司書独言259

◯月◯日/ 新聞の投句欄に「マルクスを学び直すや穴惑(あなまどい)」なる小難しげな句がのっている。ははあ、これ前に調べた事があるな、と金子兜太、黒田桃子、夏石番矢編の「現代歳時記」(1997,生星出版)を出してみる。

◯月◯日/「穴惑あなまどい」の説明はこうだ。蛇は9月に入って涼しくなると、冬眠のため穴に入る。ところが彼岸を過ぎても姿を見せている蛇がいる。じつは秋の蛇なのだが、それが夏の蛇の名残のように見え、穴に入り損なった穴惑とされる。

◯月◯日/ 前に切り抜いて挟んであったのは「思わざる此の世なりけり穴惑」「吾も又入る穴欲しや穴惑」だった。最後の句は生きずらい日々を生きている国民皆共感する所ではないだろうか。どれも10月末の投句だ。

◯月◯日/ 今の若い人は知らないかも知れんので、金子について一寸説明する。金子は2018年2月20日に98歳で死んだ。作家澤地久枝(9条の会】にたのまれて「アベ政治を許さない」を書いた人だ。

◯月◯日/ 金子は又、小林一茶が好きだった。一茶は「自由に本能のままに生きるのを理想として自分を「荒凡夫(あらぼんぷ)」と呼んだ人だ。金子はこの一茶の生き方を良しとして、自分も人に迷惑をかけず、野生のままに生きたいと言っていた由。

◯月◯日/ 金子はアベを「政治家として小さい」と言い、その政治を認めなかったが、今生きていれば、岸田を何と評すだろうか。

◯月◯日/ 私の手元には、玉城司訳注の「一茶句集・現代語訳付き」(角川文庫)と丸山一彦校注の「新訂・一茶俳句集」(岩波文庫)の2冊がある

◯月◯日/ そう言えば先日、お向かいのI家から沢山の栗をもらったI家には栗とくるみの大木があって毎年くれる。そこで一茶の栗の句から好きな一句を引く「栗拾い、ねんころり言いながら」

◯月◯日/ 戦争(いわゆる太平洋戦争)が終わって「国民学校」だったのが普通の小学校になった。私が通っていた学校が「武陽小学校」となり小学5年生で男女共学が始まった。男の学校だから女のトイレは元々ない。そこで、男女兼用のトイレがいくつも作られた。作られたはいいが、おっちゃんこする所は一応区切られているが、便の落ちていく所は区切りがないから前後3人程同時に大便をしている尻ペッタが水面に写る。これには参ったね。

◯月◯日/ そこで気になっていたことがある。大便の方に血の便が増えたことだ。その時は、女性の生理と言うことを知らんから、何で「痔」を患っている奴が増えたんだろうと不思議だった。

◯月◯日/ それが、図書館に無料でくる「赤旗」を読んでいたら「生理休暇」なるものは日本で誕生したと出ている。へーと驚いて、「大辞泉」に当たってみると、「労働基準法に基づいて、生理日の就業が著しく困難な女子労働者に与えられる休暇」と出ている。

◯月◯日/ それはいいが、世界に先駆けて日本で始まったとはー行も出ていない。これはもったいない。これは書くべきだ。因みに「生理休暇の誕生」なる本を20年も前に書いた田口亞沙は「成城大学民族文化研究所の研究員(文化人類学)。大した仕事をしたもんだね。

◯月◯日/ この20年も前に青弓社から出た本は今は電子書籍のみの刊行だと知って、もう一度紙の本で出してくれんかねと書きかけたが、これ、引っ込める。と言うのは、この度「ハンチバック」で芥川賞を受賞した作家、市川沙史は先天性の筋疾患のために人工呼吸器と電動車椅子で生活している。彼女は本を持つことができないので、電子書籍の普及を望んでいるのだと言う。、つまり、読書バリアフリーの要望だ。言われて気づいた。よって「紙の本で出してくれんかね」を引っ込める。腰が辛いので今回はこれで止める。   2023.10.28

◯月◯日/ 本の整理をしていたら懐かしいのが出てきたので載せる。若かったね!。

司書独言(257)

