司書独言(254)

◯月◯日/いつもの如くに、新聞の切り抜きを整理していたら、1955年(昭和30)年に写された蕎麦屋の出前持ちが出ている。「曲技のような〜」と前書きがあって、ナントナント「かけ24」「もり36」「ざる40」「お盆7枚」で計18貫(67.5kg)を担いでいる。しかもこれ自転車に乗って、片手運転だ。

◯月◯日/ 昭和30年と言うと私は東大農学前の西片町に下宿していたが、いつも行く蕎麦屋の出前持ちが、これほどではないがかなりの数を担いでた。若くもない男で、愛想のかけらもなく、客には知らんぷり。四六時中、競輪。競艇の新聞に目を落としていて、出前を命じられた時だけ起き上がる、与太者じみた男だった。どゆう境遇の男で。どうゆう人生を送ったろうか。

◯月◯日/ この切り抜きを挟もうと「図説江戸時代食生活事典」(雄山閣、平成8年)を出して「そばや」を開いたら、前に挟んだのがった.2013年3月7日の記事で、創業130年の老舗そば屋、神田の「かんだやぶそばが、火事で休業」云々。この店私も何度か行ったことがあるが、その後再建できたのかな。まあ何でもはさんでおくものだな。(2014年10月再建 西方)

◯月◯日/そばで思い出したが2月7日の記事で、山形市が新潟市を抑えて、日本一を奪還とあった。何のことかと思ったら「ラーメン王国」の話。20年まで8年連続首位の山形が21年に新潟に抜かれたそうな。

◯月◯日/ ラーメンと言えば、10年程前か、中島の商業施設「モルエ」で「ふくろう文庫展」をやっていたら、隣の方が賑やか、その時観に来ていた新米市議会議員が見に行き帰ってきて言うには「室蘭ラーメン」のテレビ取材で「市長が来ている」と。ラーメンに来て、なんで市民の寄付で成り立っているふくろう文庫に来ないんだ。連れてこい」となって、市長が来た。それが市長にとっては「ふくろう文庫」を見た最初。まあ市長にしてみれば「理解度」を試される「美術展」より「ラーメン」の方が楽だった訳だ。私はこのラーメンの記事「食べ物日本史総覧」(新人物往来社平成6年)にはさんだ。

◯月◯日/ 市民の寄付で成り立っていると言ったが、「ふくろう文庫」は現在7000点余、総額1億8000万分の美術書他を集めている。最初の頃、寄付が10万を超えると寄贈者と買った品物見せに市長(故人)の所に行った。市長はいつも硬くなっていて、ある時言うには「私は体育会系で美術の知識がないので緊張するんだ」と。

◯月◯日/それで私は「ハ、ヘ、ホでいいんですよ」と言うと「どう言うこと?」と言う。私が「美術品を見せたら、ハー?これ何だ」で私が説明したら「へー、そういう事か!」と納得して「ホー、たいしたもんだね」と感心すればいいんですよ。以後市長はいつも上機嫌だった。

◯月◯日/ よって知ったかぶりは良くない「今みているのは良寛です」と言ったら「あー、横山」と返す人がいたが、とんだ勘違いだ。

◯月◯日/ 武者小路実篤の「新しき村」が100年を超えて続いているのはいいが、今や「村民」はたったの3人.100周年の2018年位はまだ8人いた由で、今の理事長は実篤の孫の武者小路知行(ともゆき)75歳だと。私はこの記事ドナルドキーンの「日本文学史、近代、現代編」(中公文庫)にはさんだ。

◯月◯日/この巻、「自然主義」「夏目漱石」「森鴎外」と来て次が「白樺派」だ。キーンは「自分を天才、または運命に選ばれた子と自負した武者小路は〜」と書いている。大学時代同じ下宿、小田原出身の日下部兄弟がいて、兄は中央大、弟は日大。この二人は小田原の金持ちの息子。弟は無類のお人好しで、そのせいか本は余り読む方ではなかったが、武者音小路の全集だけは部屋にドンと置いていた。お人好しだったが、屁理屈こきで、いつも下宿一同のもて余しものだった。

◯月◯日/ここまで書いた後、忙しくて中断してたら、5月5日の朝刊に、「セルビアの学校で銃乱射」の見出しで 5月3日首都ベオグラードの初等学校で14歳の(7年生)少年が発砲して、生徒ら9人が死亡。原因は不明とある。

◯月◯日/ この朝私は、朝食後に整理しようとたまたま書庫からDVDを30本余り出して来ていた。その中に「エレファント」と「ボウリング・フォー・コロンバイン」が入っていた。「エレファント」は2003年カンヌ国際映画祭で、史上初「パルムドール=最優秀作品)と監督賞をダブル受賞した秀作だ。他にも「フランス批評家協会賞」の「最優秀外国賞」など多くの賞を受けている。

◯月◯日/ 巨匠ガス・ヴァン・サント監督のこの映画は、実はアメリカはコロラド州リトルトンのコロンバイン高校で起きた銃乱射事件をヒントにして生まれた作品だ。この事件は「トレンチコート・マフィア」と名乗る少年2人が学校で銃を乱射、12人の生徒と教師1人を殺害した後2人して自殺した事件だ。

 

◯月◯日/ この事件を取り上げたドキュメンタリーが、マイケルムーアの「ボウリング。フォーコロンバイン」。これ、2002年の「カンヌ国際映画祭55周年記念特別賞」を初めとして、実に世界中で22の賞を受けた傑作

 

ムーアは「何故アメリカ国民は銃を捨てようとしないのか」の設問でアメリカのみならずカナダにも出かけてインタビューを続ける。あぶり出されて来るものは、話し合いをせずに、直ぐに暴力に頼るアメリカ人の国民性とその歴史だ。この2作未見の人は今直ぐDVD屋に行って探すべし。

