司書独言(189)

◯月◯日 2015年ネパールで起きたマグニチュード7.8の大地震で、8848mのエベレストが2.5cm低くなったやもしれぬとて、今年政府が調査する由。最高峰に比較しては失礼だが母恋富士は昔、本当に秀麗だった。それが戦時中の採石(?)で削られてぶさいくに低くなった。仏坂を越えてラッパ森に向かう度、残念な気持ちになる。誰だ?あんなにもてっぺんを削ったのは??自然現象で低くなったのであれば諦めもつくが、人為では腹が立つ。

◯月◯日 京都の東寺、つまり教王護国寺に空海請来の国宝「両界曼荼羅図」があるが、その複製が「ふくろう文庫」にある。野口観光社長からの寄金で買えた2巻物で、¥100万円もする大変な物だ丸井で一度公開したことがある。ところで9月30日付朝刊を読むと「両界曼荼羅の仏たち」なる本の広告が出ていて、こりゃ参考になりそうだ、読んでみようと切り抜いたら、隣に仏教学者?ひろさちやの「釈迦にまなぶ」広告があって呆れた。どうしてか?、もう何年前になるか忘れてしまったが、この学者の家に空き巣が入って現金を持ち去った。その額驚くなかれ7億円。アディダズのバッグに入れてクローゼットに置いてあったという。私はこの事件を取り上げて「仏罰」だと書いた。だって考えてごらん。今回広告の本の脇にある文章は「苦しみにどう向き合うか、楽に生きる仏教の極意」とあるが、この学者は講演で「物欲の戒め」と語っていたはずで、それがこの箪笥貯金ならぬクローゼット貯金。正しく悪徳坊主が舌先三寸で善良なる庶民を丸め込んでの集金と言う図だ。室蘭にも来て講演したと記憶しているが、その講演料も聞いて目をむく程のものだった。こんなエセ学者の本を読み、話を聞く馬鹿が未だにいると言うことだ。庶民もなめられたもんだ。

◯月◯日 ふざけたと言えば、小川栄太郎なる物書き。「朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪」なる副題を持って「森友・加計徹底検証」なる本を出した。この御仁、記憶に間違いなければ、以前安倍首相礼讃の伝記本を書き、しかもそれを大量に安倍の講演会に買い上げてもらって儲けた男で、この欄でそのからくりに触れた事がある。広告の最後の文章は「このままでは国の存立が危うくなる」だが、よく言えたもんだ。「もり・かけ」のどこが”捏造"なのか。権力の提灯持ちをする奴はいつの世も居るものだが、この男には呆れるね。こんな本を買った上で信ずる馬鹿者がいるとしたら、それこそ「国の将来」が危ういと言うものだ。

◯月◯日 折しも前川前文部科学次官が札幌に来て、10月23日夜講演したと報じられた。閉会中審査の時の気骨ある返答ぶりを思い出す。講演と言えば、ジャーナリストの伊藤詩織が10月24日日本外国特派員協会で「性被害の救済制度改善」を訴えたと出ている。この女性、元TBS記者の山口敬之にレイプされたと訴えた人。山口は先の小川と同じく、安倍の礼讃本「総理」を書いた提灯持ち。過ぐる5月に明らかにされたこのレイプ事件、何故かもみ消されたが、10月26日号の「週刊新潮」では、「詩織さん準強姦逮捕状の男にもう一つの罪」として「安倍総理を援護したくて虚報発言!!」。

