第206回 韓国の虎はなぜ消えた

`02.8月28日寄稿

「図書館サービスに期待する会」の面々が後押ししてくれる「ふくろう学校」なるものがある。不肖私が「校長」だ.その「ふくろう学校」の公開授業が去る8月25日(日曜日)の夜、新装なった市民会館のリハーサル室で行われた。私は「虎」と題して、2時間を「虎尽し」で押し通したが、その時当然触れたのは、清正の虎退治だ。

うずくまる虎/対する清正ー一刻のの「静」の時が破れて、清正は虎めがけて、矢の様な早さで槍をくり出す。応じて虎は身を起こしざま、槍をピシャと押さえる.そして、虎が言うには、“トラ、あんまりな、清正様”この虎メスだったものと見える。

女言葉に激怒したあ清正は、手練の早業で槍を操るのだが、ことごとく、外されてしまう。たまりかねて清正は「エイ、面倒な!!」と突くのを止めて、穂先を横ざまに振って、切ろうとした.すると、又も虎が言う.“困ったお人ねえ”そして言い足す.“槍は切れない、突くものよ”“ほんに、やりきれないわねえ”.女言葉に挑発されて、ますます度を失った清正は、もう闇雲に槍を動かすばかり.その中、又しても槍が押さえられてしまって、全力つくして槍を手元に手繰ろうとするのだが、微動だにせず、清正ここに槍繰りつかなくなった.これが、遠因で加藤家は後に滅亡する。

話を戻すと、清正は、正しく進退これきわまったが気を取り直して、虎の目を見ると、これが、落日の如き、真紅の輝きを放つので、再びトラ恐ろしくなる。それでも再度勇を鼓して気を、イヤ槍を取り直し、ようやくのことに虎を倒して、あの恐ろしき目をよく見ると、何とこの虎トラホームだったと言う。

とまあ、こんな訳だが、そう「あはは、イヒヒ」と笑ってはいられないぞ、大虎諸君!!何故かなら、漢語で「虎目」とは、トラホームのことだからだ.おまけに余り虎みたいに大口あけても、品がないぞ.何故かなら「虎口」と書くとこれは、おまるだからだ

然し、まあ、清正が虎を倒したのは事実で、そのことが最初に書かれたのが①「清正虎を狩られし事」だこれが『真相』①の出ている本が②「常山紀談(じょうざんきだん1 」だ。常山紀談は随筆的史談集で、岡山池田藩の儒者、湯浅常山(1708-1781)の書いたもの.天文、永禄の頃から、江戸初期に到る50年間余の多将、傑士の言行、逸事を約470集めたものだ。

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「常山紀談」は前は岩波、角川両文庫に入っていたが、今はない.こう言う基本的文献がいつでも買える状態でないのは困ったことだ。

さて、私は「虎」について語るに、30冊余の文献をリストにして、聴者にあげたが、南方熊楠の「十二支考2 」(岩波文庫)を別として私が一番読んでもらいたいのは実は「韓国の虎はなぜ消えたか3 」だところがこの本腹立たしい事に絶版だ。

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動物学者の遠藤は、かっては全土で、その吠える声が聞かれたと言うシベリア虎を見たくなって或る日朝鮮に行く.ところが、言うまでもなく虎はいない絶滅したのだ。

それはどうしてか.読者は次第次第にその訳は朝鮮占領の出先機関たる総督府、の徹底的な害獣駆除政策を始めとする日本の侵略諸政策の結果だと分かる.朝鮮人の信仰の対象たる霊獣が刻々と滅亡して行く様子を是非知ってもらいたいのだが...。

「ツグミたちの荒野4 」も同じく遠藤の本。これは法律で禁じられている「かすみ網」を使って、野鳥を無差別大量に捕っている密猟者と、かすみ網根絶の為に、生涯をかけて闘っている人達をえがいたものだが、これも絶版

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私は、中学2年の時に、幕西町のAと本町のSと3人で2.3度測量山で、かすみ網猟をやった事がある.リーダーは小鳥好きのAだったがこの網はビックリする程沢山の鳥を引っ掛けるあれは、よくない。それに又、大学時代よく新宿西口の焼き鳥屋さんで「鷭」を食ってたが、あれもよくなかったな。水田に巣を作り田の番をするから、「バン」と呼ばれるこの鳥も今や絶滅稀少鳥類の一つだ.因みに本書は「日本児童文芸協会賞」受賞の秀作だ。

最後もこれも遠藤のもので、これ又動物と鳥の滅亡の物語である。昔漢の高祖(だったか)は「ふくろう』が大嫌いで、百官に命じてこれを捕らえさせ、殺した.故に「梟』なる字はこれらの「梟の」首がさらされた事から出来た字と言う談を読んだことがある。「盛岡藩御狩り日記5

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殺すにしろ、食うにしろ、自然保護とは相入れぬ事言うまでもない。あー!!

然し、遠藤の本は、かように素晴らしい出来のものばかりだが、今や入手可能なのは一点もない「オンデマンドブックス』にでもリクエストしなければならんな

  1. 湯浅常山.常山紀談.有明堂文庫版(1918) []
  2. 南方熊楠.十二支考.岩波文庫(1994) []
  3. 遠藤公男.韓国の虎はなぜ消えたか.講談社(1986) []
  4. 遠藤公男.ツグミたちの荒野.講談社(1983) []
  5. 遠藤公男.盛岡藩御狩り日記.講談社(1994) []

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