司書独言(243)

◯月◯日/ 5月5日のニュースに、滋賀の首長19人が集まって「9条の会」の発足をしたとある。呼びかけ4人は元知事の竹村正義他。そのアピールは「9条を守り、生かす壮大な運動をしよう」。

前号で、プーチンのウクライナ侵攻への非難声明を採択しなかった、北国の某議会の話を書いたが、エライ違いだ。

◯月◯日/人工中絶の権利を米最高裁が覆す可能性があるとして、国連総長副報道官が懸念する声明を出した。これで、先月観た英米合作の「17歳の瞳に映る世界」を思い出した。。ベルリンの国際映画祭での「銀熊賞」を始め、数々の映画賞受賞の秀作だ。予期せぬ妊娠をした高校生のオータムが親の同意なしで中絶するために、親友のスカイラーと共にニューヨークへ向かう。云々。正しく題名通り、この2人の瞳に映る世界について考えさせられる。米国は世界の流れに逆行しようとしている。観るべし!!

◯月◯日/ 室工大に在任中、大学前でバスを降りて校舎に向かう途中に、学生相手の間口1間もない程の飲み屋があった。その目を通る度に不愉快な事がああって、それは殆ど毎日、丸々と太ったネズミが、元は何が入っていたのか知らぬけれども、結構広口のガラスのビンに入れられていた事だ。しかも水が入っていてフタは一寸開いてある。ネズミは背伸びすれば辛うじて鼻先が出る位で、つまりは背伸びする体力が消えると息絶える仕組みだ。余程ネズミが跳梁していたのだろうか。いい気持ちではなかった。

◯月◯日/ こんな事を思い出したのは、英国でネズミ捕り用の粘着シートの使用があと2年後には使用禁止の法律が4月に通った体。これ、見た事はないがこれに接触するとネズミは動けなくなり痩せて或いは植えて4時間あまり苦しんだあと死ぬそうな。それで、このやり方は「残忍、かつ野蛮」となった(のだそうだ)。ネズミも少しおとなしくしなきゃな。まあ普通ネズミは嫌われ者だが、愛されてきた一面もある。現に私の母校明治学院大学の先輩たる島崎藤村に「鼠あわれむ」なる詩が当て「長き尾をうちふりつ、小踊りしつつ軒つたい〜」云々。そのうちネズミをまとめて書いてみよう。

◯月◯日/ 2ヶ月ほど前、黒猫が庭に現れた。私は犬より猫の方だから一寸餌を置いてみたが、これが失敗だった。何しろこの黒猫気味が悪いのだ。最初見たときは、「おっ黒か。これ、ルドルフだな」と思ったが、今まで余程いじめられたのか、近づくとニャーでなくて、真っ赤な舌を出し、鼻にしわよせて、シャーと唸って威嚇する。まこと可愛くない。

◯月◯日/ こうしているうちに近所の奥さんが来て、あの黒猫は山下さんの?と聞くので違うと答えたら、その家で引き取ったようでそのあとは知らない。因みにルドルフは斎藤洋の人気小説「ルドルフとイッパイアッテナ」の黒猫ルドルフだ。因みにもう一つ。私の町内会の規則では野良猫に餌をやったら20万円(2万円でないぞ)の罰金だ。向こう三軒両隣、全部犬派だから、あの猫も処分されたかもな。

◯月◯日/ 12月末に新刊がオープンして以来来客1.5倍で大忙しだ。自動車文庫もフル回転だが、パキスタン南西部パロケスタン州の僻地の村々は道が狭くて車が入れないので、ラクダに本を積んで、これが移動図書館だと。これは中々いい風景だと思ね。

◯月◯日/ 道がせまいと言えば私が住んでいる室蘭は殆ど山坂の街で、よくこんな所に家を建てたもんだと呆れるような所に家が立ち並んでいる。そのくせ矢鱈と小路が多い。街のあちこち、店の脇の小路を抜けると、と言った具合に滅多に行き止まりという場所がない。先日私の2年先輩で、歯医者の松井さんが来て話の最中「俺の家の裏の小路に〜」てな言葉で出て、なんで室蘭は小路が多いんだろうとなったら、松井さん曰く「昔は皆糞尿を集めに来て柄杓で汲み取って桶で表の馬車まで運んだ。馬車が入れないので、人一人通れる小道にしたんだと」と。成程了解。なんでも話題にしてみるもんだ。

