司書独言252

◯月◯日/今日は23日、天皇誕生日で祝日だが図書館はやっている。我妻さんは私を図書館に送った後で、買い物をして帰宅するそうだが、今日はいつも寄る大型食料店によると、模様替えで、今日1日限りの大特価市をやって居たそうな。それで夕食にシャンパンとアワビが出た。特化のおかげだ。 続きを読む 司書独言252

司書独言

◯月◯日/去年の11月22日 班目春樹が死んだ。74歳。この名前、「原発」に関心を持つ人なら、「ああ、あの悪名高い男か」と分かるだろうが、そうでない人にはピンと来ぬだろうから、一応ここで説明する。前にも引用したことがある本だが、佐高信の「原発文化人50人斬り」(光文社知恵の森文庫、2014)では「有害御用学者」と名指しされていて、浜岡原発をめぐる訴状で中部電力側の証人に立ったこの男は「すべての電源が喪失するようなことを想定していては、原発は作れない、どこかで割り切らなければ」と言った由。この時この男は東大教授だった。

◯月◯日/ 私の棚に、石橋克彦編「原発を終わらせる」(岩波新書、2011)がある。この本が出た時点で、石橋は神戸大学名誉教授。東大理学部地球物理学科を卒業した人。佐高によると、班目は、「石橋氏は原子力学会では聞いたことがない人である」などと、石橋を貶めていたと言う。本当に卑怯で許しがたい男だからもう一つ引いておく。

◯月◯日/ 広瀬隆+明石昇二郎共著「原発の闇を暴く」(集英社新書2011)に出てくる話だ。「原子力マフィアの実権を握る東大学閥」と題した一節で「東大、京大コネクションでのロビー活動が凄いからね」として「原子力安全委員会委員長の班目春樹」他の名を挙げ「いかに原子力マフィアが東大学閥に結集しているかが分かる」としている。

◯月◯日/ 広瀬と言えば、私は時間がなくて行けなかったが、2011年10月17日に室蘭に来て原発の危険性をテーマに講演した。曰く「室蘭は泊原発から100k以内。事故があれば住むことはできない」序でだから、広瀬の本をもう一冊出しておく。「福島原発メルトダウン」(朝日新書2011)。本書で広瀬は、先に挙げた班目がけなした石橋について、「地球学者の石橋克彦さんは今回のような原子力発電所の大事故を想定し、1990年代から警鐘を鳴らしてきました。石橋さんは名を知られた学者ですから、そんな方の警鐘を東京電力などが、知らないはずはありません」と書く。

◯月◯日/ここで班目が入ったと伝える佐高の本の記述、先に引用した「石橋氏は原子力学会では聞いたことがない人である」を思い出して欲しい。岸田は愚かにも原発再開にに力を入れている。老い先短しとは言えど、軍拡といい、岸田の愚策のおかげで死にたくはない。

◯月◯日/2月10日「炎のランナー」の監督ヒュー・ハドソンが86歳で、同じ日に「カラスの飼育」の監督で、スペインを代表するカルロス・サウラが死んだ。これに先立って2月の8日には作曲家の、バート・バカラックが94歳で死んだ。「007・カジノロワイヤル」「明日に向かって撃て」の作曲家だ。どれもいい映画だった。我妻さん曰く「私たちの青春が死んでいくわね」と。言われりゃそうだ。

◯月◯日/ 去年の12月25日、電通に東大出で入社した高橋まつり(24歳)がパワハラやら長時間労働で疲れ果てて自殺して7年目とて、母の幸美(59歳)の手記が各紙に出た。その電通の五輪汚職が最近大分明らかになってきて 、この間はその中心人物高橋治之氏が(どうしたことか)車椅子に乗って、保釈される姿が新聞に出た。私はこれらの記事、全部、大下英治著「電通の深層」(イーストプレス刊2017¥1,600)に貼る。然しつくづく思うにこの高橋も、そして銃撃されたアベも、つまりは調子に乗って「やりすぎ」たのだ。

◯月◯日/ 篠原勝之と言えば「鉄のゲージツ家」などと紹介される。室蘭出身(だそうで)新日鉄の社宅で育ったらしいが、私はよく知らない。室蘭のNHKの前にその篠原作の鉄のモニュメントが立っていたが、去年だったか、取り壊された。何年間建つていたかは知らない。このモニュメント私は何を表しているのか全く分からなかった。風車のような、そうでないような、このモニュメントを思い出したのは2月に入って篠原のエッセイが新聞に出たからだ。

