司書独言(232)

2021.7.16寄稿

◯月◯日/知らなかったが7月3日は「ソフトクリームの日」なんだと。そう知って食べたくなり、コンビニに行ったら、8個買うと1個のおまけという仕組みで9個買ってきた。北海道だけの「メロンソフト」@¥185+税。日本のアイスクリームの最初は明治2年(1869)横浜の馬車道で、町田房造が作って売った。銀座の資生堂は明治32年(1899)に1個15銭で売りだした。私が小学生の昭和20年代初めアイスキャンデーは確か10円だった。「ソフトクリームねぶりまわしてついに無し」(吹田弧篷)メロンと言えば室蘭に近いところでは有珠がメロンの産地だ。国道37号線に約1kmの「メロン街道」がある。日持ちがしない「青肉」のキングメルティーという種類を作っているので即売だそうだ。

◯月◯日/スガが又もや「緊急事態宣言」を出そうとしている。7月7日に東京のコロナ感染者が920人になったからだ。これで、酒を出す店が皆泣いている。そんなにオリンピックをしたいのなら、飲食店全部に金を出せばいいと思うが、そこへくるとケチル。金がないはずない。と思うのはーあのトランプのバカ娘イバンカとやらが来た時、安倍は鼻の下を伸ばし、この一補佐官に過ぎぬこの娘を国賓待遇し、おまけに彼女が関係するナントカ基金に数十億円の寄付をした。あの額を出せば都下はおろか、全国の飲食店に補助金出してもお釣りが来ることだろう。

◯月◯日/と思っていたら、灘高➝東大とエリートコースの大臣西村が、酒の取引停止という馬鹿な案を言い出した挙句、要請撤回に追い込まれた。仲間同士の密告をすすめるようなこの法案を思いついた西村は東大でボクシング部に入っていたそうな。ところがこの狐顔の男、あの顔が自慢で、ボクシングの練習中に「顔だけは殴らないでくれ」と注文をつけていたそうな。しかし金融機関に脅かしを頼むというヤクザも驚くこの案を考案したところを見ると、練習中に頭を殴られ大分脳内ひび割れしているのかもしれないな。

◯月◯日/今月の「あんな本こんな本」にジャスパーベッカーの「餓鬼ー秘密にされた毛沢東中国飢饉」の書影を出しておいたが、毛沢東の農業政策はスターリンに学んだものだった。ところが、そのスターリンはインチキ学者の遺伝学者ルイセンコやミチユーリンと言った連中の偽学説に惚れ込んで、とどのつまり、ソ連の農業をダメにし、その結果数千万人を餓死させた。「偽学者を信用し、まともな学者の意見を取り入れないスターリンや毛沢東は、はったり屋の竹中平蔵を買いかぶり、尾身博士をないがしろにするスガの姿にダブってみえるな。もっとも尾身ももうちょっとハッキリしたものの言い方をしたほうがいいよな。

◯月◯日/このルイセンコついては、黒木登志夫の「研究不正」(中公新書)中で「スターリンの庇護のもとに弾圧したルセンコ」なる事例がでているし、中村禎里の「ルイセンコ論争」(みすず書房,1967年刊)なる名著もあるからそれらを見て欲しいが、今そのソ連における飢餓をテーマにした素晴らしい映画がある。去年の8月に封切りされた「赤い闇、スターリンの冷たい大地」がそれ。スターリン政策下ウクライナで数100万人が犠牲になった大飢饉の話だ。

◯月◯日/英国のジャーナリスト、ガレス・ジョーンズが様々な邪魔を押しのけて、スターリンの政治宣伝を覆す報道を果たす姿をくっきりと描き出す。真実を追求するジョーンズに対して、スターリンに取り入りその宣伝屋に成り下がるニューヨークタイムスの特派員ウォルター・デュランティがいる。この男世界に向かって嘘を流しつづけ、その甲斐あって1932年度のピューリッツア賞までもらってしまうのだ。安倍や菅にとりいる田崎の爺さんはこの小型だな。

