司書独言(253)

◯月◯日/ アベは軽い口調でヌケヌケと嘘をつく男だったが、その時のこれまた軽い表情はブッシュによく似ている。ブッシュは今から20年前の3月20日にイラク戦争を始めた。

イラクのフセインが破壊兵器を大量に持っていると、アメリカ国民に嘘をついて始めた戦争だ。フセインが殺された後にはIS指導のテロがイラク中に吹き荒れた。

◯月◯日/ 当時国務長官だったパウエルは国連に出向いて、このイラクの兵器所有の嘘を諸国に吹き込んだ。私自身は、パウエルは案外この嘘を見抜いていたが、職務上渋々その役目を果たしたかもと見ているけどね。パウエルは後に、この国連での演説を「私の人生の汚点」と悔やんだ。ブッシュは後年、兵器保有は云々は間違っていたと認めたが、イラクに対しては謝罪していない。ふざけた話だ。

◯月◯日/ 今、アメリカはロシアのウクライナ侵略を非難しているが、イラクで市民に対する無差別殺人を犯したことを考えれば、余りどころか、全く大きな顔は出来たものではない筈、と私は思っている。プーチンを非難すると共に、ブッシュにも謝らせないと話の筋が通らぬと思うがね。こう書くとプーチンをかばっているのか、という人がいるやもしれぬが、そんな事は言ってないからね。話がすんなりと見えるように、ここに酒井啓子の「イラク戦争と占領」(岩波書店)を出しておく。

◯月◯日/ 前号で「はだしのゲン」と「第五福竜丸」の話が広島の教材から消えるという話をした。これについて「全日本教職員組合」は平和教育の理念が後退する懸念がありとの書記長談話を発表した。3月15日の事だ。ところで、先日ビデオ屋で旧作の棚を見ていたら、なんと「はだしのゲン」全2巻があるのに気付いた。主演は中井貴一、と石田ゆり子、この二人が「ゲン」の両親だ。子役の名は知らぬ。

◯月◯日/ 映画化されていいるとは全く知らなかったから、すぐ借りてきて観た。上出来だ。見るべし。広島市教委は「はだしのゲン」を「被爆の実相に迫りにくい」などとヌカスが「何こいてるだ!」と言ってやりたい。因みに「コグ」は北海道弁で「言う」の意で「嘘コグな」などと使う。故に「何こいでるだ」は「何言ってんだ!」の意だ。

◯月◯日/ 3月21日のニュースだが、イタリアのメローム政権は3年内に14億円を掛けて、ローマの旧ムッソリーニ邸があった場所の隣に「ホロコースト博物館」を作ると発表した由。あのふんぞり返るのを好んだムッソリーニはユダヤの市民権を剥奪した男だから思えば皮肉な話だ。然しこの博物館は必要だね。と言うのも、つい先日、3月18日メルボルンでネオナチの連中が集まって云々の事件があって州知事が「ナチを支持する輩の来る場所は此処にはないぞ」と警告したばかりだからだ。

◯月◯日/ 新聞の芸能欄に「操り人形」の結城座の事が出ている。この一座、江戸時代からの創立で387年の歴史を持つというからたまげる。それが、「荒御霊新田神徳=あらみたまにったのしんとく」を上演した由。これ244年振りの再演というから、これまたたまげる。しかもその作者は平賀源内で、結城座のために書いたものだと。私は不幸な死に方をした平賀源内が大好きで、全2巻の全集を持っている。「本の話」にも彼の名を書いた事があるから此処にだしておこう。no、332だ。

◯月◯日/ すごいニュースが出た。3月25日のこと。アメリカの「カレントバイオロシー」なる科学雑誌に発表されたもので「ベートーベン」の「ゲノム」解読に成功した云々。研究したのはドイツのマックス・プランク近代人類学研究所の国際グループ。使われたのはベートーベンの髪の毛5本。ベートーベンは肝硬変で死んだが、B型肝炎ウイルスに感染していた記述も見つかったと。

◯月◯日/ 但し、20代半ばから始まったと言う難聴の遺伝子は見つからなかったと。1770年生まれのベートーベンは56歳で1827年に死んだと言うが、それにしても若死にだなあ。因みに「Genomu」は「生化学」用語で、ドイツ語で、染色体、もしくは全遺伝子のこと。私はこの記事、2階第2書庫の音楽の棚に、と思ったが、おっくうなので、1階和室にある漱石関係の棚に挟んだ。