◯月◯日/京都に住んでいる篠原が「天の原ふりささけみれば〜」を枕にした文章だ。私はこれ、「古今和歌集第9巻、no406」の所に挟んだ。壊されると言えば、札幌の「開拓100年記念塔」(というのだあったか)も先ごろ道民の反対を押し切って壊された。いつも遠くから見るだけで、中に入れる塔なのか、只の鉄の塊なのかは知らず、この塔も私には何を言いたい塔なのか、さっぱりわからなかった。室蘭のNHK前のはある日消えていたから、住民の反対云々はなかったのだろうな。

◯月◯日/ 鯨が淀川やら、東京湾に出て死んだとて、ニュースになっている。室蘭には昔鯨を処理する工場があって、小学校の時、横っ腹に鯨を縛り付けて入港してくる船を見たことがある。私は鯨のベーコンとやらが好きではないが、それは小学校の給食に出た鯨のせいだ。この鯨は乾燥鯨の肉で、しかもその大きさたるや、わずか、キャラメルの一回り大きだけ。これが一個小皿の上に出る。生徒はそれを口に入れてゆっくりと舐めまわす。

◯月◯日/ すると鯨はツバでほぐれ、少しはふくれてくる。最大に膨れあがったと思った時点で肉片を剥ぐようにして食べていく。満腹感なんてあるはずもない。あと出たのは日によって脱脂粉乳をとかしたのがコップ一杯。あるいはトマトジュースがコップ一杯。この脱脂粉乳とトマトジュースは皆嫌いで、それでも残すと先生に怒られる。それで、級長だった私は内緒で頼まれて、彼、彼女らの数杯、飲んだものだ。奇妙なことに私はその味に何の抵抗もなかった。味覚音痴だったのだろう。今時の給食の豪華さには驚くばかりだ。

◯月◯日/ 岸田のやること、すること見ていると、頭の中血のめぐりが何処か詰まっているのではないかと思っていたが、人間とは分からないもので、鼻も詰まっていたそうで、日帰りで手術してきたそうな。これで、、思い出したことがある。私も、昔鼻が詰まって、おまけに我が妻さんが言うにはいびきががすさまじいと。それで、耳鼻科に行って蓄膿なら手術してくれと言った。レントゲン他を経て医者が言うには「昔ボクシングでもやっていたか」と。この俺の穏やか顔を見ただけで、人を殴る男に見えるかと、言いたかったが、「ない、何で又?」と聞くと、「鼻中隔が曲がっている」と言う。

◯月◯日/ これで思い出したのは高校一年の時、硬式の野球部の選手だった時の怪我。私のいた「栄高校」のグランドは校舎の裏の只の空き地でグランドと言うようなものではなかった。囲いもネットもなくて空き地を取り巻く住宅街の人達が近道をするため絶えず横切るのだ。爺さん婆さんが横切り始めると、こっちがその間手を休めと言った具合。である時ショートを守る私へのシート・ノックで球が小石に当たってイレギュラーとなって私の左頬に真当にぶつかった。

◯月◯日/で、気を失って倒れた私にバケツの水を2杯。これで気付いた私は練習中止で家に帰れとなった。時代が時代だから、救急車は愚か、病院にも行かされず、帰宅した頃は、眉目秀麗消え失せて、顔はパンパカパーンに膨れあがっていた、でそれから、約半月顔の腫れが引くまで、ひたすら氷で冷やすだけ、そして、その時の名誉の負傷の結果が「鼻中隔」の曲がりと言う訳。同じ鼻がつまるにしても、岸田は苦労が足りぬ。ナーンテネ!!

