司書独言(230)

◯月◯日/ 5月初めに米アカデミー賞の発表があって、フランシス・マクドーマンドが「ノマドランド」で主演女優賞を受けた。この女優、いつもうまい人で、既に「ファーゴ」「スリー・ビルボード」でオスカー賞をとっている。この女優を最初に観たのはマイクル・パレとダイアン・レイン主演の「ストリート、オブ・ファイヤー」。街を荒らし回る暴走族に立ち向かう男がパレ。このとき全然美形ではないけれど妙に存在感があったのが脇役の、マクドーマンド。

◯月◯日/ 主役パレとレインはその後全くふるわなくなったが、マクドーマンドは先述の如き活躍ぶり。ところで、私はD・・クインラン著の全814頁の「世界映画俳優大辞典](2002年刊)を常々使っていて、これにはレインもパレもストリート・オブ・ファイヤーも出ているのに、ちょい役だったマクドーマンドは只の一行も出ていない。それが(繰り返すが)今や主役の二人は姿を消して、ちょい役がアカデミー賞3度となった。何か「人生」というものを感じさせるね。

◯月◯日 /助演女優賞は「ミナリ」に出た韓国人のコン・ヨジョンが受けた。「ミナリ」とは植物のセリの事。アーカンソー州に入植した韓国人一家のお祖母さんが川べりにセリの種を植える場面から来たタイトルだ。韓国の文在寅大統領はこの受賞を喜んで「”パラサイト”で作品性と演出能力を国際的に認められたのに続く映画界の快挙だ。韓国の映画史を”演技”で書き換えた」と絶賛した。「パラサイト」は言うまでもなく昨年作品賞など4冠に輝いた傑作。

◯月◯日/ しかるに、この文在寅と正反対の行為をとったのは中国の習近平。先述した「ノマドランド」は作品賞など3部門の受賞だが、そのうち監督賞が中国出身のクロエ・ジャオで、これはアジア系の女性で初めてだ。そこで中国共産党の機関紙「人民日報」も「女性監督して史上2人目」とほめた。ーがー今年3月に入って、このジャオ2013年のインタビューで「自分が10代を過ごした中国では嘘があふれていた」と発言していたことが今になり判明した。途端に中国の報道全部からクロエ・ジャオの授賞他一切が消された。香港でも授賞式が放映されなかった。

◯月◯日/ つまり「中国には至る所に嘘がある」との発言は習近平にしてみれば「愛国心の欠如」となる訳でそれは「許されない」となる訳だ。恐ろしい。恐ろしいと言えば、読者は「人事檔案(じんじだんあん)なる言葉を御存知か?これ「中国の国民全員の思想傾向や交友関係などが記された非公開の身上書」「記載内容は本人に公開されず中国共産党員である学校の担任教師や職場の上司などしか閲覧権限がない」「国家が人民の職場を決定していた当時の計画経済体制の社会では、本人の生殺与奪を握るエンマ帳に等しいい書類だった」と言うもの。

◯月◯日/ 詳しくは安田峰俊著「八九六四・完全版ー「天安門事件」から香港デモへー」(角川新書)を観て欲しい。私はこれ、今菅がすすめている「デジタル法」と全く同じだと思う。「デジタル法」については多くの識者がその危険性について書いているが、要は国によって個人の生活情報全てが握られてしまうと言う恐れだ。マイナンバーとふっつけて、ナニヤカヤ便利になるような事を言ってるが、それは「おためごかし」と言うものだ。習近平と同じく菅もまぎれもなくファシストで、全てを自分の看視下におきたいだけだ。

◯月◯日/ 新橋他で「ヤキトン・ユカちゃん」を4店経営している藤嶋由香がコロナ禍の政府の場当たり的政策に腹を立てて「新橋一揆」を提唱した。うなずける。その由香女史が国会に行ってみたところ、菅は棒読みを続けるだけだし、居眠りしている大臣もいるのをみて「こんな風に決まった法律で、憲法に保証された(営業の)自由が制限されるのかと、馬鹿らしくなった」という。うなずける。ところでこの緊急事態を「さざなみ程度」と称した馬鹿がいる。菅が内閣官房参与とやらに任命した高橋洋一。どこかで聞いた名だと切り抜きを調べたら,先年どこやらのサウナロッカーで先客が忘れていった高級時計をくすねて窃盗罪で東洋大学をクビになった男だとわかった。「類は友を呼ぶ」とは言うが安部や菅程に悪友が集まる男はそういないね。