◯月◯日/ 他市の話で、余計なことと思わぬでもないが、岩見沢の話.1973年市制30年記念に「交響詩岩見沢」が地元出身の「加藤愛夫」によって作られ翌年曲がついて発表された。この時私は短い批判の文章を書いた。どうしてか?。実はこの「加藤愛夫」太平洋戦争中は熱烈な愛国詩人で、つまりは「太平洋戦争」讃歌を作っていた人だったからだ。

◯月◯日/ 先日、アレサ・フランクリンの伝記映画「リスペクト」を観た。キング牧師もマルコム・Xも出てくる。2人とも暗殺されたが、去年の4月下旬、ニューヨークの地区検事らが暗殺者2人が無実だったとして有罪取り消しの申し立てを行った。FBI(連邦捜査局)とNY.市警が無実の証拠を隠していたと言う。いつものパターンだ。この映画観るべし。実録映画もある。これも観るべし。

◯月◯日/ 高一の夏休みだったと思う。母の弟の家で遊び暮らした。弟は狸小路に呉服屋を構えて住居の方は豊平でりんご園をしていた。娘が2人いて、上は私の3つ位上だったと思うがその時初めて姉の方と札幌南校で同級生だった「河清純子」の話を聞いた。中学生の時から絵を描いていて、天才少女であること、札幌雪まつりの「雪像」を一人で黙々と刻んでいたこと。そして18歳で釧北峠で自殺した事etc

◯月◯日/ 所で、今年1月下旬道立文学館で「よみがえれ!とこしえの河清純子、再び」展が開かれた。行こうと思ったが、コロナの中札幌まで汽車は嫌だな、などと思っているうちにお終わったしまったが仕方ない。この少女の同級生が渡辺淳一で、この少女をモデルにしたのが「阿寒に果つ」だ。本が出た時読んでみたが、渡辺に悪いが、いとこの話の方が数段面白かった。

◯月◯日/ イタリアの北部の港マリーナ・ディ・カラーラに留めてあったプーチンのヨットが差し押さえられた。と5月10日のニュース。914億円のヨットで、全長140m6階建て、ヘリコプター2機が離着陸出来、名前は「シェヘラザード」だと。アラビアンナイトの語り部の名だ。世には機関車が好きだの、船が好きだの、という人がいるが、私はそのタイプではないので、なんの興味もない。ただプーチンもやるもんだなと思うばかり。何が嬉しいんだろうこんなもの持っていて。

◯月◯日/ 今年2月上旬、英国南部セントオールバーンズにある「ジ・オールドファイティング・コックス」なる英国最古の創業1200年のパブがコロナの不景気で潰れた。。とのニュースが出た。これで思い出したのは、昔ロンドンでの一夜、飲みに出ようと我妻さん、義弟と3人してタクシーを拾って「何処へ?」と聞かれて咄嗟に「ダーティ・ダックス」と出た。これ、ディケンズの小説なんかにも出る、ロンドン最古のパブ(確か、と言うのは今確かめずに書いている。)運転手は親切でパブに行く途中あそこはナニここがナニと指さして教える。

◯月◯日/ 何で有名かと言うとこのパブ?年創業以来掃除をした事がない。それでダーティ(dirty=よごれ)(ducks=アヒル)なのだ。入ってみていると、確かに客が帰ったとの灰皿などはそのまま床にポイ。その上を皆踏んで歩く。一通り店内歩いてみたがジョッキを前に人生もう終わりと言った感じの婆さんがジーと一所(ひとところ)を睨んで座っていたりでそんなに騒がしくなかったのが意外だった。小一時間居て出たがタクシーが拾えない地理がわからないので当てずっぽうに歩いていると、20歳前後のカップルが2組みやってきたので、止めて、地図を出して、「今我々は何処にいるんだ?」と聞いたらこれまた意外に親切に地図を見て指をさして、教えてくれた。あのパブもひょっとしてつぶれたろうか。

