司書独言(215)

◯月◯日/新聞の劇評欄を見ていたら、文学座がやった「一銭陶貨」なる芝居が扱われている。戦時中、金属不足のため金貨、銅貨が作れず、陶器作りの職人を動員して「陶貨=陶器の貨幣」を作らせたと言う話だ。読んで思い出したのは国民学校時代の陶製の校章とボタンのこと。

◯月◯日/入学した時は校章も学生服のボタンも、言うまでもないが金色の金属製だった。ところがある日それが全部回収(と言うより供出させられて)陶製の物に変わってしまった。

◯月◯日/ボタンの方はと言えばボタン穴に応じて1個宛付けるのではなくて、胸元から裾の所まで五個のボタンを通して一本の糸をつける。だから、ボタンは着るまでは一番下に5個固まっている。それで着る時には一個宛てたくりあげて穴にはめていく訳。(これで分かるかな?)今で言う小学生の生徒からボタンまで集めなきゃならぬ程、戦争するのに金属が足りなかったのだ。校章もボタンも陶製だから、はっきりと体感できるほど重かった。

◯月◯日/丸山とか言う酒乱の鼻たれ小僧が「戦争するしか〜」なぞと馬鹿を言う。この馬鹿男には、上の話をして「戦争」では全てがなくなるぞと言っても通じないだろうな。世の中馬鹿には勝てない。「馬鹿な子を持ちや火事より辛い」なる諺があって、「馬鹿な子を持つと親はやりきれない、その苦労は大変なものだ」との意だが、「馬鹿な国会議員を持ちや、国民が大変な目に会う」と言うことだ。

◯月◯日/「今年の漢字」に「令」が選ばれたとて、「令和」を発表した菅の談話が新聞に出た。「成る程なと思った」由。そのあと「桜」と言う字はどうかと聞かれて「見たくも聞きたくもない」と苦笑したとある。しかし、他の人は知らず私なら、「見たくも聞きたくもない」のは菅の冷酷な顔と、あの木で鼻をくくった様な答弁だね。「全く問題ありません」、「その様な指摘はあたりません」と年がら年中同じ言葉で切り返す菅の答えを、ネット上では「壊れたラジオ」と揶揄している由。これ、菅をたじたじとさせた東京新聞の望月衣塑子の著「新聞記者」で知った。言い得て妙だ。

◯月◯日/昨年12月12日発売の「週刊文春」が、和泉洋人首相補佐官が公務での京都出張に、厚生労働省勤務の女と「私的な観光」をしたと報道した。この和泉、どこかで聞いた様なと思ったら、上記の「新聞記者」に出てくる。場面は前文部省事務次官の前川喜平が「出会い系バー通い」と読売新聞に中傷された事件の時、この和泉、モリカケ問題の時「総理が自分の口からは言えないから、自分が代わって言うのである」と国関係省庁を威嚇した男。前川に対しても平たく言えば”脅かして”いる。職権笠にきるこういうタイプ結構いるけどな。でまたしても菅は文春報道を否定して、和泉をかばっている。

◯月◯日/この「ひまわり」の2019年3月号の「あんな本、こんな本」で、私は堤未果の「日本が売られる」をとりあげ「水道民営化」に触れて、麻生の娘婿がフランスのヴェオリア社の役員だと書いた。その後、東京都の浄水場管理業務をめぐる談合疑惑が起きたり、宮城県でも民営化を進め、悪政が続いている。一方英国でも政府が民営化をした結果、水道料金は高騰し、儲けるのは株主だけとなりで、昨年末政府は「株主配当制限命令」なるものを出した。馬鹿なあがきとしか思えない。再公営化すればいいだけの話だ。日本含めてこの水問題いつまで続くのだろう。

◯月◯日/ここまで書いて気づいたが、この原稿用紙、ダイソーではA4、50枚で1袋だが、他の店では40枚で一袋だ。付箋もユニットでは¥300近い。ダイソー様々堕が、いつのまにか中味を減らしている側も切ない事情があるんだろうな。

◯月◯日/今年はネズミ年。ネズミでは去年も色々話題があったが一番だったのは、東京都のゆりかもめ「日の出駅」近くの防潮扉に描かれていたA4大のネズミの絵。これ10年も前からあったが、ひょっとしてバンクシーの作品ではないかと言うことになり、となるとこれは「金になる話題」とふんだらしき小池が扉を外して東京都庁に引き取った。そのうち観覧料でも取り始めるんじゃないのか。

◯月◯日/雪が降った。隣家の姉弟が大小の雪だるまを作って玄関の前に置いた。ほのぼのとしたもんだ。雪だるまの元祖は「雪仏」だ。「徒然草」の第166段に出る。昔義妹の息子が4.5歳の頃か、初めて冬の北海道に来て雪を見て、喜んで雪だるまを作った後、「東京までお土産に持っていく」と言ったがダメと言われて泣いた。消える、溶けるとは思わなかったのだ。いや可愛かったねえ。「徒然草」は人生訓だから「人間の営みは春の日に雪仏を作り、そのいづれは消える雪の仏像のために、金銀珠玉の飾りをつけたお堂を建てようとするのに似ている」と言い、人間の寿命もまた消えゆくと言うのに無駄なことよ、と足す。それはそうだがなあ。

