司書独言(125)

2012.4月寄稿

○月○日 「戦後思想に圧倒的影響」と言った似たような見出しで、各紙に吉本隆明の死去が報じられた(4/16)。そして大方の記事が、「大震災後も科学技術の進歩を肯定する立場から原発容認の発言をしていた」と閉じている。

池澤夏樹他多くの識者が、原発を人間が制御出来ぬものと捕らえて、元原子炉設計者の後藤政志が「安全が確証されないという原発の特性を考えると脱却しかない」と語る時に、科学技術の進歩を信ずると言うのは、理工系の人間故の迷妄あるいは過信と言うべきか、その楽天的な態度に考えさせられたな。

○月○日 原発と言えば「ガレキ」。先日とある番組で、出場者全員が「ガレキ」を引き受けぬのは「非国民」てな発言をしている中で、「ざこば」なる落語家が、「絆」を連発して、奇縁を上げたのはいいが、司会者が「では、其の処理場がざこばさんの家の隣に来てもいいということか?」と訊くと、その返事が「いや、そんな極端なこと言われても」で、途端に逃げ腰になったのは驚いた。

もっとも、墓場が来る、ゴミ焼却場が来る、町内のゴミ収集所が来る、と言ったこと全て、自分の家の向こう三軒両隣はゴメンというのが大方の人情だから、「ガレキを引き受けないのは非国民」的にガンバッタものの、我が家の隣では、と腰が引けたざこばを一概には笑えぬけれどもね。

○月○日 「ガレキ」処理で、私が、我ながら馬鹿と思いつつ1人で「想定」していることがあって、それは「ガレキ」は今出ている案のように各自自体で平等に処理するのいいーだがその前にやってもらいたいことがあるーと言うのは馬鹿馬鹿しい話しで、それは原発に「群がって」きた連中の庭に先ず一定量分配してくれと言うこと。例えば「地震が起きたら、本当はここ(柏崎刈羽原発)へ逃げるのが一番安全」と言ったビートたけし、例えば「放射線の影響は、クヨクヨしている人に来ます」とニコニコ顔で言う山下俊一長崎大学教授、例えば「放射性物質が、実際より多分かなり怖いと思われていることに問題があるんではないか」と言った勝間和代、例えば「今回、自衛隊、警察、消防、東電の現場で働く人々は、命をかけて他者を守る最高の姿勢を見せた〉と、犠牲にする側をさておいて、犠牲にされる側のみを称賛する、我が身にはおよばぬだろう派の曾野綾子。とまあ、まだまだいるのだけれど、とにかくその連中に、ざこばのように逃げずに、隣はおろか、どうぞ我が家の庭に持って来て下さい、ぐらいは言ってもらいたいものだ、と馬鹿馬鹿しいことを内心おもっているのです。

○月○日 「科学の進歩」と言えば、それみたことか、だから言わんこっちゃない、と言うことが起きた。私は以前この欄で、英国の哲学者バートランド・ラッセルの説を引いて、宇宙開発なるものに疑問と危惧を呈したことがあった。それは一言で言うと、宇宙開発は結局軍事利用されるぞと言うこと。ところが3月8日に「宇宙は平和のために」と最初の宇宙飛行士の秋山豊寛や、ドイツ文学者池内紀の兄(?)で宇宙物理学の了ら6人が、JAXA法改悪に対して反対署名を呼びかけた。JAXA(宇宙航空研究開発機構)法から、「平和目的〉規定が削除されることに反対してのもの。理由は宇宙へのロマンを大切にしたいから、だと。

○月○日 何を今更、遅いってえの!。B・ラッセルの指摘を待つまでもなく。宇宙開発の目的は軍事利用に決まっとる。それが見抜けぬか!。この6人の中に「小出五郎」がいるのが気にかかるね。この男NHKのニュ―ス解説で、チェルノヴィリ事故はソ連だから起こった原発事故だ、日本では起こらぬと主張した人だよ。私は,天にはかぐや姫と,天の川と,牽牛・織り姫が居れば充分だ。

○月○日 年柄年中世にはばかったような顔をしている名古屋の川村市長が、その顔に相応しい発言をして物議をかもしている。事もあろうに、南京市の訪日代表団に対して「南京大虐殺はなかったのではないか」と発言した事。この事件に付いては歴史学研究では既に決着済みの事、とは一寸でも本を読んでいる人間には常識だから、ここで私も改めてとやかく言う気はないが、それでも尚論を立てたい人は、論争の全経過を丹念に追った笠原十九司(とくじ)「南京事件論争史」(平凡社新書403/2007.12刊/¥840+税)を篤と読んでもらいたい。それで尚納得出来なければ,何おか言わんやだ。

○月○日 「悠香」社は訳460万人に約4,650万個の「茶のしずく石鹸」を売ったが、使った人の569人が発症、1,254人が発症を訴えたと。何で、?小麦アレルギーなるものにかかった由。何だか妙にかん骨が張った女優が?が、「あきらめないで」とやってたが、「あきらめなかった人」の中には裏目に出た人がいた訳だ。私は生来すぐあきらめる口で「がんばる」のが嫌な方だが、物事「がんばるばかりが能でないってことだ、と私は思う。大体、クリームも石鹸も、諸々当てにならんぞ。その最たるものは養毛剤と歯磨き粉だ。ハゲも虫歯もいなくなった様子が全くない。宣伝で養毛剤をジャブジャブ振りかけている男女のタレント連中の30年後位をみてみたい。

 

司書独言(123)

2012.月寄稿

○月○日 ジャコベッテイ(だったか?)監督の「世界残酷物語」が流行って、その多くは『やらせ』だったようだが、真似したようなものも大分出た。その頃見たもので,南洋のナニヤラ島で成人の儀式として,蔦のロープに足首を縛って滝壺に飛び込むと言うのがあって,高所恐怖症の私としては想像するだに恐ろしくて、あーこの島に生まれなくて良かったと思ったものだった。この儀式が即ちバンジー・ジャンプで、ナニヤラ?島は、ニュー・カレドニア北諸島だと今では知っている。 続きを読む 司書独言(123)

司書独言122

2023.12月寄稿

○月○日 津波学者山下文男が12月13日87才で没した。「津波ものがたり」「哀史三陸大津波」「近代日本津波史」、そして有名な「津波てんでんこ」と私は彼の著作を全部読んできた。今回の津波の時には文男は入院中で、病院の4階にいたが、驚くべし、そこ迄来た津波にあわやさらわれる所を、カーテンに捕まって助かったと報道されていたっけなあ。思えば未曾有の津波の破壊力を、死ぬ前に実感出来たというのは、津波学者としては本望とすべき体験だったかも知れんな。

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司書独言(121)

2011.11月寄稿

○月○日 11月18日から20日迄の3日間、「第1回ふくろう文庫特別展inモルエ中島」をやった。最終日には駐車場が満車になる程で、「ふくろうの会」の広報担当の妙女が掃除の人に「いつもコンナに混んでんでますか?」と訊いたら、「いえ、今日は文化的催しをしているからです」との答えで、それ即ち「ふくろう文庫展」だから、これは嬉しかった。モルエの寺島所長は、自ら解説のコピーを大量に作って配ってくれる程の熱心さで、この協力には感謝以外の何物もない。 続きを読む 司書独言(121)