山下敏明さんのあんな本、こんな本

第220回 この世で一番残酷な死刑とは?

`03.10月1日寄稿

言ううまでもないことながら、この世界は、広大にして、人種、風俗、その他の諸処、千差万別であるからして、今どき何が起ころうとも、驚く気もなければ、腹を立てる気にもならんのであって、とは言うものの、こりゃ矢張りオドロキだわ!!と言うことがないではない。何々、それは、??ひょっとしてイラクで子供が飢えていると言うのに、攻め込んでいる、アメリカでは、食い過ぎの余りの肥満問題が世の大きな問題になっていると言うこと??インヤ外れ、

じゃ何?麻生ナントカの創氏改名発言とか、石原ナントカのテロリスト暴言とか?? インヤそれも違う。えこれも違うってじゃ、何だろう??

私が驚いたのは、先の9月20日、各紙に載った「ナイジェリア」発の外電。それは「アミナ・ラワルを殺すな」との見出しの下、このラワルなる31才の女性が、離婚した10ヶ月後に、出産したのだが、これは計算が合わぬ...どう合わぬのかよくわからんが....とて、つまりは不倫による出産に違いないと決めつけられ裁判で死刑判決を受けたと言うニュース。

しかもこの死刑は、如何なる方法によるもと思いきや、“石をぶっつけて殺す”と言う時代がかったもの。何も、電気椅子が近代的であるから、許せるが、石をぶっつけるのは古臭いから驚くと言っているのではない。

「図説死刑全書1

土台“この石をぶっつけて殺す”いわゆる“石打ち刑”なるものの実体を貴方正確に御存知か?この刑、珍にして妙なる所が色々あって....なにしろこの刑、旧訳聖書に現れている代表的な死刑であって、時代によっては、様相は異なるものの「へえー」思うものを順不同に並べてみると、

イランでは、この刑1979年のイスラム共和国成立以来、イスラム刑法に導入されたが、“ 受刑者が一つか二つの石で死に到る程大きくてはならず、かと言って、石とは呼べない程小さ過ぎてもいけない”とて、政府によって、規格に合格した石が、(イラン版JIS規格か)トラックで刑場に運ばれる、と言うのだ。

まあ考えてみりゃ、百発百中の野茂だの、石井だの、松坂みたいなのがいて、そいつの一投で、イチコロにあの世か。若しくは、地獄に行ってしまわれたんでは、苦しめる、見せしめにすると言う効用がなくなる訳だから、わからぬ理屈ではないものの...

又、スカンジナビアでは、石打と決まった犯人の頭をそり、そこへタールをぬりつけ、鳥の羽根でおおってから、石をぶつける...そうで、これ何の為?と言うと、犯人を人間以下のものに貶めることで、人間が本来的(?)に持つ“汝人を殺すなかれ”と言うタブーを取っ払おうとしてのことらしい。

話は変わるが、オイゲン・デューレン著「サド公爵とその時代」なる丁度100年前に書かれた本があって、中でデューレンがフランスでの「四つ裂き刑」に触れている。殺されたのはロベール・フランソワ.ダミアンなる下僕で、1757年1月にルイ15世にナイフで切りつけた男。

「死刑物語2

その場で捕らえられたダミアンは、真っ赤に焼いたやっとこで拷問され、監獄状に連行されると、自分の性器を噛み切って自殺しようとした(体が柔らかくなきゃ、出来ん芸当だなあ)が失敗。とどのつまり、硫黄の火やら、溶けた鉛やら、火のついたタールやらで痛めつけられた後、四頭の馬で体を引かせて手足を引き抜き..という「四つ裂き刑」に処せられた。さて、ドイツ人デューレンは、この事件を書いて、フランス人の残酷さを口を極めてなじったが、訳者の岡三郎は、あとがきで、しかしデューレンが、後世の、自分の身内たるドイツ人ヒトラーのなした、ユダヤ人虐殺などのことを知ったら、どんな感慨を持ったであろうか?と皮肉っている。

ところで、私が一番びっくらこいた処刑の図は、1964年に翻訳の出た、ジョルジュ・バタイユの「エロスの涙3 」に出ていた挿絵。中国での処刑をスペイン人ホセ・グテイエレス.ソラーナ(1886〜1945)が描いたもの。

この刑は1905年4月10日、デュマとカルポーによって目撃され、写真にとられた。

犯人副恊理は帝王を殺害しようとして捕らえらえ、最初は「炙刑」に処される所であったが、帝がそれでは残酷すぎるとて、「刻み切り」に変更したのだと言う。因みに「炙刑(しゃけい)」とは字の通り「あぶり殺す」ことだ。フランスの歴史家ミシュレによると、宗教戦争の際、カトリックの連中は、プロテスタント達を“真赤に焼けた石炭の上に裸で殆ど座った形で吊るしておいた」と言うが、一般的には焼き網を用いてあぶったらしい。サンマじゃあやるまいしなあ。

「刻み切り」とは、つまり、「解体刑」であって、刻まれる本人が、わめき声をあげるのをふせぐために、はじめに咽頭を切断するのが常だった由。女性の場合は、特に、乳房がねらわれて、やっとこで引きちぎられたり、万力でおしつぶされたりしたと言う。しかし、帝のお情けだとて、「炙刑」と「刻み刑」とどっちがお好き?といわれてもなあ。いまだかって、人を殴ったことも、蹴ったことも、つねったこともない私、爪を切るにも「おー痛いだろう、ゴメン、ゴメン」と爪に言ってから切る、傷み嫌いの私としては、死刑も、拷問も、一切お断りだ。

死刑はさておいて、もう一つの想像絶する人間性無視の業女子の「割礼」についても触れたいが.紙幅が尽きた。

「女子割礼4

ところで、後のニュースによると、既記のラルクさんは、国際的な批判を受けた当局によって、無罪となった由.当たり前だ.とは言え現在イスラム教8国で、石打刑が実施されてとわなあ.政治家どもの石頭をカチ割る方が先ではないのかしらん。



  1. マルタン・モネスティ.図説死刑全書.原書房(1996) []
  2. カール・B・レーダー.死刑物語.原書房(1982) []
  3. ジョルジュ・バタイユ.エロスの涙.筑摩書房(2001) []
  4. フラン・P・ホスケン.女子割礼.明石書店(1993) []

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