さざえか、かせ良けむ」のかせだと説く。だとしたら、随分と古雅な言葉を我々は使っていた訳だ。因みに「催馬楽」とは「奈良時代の民謡を平安時代に雅楽にとりいれたもの」だ。今、回転寿司で出るウニは私の見るところ皆「ノナ」だね。

◯月◯日/ 10月25日、小樽での街頭演説で麻生が又馬鹿を言った。「昔は北海道の米は”厄介道米”と言う程売れない米だったが、今はやたらうまい米を作るようになった。農家のおかげですか。農協のおかげですか。違う、温度が上がったからだ」がそれ。気候変動の危うさを警告する日本人の研究者がノーベル賞を受ける時代にこの呆言(ほうげん)。しかも農政の無策で米価は下がる一方のこの時。北海道の農民の苦闘の歴史を知ってか知らずか?「農民運動全国連合会」が岸田に麻生の副総裁解任を求めたと言うが、北海道農協も行動を起こすべきではないのかね。

◯月◯日/ 先日「麻生につける薬はないのか」と書いた論者(名前は失念)がいたが、これは無理だ。昔から「馬鹿には付ける薬はない」と言うではないか。これは日本だけの認識ではなくて、英語でも「Fools   will  be  fools  still =馬鹿は常に馬鹿=馬鹿につける薬はない」と言うぞ。序でだが「馬鹿は死ななきゃ直らない」と言うのは「森の石松」を語った広沢虎造が作った名せりふと思っている人がいるだろうが、これ実は十辺舎一九の「六阿弥陀詣」(ろくあみだもうで)に出る言葉で〜「とてもお前の馬鹿は死なザア治るめい〜」が元。然し、麻生はタダの馬鹿ではなくて、ろくでなしの根性悪なのだ。そのうち麻生一族の数々の悪行をまとめてみよう。

◯月◯日/ 選挙も迫ってきた10月28日の朝刊に「アベノマスク」が3月末時点で未だ3割の8272万枚残っていると出た。総額118億だと言う。その保管料たるや、去年8月から今年3月迄で約6億円、月7500万円の由。それなのにこの馬鹿マスクを出した安倍は、そんなことはどこ吹く風、の態で、菅と一緒に「五輪はやってよかった」「五輪でコロナが増えた訳ではない」などと遊説している。私は安倍を「先天性虚言症」と呼んでいるが、それは安倍の父親の言に基づいている。先頃ガンで死んだジャーナリストの岸井成格が安倍の父晋太郎に息子の晋三について訊くと「晋三は出来が悪いんだけど、ただ言い訳の天才だ」と言ったと言うもの。国会で100回を越す嘘をついても、嘘と思っていなそうな感じは,この辺りから来るのではないだろうか。

◯月◯日/ この話、望月衣塑子(いそこ)と佐高信の対談集「なぜ日本のジャーナリズムは崩壊したのか」(講談社α新書.2020刊,¥880+税)P62に出ている。望月はご存知、東京新聞のの記者で、スガを鋭い質問でタジタジにさせた人。その著「新聞記者」は映画化された。日本アカデミー賞を受けた。いい映画だった。観るべし。「ドキュメント新聞記者」なるDVDもあるぞ。

◯月◯日/ 私は肉が好みでないので自分から食べたいと思わないから「マクドナルド」のあの3段重ねみたいなものをたべたことがない。おまけに高校生の時に大あくびをして顎が外れたことがあるので、今も大口開けて笑わずに、おちょぼ口で上品に笑っているくらいだから、あの3段重ねに大口開ける気はない。そのマクドナルドの本家本元アメリカの各店が12の都市でストライキを行っていると10月末に報じられた。原因は、マクドナルド各店で女性従業員に対するセクハラが続いているからだと。こんな話を聞くと、ますます三段重ね食いたくないな。アマゾンも労組が作られて、低給料をあげろとて会社に抗していると出ている。大いにやるべし。

◯月◯日/ ブリジット・バルドー(87歳)が、インド洋のフランス領、レユニオンの島民を「野蛮人」とののしって、県都サンドニの裁判所から約260万円の罰金を払うよう命じられた。11月6日のニュースだ。ブリジット・バルドーと言っても若い人は分かるまいが、1950年代世界的な人気を誇ったフランスの大女優だ。頭文字をとっての愛称は、BB(べべ).グラマーで奔放で可愛かったが、その男性遍歴がすごい。例えば、トラティニヤン、ジルベール・ベコー、ラク・ヴァローネ、ジャック・シャリエetcと言う具合。皆、男優、シャンソン歌手。若い頃は高価な毛皮に身を包んでいたが、年をとるとその罪亡しにか、動物の愛護活動に乗り出して有名になった。今度の事件も何かそれに関係するかも知れぬ。それはともかく、懐かしい名前がでてきたもんだ。