◯月◯日/ 新聞の詩の投稿に「たんぱら」なる詩が出ている。小学校時代の通信簿に「怒りっぽい」「ふてくされる」と書かれた人の詩で、9月1日は、関東大震災の日に生まれた子は「短腹(たんぱら)」と言われたとある。この「たんぱら」実は北海道方言、「短気」のことだ。青森、岩手の九戸(くのへ)秋田の平鹿(ひらか)で使うと石垣福男の「北海道方言辞典」にある。

◯月◯日/ 私は自分で、和歌も俳句も川柳もやらぬ無風流な男だが、新聞に投稿があれば、目を通す。そして、いつも感じるのは、それらを楽しむ人達の教養の深さ。和歌も、俳句も言葉に詳しくなければ出来ぬから、多くの言葉を知っているのは当然といえばそうなのだが、それでも感心する。今日も一つあった。

◯月◯日/ 百姓をしていた義父を懐かしむ和歌で小屋にその義父が使った朸(おうこ)が残っていると言う歌だ。この「おうこ」、小さな辞書では無理だ。で、「大辞泉」(小学館)を見ると、「物を担う天秤棒」とあって「古今集」にあるとでる。で、手元にある高田裕彦訳注の「古今和歌集」(角川文庫)にあたる。NO1058に「人恋うることを重荷とになひもてあふこ なきこそわびしかりけり」がある。

◯月◯日/ この下線の「あふこ」が今の「おうこ」で=天秤棒。よって、人恋することを重荷として担い続けながら朸(おうこ)ならぬ(逢う期=あふご)=逢う機会がないことはつらいことよ」つまり、「あふこ=おうこ=天秤棒」と「逢う期=あうご」掛けるで、高田の評は「恋を重荷といい、歌に詠まれない朸(おうこ)を用いた所が俳諧歌らしい」と。

◯月◯日/ 言われりゃそうだが、実際に天秤棒かついで百姓仕事に励んでいた男にはこの「古今集」の世界は想像すらできなかったろうからね。勉強になった。

◯月◯日/ 大谷翔平を「破天荒」と呼ぶメディアが出始めたそうな。これ四字熟語で「破天荒解=はてんこうかい」と表す。「破」は「成し遂げる」「天荒」は「未開、不毛の地」「解」は中国の官吏登用制度の科挙で地方の予備試験に合格し、中央の「本試験を受ける資格を得た者」

◯月◯日/ 唐の時代、「荊州」はこの予備試験合格者の「解」を出すことができなかったので「天荒解」と呼ばれていた。ところが「劉蛻=りゅうぜい」なる男が合格したそれで、人々は「未開の地」を脱したと言う意味で「天荒を破る」と言ったという。「中国古事成語辞典」は上のように説明した後「類句」=「発送表現の似通っている語句」として「未曾有=みぞう」を上げる。

◯月◯日/ この語を「全訳,漢字海」(三省堂)は① 「未だかつてあらず」と読んで、「これまでになかった素晴らしいこと、という賛嘆の語」と説明したあとで、②「かつて一回もなかったさま」と語明する、

◯月◯日/ 一方旺文社の「国語辞典」は「昔から今までに一度もないこと」と説明し、「未曾有の大惨事」の例を上げる。ところで、この3字を「ミゾユウ」と読んだ馬鹿がいた。ご存知あの口を歪めた、イタリアンマフィアのなれの果てみたい麻生だ。無教養通り越してる。こんな醜い男が政治家面をして、これは日本にとって「未曾有の大悲劇」ではないのかね。

◯月◯日/ ここまで書いて、他の仕事にうつってたら、8月9日のニュースに、この「未曾有」のバカが登場した。自民党の副総裁を名乗るこの男、台湾で講演したそうで,言うに事欠いて、「日本、台湾、米国をはじめとした有志国に、非常に強い抑止力を機能させる覚悟が求められている。戦う覚悟だ」と言ったと。そんなに戦争したいなら、先ず、自分と岸田と2人で出て行け。今、日本にも世界にも必要なのは「戦争しない覚悟」だ。