◯月◯日/東京の聖路加国際病院で患者の精神的ケアをする「チャプレン」と呼ばれる聖職者たる男性牧師からわいせつ行為をされたと訴えた女性の事件で、東京地裁は牧師らに賠償を命じた。聖職者による性暴力の実態は今や世界各地で明らかにされて、映画にもなっている。聖路加病院には一度行ったことがある。ここで、次姉の娘が医者をしているので、上京の時訪ねて病院全部を見せてもらったのだ。礼拝堂も素敵だった。こうしたところでお祈りする人がなあーと不思議だが、下世話に申せば、土台「禁欲」が無理、と言うことなのだろう。凡人の感想だけどね。

2023.02.16

山下敏明

司書独言(249)

◯月◯日/12月12日、佐藤蛾次郎が78歳で死んだ。「男はつらいよ」で笠智衆が扮する御前様の寺男の「源ちゃん」役の男優だ。私は「男はつらいよ」の前に、この男を知っていた。それは….昔中島町に「中島映劇」があって、下が日本映画、上が洋画をやていた。ある時下での日本映画の時だ。蛾次郎扮するチンピラがオートバイに乗って現れたはいいが、土地の若い者に「お前はどこの奴だ?」と因縁をつけられる。すると蛾次郎が答えるには「俺か、俺は室蘭の中島の出身だ」とか言う。

◯月◯日/これには満員の観客が吹き出すと同時拍手喝采なった。思っても御覧(ごろう)じろう。中島の中心街にある映画館で「中島だ」と来る者、客が喜ばない筈がない。それにしても、あの映画のタイトルは何て言うのだったか、それで、11月23日に四国は松山の俳人で私の本を読んでくれている栗原恵美子さんが送ってくれた、立花珠樹の「日本映画の再発見ー観れば納得の100本」(言視舎)を出して探してみた。するとP66に1968年に山田洋次の「吹けば飛ぶような男だが」が出ていてこれがどうもそれらしい

◯月◯日/主演は「なべおさみ」、息子の大学入試の裏口合格でミソをつけてしまったの俳優だ。相手役の家で娘には緑魔子、なべおさみの弟分が蛾次郎で、筋は?となれば、立花は「東京の下町や北海道が舞台で〜」と書くから、おそらくこれだ。栗原さんに感謝の意味でここに書影を出しておこう。俳優と言えば江原真二郎も85歳で9月27日に死んでしまった。然しどうして蛾次郎のセリフに「室蘭、中島」が出たのだろうか、この映画の関係者に中島出の者がいたのだろうか?

◯月◯日/今まではメガネをかけて1.0まで見えたが、12月に入って白内障の手術をした両目だ。手術の間私はオスカー・ワイルド事を思っていた。あの警句を持って鳴る英国の作家だ。昔読んだ本で、ワイルドの父親は確か眼医者で、ある時患者の斜視を治そうとした所、目の筋を切り過ぎてしまい、斜視を通り越して目玉がでんぐり返ってしまい、つまりは「裏目」になった云々の話を読んだ事があるからだ。

◯月◯日/自分の手術が失敗するとは思わなかったが、私は手術の前に医者に、もし手術中にくしゃみがしたくなったらどう合図すれば良いかと聞くと、医者は消毒が終わって目にカーテンがかかった後は口で言ってくれと言う。これを聞いていた看護師は、今迄手術中にくしゃみをした人は一人もいないと言うそんなもんかね。「人が悪口言うと、くしゃみが出る」と言うことわざがある。私は人に愛されている自信がないから手術中は誰も私の悪口は止めてくれと願うのみ。

◯月◯日/然しくしゃみはマイナスのイメージしかないのかなあと「ことわざ辞典」に当たったら、人が恋してくれるとくしゃみが出るとして「万葉集」2637と出てきた。で居間に置いてある岩波文庫のそれを見ると「うち鼻(はな)ひ鼻(はな)をそひつる剣太刀身に添(そ)ふ姉(いも)思いけらしも」とあって「鼻がムズムズしてくしゃみをした。身に添うあなたが私を思っているらしい」とあり、「劍太刀」は「身に添」の枕言葉だと。

○月○日/岩波文庫を出してびっくりしたのは、前にも調べたらしく、NO2637の所に「しぐさの民俗学」の273pをも見よと書いてあることを忘れていた。白内障の後は認知症かな。まあ手術中のくしゃみは困るとして、他の時間には構わないから「誰ぞ私を恋してくれ」と願いたい。目がでんぐり返えりもせず無事手術が終わって帰宅してワイルドの伝記を見ようとおもったが、書庫は暖房していないので、外気温マイナス5の今日は入るのが億劫だ。それで書庫入り口においてあったロバートヘンドリクソンの「英米文学エピソード事典」(北星堂1988)で調べたが、ワイルドの項には「裏目」の話ナシでこれは春が来るまでの宿題としよう。