 

◯月◯日/ それは、滝井敬子著「漱石が聴いたベートーヴェンー音楽に魅せられた文豪たち」(中公新書2004、¥760)漱石を音楽好きにしたのは寺田寅彦だと。この本の隣には、ルネサンスバロック音楽専門家、古山和男の「秘密諜報員 ベートーヴェン」(新 新書2010、¥740)という面白い本がある。そのうち取り上げてみよう。ベートーヴェンの有名なラブレター「不滅の恋人よ」の謎を追ったものだ。

◯月◯日/ これ書いている今日は3月29日。雪もようやく消えて、庭一面に福寿草が満開だ。これ元旦草とも呼ばれるが、それは東京でのこと。植えた覚えのない所から地下茎で次々と顔を出す。これ、実は有毒植物だ。植えた覚えがないと言えば、昨年の9月末に「種の図書館」なる取り組みが報じられた。図書館は本を貸すが、これは同じように「種」を貸し出して利用者がそれを植え、実ったら、「新しい種」を返却してもらうという仕組みだと。「シード(種)ライブラリー(図書館)」と言う名でアメリカで発祥とのこと。

◯月◯日/ 貸し出すのは「固定種」と呼ばれる自家採種できるもの。私は経済的観念に乏しく、庭を作ってもトマトだ、ピーマンだ、スイカだなどには全く思いが行かなかったから、今も実がなるものは皆無だ。この「種の図書館」的なものをやるにはもう庭に余裕がない。いささか残念だ。昔は「夕顔」を植えて随分と取れたものだったがな。

◯月◯日/ 本屋で「女性自身」を立ち読みしたら、「愛子様のお婿様に急浮上!村上天皇末裔、東大卒華道王子31歳」とある。私が「たつのおとしご」もしくは「馬面ハギ」と呼んでいる明治天皇のなんやらと名乗る竹田は「女系天皇」に反対しているが、私は「愛子さん」で結構の立場だ。帰宅して我妻さんにこれを伝えると、「その人の職業は何」と聞く。華道をされて、「花屋の息子らしいぞ」と答えると「花屋!!」と言うので、「あっ間違った華道の先生らしいぞ」と言うと、それを花屋と言うか」とけとばされそうになった。

◯月◯日/ 私の受難はともかく、この「村上天皇」を調べようと、「歴代天皇総覧」を探したが、見つからぬ。それで、代わりに川口謙二と池田政弘の「元号事典」(東京美術選書改訂版・平成7年)を出した。これによると、「第62代天皇、在位946-967」などなど。そのうちもっと調べてみよう。

◯月◯日/ 扇千影が3月9日89歳で死んだ。私はこの人に全く好感を持てなかった。その理由は2つある。その一つは参議院議長だか何だか知らんが、なんであんなに偉そうな顔をするのか、と言うこと。元宝塚なんだから普通に構えてニコッとしたほうが余程いいとおもうがね。「威厳」を付けたかった訳か。もう一つは、何時だったか、なんとか大臣として、苫小牧の工業団地を視察に来た。ここ、名乗り出る会社がなくて、広大な原野を切り開いたものの、見るも無残に空き地のままだった。

◯月◯日/ その対応を聞かれて、扇は答えるに事欠いて「テーマパーク」を作ればいい」と答えた。聞いて私は「馬っ鹿じゃなかろうか」と思った。というのは、その日だったか前日だったかに登別温泉に在ったテーマパークが倒産してたからだ。ここ今じゃ名前も忘れたが、中国庭園を模したもの。それが潰れたということを朝刊やテレビで知らなかったのか。先日「国葬」まがいの彼女の葬式をやって、あの「日本をダメにした一人、小泉が何か喋ったらしい。馬鹿げた話だ。

◯月◯日/ ここまで書いた後ー今日4月3日、探していた笠原英彦著「歴代天皇総覧ー皇位はどう継承されたかー」(中公新書)2001¥940)が出て来た。で、「村上天皇」を見ると「文人天皇」でその「意向を受けて」諸芸、分筆が奨励され華麗な王朝文化が開花した」云々。

◯月◯日/ もっともこの天皇「艶ぶんの絶えない天皇」であって、男女19人の子をもうけたと。この色好みを子孫のお花の先生が継いでいるとすると、愛子様のためにならないな。てなこと、下々が心配する必要ないか!!。

2023年 4月3日

山下敏明

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