◯月◯日/ イスラエルとパレスチナの衝突が止まらない。国連安保理がナントカ止めようと共同声明を出したいのだがアメリカが賛同しないのでこれが出来ぬ。イスラエルのネタニヤフ首相も「アメリカの支援を受けているから攻撃は止めぬ」と言明している。バイデンも二股かけるような発言しかしない。そう言えば、昔イスラエル建国を描いたユル・ブリナー主演の映画があったなあと思い出して調べたがどうも該当あるものがない。見ながら勝手な(と言うのはイスラエル側の言い分だけのという意味)映画だなと思ったのだが、ハテ、何だったろう。

◯月◯日/ 序でだから言うと、ユル・ブリナーは「王様と私」で有名だが、この人、本人が言うには、父はスイス人とモンゴル人の混血児、母はジプシー(今で言うロマ)で、日本人の親類もいると。元はサーカスの空中ブランコ乗りだったのが転落して止め、パリで劇団の大道具係をしながらソルボンヌ大学で哲学の学士号を取った由。私が好きだったのはゴーゴリ原作の「隊長ブーリバ」丁度ゴーゴリの原作を読み終えた中学3年の時だった(筈)。16世紀のウクライナを舞台に父祖の地を取り戻すべく戦うコサックの物語だ。因みに私の書棚に全5巻の「ゴーゴリ全集」がある。好きな作家だった。ブリナーはコザックの隊長、息子役はトニー・カーティスだった。

◯月◯日/ここで思い出した。イスラエル建国を扱った映画は、ポール・ニューマン主演の「栄光への脱出」1960年作だ。原題は「エクソダス」(Exodus=旧約聖書の中の一書でモーセにひきいられてイスラエル人がエジプトから脱出する様を描いたもので、脱出、出国の意)イスラエル寄りの話で凡作だった。

◯月◯日/ ノンフィクション作家森功によると、「言うまでもなく三木谷もまた菅の有力ブレーンの一人だ。楽天はGOTOトラベルのメインプレーヤーとなっている。自民党総裁選以降、菅の提唱している携帯電話料金の引き下げ政策は三木谷直伝とされるが、それより、ずっと以前から二人はタッグを組んできた」(森功「菅義偉の正体」小学館新書)。ところがこの三木谷が5月14日の米CNNビジネスのインタビューで、日本で、新型コロナが感染が再拡大する中「大規模な国際行事を主催するのは危険で、リスクが大きい自殺行為」とし、インドやブラジル他がコロナで苦しんでいるので「まだ祝典の時期ではない」と言い更に菅のコロナ対応は10点中2点」と批判した。

◯月◯日/オヤオヤ。これは本当かいな、どうした風の吹きまわし?と思っていたら、今度はソフトバンクの孫が米のCNBCテレビで五輪開催について「非常に懸念している」と言ったと報じられた。私はIOCは只金目当ての団体だと思っている方だから、「五輪反対」大いに結構だが、この財男2人の発言、このまま受け取っていいのか、何か裏があるのか、判断つきかねる。まさか、菅の余りの無能力に今になって気づいて「もう一緒にはやってられないわ」と言った単純なものではー有る筈ないわなあ。

◯月◯日/ 5月の中旬になって、室蘭岳でもクマが目撃され始めた。今年はそちこちにクマが出ていると言うニュースがそちこちで出る。50年も前に読んだ本で、今でも豊浦の道の駅などで売られていると思うが「熊百話」という本がある。今確かめずに書くが、その中に実に珍奇な話があった。日高の方の話で、或る時、北電の社員が電柱に登って配電盤かナニカの修理点検中、ふと下を見るとナントカ熊が登って来て前足を伸ばした。恐怖にかられて、咄嗟に持っていたペンチで熊の手をはさむとプチンと爪が切れるような音がすると同時に熊は下に落ちた。

◯月◯日/その落ちた先はナント電柱の隣に立っていた樹の切り株で熊は其れに尻持ちをついた形で、打ち所悪くて死んでしまった云々。こう書いてもう一つ思いだした。これも日高の方だったと思うが郵便配達が片側山片側崖の道を歩いて直角に近い曲がり角を曲がった途端に熊がいて、出合いかしらに思わず持っていたこうもり傘をパッと開いたら、びっくりした熊が崖下に落ちていって本人は助かった云々だった筈。薄い本だったが「事実は小説より奇なり」の話が、つまり百のっていたなあ