◯月◯日/「新明解」で「小馬鹿」を引くと「いかにも相手を馬鹿にするような態度を示す」事とある。今後はこの説明のあとに、「ゴーンが日本を脱出したのがその好例」とつければ、話は一層明解になるな。レバノンに帰っちゃったから、国内法では裁けないと言う。しかしこの点は今更始まった話ではない。沖縄で米兵が殺人しようが、強姦しようが、地位協定とやらで日本の法律でこれを裁けない。しかも日本政府を初めとしてこれを口惜しがる人は少ない。被害者が泣き寝入りするだけだ。話はゴーンと同質で、今回も沖縄同様、主権が侵されているのだ。ふざけた話だ。

◯月◯日/そうしたさなか、安倍が中東に行くという。年柄年中国費使って専用機(これ、ある種のプライベート・ジェット機だな)に乗って飛び歩いているが、対ロシアといい、対韓国といい、その成果のないこと甚だしい。「初めてのおつかい」とやらにひけをとるのではないか。粘り腰の気の強い3、4歳の男児を送った方が成果がでるのでは??

◯月◯日/これ書いている今日は1月7日(因みに明日8日はゴーンが会見する日)だが、新聞には、この時期例の上野東照宮の「ぼたん苑」で開かれる「冬ボタン」の記事が出ている。牡丹は5月の季語だが、このボタンは冬の「縁起花」として特殊な方法で冬に開花させるものだ。学生時代に一度、結婚してから一度観たことがある。ワラで囲ってなかなかの風情だった。牡丹の別名は「花王」で「花王石鹸」の名はここからきている。これは無論中国由来で、宋の張景修なるひとが名花12種を選び、牡丹を第一位に置いた事が始まりだ。牡丹は話題に富んだ花だ。

◯月◯日/40余年前我が家を建て庭を作った時一番悩まされたのはナメクジだった。試行錯誤の末石灰をまいて落ち着いたが、このナメクジばかりは好きになれない。しかるに京都大学には宇高寛子なる美人のナメクジ研究者がいて冷蔵庫4台で200匹のナメクジを飼育している。ナメクジは嫌だがこの人のエッセイは面白くて私は好きだ。美人研究者は「生まれたては半透明でけっこう可愛いですよ」と言うから参る。

◯月◯日/「可愛いですよ」で驚いていたら、ドイツでは子供が生まれるとその子の呼びかけに「わが家のネズミ(マウス)ちゃん」と言うのが一般的だと知ってびっくりした。あまり呼ばれたくないなと思っていたら上を行くのがあって、それは「マイン(私の)シュネッケちゃん」。この「シュネッケ」なんと「ナメクジ」だと、所変わればだなあと思っていたら、先日投句欄に10歳の男児の句で「雨上がりナメクジ見て遅刻する」があって、これは笑った。ナメクジはともかく、これは可愛い。

◯月◯日/今月号の「あんな本、こんな本」には生誕250年のべートーヴェンと生誕100年の金達寿を書いたが、考えた見れば去年は水上勉の生誕100年だった。水上の作品では「飢餓海峡」が一番好きで、映画の三国連太郎と左幸子も絶品だった。水上は中国にも深い理解を示した。今時の嫌中、嫌韓など浮ついた作家、批評家たちとでは人間も教養も段違いだ。

◯月◯日/学のない安倍が変な事を言いだした。「桃栗3年柿8年」だ。そのあとは各地様々で「柚は9年でなりかかる」「枇杷は9年でなりかねる」「柚は遅くて13年」「梅は酸いとて13年」また「柚の大馬鹿18年」などとも言う。しかしこの諺、安倍は如何なる意味で使ったのか。「成語林」によればこの意味は「辛抱強くあれという教え」だという。安倍は自分が辛抱したので長期一党独裁だと誇りたいのか、または桜だ、モリカケだと騒がずに国民よ、もっと我慢ずよくなれと言いたいのか、いずれにしろふざけた奴だ。

◯月◯日/新聞の投句欄の「狂歌」の部に「桃くり3年たてば実を結ぶ、アベノミクスは芽さえも出さず」(桑さん)があったが、納得できる句だ。ところで桃栽培業者には「桃は実るのも早いが衰えるのも早い」なる体験知がある。安倍桃はもはや衰えるよりも腐り始めているのではないか。それにしても我が国民の側も「辛抱強く」はもうやめて、「仏の顔も3度」でいい加減に腹を立てた方がいいのでは。どうして皆怒らないのだろう。

◯月◯日/1月号の「あんな本・こんな本」でナチスに絡め取られたサッカー選手の運命を描いた「ナチス第三帝国とサッカー」を紹介して、スポーツVS政治の不気味さに触れたが、去年末北京で放映予定だった英国のアーナセル対マンチェスター・シティ戦が突然中止となった。その理由はアーナセル所属のトルコ系メスト・エジル選手がツイターで習近平による新疆ウイグル自治区のイスラム教徒弾圧を非難したからだと。しかし世界の見る所、ウイグル族への弾圧は事実だ。スポーツすらも政治から自由でないとすると、何のための政治なんだろう。

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