◯月◯日/西村の酒屋いじめを知らないと答えたスガはじめ、目下の我国も「嘘=フェイク」だらけだが、「嘘の仕組み」を見破るためにも、この「赤い闇」是非見て欲しいものだ。映画と言えば「ホテル・ルワンダ」はルワンダの少数派民族のツチを多数派のフツが大量虐殺した事件がテーマだ。この時ツチ族を助けたのが「ルワンダ・ホテル」の支配人ポール・ルセサバギナだった。この大量虐殺では80万人が殺された。ところが、去年の9月、ルワンダ当局はこの支配人を過激派テロ組織創設に資金援助をしたとして逮捕した。真相は未だ分からない。然しこの映画は観ることをすすめる。この事件については「ルワンダの涙」という非常に優れた映画もある。

◯月◯日/ルワンダの事件は1994年4月初めにフツ族出身のハビャリマナ大統領の乗る航空機が撃墜された事から起きたが、つい先日ハイチの大統領が暗殺された。既に傭兵十数人が捕まっているが、真相はこれからだ。この暗殺で思い出した映画がある。ハイチ、ドイツ、フランス、ベルギーによって2000年に作られた「ルムンバの叫び」だ.1960年にベルギーから独立を勝ち取ったコンゴの大統領ルムンバの伝記映画だ。これも秀作。今まであげた映画はDVDのレンタル屋にある筈。

◯月◯日/日本には川と呼ばれるものが確か30,000あるとの記憶だが名無しの川はまああるまいと思う。ところが世界は広いもので、イギリスには名前はあるのだがその読みが違うととて争っている所がある。英国東部の「nene」川がそれ。これを上流のノーサンプトンでは「ネン」と呼ぶ。然るに下流のピーターバラでは「ニーン」と発音する。両方とも我が読みが正しいとガンバッテ、論争は何百年も続いていたが、今年5月末にそれでは「クロッケー」で決着をつけようとなった。

◯月◯日/この「クロッケー」調べてみたら「croguet」なるフランス語で、芝生の上で木製の球をマレット(木づち)で打ち、、数個のフープ(鉄門)を次々にくぐらせて得点を競う球技とある。私はやった事もする気もないが、つまりはこれ「ゲートボール」だわ。でこれで勝った方が1年間自分側の読みで言うとなって、以後1年間は「ネン」となったと。つまりノーサンプトンが勝った訳だ。

◯月◯日/これ書いている今日は7月15日(木)だが、朝刊に東京コロナ感染1149人。五輪バスの乗務員の宿舎は個室にシャワー、トイレ、洗面所ナシetc、でとてものこと3密どころではないetcとある。又、バッハとスガが会見したともある。この文章が出る頃にはオリンピックが終わっているか、続いているのか知らないが、ー思い出すのは前回のブラジルオリンピックでの色々。この時ブラジルの警官達は「welcome  Bragil」の横断幕をかかげながら、「給料払え」のストをやった。オリンピックを控えているのに給料が、遅配だったのだ。

◯月◯日又始まった途端にオリンピックのためにブラジルに来ていたポルトガルの教育相が強盗におそわれた。と思ったら試合を終えたベルギーのレスリングの選手が海岸を散歩していて、これも強盗にやられた。もっとも、暗いニュースばかりでなくて感動させられる話一つ二つあって、その一つは女子柔道で金メダルを取ったケルメンティがコソボの選手っだった事。コソボといえば、旧ユーゴスラビア紛争の現場だった所だ。ところで、この6月初め、ムラディッチなる男が、オランダハーグの国際法廷で終身刑の判決を下された。

◯月◯日/このラトコ・ムラディッチは元セルビア人武装勢力の司令官で、95年にスレブレニッツアで起きたイスラム教徒8000人を虐殺した事件や、「サラエボ包囲」で市民を攻撃した時の司令官だった。で結局、1992年から95年にかけてのボスニア・ヘルツェゴビナ内戦のジェノサイド(皆殺し)の罪に問われてたと言う訳だ。ムラディッチは現在79歳。この事に関心を持たれた人は,是非、多谷千香子著「”民族浄化”を裁くー旧ユーゴ戦犯法廷の現場からー」(岩波新書、2005年刊,¥700+税)を読んでほしい。多谷千香子はこの国際法廷で判事として実際に審理を担った人でこの本の第4章に「コソボ論争の種は蒔かれた」なる一節がある。

◯月◯日/ブラジルのオリンピックでマリオだかの格好をして福島は「アンダーコントロールだ」と出まかせを吹いて来たのは「満身嘘男」の安倍だが、そのおかげのオリンピックで今、日本は混乱の極みだ。「読売」の調査ではスガの支持率は28%、五輪は「中止すべき」だは都民で50%、またフランスの世論調査会社「IPSOS」の調査では世界28カ国の内、五輪反対は57%、日本は78%と出た由。

