第152回 江戸の人が登った名山とポンペイエロチカ

`99.10.6寄稿

下図は寛政11年(1799)に、幕府から東蝦夷調査に来た松平忠明の一行に「絵図面師』として参加した谷元旦(げんたん)が描いた下絵を基にして、兄の谷文晁(ぶんちょう)が完成した物で、描かれた山は今の「羊蹄山」(ようていざん)だ。

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第153回 近藤富蔵親子と食物奇談 

`99.10.22(金)寄稿

室蘭に「明日葉の会」なる団体が有る.この上には正式に「室蘭市食生活改善推進協議会」なる名称がついている。読んだ通りの活動をする会である。

「明日葉は」は「あしたば』と読み,今日切り取っても明日は再生している、との意で、セリ科の大型多年草だ。このごろは「生協』や「ホームストア」など、スーパーにも出回っているから,食べた人も多かろう。葉と茎が食用になって香りも悪くない.別名を「ハチジョウソウ」と言うが、これは八丈島の特産的植物なのだ。

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第151回 大英博物館と文学談義本

`99.9.17寄稿

私が室工大の図書館にいて,レファレンスワーク(=参考業務)を仕事にしていた時に,コンピューターは使われていなかったから、教官が必要とする文献(国内にない場合は外国まで手を伸ばさねばならぬことが間々あったが)を手に入れるには全て手紙を出さねばならなかった。 続きを読む 第151回 大英博物館と文学談義本

第150回 価値ある翻訳は論文以上

`99.8.31寄稿

「紀要」と言う一般には余なじみのない言葉がある。これは「きょう」と読んで,大学.研究所など刊行する,研究論文を収載した定期刊行物を言う。英語のプロシーティング(proceeding)などはこれに当る。この「紀要」はどの大学でも一応出すには出すのだが、どこでも悩みの種は,これを出す意義が果たしてあるのか、と言う疑問を自ら持っていることである。」 続きを読む 第150回 価値ある翻訳は論文以上

第147回 絵本作家とマザーグース

`99.6.30寄稿

絵本好きの大人にも子供にもありがたく嬉しいと思える本が出た.コールデコットの文庫版の「絵本名作集1 」だ。

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ランドルフ・コールデコットは言わずと知れた天才的絵本作家で、アメリカで最も権威のある絵本賞の「コールデコット賞」はイギリス生まれのこの作者名をとっている訳だ。 今世界で一番と言った感じのする絵本作家モーリス・センダックもこの賞を受けた一人だ。

たった39歳で早世したコールデコットは、生涯に木版多色刷りの絵本を16点作った。アメリカで死ぬ前の年、1885年までのXmasに2点ずつ作ったのだが、寺岡が今回、訳出したのは前半の8冊だ。この表紙の絵は8点目の「ジョンギャルビンのゆかいな一日」の絵だが「コールデコット賞」のメダルは、この絵を基にルネ・ポール・シャンブランが作ったもので、おまけに「コールデコット賞」の受賞絵本の表紙にはそのメダルと同じ図柄の金箔のラベルが貼られているんだ。このミニ絵本まことに愛玩(あいがん=もてあそび楽しむ)するに足りると言える。

さてこの、ミニ絵本の巻頭をかざる作品は、「六ペンスの歌うたおうよ」で、「歌をうたって、六ペンスもらった/

しめしめ、ライ麦ポケットいっぱい。/そのライ麦で/二十と四羽のクロウタドリを/とらえて、焼いて、パイにした。」〜と続くのだが、、、、

これ又、言わずと知れた有名なマザーグースの歌で、、、、ナント、これ又ありがたく嬉しくもこれをタイトルにした本が出た。副題が「イギリス絵本の伝統とコールデコット2 」でこれで中味はわかるのだが、

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実はこの本、コールデコット没後百年を記念して大英博物館の図書館で開かれた企画展のために書かれた本なのだ.狙いはコールデコットがイギリス挿絵界の最高峰であることを立証しようとするもので、、、その結果イギリスの挿絵の通訳としても読むことの出来るいい本となった。

私は峻厳(しゅんげん=きびしいこと)な神秘家のウイリアム・ブレイクよりも一体に人間的に賑やかなウイリアム・ホガースや,トマス・ローランドソンが好きなのだけど、ホガースはともかく、ローランドソンについては我が国で余言及されたものを見たことがない、、、、(きっと自分が不勉強なせいだろうが),,,ところがこの本はローランドソンにちゃんと一章が割いてあって「こりゃ、ええわ」と一人ごちた次第。

この本 , スイスイ,スラスラスイと読めるような本ではないけれど,絵本好きの子供を持つ親、読書会,読み聞かせの会などのお母さん,そして知的美人の貴方、,,方々は是非読まなくちゃ!! オットト、読書の無理強いはよくない「好奇心の”潮”が満ちてくるのを待たなくちゃな。

と、ここまで来てそうだ「マザーグース」の連想で,最近読んだ「オーウエルのマザーグース3 」もいい本だこれも紹介しておこう

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ジョージ・オーウエルは言わずと知れた「1984年」や「動物農場」で全体社会主義.管理社会の恐ろしさを予見,警告したイギリスの作家。各言う私も彼が好きで,邦訳されたものは全て読んで今に到っているけど,当然のことにイギリス本国でもその高い評価と人気は持続している由。

その人気の秘密は何か?何をかくそう,その訳は「マザーグース」にあるのです、、、と言うのが川端の結論。「歌え歌え六ペンスのうたをと題する章で、川端はオーウエルの、そして人から人に伝えられた伝承童謡をうたうものの、不滅の希望を取り出してみせる。いいなあ今も昔も嘆き節は流行()らんのです皆さん!!

ところで管理社会と言えば、「盗聴法案」の強行可決!で思い出したけど、「狙われた文学者たち」の副題を持つ「FBIの危険なファイル4 」を読んでみてごらん.読めば分かると言うものです。

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  1. 寺岡嚢.コールデコット絵本名作集.京都書院(1999) []
  2. 吉田新一訳.6ペンスの唄をうたおう.日本エデイータースクール出版部(1999) []
  3. 川端康雄.オーウエルのマザーグース.平凡社(1998) []
  4. ハーバート・ミッドガンク.FBIの危険なファイル.中央公論社(1994) []