司書独言199

◯月◯日 明治天皇の曾孫だか玄孫だか知らないが、とにかく「明治天皇の末」を売りにしている竹田恒泰なるタレントがいる。「たかじん番組」の常連で、ナントカ言う歌手に振られた男だ。ヘイトスピーチ他で知られる「在日特権を許さない市民の会」通称「在特会」を常日頃持ち上げる発言をするから、右派であることははっきりしている。

◯月◯日 どうして明治天皇とは似ても似つかぬこのウマズラハギが明治天皇を売りに出来るのか。明治天皇と皇后の間には子供がいなかった。自民党の杉田水脈衆議院議院の言葉をそのまま借りて言うと「生産性」がなかった。そこで明治天皇は側室を置くことにした。側室とは「貴人のめかけ」(新明解)だが、その数5人。その5人から皇子5人皇女10人が生まれたが多くは若死して、のちに大正天皇となる皇子1人と娘=イコール内親王4人が成人した。

◯月◯日 この娘4人は皇女だからそんじょそこらの平民の嫁には出来ぬ。でどうしたか?此処に天皇断絶の危機に備えてスペアとされる宮家が4つあって、その一つが伏見宮。因みにこのスペアは天皇との血縁の有無は関係ない。この伏見宮家に部屋住みが何人かいた。部屋住みとは次男以下の男で家を継ぐことは出来ぬ、つまり居候=イコール無職。

◯月◯日 この居候の一人に6女が嫁ぐ。すると天皇の娘は皇族に嫁ぐのが当時の憲法の規定だから、皇女の格下げではなく居候を格上げして竹田宮家なるものをあらたに創設した。宮家になると確か宮内庁から生活費含めて万般出るから生活の心配はない。如上ことは例えば半藤一利他の「戦後日本の”独立”」(ちくま文庫)に出ている。

◯月◯日 以上で分かったと思うが、タレントの竹田はこうして新設された宮家の子孫な訳だ。それが敗戦となっての昭和22年に、天皇の弟の秩父宮、高松宮、三笠宮を除く残りの宮家は全部皇族たることが止められて、宮内庁からの生活費等を含む全ての特権を失った。平たく言うと今まで税金で暮らしていたのが、明日から自活せよとなった訳だ。庶民からすれば当然で何の不思議もないけどね。

◯月◯日 しかるに、この居候の子孫の竹田が最近妙なことを主張した。曰く「旧宮家復活」。また戦前のの働かずに食える生活に戻りたい訳か?これ書いている今日は9月16日。安倍3選は自明と張り切っている右派の一員だとしても、この話は庶民からすれば、財務省(だったか?)の太田(だったか?)の言葉じゃないが「いくら何でも〜」じゃあるまいか。俵万智じゃないけど「言ってくれるじゃないの!!」と思うだな。

◯月◯日 三笠宮で思い出したが、ブギの女王笠置シズ子は本名三笠静子だが、皇族に対して失礼=不敬だとて笠置に変えられたのだ。もう一つ思い出した。北海道は当別出身で名作「石狩川」の作者本庄陸男は本名睦男だが、戸籍登録の時、明治天皇の睦仁に失礼とて、陸にかえられたのだ。ところで我が家の向かいの一家はエグザエルとかのファンだが、確か天皇の前で歌ったのはこのグループでなかったか。これでまた思い出した。戦争中は英語は敵性語で禁止だったから、歌手のでディック・ミネではけしからんとて、三根耕一となった。という訳で「旧宮家復活」なんて言うことになると、横文字禁止もまた復活して、この「exile」なんてのも日本語に戻さねばならぬ。今念のため研究社のニュースクール英和を引いてみたら「exile」=「亡命者」とある。ウホッ、国外追放か。まこさま かこさまと言っても不敬にならぬ今がはるかにいい。

◯月◯日 リーアム・ニーソン主演のザシ・ークレットマンをDVDで観た。「ウォーターゲート事件」を描いたもの。これワシントンのウォーターゲート・ビル街の民主党本部へ、共和党筋の人間が盗聴装置を仕掛けようと侵入したのが逮捕されて明るみに出たニクソン政権のスキャンダル.1972年に発生して ’74年にはニクソン辞任となった。この事件んでジャーナリスト達へわたし続けたのが、FBI副長官のマーク・フェルト。ランデスマン監督は「犯罪者ニクソンにフェルトは警官として対処したのだ」の立場を表明している。

◯月◯日 続いてメリル・ストリープとトム・ハンクス共演の『ペンタゴン・ペパーズ』を見た。国民を騙し続けて不毛なベトナム戦争を続けたトルーマン、アイゼンハワー、ケネディ、ジョンソン歴代大統領の嘘を暴露したもの。メディアとジャーナリズムの果たすべき役割と、その役割とは何かを示して見事だ。総裁選に関して日本記者クラブの討論会で「総理不支持の一番の理由が”総理大臣が信頼できない”だが、なぜそうなのか?」と聞かれて、「一点の曇りもない、それは明らか」と開き直る鉄面皮が通る日本の現状に照らしても、大いなる教訓を含んだ名作だ。観るべし!

◯月◯日 過ぐる3月、図書館を指定管理者に委せる方針と教育委員会が発表した。これについては私は既にこの欄と新聞とで何度も反対を表明して来たから、この騙し討ち的、寝耳に水的発表には呆れかえったが、呆れたのは私ばかりではなくて、室蘭民報、道新二紙から直ぐに「”賛成したのか?」と聞かれた。「とんでもない。する筈がない」と答えた。そのあと室蘭民報の高木忍さんの委託反対論が出た。それから暫くして、文学館の集まりの席上 滝口道議が図書館を指定管理者にまかせるのは反対”と言明した、と 「ふくろう文庫」支援の「ふくろうの会」代表の柴垣美男が伝えてくれ、さらに滝口道議本人からも「反対との私の考えを述べておきました」と聞かされた。ありがたい。心強い応援だ。

◯月◯日 ところで行政側は指定管理者に委せると、参考業務や教育現場との連携が向上するだのとバラ色イメージを抽象的に述べる。ところが当館元館長の調べで面白いことが分かった。彼は道内で既に委託をした6館について、結果何が「導入効果」となったかを問い合わせた所、図らずも全館一致して「効果は一点のみ、それは開館時間の延長だけ」と出たのだ。これは一見市民の喜びそうな事だが実情はどうか。某社が請け負った某市では、非正規の時給を上げずに時間のみ延長した。(という事は延長分は只働きという事になる訳だ)との知らせが私の所に届いた。真偽の程は分からぬが人件費のピンハネでしか利益を出すことが出来ぬ受託業者のやりそうな事ではある。

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