2014.12.10 寄稿
随分昔、パリでのこと、1870年の普仏戦争での敗戦を記念して建てられたサクレクール寺院を観てからカルコーやマッコルランの回想に出てくる有名な酒場 「はねうさぎ」に回るべく、モンマルトルの丘に登ろうとして、通りがかりの人に「ケーブルカーの駅はどこか」と尋ねると、ちょっと考えて「知らぬ」と言 う。こっちも困ってハテ?とあたりを見回していると、5.6歩行きかけたその人が、小首をかしげ戻って来て「貴方の言うのはフニクリ・フニクラの事か?」 と言う.瞬時に私の頭に浮かんだのは「行こう、行こう火の山へ/行こう、行こう山の上/フニクリ、フニクラ...」の唄だった.と同時にそうか、登山電車 はここではケーブルカーではなくて、フニクリフニクラなのかと理解して私は「それ、それ」と喜んで...となったのだっ た。 続きを読む 第350回 翻訳家小笠原豊樹=詩人岩田宏の業績