◯月◯日/ 7月の30日のニュースだが、南米はアルゼンチンの話。アルゼンチンは1976年ー83年まで軍事政権が続いた国だが、その時民主主義を求める活動家らは弾劾にさらされ、死者、行方不明者約3万人。この時牢屋に入れられた女性が出産すると、軍政権はその赤ん坊を、子供が欲しい家に有料で売りつけた。その人数約300人。

◯月◯日/ 軍事政権が終わると、子供を奪われた母親たちが我が子を探す運動が始まった。そして今回、133人目の赤ん坊の身元が判明した。赤ん坊を探す人権団体「五月広場の母たち」の発表だ。今46歳になった赤ん坊の母親はクリスティーナ・ナバハスで、当時左翼政党の「労働者革命党」の党員だったはずで、この母親は未だに行方不明。

◯月◯日/ このニュースを読んで思い出したのは、昔、岩波ホールで観た「オフィシャル・ヒストリー」(だったか)=公式な歴史」。こよなく妻を愛し、こよなく我が子を愛する父親が、実は軍事政権の拷問を担う男だった。と言う話だったと記憶する。

◯月◯日/ 作家で脚本家の平岩弓枝が6月9日91歳で没した。私は読んだ事も、見た事もない人だが、デビューの時、東京代々木の八幡宮の神主の娘で、日本女子大国文科卒と知っておやっと、思ったのは記憶している。神主云々は関係ないが、私の長姉が日本女子大英文科卒だったからだ。平岩が没して新聞の文芸欄に「平岩弓枝さん死去」の後、「ありがとう」ございました。なる投稿が出て、どう言うことかと思ったら、彼女に視聴率50%超を誇る「ありがとう」なるドラマがあると知って納得した。DVDで見ることができるドラマをさがしてみよう。

◯月◯日/ 読んだことがないと言えば、林真理子もそうだな。その代わりに林のヌードを見たことがある。ヌードといえばその前に、名前は忘れたが、「忘れられないの、あの人が好きよ」とかの歌手が、ヌード集を出した。その書評に、この歌手は珍しことに「盲乳=めくらぢち」だとあった。初めて聞く言葉で、調べてみると、乳首がとんがっておらず、言うなれば、陥没した(というのも変だが)ように、へこんんだ乳首のことと分かった。そのあと、本屋で立ち見したら、その通りだった。

◯月◯日/ 林なる作家が何の必要あってヌードになったかは知らぬが、見た限りでは「盲乳」でもなかったし、妖艶というわけでもなかった。言うなれば、「ドテッ」とそこに横たわっているな、という感じのもので、北海道でいう,トドの昼寝姿にそっくりだったな。今日本大学で苦労しているみたいだが、気の毒だな。

◯月◯日/ 麻生でおっもい出したが、今年の一月中旬にも馬鹿な発言しをたな。福岡の飯塚市で,自分の後援会の連中に向かって「原子力発電所で死亡事故が起きた例がどれくらいあるか調べてみたが、ゼロだ」と言ったのだ。麻生こそ、東電の社長でも立ち会い人にして、、汚染水で一時間行水でもやらせてみたら、と提案したいね。

◯月◯日/ 図書館で、私のところに来た年配の客が、岸田の事で怒っている。7月に例の統一教会の、ハン・ハクチャとやら言う婆さんが、「岸田をここに呼びつけて、教育を受けさえなさい」と言った事についてで、岸田を呼び捨てにしている。どうして岸田はこれを失礼だと抗議しないのか、と言う訳だ。私も米のTIME誌にさえ、自分のイメージと違うと抗議した男が、何故黙っているのかと思う。

◯月◯日/ ところで、この件でナントカと言うコメンテーターが「あんなのは統一教会のハッタリで強がりだから放っておけばいい」と言ったと教えてくれた人がいる。なんでもそのコメンテーターは羽鳥の番組と昼の誰とかの番組にも出ている若い男で。実によくしゃべる男だと。その男、誰かは知らず、私はこの件「メンツ」などとは思わない。岸田がきちんと抗議しないと、韓国の婆さんの言った事が正しい、となって、統一教会にプラスになってしまう。ここは岸田自らきっちりと婆さんの言う事は正しくないと言うべきだ。因みに、TIME誌が岸田のイメージを戦争の好きな男と、描いたのは正しいと思うがね。

8月15日 敗戦記念日

山下 敏明