週刊文春の「韓国軍に慰安婦記事は山口記者の捏造化」なるものが出た。小川にしても山口にしても、余程の見返りがあっての提灯持ちなのだろう。

◯月◯日 福井県池田の町立中学校で起きた、中学2年男子の自殺事件、担任らの度が過ぎた叱責、執拗な指導を、校長は知っていたと言う。母親は担任を替えてくれと頼んだが、それは出来ぬとの返事だったらしい。で思い出すのは、私が小5の時の出来事。何故か私は女担任の若いAにマークされて...ある時、突然黒板の前に立たされ・赤い鉢巻きで目隠しされた。そしてAが言うには、「山下に意見のある人は」。するといずれも頭文字Nの3人が順番に私の非を鳴らすと、 Aは「では山下に級長を止めてもらいます」で、私は級長を首になった。これを偶々廊下を通りかかった小林喜藏校長が見て、私一人を年寄りの老練な男教師Dの組に移し、私の父を呼んで言うには「敏明は気性の激しい子だから、これでぐれては可哀想なので、私の一存で移した」と。私はこれで救われて5年総代で送辞を読み、卒業式では6年総代で答辞を読んだ。小林校長には今でも感謝している。因みに池田中の校長は10月20日に退職願を出した由。小林校長と器が違うのだろうな。(山下敏明)

司書独言(186)

◯月◯日 伊達のピザ屋に時々行っていたが、どうした訳か私が一番好きな辛味のものがメニューから消えた。

辛過ぎて一般的に受けなかったのか?。それはともかく、インド映画の「ピザ」を観て呆れに呆れた。これインドのスラム街に住む兄弟がピザを食べたいが為に小銭集めに励んで、という筋だが、そのピザが家族の1ヶ月の生活費よりも高いのだ。それでも目標額を集めてピザ屋に行くと、ここで事件の幕が開いて....という訳だが、その貧困や格差の問題が度外れていて、例えばこの兄弟、栄養補給にカラスの巣から卵を失敬して飲む。しかしまあ、一番あきれるのはこの国に原発を売りに行く男と、それを買う男。呆れて物も言えない。

◯月◯日 「ピザ」の後韓国映画「弁護人」を観た。若き日のノムヒョン元大統領がモデルだと言うが、金儲けに熱中している高卒出の(と言うことは学歴ナシと見做される)弁護士が、通っていた食堂の息子が突然警察にしょっ引かれたことから「国家保安部」を相手に、この息子とその友達救うべく闘わざるを得なくなると言う話。息子たちは夜学の生徒で、お互いの小遣いを貯めて買った本の輪読会を開いているだけなのだが、北朝鮮の勢力拡大を恐れる保安部は、これを「共謀罪」と見做して「国家転覆」にデッチあげる。保安部の刑事が言う。「自分は13年間この仕事をやっている。犯人を見れば直ぐ分かる」。

◯月◯日 ところで6月14日「共謀罪」が強行成立された。これを受けて片山ナントカ(所属は知らず、角ばった顔の男)が「日本の官憲はまじめで張り切るから、その辺が一寸ね」と言う何が罪になるのかを決めるのは官憲だということを国民が危惧しているのにこの言葉。「弁護人」でも「見れば分かる」と豪語する男の保安警察官が、ありもしない罪をデッチ上げる。この映画「共謀罪」のこれからの姿を示唆する物だ。観るべし。今月号の「あんな本・こんな本」に書いた「横浜事件」も元はと言えば単なる慰労会を兼ねた出版記念の集まりだったそれを時の官憲が治安を乱すものと見做して「治安維持法で」引っ掛けた訳だ。「弁護人」の筋立てと実によく似ている。

◯月◯日 「紙おむつ製造機」なるものがどんなものか想像もつかぬが、その業界で国内トップの役8割のシェアを占める東証2部上場の「端光」なる会社に、6年間にわっって9億もの申告漏れがあったとて、大阪国税局が調査したと5月末の新聞に出ている。漏れては困る「紙おむつ」の会社の申告漏れとは聞くだに気色悪い。

◯月◯日 最新刊の「精神医療の危機」(やどかり出版)によると、日本には精神科の病床が35万床あり、世界中の精神科病床の2割に当たる由。しかもその内の9割が民間病床、1年間に20万人入院、もひとつ、しかも、最近では認知症の人の入院が促進されていると。

◯月◯日 私が大学生になったのは昭和30年代前半だが、神保町の角で初めて拾ったタクシーの車種はフランスのルノーだった。そのルノーの株主総会(6/15日)で、最高経営責任者のカルロス・ゴーンの昨年の報酬を8億6,500万円と決めた由。先程「呆れてものも言えない」と書いたが、これもその類の話だね。