◯月◯日/ 本の広告を見ていたら、3月27日の新聞にあの高須克弥の推薦と言う本が出ている。あの高須というのは、読者も覚えていようが、例の「愛知トリエンナーレ」で署名偽造の主役を務めた美容の方の外科医。このインチキ男がすすめるに事欠いて、ナントナント、昔の教科書「高等科修身」をすすめている。

◯月◯日/ 曰く、「この教科書の基本的精神はどこの国の人でも理解できるものです」と。然し「修身」とは① 身を修めて

行いを正しくすること。② 旧小、中学校の教科の一つ。現代の「道徳」に当たる。(旺文社国語辞典)だ。となれば、一番のインチキ男が「道徳」を進めるとはチャンチャラおかしいとならないか。私思うに、この男「脳外科」で一度精密検査を受けた方がいいのでは!!

◯月◯日/ 私はこの広告「愛知トリエンナーレ」の切り抜き袋に納めたが、その袋は関連記事ですでにパンパンにふくれあがっているぞ。

◯月◯日/ 今日は5月11日。毎日ウグイスの声が聞こえてくるぞ。昨日から「愛鳥週間」だと。然し地球温暖化のせいで、世界中の鳥が各種で子供の数が減ってきているそうだ。ポーランドのブロツワク大学の研究グループの発表だと。レイチェルカーソンの「沈黙の春」の世界が近づいている訳だ。

◯月◯日/ 5月8日のニュースだが、アイヌの遺骨がオーストラリア返還されることになった。メルボルン博物館にあった4体で同地を訪れている日本のアイヌ団体が受け取った由。同博物館の理事「ティモシー・グッドウイン」が「皆さんの先祖が長年味わった屈辱に遺憾の意を表し、皆さんの苦痛に心よりおわびする」と謝罪した由。4体のうち3体は白老の「ウポポイ」に収まる由。

◯月◯日/ 次は5月10日の報道で、中国で「湘江虐殺事件80年追悼式」が湖南省で行われた云々。この事件には今触れない。これで思い出したのは長野の飯田市に去年「平和祈念館」が出来て、そこに元731部隊員だった胡桃沢正邦の遺品が展示されているが、残念なことに「祈念館」の中に731部隊の説明が全くないことこれはダメだなーと思っていたらー。

◯月◯日/ 5月9日の新聞に14歳でこの部隊に同期の34人と共に入隊したと言う清水英男(93歳)なる人の談話が出た。話す気になったのは、と清水は言う「今閣議決定だけでことを進め、政治は独裁政治のようなもの。国会軽視、国民軽視の軍国主義に戻ってしまうのではないかと懸念しています。」

◯月◯日/ 更に「核兵器や原発が発達しすぎて”地球が壊れるのではないか”との危機感もあります」とも。これで、前にアイヌと731部隊に同時に触れた文章を書いたことがるのを思い出したので、ここに再録する。(2020年11月、ひまわりより)《「消えた細菌部隊 壮大な蛮行の記録」(常石敬一/ちくま文庫)に見るように、学者の軍事への協力がどれ程悲惨な事態を引き起こしたか。あの「関東軍第731部隊」の所業を見ればわかるだろう。人体実験、毒ガス使用、その傷跡は未だに消えていない。そういえば室工大在任中、中国留学生を嫌った一部の学生が「丸太を殺せ」と廊下のカベに書いて教授会で問題になったことがあるが、教授の中には「丸太ってなんだ」と言うのがいた。731部隊が人体実験用の中国人を「丸太」と呼んでいたのを知らぬとはびっくりした。当時はヘイトなる言葉はなかったが、学生が「丸太を殺せ」などど言うこと自体が、良心なき学者の軍事研究の悪しき影響ではなかろうか。平和を目指す国の学者が軍事研究をせぬことになんの不思議があろうか。どこが学問の自由の侵害だ?「ウポポイ」が白老に出来ようという8月に荻生田文科相がアイヌの差別の歴史に対して「価値観の違い」なる非道な発言をした。真当な人間たるべくもうちょっと勉強して人権感覚を養ってくれんかね。「北海道大学ピースガイド」中の「北大構内のアイヌ納骨堂、人骨盗掘事件・アイヌ先住民族」や雑誌「人権と部落問題」2月号中の丸山博の「アイヌ施策推進法〜」なぞ読んでから物言えと言いたくなる。》

◯月◯日/ 私はWBCなるもの全く無関心で通した。何故か。WBCに一番ホクホクしていたのは岸田だだろうからだ。新聞の川柳欄に大谷とトラウトの対決場面が100回以上も放映されて、もう満腹だの意の作品が出たが、同感。国民がWBCにうつつを抜かしている間に岸田は着々と戦争の用意だ。

◯月◯日/ その岸田は一方でパーティーで金を集めまくっている。岸田に金を出す筆頭はどうもニトリだ。ニトリは安部の時もブラジルくんだりまで付いて行って商売していたと私は記憶している。目下室蘭でもニトリが移転・拡大の新築中だ。「お値段以上ニトリ」の歌に乗せられて買った我らの金が、岸田に流れている訳だ。買っっていられないなあ。それでは又。庭は一面の鈴蘭だ。2023.5月11日

◯月◯日/では又、と書いて寝た翌日、朝刊に岸田の顔が大写し。何だと思ったら、米紙タイムの表紙で、「岸田氏は真の軍事大国化望む」の見出し。タイムの5月22日29号の由。岸田は数十年にわたる平和主義を放棄」云々とある。岸田の役目は国を滅ぼすことか!!とんでもない男だ。

山下敏明

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