◯月◯日/ 知らなかったが、5月16日は、「旅の日」だと。1869年の5月16日に芭蕉が「奥の  細道」の旅に出た日に因むそうな。これ、切り抜いて芭蕉にはさむ前に序でに「ことわざ辞典」を見たら「旅の恥は弁慶状」とある。??読むと、武蔵坊弁慶の遺言状があって、これは書き捨て。一方「旅の恥は掻き捨て」と言うので、これにかけたシャレだと。成る程ね一つ覚えた。因みに私が普段使う芭蕉は山本健吉の「芭蕉全発句」(講談社芸術文庫)と雲英末雄他訳注の「芭蕉全句集」(角川文庫)。日常、芭蕉ときたら先ずこの2冊を見る。朝日に連載のピーター・J・マクミラン の「詩歌翻遊」の切り抜きなどは皆この2冊に挟む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◯月◯日/ 5月の選挙でフィリピンの大統領に市民らに対する弾圧で知られた故マルコスの息子が当選した。おまけに副大統領にこれまた強権で知られたドウテルテ元大統領の娘が当選した。故マルコスは反独裁活動派を3000人超殺した男で、その息子が返り咲いたとはかつての被害者ならずともぞっとする。それなのに、米のバイデンが息子に祝意をtelしたというから、呆れる。目下ウクライナ問題に関してバイデンが唱える「民主対専制」の構図は、未だ民主化されていない途上国がついていけないとの指摘が出始めている。つまり途上国にしてみれば、大国間の争いに自分達を巻き込むな」と言う訳だ。うなずける。フィリピンの「プーチン」に祝意を述べて何の意味があるのか。

◯月◯日/ 「赤の広場」でのロケを外国人で最初に許されたのは確かシュワルツネッガーだったと思うが、彼のどの映画か忘れたが、何か格闘技を見せた後、相手役が、何処でそれを覚えたのかと聞くと一言「キエフ=今のキーウ」と答える場面があった。この男は(前にも書いたが)プーチンに向けて「この戦争はあなたが始めた、あなたは止められる」との動画をツイッターに投稿した。今まで、27回もプーチンとあったと自慢していたアベがプーチンに面と向かって何も言えないのに比べ誠それこそ男らしい。プーチンがアベをなめてかかるのもわかるな。

◯月◯日/ コロナの最中でも労働者を人間扱いしないとて、アマゾンとスターバックスの従業員が労組を立ち上げた。バイデンも労組を応援しているが企業側は組合つぶしに躍起になっている。私はアマゾンでも本を買ったことなし、スターバックスでも入ったことなしで、いささか心が安らいでいる。トランプを筆頭にする共和党はもちろん反労組だ。醜いね。

◯月◯日/ 北方領土、アベマスクetc一切責任を取らないアベが軍事費増額要求の演説をしている。この疫病神がいつまでものさばっているのはどうしてなのか。全く理解ができない。

◯月◯日/ 今日は5月19日、新聞の季節欄に「薫風」の時だとある。「若葉の香りを送ってくれるような爽やかな初夏の風」だ。去年は5月3日頃に出たから今年は半月ばかり遅い。これ切り抜いて高橋順子の「風の名前」(小学館)に貼って隣を見たら、「黄雀風(こうじゃくふう)」とある。陰暦5月に吹く南東の風を言うとあり、中国ではこの風が吹くと、海の魚が地上の「黄雀」になると信じられたとある。それで、「鳥名の由来辞典」に当たると、中国では雀の幼鳥のことで、それは羽色とくちばしの色が淡黄色だからと言い、日本語ではこれを「あくちのすずめ」とか「あぐらすずめ」と言うとある。知らんかったなあ。庭に来る雀もめっきり減ったが、今度よく見てみよう。

◯月◯日/ 雀と言えば大分昔、向かいの家の車庫の庇の中に雀が卵を産んだら、カラスがそれをつつき出して地面に落ちて割れたやつをつついているのには腹が立ったな。卵といえば今は止めたが、これまた昔、シジュウカラ用の巣箱を何年間か木にかけたことがある。そして感激したのは、その巣箱から孵えった子が巣だちする時に、どうゆう訳か台所の窓の木に止まって、いかにもお世話になりました、という顔で暫くいることだった。嬉しかったねえ。

2022.05.19

山下 敏明

 

 

 

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