◯月◯日/ 英政府がフカヒレの輸出入をを禁止すると5月12日に発表した由。フカヒレはサメのヒレを乾燥させたものだが、その漁は釣ったサメのヒレを取ると胴体の方は無用だとてその場で海に捨てる由。この残酷さは許せないと言うのが禁止の理由だと。又ガチョウやアヒルを肥らせて肝臓を取るフォアグラもいずれ禁止にする由。私は食べ物には欲のない方だからこのフカヒレもフォアグラも食べたことはあるが大して美味しいいとは思わなかった。然し採取の方法や飼育の仕方が残酷だからとなると、ニワトリでも、豚でも牛でも皆引っかかるんじゃなかろうか。私は肉もほとんど食べたい思わぬ方だから、個人的には影響はないけどね。「フォアグラの歴史は実に古い。エジプト人も、ギリシャ、ローマの人々も鵞鳥を強制飼育していた」と、やまがたひろゆきの「美味学大全」にある。

◯月◯日/ 「フランスでは鵞鳥に目隠しをして、足を床に固定し、何も飲まさずに、やたらと口の中へナッツを詰め込む、するとは普通の10〜12倍くらいの大きさになる」ともある。こうして何千年も食べてきた訳だが、それを止めるなんてことが英国人にはともかくフランス人には出来ないだろうな。

◯月◯日/ 血圧検査で一月一度行く近所の医院に行ったら、入り口にどこかで見た様な顔の女のポスターがある。自見英子の顔だった。コロナ騒ぎで再三きつい物言いで国民に自粛を呼びかけていた旭川出身の中川俊夫日本医師会長が、この女の政治資金パーティーに参加していた。おまけにこれ又きつい表情で政府に物申していた東京医師会長の尾崎も同パーティーに出てた。中川は又「日本医師会連盟」の委員長だそうだが、団体2019年1年だけで自民党に2億円の献金をしている。話を戻すと、今日私が行った医院が自見のポスターを貼っているということは、私が払ったお金の一部も自見に流れているということだ。損した気分で嫌になるね。しかしまあ、中川も尾崎も見かけ倒しだなあ。

◯月◯日/ 昔札幌で道内物産展があって、その時「町村牛乳」なる物があって買った。どこぞの市町村の特産だと思ったら、これが勘違いで、道知事をやった町村金五経営の牧場の牛乳だった。このときもアリャ損した、くだらないやつに金を出してしまったなと思ったものだった。この町村は戦争中に警視総監を務めた男だ。一高東大組だが同期に劇作家の村山知義がいた。市川雷蔵主演で人気のあった映画「忍びの者」の原作者で、戦時中は治安維持法に引っ掛けられて獄中生活を強いられた。その村山には全5巻の自伝があるが、その中で村山は「私が牢獄に入れられた時町村は警視総監だった」と書き、「町村は凡庸な男だが、猛烈なガリ勉男だった」と書く。さもありなん。凡庸だからこそ治安維持法にも何の疑念も抱かないないのだろうな。

◯月◯日/ 資金集めと言えば、下品な麻生も4月13日に派閥パーティをやった。麻生の父親は強制連行した朝鮮人と被差別部落民を只同然にこき使って肥え太った。被差別部落と言えば、いつぞや麻生は国会で被差別部落民をバカにする発言をして、その時「俺も被差別部落民だ」と色をなして詰め寄った野中に。流石に厚顔な麻生も思わず真っ赤になって下を向いて黙ってしまったことがあったな。いい機会だから、野中広務+辛淑玉(しんすご)著「差別と日本人」角川書店/2009/¥724+税をすすめておこう。帯に「部落とは、在日とは、なぜ差別は続くのか?」と書かれている本だ。

◯月◯日/「 司書独言no224で南米ウルグアイの「世界一貧しい大統領」ホセ・ムヒカに触れたが、4月末魚を食べて、その骨が引っかかったらしく、具合が悪くなり入院した由。85歳だが世界のためにもまだ死なないで欲しい人だ。貪欲な麻生にムヒカの胃に引っかかった魚の小骨を飲ませてやりたいものだ。麻生といい菅といいほんとうに嫌な顔だ。

2021.5.15   山下敏明

第422回(ひまわりno238)おなら考.加藤拓川.奥本大三郎の思い出etc

2021.5.8寄稿

4歳の孫(女)がおならをして、澄ました顔で「お尻の言葉よ」と言った、と言うお祖母さんの嬉しげな投書が出ている。こましゃくれた孫だなあと感心しながら、いつぞや読んだ女子高生の投書を思い出した。 続きを読む 第422回(ひまわりno238)おなら考.加藤拓川.奥本大三郎の思い出etc

