司書独言

◯月◯日/去年の11月22日 班目春樹が死んだ。74歳。この名前、「原発」に関心を持つ人なら、「ああ、あの悪名高い男か」と分かるだろうが、そうでない人にはピンと来ぬだろうから、一応ここで説明する。前にも引用したことがある本だが、佐高信の「原発文化人50人斬り」(光文社知恵の森文庫、2014)では「有害御用学者」と名指しされていて、浜岡原発をめぐる訴状で中部電力側の証人に立ったこの男は「すべての電源が喪失するようなことを想定していては、原発は作れない、どこかで割り切らなければ」と言った由。この時この男は東大教授だった。

◯月◯日/ 私の棚に、石橋克彦編「原発を終わらせる」(岩波新書、2011)がある。この本が出た時点で、石橋は神戸大学名誉教授。東大理学部地球物理学科を卒業した人。佐高によると、班目は、「石橋氏は原子力学会では聞いたことがない人である」などと、石橋を貶めていたと言う。本当に卑怯で許しがたい男だからもう一つ引いておく。

◯月◯日/ 広瀬隆+明石昇二郎共著「原発の闇を暴く」(集英社新書2011)に出てくる話だ。「原子力マフィアの実権を握る東大学閥」と題した一節で「東大、京大コネクションでのロビー活動が凄いからね」として「原子力安全委員会委員長の班目春樹」他の名を挙げ「いかに原子力マフィアが東大学閥に結集しているかが分かる」としている。

◯月◯日/ 広瀬と言えば、私は時間がなくて行けなかったが、2011年10月17日に室蘭に来て原発の危険性をテーマに講演した。曰く「室蘭は泊原発から100k以内。事故があれば住むことはできない」序でだから、広瀬の本をもう一冊出しておく。「福島原発メルトダウン」(朝日新書2011)。本書で広瀬は、先に挙げた班目がけなした石橋について、「地球学者の石橋克彦さんは今回のような原子力発電所の大事故を想定し、1990年代から警鐘を鳴らしてきました。石橋さんは名を知られた学者ですから、そんな方の警鐘を東京電力などが、知らないはずはありません」と書く。

◯月◯日/ここで班目が入ったと伝える佐高の本の記述、先に引用した「石橋氏は原子力学会では聞いたことがない人である」を思い出して欲しい。岸田は愚かにも原発再開にに力を入れている。老い先短しとは言えど、軍拡といい、岸田の愚策のおかげで死にたくはない。

◯月◯日/2月10日「炎のランナー」の監督ヒュー・ハドソンが86歳で、同じ日に「カラスの飼育」の監督で、スペインを代表するカルロス・サウラが死んだ。これに先立って2月の8日には作曲家の、バート・バカラックが94歳で死んだ。「007・カジノロワイヤル」「明日に向かって撃て」の作曲家だ。どれもいい映画だった。我妻さん曰く「私たちの青春が死んでいくわね」と。言われりゃそうだ。

◯月◯日/ 去年の12月25日、電通に東大出で入社した高橋まつり(24歳)がパワハラやら長時間労働で疲れ果てて自殺して7年目とて、母の幸美(59歳)の手記が各紙に出た。その電通の五輪汚職が最近大分明らかになってきて 、この間はその中心人物高橋治之氏が(どうしたことか)車椅子に乗って、保釈される姿が新聞に出た。私はこれらの記事、全部、大下英治著「電通の深層」(イーストプレス刊2017¥1,600)に貼る。然しつくづく思うにこの高橋も、そして銃撃されたアベも、つまりは調子に乗って「やりすぎ」たのだ。

◯月◯日/ 篠原勝之と言えば「鉄のゲージツ家」などと紹介される。室蘭出身(だそうで)新日鉄の社宅で育ったらしいが、私はよく知らない。室蘭のNHKの前にその篠原作の鉄のモニュメントが立っていたが、去年だったか、取り壊された。何年間建つていたかは知らない。このモニュメント私は何を表しているのか全く分からなかった。風車のような、そうでないような、このモニュメントを思い出したのは2月に入って篠原のエッセイが新聞に出たからだ。

