第159回 ウサンクサイ名作と、バートランド・ラッセル

`00.2.18寄稿

「ビルマの竪琴」それに「コタンの口笛」両者とも名作とされて久しいが、私はこの2名作を読み終えた時に、奇妙な感じを受けた。各々、色々感じたの

だが、奇妙な感じと言うのは、この2作に対して一致した感想が一つあった、と言う意味である。その一致した感想とは、一言で言えば、この2つなんとなく「ウサンクサイナ」などと言うものであった。 続きを読む 第159回 ウサンクサイ名作と、バートランド・ラッセル

第158回 雪の写真家ベントレー

`00.1.28寄稿

室蘭地方としては、まれに見る大雪と寒波で、先日末、大分おたおたしたが、あたかもその時、と言いたい程のタイミングでと言うことは、こんな時こそ読むべき本が届いた。届けてくれたのは、室蘭工業大学生協の本屋さんの主任長尾真貴さん。届けられたのはJ.B.マーティン作、「雪の写真家ベントレー1 」だ。

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真貴さんのいうには、「ベントレーの名前と業績を初めて知ったのはもう10年も前、山下さんがしてくれた話からでしょ。この本が出た時に、これは真直ぐに取り寄せなきゃ、と思ったの」と。真貴さんは、非常に記憶力が良く、知的好奇心も旺盛な人で、私はいつも本を注文するにあたって、「この人を通しておけば大丈夫」と言う安心感をもって頼っている人である。

何でも10年前のある日に、私が、雪の本についての色々、「北越雪譜」とか、「北越奇談物語」とか、「雪華図説」とか、を語って聞かせて、ついでに世界で初めて、顕微鏡を使って雪の写真撮影に成功した。アメリカ人ウイルソン、ベントレーの事にも触れていたそうな。

その「面白くて、面白くて」という言う話が彼女の頭に消せずに残っていて、今度出た本に直ぐ目が行ったのだと言う。新刊書におちなくめを配っているつもりの私も、この本の刊行は知らずにいた。で一読。いい本です。

雪に魅せられたベントレーの生涯が、詩情豊か、簡潔無比の文と絵とで描かれている。あえて一つ不満を述べれば、大人向けに参考文献があってもよかったのではないかしらん。

例えば北大低温科学研究所長、故小林禎作の「雪に魅せられた人びと2 」(築地書館)など。

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と言う訳で、ベントレーがとった雪の写真をみたい人にベントレー自信の本を一冊紹介しよう。

W.A.Bentley著「Snow Creystals3 」ドーヴァー社は、発行約16ドル、ドーヴァー社は古今の名著を和紙で低価格で出す有名な会社です。

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英語の本なんか、読めないよとビビルなかれ、沢山の雪の結晶(=クリスタル)を眺めているだけよろしい。英語の本なんか、どこで注文すればいいの?とビビルなかれ。室蘭及び近隣の人は、先程の長尾真貴さんか、店長の横尾君にTELなりFAXなりでどうぞ。室工大生協書籍店 TEL0143-44-6060 FAX0143-45-6905

話は変わるが、今は絶版のナット・ヘンホフの本について触れたい。この本の原題は「われらが本を逮捕した日」だ。我々日本の読者は、アメリカの代表的作家はマーク、トウェインであることを知っている。そして、トウェインの代表作は、「トム、ソーヤの冒険4 」であり、「ハックルベリィフィン5 」である訳だが、この名

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品を図書館からはじき出せ・・・との動きが、過去にも(ばかりでなく)現在でもある、と言う変テコな事情を書いた本が、この本だ。

「ハックルベリィフィン」は、確か旧ソ連では禁書であった。その理由は、「ハックルベリィフィン」が浮浪児であること、今流に言うならば「ストリート

、チルドレン」であることが当局の意に沿わなかった訳で、と言うのも完全無欠の社会主義国ソヴェエトに於いては、失業者は居らず、ましてや働きもせずにブラ〜と遊んでいる「路上生活者」は存在し得ず、故に「家なき子」のハックルベリフィンも、そのいること自体が許せないと言うことなのであったのだ。

パール、バックのノーベル賞受賞作「大地6 」も、余りにも、中国の農民を貧困の中に描いているとして、

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毛沢東の中国では発禁の書であった。まあ、国と時代によって禁書の意味付けの違いがあることは分かるとしても「ハックルベリィ」がだめで、「ホイットマン7 」も男色者故にダメだとなると何をか言わんやだが、「進化論」は認められない、聖書に友するからとなると、何をか言わんやに輪がかかる、と言うものだ。

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つまり、アメリカと言わず、我国と言わず「出版の自由」と言うものについて、またぞろ考えなきゃならぬ時代の到来のようだ。

  1. J.B.マーティン.雪の写真家ベントレー.BL出版 (2000) []
  2. 小林禎作.雪に魅せられた人びと.築地書館(1975) []
  3. ベントレー.雪の結晶.Dover Publications(1962) []
  4. マークトウェイン.トム、ソーヤの冒険.集英社(1994) []
  5. マーク、トウェイン.ハックルベリィフィン.彩流社(1996) []
  6. パール、バック中野好夫訳.大地.新潮社.(1953) []
  7. ホイットマン木島始訳.ホイットマン詩集.岩波書店(1997) []

第157回 鱏や鰻や疱瘡神の本

`00.1.14寄稿

北辰中学校(今の常磐小学校)の生徒だった頃、帰路、退屈すると、札幌通りを歩かずに,白川の米屋から,真直ぐ港へ出て,旧室蘭駅の裏と言うか,,,横と言うか、この辺りにあった水上警察所まで歩いたものだ。 続きを読む 第157回 鱏や鰻や疱瘡神の本

第155回 学歴貴族の栄光と挫折

`99.12.8寄稿(木)

今年の夏(だったか)、男女参賀がどうのこうので、「上野千鶴子」を招んで基調講演をさせ、そのあと、男1人、女2人の3人でパネルディス

カッションをすると言う集まりがあった。その男1人に選ばれて、講師控室で待っている時に、幹事が、上野に、私を紹介して、「この人は、室蘭工業大学にいた人です」と言った。すると、上野は「あら、室蘭に大学があるんですか。それは市立、私立?」と聞いた。私は「いや、東大と同じく、国立大学です」と答えた・・・が・・・。 続きを読む 第155回 学歴貴族の栄光と挫折

第156回  おかまとオスカーワイルド

`99.12.24寄稿

先日、気がおけない人達と飲みかつ食べている時に、酔った時の話になって、私はタレント「なべ おさみ」の話をした。なべとは、息子の大学受験をめぐってどうのこうのと言われたあの「なべ」である。話とは・・・「なべ」が或る時、銀座で飲んでいて、はしごをしている間に、とある店で寝込んでしまった。暫くして、「なべ」が目をあけてみると、そこは「ゲイ、バー」で厚化粧をした連中が何人も「なべ」を取り巻いて、上から見おろしている。ハッと気付いて「なべ」が叫んだそうな。「僕はなべだ。おかまじゃないよ。」 続きを読む 第156回  おかまとオスカーワイルド