第421回(ひまわりno237)習近平の「夜郎自大」

2021.4.7寄稿

ミャンマーで国の軍隊が国民を殺している。国連がこれを止めたいが、ロシアのプーチンと中国の習近平がこれに首を縦にふらぬから何の動きも出来ない。香港の民主主義も、これまた習近平のおかげで今や風前の灯火だ。 続きを読む 第421回(ひまわりno237)習近平の「夜郎自大」

第420回 半藤一利のおすすめ本(ひまわりno236)

2021.3.1寄稿

昭和史研究家で知られた半藤一利が今年1月12日90歳で亡くなった。そこで、2月13日にに加藤陽子が「朝日」の読書欄で、半藤の著作で読むべきものとして3冊すすめている。
これを真似して私も半藤の本と思うが、その前に加藤陽子について書く。加藤は1960年生まれの現、東京大学教授で専門は日本近現代史。今本を読む人でこの人の名を知らぬ者はいないと思われる。と言うのは、例の菅の「日本学術会議」の拒否問題で、菅が拒否した6人の学者の中の紅一点で、しかも菅が名前を知っていたのはこの人だけだったというおまけがつく。この人が拒否されたことで多くの人がこの問題の異様さに気付いた。例えば日大の石川隆文教授は任命拒否を知って「加藤さんが除外されるのはあり得ない」と驚いたと言い、「直感的にこれはただ事ではない」と思ったと言う。加藤が右でも左でもない公平な学者だと言うことは多くの人が口を揃えて言う。 石川は更に「この任命拒否を放置しておいたら”何でもあり”になってしまう」と言い「ここで自分が何もしなかったら(民主主義を主張してきた自分としては)言行不一致になってしまう。早くスタートした方がいいと思いました」と足す(詳しくは毎日新聞2020.11.22の「文化の森」での「森健の現代を見る」を読まれたし)

因みに私も「あんな本〜 」の今年の最初(12月、1月合併号)で加藤の「それでも日本人は戦争を選んだ1 」(新潮文庫)と「止められなかった戦争2


(文春文庫)をすすめておいた。さて加藤に戻る。加藤陽子は半藤の読むべき本として①「日本の一番長い日3 」(決定版)/文春文庫¥700+税

②『「昭和天皇実録」に見る開戦と終戦4 /岩波ブックレット¥726

③「靖国神社の緑の隊長5 /幻冬社¥1340の3冊をあげる。

私がすすめたいのは「万葉集と日本の夜明け6 」PHP文庫/|770+税だ。

半藤は東大を出るとき、卒業論文に「万葉集」をやろうとしていた。ところが、級友が言うには、クラスに中西進というのがいて、この男は万葉集4600余句を全て暗記している男だ。そんな男に比べたらお前は〜と言われて「堤中納言物語」に変えたという。ここで言う中西進とは御存知「令和」を選んだ(とされる)万葉の大学者、中西進のことだ。とは言っても半藤の万葉集への愛は消えることなく、後年書きあげたのがこの本。この本の第二部は「長安の山上憶良」で、数年前、秋田の建築家西方里見・耿子夫妻と一緒に西安=長安に旅した私には一番面白い部分だ。序でだから「令和」で嫌なことを一つ書いておく。今問題の菅の馬鹿息子正剛が東北新社の宴会芸で「令和」と書かれた色紙を掲げ「令和おじさん」の物真似をしていたと言うのだ。菅は「息子は別人格だ」などとトボケテいるが、息子の方は親爺と一体となったつもりで、つまらぬ真似をして十分に利用しているのだ。それにしても馬鹿息子のあのウスギタナサハ一寸ない図だね

日本学術会議」が問題となるとこれが。戦前の滝川事件と同じとする論者もたくさん出たこれは昭和8年(1933)鳩山一郎文相、京都大学の滝川幸辰(たきがわ ゆきとき)教授を、その書「刑法読本」の内容が赤化思想(共産主義)であるとして、クビにした事件。同僚や学生達が抗議運動を起こすが当局の弾圧でつぶされた事件だ。この事件を理解するに一番役立つのは黒澤明による1946年作映画「わが青春に悔いなし」だ。今でもビデオ屋に並んでいる。これは「滝川事件7 」と「ゾルゲ事件8 」をモデルにしたもので反戦の映画の傑作だ。

滝川事件では今の菅政権下と一緒で、政権にこびる教授も学生も検察もいれば、これに逆らう人達もいる、反戦思想の主とされた教授の娘(原節子)は同じ思想の教授の教え子と結ばれて苦難の道を歩む。汚れ役を演じる原節子の迫真の演技には目をみはらされる。いい機会だから石井妙子の「原節子の真実9 」(新潮文庫¥710+税)を出しておく。