◯月◯日 浅田次郎が会長を務める「日本ペンクラブ」が「共謀罪強行採決に抗議する」との声明を出した。6月17日のこと。同じ日に「自由と生命を守る映画監督の会」も「共謀罪は内心の自由、思想の自由ひいては表現の自由を侵害するということであって、明確な憲法違反」云々の抗議声明を出した。当然だ。因みに大分前、田中裕子が西太后役の映画(蒼穹の昴だったか)を面白く観たが、原作の浅田は目下「天子蒙塵」で頑張っている。その浅田は中学生の頃、既に東洋史学者の宮崎市定を読んでいたそうで、個人全集を買ったのも文学者のものではなく宮崎の全集だったというから感心する。私は中央文庫の宮崎は全部読んでいるが、今になってみると全集の方が良かったかなと思わぬでもない。もっとも私の中学時代、宮崎の本は未だなかった。

◯月◯日 室蘭市内を走っていて不思議でならぬのは、人口が減っているというのに、次から次とマンションorアパートが建つこと。古いマンションが嫌になって新しいところへ移り、古い方が空き家になっているだけのことかと思うがな。ところで「老いる家、崩れる街」(講談社現代新書)を出した東洋大学建築学科の野沢千恵、日本総合研究所員の藻谷浩介の、「空き家大国ニッポンの現実」なる対談を読んでいたら、「空き家が大量に生み出される最大の要因は都市計画の欠陥にあり」とある。そして問題だと思われる都市として夕張、帯広、苫小牧が上がってきて、ウヒッ次は室蘭かと思ったら、苫小牧で止まったのでホッとした。

◯月◯日 その苫小牧、2010年代に入っての市の東側(つまり沼の端地区)の大区画整理で、イオンが出来て市街地を広げたはいいが、駅前の4つの大型店は全部潰れた、とやられている。これはもう我々が身にしみて知っていることだが、岩倉市長はその沼の端の隣の工業団地になる筈だったが失敗した野っ原にカジノを持って来ようとしている訳だ。大丈夫かね。

司書独言(187)

◯月◯日 「エコでクリーンな夢の水素」だとて水素エネルギーが出てきて、工大出の青山市長も「化学のことなら任せてよ」とばかりに、ウキウキ(?)と既に3億円かけて水素自動車産業に向かっている。ところが、環境ジャーナリストの小澤祥司によると、日本以外の諸国は、自動車の研究、製造面で水素自動車から電気自動車に移行しており、世界的にはこれが趨勢だと言う。更に小澤は、水素は二次エネルギーで、加工・貯蔵・運搬、エネルギー変換のたびにエネルギーが失われるという。

◯月◯日 で結論は「何かすればする程無駄になる、エネルギーの無駄の固まりが水素だ」と。オヤオヤ!青山市長に賛同した市議連中も、一応は調査・勉強した上で賛同したのだろうが、小澤の論を知ると大丈夫かな?と不安になる。3億の金をドブに捨てたとならんうちに、小澤を招んで勉強し直すのも必要じゃなかろうか。猛暑で頭から水でもかぶりたくなるが、この際「水素知識を」己が頭に浴びせるのも一種の暑さ対策かもね。私は新しいものには眉に唾つける方だが、新しいとくりゃ飛びつく性もいるからなあ。

◯月◯日 7月初めオーストラリアはリンツの高速道路で、荷崩れした↓トラックから7,000羽の鶏が逃げ出した云々との記事が出た。業者には気の毒だが、さぞやケッコウな見物だったろう。昔私は、「北酒販」の横開きトラックが、原因は知らぬが傾いて、大量の瓶が転がり出る現場に出くわしたことがある。大吟醸、特級、白酒、焼酎が」次から次へと割れて、中身が地面に染みていく。オーもったいないと喉が鳴ったが何も出来ぬ。その時、各種の酒が混じり合って漂った芳香は形容しがたいもので、暫し夢の中と言う感じがしたが、殷の悪逆王•紂王が豪遊した時の「酒池肉林」の酒池のほとりにはこんな匂いが満ちていたのかなあと思ったことだった。

