司書独言(82)

`08.6.8寄稿

○月○日 このところ、東京都心の建築現場で人骨が続々と発掘されている由。その人骨、かめに入っていれば武士もしくは金持ちの町人、桶なら庶民だそうな。「江戸はこうして造られた」や「江戸商家と地所」の著者、都市史専門の鈴木理生(まさお)に言わせると、相次ぐ大火で江戸の都市整備が始まると、幕府は寺に郊外への移転を命じ、となると寺側は、墓地を放棄したまま引っ越したし、人間の方も流入人工の増加で定着意識が薄いから、墓や骨を大事にする気もなくて、つまりは遺骨に執着しなかった由

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司書独言(93)

`09.5月19日寄稿

○月○日 5月15日(金)の室蘭民報(夕刊)に、室蘭図書館だより“ひまわり”「100号達成・8年余毎月1回発行」の見出しで、この「ひまわり」が平成12年11月の創刊以来、現在まで無事続いたことが報じられた。このことは容易のようでいて、実は難しい。「図書官報」なるものを出している図書館は、全国でもいくつもあるだろうが、連綿と続くと言うのは余りない。どうしてか?の答えは簡単で「書き手がいないからだ。 続きを読む 司書独言(93)

司書独言(109)

`10.9月寄稿

○月○日 イラク侵攻の決断は「後悔出来ない」とて参戦を正当化する回顧録を、ブレア元英国首相が出版した、とのニュースを聞いて、その鉄面皮ぶりに呆れたが、その発売記念のサイン会をやるというのに二重に呆れた。するとアイルランドはダブリンでのサイン会には200人が抗議と報じられて「あたり前」だと溜飲がさがったが、ロンドンでは、私も昔行ったことがある「テート・モダン美術館」を会場として出版記念パーティをやろうとしたら、トレイシー・エミン等著名な芸術家たちが、それは「美術館にとって不名誉だ」として中止を要求したので、ブレア側はパーティを延期したと知って、二重に溜飲がさがった。どうだろうこの小粋な断り様。実に小気味がよい。

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