さっき「ソルゲ事件」と書いたが、これは昭和16年(1941)駐日ドイツ大使顧問ゾルゲと尾崎秀実(ほずみ)らが日本の政治、軍事に関する機密をソ連に知らせた疑いで逮捕された事件。2人は昭和19年処刑された。この事件については篠田正浩監督の映画「ゾルゲ」(ビデオ屋にある)もあれば尾崎秀実の弟 秀樹(ほずき)の本もあり、またゾルゲの日本人妻だった石井花子の「人間 ゾルゲ10
 
もあるが、最近いい本が出た。安田一郎の「ゾルゲを助けた医者〜安田徳太郎と〈悪人たち〉11 」(青土社、2020刊)だ。題名通りの本だが、この京大出の医者は小林多喜二の死体にもつきそった医者だった。ゾルゲと尾崎の願いは無謀な日本の戦争を止めることだったが、それは叶わなかった。ソルゲが必死になってドイツがソ連に侵入する日を知らせた電報は泥酔していたスターリンによって無視された。スターリンは独ソ戦を控えてなすすべもなく只酔っ払うだけだったのだ。因みにゾルゲは先日国際紛争の地となったナゴルノカラバフのあるアゼルバイジャンの生まれだ。と此処まで書いて思い出したことがある。篠田正浩監督のことだ。

何年前かすっかり忘れているが「北海道新聞」が文化講演会を開いた。と言っても一般向けではなくて、経済界・実業界のお偉いさんを会員としている北海道新聞の「経済懇談会」とやらのメンバーだけが入れる講演会だ。その講師に篠田正浩が来た。その時北海道新聞の室蘭支社長からTELが来た。「篠田さんが来るけど、懇親会で彼と対話出来ると思える経済人がいない、ついては山下さんに篠田の相手をたのみたい」だった。で私はノコノコ出かけた。篠田は自分の生い立ちを語って「妻程の美人にあったことはない」とのろけた。岩下志麻のことだ。終わって懇親会となり、酒になったが、支社長の案じた通り、新日鉄やら 日鋼のエライさんを始め、誰一人篠田に近づいて来ない。日頃は偉そうな室工大のT学長もはるか遠くにいるだけだ。結果私は支社長と篠田と3人だけで語り合うことになった。と言っても支社長はしゃべらずで、会話を交わしたのは篠田と私。私は篠田とソ連の映画監督「エイゼンシュタイン」のことをしゃべり合った。私には面白い体験だったがこれ又偉いさんの篠田はもう忘れていることだろう。

スパイゾルゲで思い出したが、先の太平洋戦争中、北大で「宮澤、レーン事件」なるものが起きた。北大生だった宮澤弘幸が、旅行中に聞いた飛行場のことを北大の英語のレーン夫妻にしゃべった所、これが軍の機密を漏らしたとされて、特高につかまって懲役15年となり、戦後に釈放されたが、服役中にかかった肺病で哀れ27歳で死んだ。これはいわゆる冤罪事件だった。この事件、菅の凶々しい政治の下、改めて留意すべき事件と思われる。是非読まれたし!本の問い合わせは「千代田区労働協議会」tel/03-3264-2905 fax/03-3264-2906

  1. 加藤陽子.それでも日本人は戦争を選んだ.新潮文庫.(2016) []
  2. 加藤陽子.止められなかった戦争.文春文庫(2017) []
  3. 半藤一利.日本の一番長い日.文藝春秋(1995) []
  4. 半藤一利.「昭和天皇実録」に見る開戦と終戦』.岩波ブックレット(2015) []
  5. 半藤一利.靖国神社の緑の隊長 .幻冬社(2020) []
  6. 半藤一利.万葉集と日本の夜明け.PHP文庫(2016) []
  7. 松尾尊ヨシ. 滝川事件.岩波現代文庫(2005) []
  8. 加藤哲郎.ゾルゲ事件.平凡社新書(2014) []
  9. 石井妙子. 原節子の真実.新潮文庫(2019) []
  10. 石井花子.人間 ゾルゲ.角川書店(2013) []
  11. 安田一郎.ゾルゲを助けた医者〜安田徳太郎と〈悪人たち.青土社(2020) []

第419回 (ひまわりno235)天皇と日本国憲法. B層の研究. 安倍三代

2021.2.6寄稿

作詞家で作家の「なかにし礼」が2020年12月23日に82歳で死去した。この人についてはいささか思い出がある。彼が2000年に「長崎ぶらぶら節」で直木賞を受賞した時のことだ。 続きを読む 第419回 (ひまわりno235)天皇と日本国憲法. B層の研究. 安倍三代