第253回 浮世絵展と「春画」

`06.11月寄稿

先日、来館した20代の女性に「浮世絵」を見せたら、きれいだ、素敵だと、感歎の台詞を口にしていたが、やや暫くして「えーっ、これ、ひょっとすると版画ですか?」と言う.版画でないとしたら何だと思ってみていたんだろう?てな、意地悪な質問を私はしなかったが、反射的に似たような出来事を思い出した。出来事と言っても、我が身に起きたことではなくて...現在,浮世絵関係の美術館に勤めている女性の学芸員が、自分が書いた浮世絵の本に告白(と言う程のものではないか?)している話...その女性は友人に誘われて,原宿の太田記念美術館ーここは浮世絵専門館ーに行って、その時まで全く関心がなかった浮世絵(本物)を見て、びっくりしたと言う。 続きを読む 第253回 浮世絵展と「春画」

第254回 吉野作造、最上徳内、安藤広重、丸山薫

`06.11.7寄稿

室工大で建築を学んだ水野君は、若干26歳でガンに倒れた.彼を偲んで仲間が集り墓参りをしてから、3.4泊の旅をすることに決めて、今年は早や、27回忌になった。毎年々々、よく続いたものだ.時には墓のある仙台を遠く離れて、沖縄まで、出かけ,その地で水野君を語ったりもして...その旅はいつも観光コースからそれて,美術館めぐり、を中心とするものだった。美術を一番愛した水野君が生きていたら、「ふくろう文庫を」どれ程喜んでくれたろうかと、いつも思うが、それも詮無いことだ。で,今年は久しぶりに仙台周辺に的をしぼり... 続きを読む 第254回 吉野作造、最上徳内、安藤広重、丸山薫

第255回 天才音楽家達

`07.1月寄稿

10月末の丸井での「ふくろう文庫特別展―浮世絵特集ー」を用意している或る日、道新の報道部長・日浅尚子さんが取材に来て呉れて2時間余、色々な話をした。その時の話は10月18日(水)の道新・夕刊の全道版の「今日の話題」なるコラムにまとめられて、この一文を読んだとて、小樽、札幌、江別あたりからもお客さんが来てくれたから、まことにありがたかった。 続きを読む 第255回 天才音楽家達

第256回 細木数子の社会悪

`07.2月寄稿

世に八卦(はっけ)判断と言うことばがあるが、この八卦をする人を,八卦見、或は八卦置(はっけおき)と言うらしい。そして八卦とは「うらない」即ち、「易」のことで、「易」とは、中国の思想書「易経」の説くところにしたがって、算木さんぎ)と筮竹(ぜいちく)とを使って、吉凶を判断するうらないの方法で、古くから中国で行われた。これが広く民間に伝わったのは,この他に2つある「うらない」の中で、この方法が一番簡単だったからだと言う。

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第259回 日本美術の流失とフェノロサ

`07.5月寄稿

おいしいワインをみつけたから、とて、貸しておいた本を返しがてら、咲美さんが姿を見せた。そして、本に挟んであった1枚の絵ハガキを私に示して、“これ私の好きなもの”と言う。見ると、平櫛田中(ひらぐしでんちゅう)・1872〜1979)作の「五浦釣人」だ。五浦とは茨城県の海岸で、今岡倉天心の美術館のある所だ。近くには天心の旧宅や、天心が愛した「六角堂」がある。これ、天心が作らせた小さい建物で、断崖の上に建っていて、此処で天心は太平洋を眺めつつ、思案にふけったのだろう.土饅頭型の墓もあったと記憶している。と言う訳で、田中の作品は、釣りを好んだ天心像なのだ。あでやかな咲美さんが、この木彫作品が好きだとは、渋いことよ...と私は好感を持ったが、内心、偶然だと驚いたのは、私が、今回本棚で取り上げようと考えていたテーマが、天心とコンビを組んだフェノロサだったからだ。 続きを読む 第259回 日本美術の流失とフェノロサ