◯月◯日/こうした事を知ってか知らずか14日にフジテレビの「目覚まし8」なる番組で(と言っても私は見た事がないが)お笑い芸人(女性)が「中止してほしいという言葉選手に聞かせたくない。開催決まっている以上は全力で応援してあげないと」と発言したと。するとこれを受けた司会の谷原章介が「そういう雑音は耳に入れたくないですね」と言ったと朝刊にある。

◯月◯日/読んで思うに、この二つの発言、これは安倍や麻生、スガと同じだわということ。安倍は極右の雑誌「HANADA」で「五輪に反対しているのは反日の連中だ」と言ったと報じられたが、この司会者は「雑音」ときた。何様のつもりでいるんだろう。前にもタレントの「アイヌ差別」発言があって、その時にも、小樽出身の加藤とかいう司会者が、それを止めも、とがめもしなかった。彼といい、これといい、タレントの司会者の質が悪すぎる。何かについて発言する時は勉強してから言ってくれなくちゃな。感じで言われちゃよくない。東大の目加田教授(女性)が前に、「無学のタレントのコメントは困る」という意の発言をしていたが、至極もっともだ。こういうと、すぐに「上から目線」と言って反発が出るが、再度いうが、上でも下でもなく、何か物言う時にはよく調べてから言わぬとだめだということだ。無知の発言は誤ちを増やすだけだ。タレントが悪いのではなく、目加田の言うように「無学」なのが困るということだ。この「無学」というのは安倍、麻生、スガにも通じる点で、さらに悪いことにこの連中には「無恥」も加わるけどね。

◯月◯日/「選択的夫婦別性」について、内閣府のアンケート調査では国民4割が容認という結果が出ているのに、安倍以下「日本の伝統にそぐわない」という保守派の連中で、司法がまたこれを許さない。だけど、これ本当に「日本の伝統」か。どの解説記事でも、これに関して先ずは、と「日本書紀」を持ち出す。「日本書紀」とくると、私は、日常的に「宇治谷(うじたに)孟(つとむ)全現代語訳・日本書紀」上下(講談社学術文庫1988年刊@¥1150)を使っているが、こんな古典は、いくら現代語訳と言っても面倒でイヤだ、という人に薦めたい本がある。

◯月◯日/ 藤井青銅「”日本の伝統”の正体」(新潮文庫令和3年1月1日刊、¥590+税)だ。その第2章が「家庭の中の”伝統”」で、その第2節目が「夫婦同姓は伝統か?」だ。結論を言うと、昔は「夫婦別性」、それが「夫婦同姓」に変更されて約120年たったと藤井は言い、これに異をとなえる「選択的夫婦別姓」が議論されてから約50年だという。このあと藤井は(長すぎないか?)と足す。つまり、伝統でも何でもないのだ。保守を名乗る連中はすぐに「日本の伝統」を持ち出す。「正座」も「元号」も「武士道」も皆伝統だと言う。しかしその殆どがアヤシイというのが藤井の結論だ。しかし「国体」はじめ諸々の伝統を一番裏切っているのは「天皇」をないがしろにし、「米国」だけにすがりついている安倍じゃないのかね。これ売国というんじゃないのかね)安倍じゃないのかね

2021.7.16寄稿

( 東京コロナ感染1,308人と朝刊にある)

 

 

第424回(ひまわりno240)「犬人怪物の神話」「オリンピックマネー」「中国人民共和国史」他

2021.7.4寄稿

ルーマニア国内での受賞8ケ、カンヌ映画祭他での受賞4ケetcの前触れの映画「ホイッスラーズー合図の口笛」を観た。観るは観て退屈はしなかったけれども、実のところよく分からない映画だった。 続きを読む 第424回(ひまわりno240)「犬人怪物の神話」「オリンピックマネー」「中国人民共和国史」他

第423回(ひまわりno239)現代中国のタブー「天安門事件」科学者の論文捏造

私が室工大に在任中、北京から劉さんという人が留学生として来た。この人と他の中国からの留学生の違いが一つあって、それは彼が唯一「文化大革命」の時に高校生だったことだ。 続きを読む 第423回(ひまわりno239)現代中国のタブー「天安門事件」科学者の論文捏造