◯月◯日/ 私は「ふくろう」の諸々を蒐めている。50年も前だろうか、我妻さんがアラスカから土産に持ってきてくれたのが、両手でやっとと言う重たい黒っぽい「みみずく」で見て彫刻と思ったのが実はロウソク。背中に灯芯が付いている。見事な造形でもったいないからともした事はないが、これに刺激され、更に「ふくろう」はギリシャで女神アテナに仕える芸術文学のシンボルと言う事から蒐め始めて、今は何個あるか数えようもない。「ふくろう文庫」の名をつけたのもこれがきっかけ。文庫の展示会の時には、電気スタンド、置物他を所せましと並べてきたものだ。中にたったひとつだが「面ふくろう」が羽を広げて飛んでいる型のブーメランがある。

◯月◯日/ 「Boomerang」とは、ご存知、オーストラリア原住民が狩猟用に使った、くの字型の木製武器で、投げると弧を描いて回転しながら戻って来る(筈だが、なくしても困るから、それはやらずに)壁に掛けてある。所で、11月6日にオーストラリアのフリンダース大学の研究グループが考古学誌の「オーストラリアン、オーケーオロジー」も発表した論文が紹介された。それは、南オーストラリア州北東部の小川で発見された4つの「戻ってこないブーメラン」。これを年代で検証すると、1650年〜1830年の間のもの。これは動物を捕まえるためのものではなくて、儀式で使われたとみられると。これで「オーストラリア先住民の日常生活を探る助けとなる」が、エイミー・ロバーツ教授のの結論。最初「戻ってこない」?失敗作か?と思ったがそうでない訳だ。フーン!!余り面白くないね。と言われても私の責任じゃないけどね。

◯月◯日/ 総選挙も終わった、その前後で腹立たしい事はたくさんあるが、そのひとつに例の婆さんの事がある。瀬戸内寂聴だ。この老婆については今までも何度か書いてきたが、矢張り書いておこう。この老婆、菅が首相になった時になんと書いたか。「菅首相は立ち居振舞いもお行儀の良い紳士に見える。容貌も整っていて、品もあり、立派な首相面をしている」。そして、菅が「自助、共助、公助」を揚げた時にNPO法人「暮らしネット・えん」の小島美里と、経済評論家の勝俣和代の2人がその「自助」策に反対すると、それを「聡明な女性たちから、コテンパーにやられてしまった」とオチョクリ、自分は生涯「自助」を貫いてきたと自慢たらたら、菅をかばった。

◯月◯日/ 又、安倍についてはどう書いたか。「〜表舞台から去った安倍さんは、居なくなったら、まあ。あんな見栄えのする首相もそうあるものじゃなかったなと、懐かしくなる。何よりもあの方は,在来の日本のどの首相よりもスタイルが良かった。世界の首相達と舞台に一列横並びになった時など、どこの国の首相にも見劣りしないスマートさと上品さがあった〜」。まだ続くが、書き写していて、胸糞悪くなるから止める。土台国会で度を超える虚言を続ける安倍を、国民の一人として懐かしくなるとはどこから出てくる感想なんだ?。

◯月◯日/ それが、この老婆、今回の選挙に際してはどう言ったか。「私は長い間、自民党政権に代わる野党の政権が出来ないことに、じりじりしていました。今度こそは自民党政治を変えられるのじゃないかと希望が持てます。」「〜安倍政権は2015年戦争法を成立させました。それを見て私は”日本は戦争への道を進むのじゃないかと恐ろしくなり〜」。アレレ安倍は懐かしい人なんじゃないのか。更にこの老婆は足す。「私は選挙ではいつも共産党にに入れてます。戦争に反対し、常に女性、子供、お年寄り、貧しい人の側に立ち、その姿勢を貫いているからです。信用できるのは共産党だけです。待ってくれよ、夫婦別姓に反対する安倍をほめ、貧しい側に立たぬ菅をほめたのは誰だったけ?。貴方じゃないの、婆さん!!

◯月◯日/ この老婆はこうも書いている。「私なんかもう手の指で数えきれないほど、賞をもらったって、やっぱり、その度、舞上がるほど嬉しいのよ。文化勲章くれた時は、誰もいない所でとんぼ返りを十返したら、腰をねじって、あんまにかかって大騒ぎよ」。となると、今度は野党共闘をほめることで、なにかの賞をもらえると踏んだのだろうか。

◯月◯日/ 目に余るのは甘利明。「私がいなければ日本は立ち行かない「日本を率いているという自負があります」「そのことを経済界は全員がわかってますよ。関係官界も、優秀な教授陣は全部わかってますよ」これ全部甘利が選挙で発した言葉。このズル男、頭がおかしいのでは?。こうゆう人間を北海道弁では「ヘラツケナイ」奴だ、「あつかましい」の意だ。で、私の感想は「ヘラツケナイ」奴(甘利)が「何コグだ」と成る。「コグ」は言うで、つまり「何言うだ」。岸田臣下には「嘘コグな=嘘言うな」と言いたい。最も「コグ」には「する」の意もあって、こんな時に屁コグな」は「屁をする」と同じだ。そう言えば、新内閣は「屁でもない者」の集まりだな

2021.11.07

山下敏明

 

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