◯月◯日 この男を見ると私は、いつも舌をチロチロ出しながら獲物に近づく蛇を連想する。竹中平蔵だ。昔小泉と組んで「弱いものは消えよ、強いものが残る」との弱肉強食論で構造改革をやった利権屋だ。それが事もあろうに国家戦略特区諮問会議の一員として又出てきた。国家の云々は目下の加計問題の是々非々を検討する会議。そして、長いため口の中で余る舌を見せながら(これが私の言う蛇のような箇所)、加計問題での前川の発言について「初めから終わりまで強い違和感を持って聞いた」と斥け、安倍の側には「一点の曇りもない」と言ってのけた。よく言うよ!!。この鉄面皮の利権屋には今度は安倍側からどんなご褒美が出るのだろうか。それにしても安倍一統は見事な迄に汚れている。

◯月◯日 猛暑で夜中窓を開けて寝たら、風邪ひいて喉がやられて声を出せなくなって、やむ得ず7/22の「海北友松(かいほうしゅうしょう)」のワンコイン講座を中止し、7月一杯休んだ。吸入と薬で医者に行って、待合室でテレビを見ると、船越と美保純(寅さん映画でタコ社長の娘だったかしゃいんだったか)が主人役でゲストの南果歩母息との対談。南果歩は「螢川」(だったか)で観て以来。あの時いい女だなあと思ったが、今見ると顔は横広、鼻ベチャで、それよりも話し方がベチャっとまとわりつくような、少女的に媚びるような発生で全部イヤになった。息子の方はその辺にいくらでもいる顔だ。親の七光りで出た訳だ。旦那の渡辺謙の演技は一度も感心した事はないし、今度の不倫騒動で、今出ているDVD[怒り」も見る気なくなった。

◯月◯日 主人役の船越も図体が大きだけで、目つき小ずるく好きになれぬ。親の方も、若尾と組んでも凡だった。相手の松居一代を私は知らぬが、目下騒動中のカップルの片割れ同志が、すました顔でやりとりしているのはどうでもいいが、呆れたのはその対談の知的レベルの低さ。「南果歩さんについての五つの質問。ストレス発散でお酒を飲みますか?」「さあ正解はどちら?」とくる。阿保か‼︎そんな事知ってどうする。これで一席出演料はいくら?だ。あぶく銭掴んだ二世共が馬鹿な行為に走るのも無理ないわ。役者、議員は世襲だと思い込んでいるような馬鹿者共。

◯月◯日 とうきび好きで、一度に3本は食べる我妻さんは毎日買ってくる。私の父もとうきびが好きで、朝大釜で茹でたやつを釜ごとデンと配膳台の上に置いておくのが常だった。私が高校生の時、歌志内の炭鉱街から中学新卒の女子7人が、その頃で言う”女中”で来た。三笠や幾春別からくる事もあった。育ち盛りだから、その子達は三食別にして、仕事の合間に好きにポリポリと食べて、晩には釜が空になるのだった。8月に入って、映画のナイトショウが始まると、私と姉が彼女らに付き添って毎晩のように観に行ったものだ。懐かしい。序でに言うと、私が大学を出て大阪の商社に勤めた頃、昭和30年代前半、仕事で宴席に呼んだ芸者や半玉の中に、かなりの道内出身者がいてびっくりしたものだ。母恋出身の半玉にも一度あったことがある。この人の動き、どう言うルートがあったのかな?当時の就職事情を語る何かであるのは間違いあるまい。

司書独言(183)

2017.3月寄稿

◯月◯日 漸く春めいた感じのする日もある今頃を「鷹化(たかか)して鳩となる」と表現すると中国の古書にある由。春の穏やかな陽気が猛々しい鷹をも柔和な鳩に変えてしまうと言うことか。仲々詩的な諺だ。 続きを読む 司書独言(183)