○月○日/何年前か忘れたが、室蘭の焼き鳥屋に「酒場詩人」と名乗る「吉田類」とやらが来て、そこに当市の市長が駆けつけた、との記事が出たことがある。それから暫くして、千歳空港でのこと、乗り場の入り口に何やら見た記憶の男がいて、これが吉田、その吉田を見ていると係員の脇に立ち「俺が吉田だよ」と見せたかった訳だ。これで私は自意識過剰のこの男が一度で嫌いになった。

○月○日/それが新聞のTV欄を見ると、ナント、ナントこの嫌味な自己顕示欲の男がの「酒場放浪記」を年越しの4時間特番でやるとある。私はTVは見ないがそれにしても、いくら年末だとしても、取り上げるべき問題は他にいくらでもあろうになあ。例えば今日12月19日の朝刊には政治資金収支報告書で、からっ岸、何もせぬ岸田が、前年比46%増の2億2926万円と出ている。2位は品のない麻生で2億1950万円だ。こう言うのを見て、TVの番組を作っている連中は何も思わんのかね。

○月○日/レスラーのアントニオ猪木が死んだ。昔この男とアメリカのボクサーが戦うとて評判になったが猪木は寝たきりで足払いするだけ、強打のボクサーはこれを避けるためピョンピョンと飛び上がるだけ、で戦いと言えるものではなかった。ところがこの胡散臭いレスラーが死ぬと、新聞やTVで持ち上げるものがではじめた。まともな批評と思われるのは、私が読んだ中で中では東工大の中島岳志位ではなかったか。

○月○日/ 猪木のインチキぶりは数々あるが、今、岸田が、妙に原発に力をいれているのでその関係の話にする。佐高信の「原発文化人50人斬り」(光文社、知恵の森文庫)に出ている話だ。青森の知事選挙に絡む話で、最初猪木は原発一時凍結派から150万円で応援に来てくれと言われて来るはずだったが、推進派のバックの電事連と言う所が1億円でどうだと来て、猪木は慌てて150万円を返して1億円の方についたと言うのだ。佐高は猪木の秘書だった佐藤久美子の「議員秘書、捨て身の告白」(講談社)によって書いている。

○月○日/ 私の書棚に原発の本が多数並んでいるが市の中に小出裕章の「フクシマと東京オリンピック」があって、中にオリンピックが日本に決まった時の写真が出ている。アベだ、森だ、岸田だ、と日本を滅ぼしにかかっている連中が勢揃いして両手を突き上げて万歳している。いい機会だから、これも書影を出しておく。表紙を見るだけで事の重大さがわかる筈だ。来年、日本は増々ダメな国になるだろうな。今回は書影をたくさん載せたので、この辺でやめる。

○月○日/ 一つ足す。過ぐる11月9日、東京地裁は産経新聞社とジャーナリストの門田隆将に計220万の支払いを命じた。払う先は、立憲民主党の小西洋之と杉尾秀哉の両参議院議員。ことは森友問題で両議員が財務省に乗り込み、1時間にわたって職員を吊し上げ、それで職員が自殺したと、産経と門田が書いたと言う事件、これが事実無根と分かった訳だが、私が呆れたのは門田。このインチキ男について私は去年の3月19日付けの「本の話」第852回の「前代未聞のデマ作家」と題して取り上げたのでここに出しておく。この男は懲りもせずインチキ家業を続けている訳だ。私がこの「本の話」を出したあと読書家の友人2人から「いやー知らないで門田読んでましたよ」と告白(と言う程でもないが)された。こんな偽ジャーナリスト(と言うのも腹が立つが)は早く干さねばだめだ。


2022、12月9日

山下 敏明

司書独言(248)

◯月○日/前回の「あんな本こんな本」でカンボジアのポルポト政権が行った非道について触れ、「共産主義黒書、アジア編」とポルポトの伝記が載っている「安田峰俊」の「独裁者の教養」を出しておいた。その後、映画の資料を整理していたら、忘れていたのが出てきたので、此処に加える。 続きを読む 司書独言(248)