◯月◯日/京都に住んでいる篠原が「天の原ふりささけみれば〜」を枕にした文章だ。私はこれ、「古今和歌集第9巻、no406」の所に挟んだ。壊されると言えば、札幌の「開拓100年記念塔」(というのだあったか)も先ごろ道民の反対を押し切って壊された。いつも遠くから見るだけで、中に入れる塔なのか、只の鉄の塊なのかは知らず、この塔も私には何を言いたい塔なのか、さっぱりわからなかった。室蘭のNHK前のはある日消えていたから、住民の反対云々はなかったのだろうな。

◯月◯日/ 鯨が淀川やら、東京湾に出て死んだとて、ニュースになっている。室蘭には昔鯨を処理する工場があって、小学校の時、横っ腹に鯨を縛り付けて入港してくる船を見たことがある。私は鯨のベーコンとやらが好きではないが、それは小学校の給食に出た鯨のせいだ。この鯨は乾燥鯨の肉で、しかもその大きさたるや、わずか、キャラメルの一回り大きだけ。これが一個小皿の上に出る。生徒はそれを口に入れてゆっくりと舐めまわす。

◯月◯日/ すると鯨はツバでほぐれ、少しはふくれてくる。最大に膨れあがったと思った時点で肉片を剥ぐようにして食べていく。満腹感なんてあるはずもない。あと出たのは日によって脱脂粉乳をとかしたのがコップ一杯。あるいはトマトジュースがコップ一杯。この脱脂粉乳とトマトジュースは皆嫌いで、それでも残すと先生に怒られる。それで、級長だった私は内緒で頼まれて、彼、彼女らの数杯、飲んだものだ。奇妙なことに私はその味に何の抵抗もなかった。味覚音痴だったのだろう。今時の給食の豪華さには驚くばかりだ。

◯月◯日/ 岸田のやること、すること見ていると、頭の中血のめぐりが何処か詰まっているのではないかと思っていたが、人間とは分からないもので、鼻も詰まっていたそうで、日帰りで手術してきたそうな。これで、、思い出したことがある。私も、昔鼻が詰まって、おまけに我が妻さんが言うにはいびきががすさまじいと。それで、耳鼻科に行って蓄膿なら手術してくれと言った。レントゲン他を経て医者が言うには「昔ボクシングでもやっていたか」と。この俺の穏やか顔を見ただけで、人を殴る男に見えるかと、言いたかったが、「ない、何で又?」と聞くと、「鼻中隔が曲がっている」と言う。

◯月◯日/ これで思い出したのは高校一年の時、硬式の野球部の選手だった時の怪我。私のいた「栄高校」のグランドは校舎の裏の只の空き地でグランドと言うようなものではなかった。囲いもネットもなくて空き地を取り巻く住宅街の人達が近道をするため絶えず横切るのだ。爺さん婆さんが横切り始めると、こっちがその間手を休めと言った具合。である時ショートを守る私へのシート・ノックで球が小石に当たってイレギュラーとなって私の左頬に真当にぶつかった。

◯月◯日/で、気を失って倒れた私にバケツの水を2杯。これで気付いた私は練習中止で家に帰れとなった。時代が時代だから、救急車は愚か、病院にも行かされず、帰宅した頃は、眉目秀麗消え失せて、顔はパンパカパーンに膨れあがっていた、でそれから、約半月顔の腫れが引くまで、ひたすら氷で冷やすだけ、そして、その時の名誉の負傷の結果が「鼻中隔」の曲がりと言う訳。同じ鼻がつまるにしても、岸田は苦労が足りぬ。ナーンテネ!!

◯月◯日/東京の聖路加国際病院で患者の精神的ケアをする「チャプレン」と呼ばれる聖職者たる男性牧師からわいせつ行為をされたと訴えた女性の事件で、東京地裁は牧師らに賠償を命じた。聖職者による性暴力の実態は今や世界各地で明らかにされて、映画にもなっている。聖路加病院には一度行ったことがある。ここで、次姉の娘が医者をしているので、上京の時訪ねて病院全部を見せてもらったのだ。礼拝堂も素敵だった。こうしたところでお祈りする人がなあーと不思議だが、下世話に申せば、土台「禁欲」が無理、と言うことなのだろう。凡人の感想だけどね。

2023.02.16

山下敏明

第443回「イサムノグチと李紅蘭」佐川一政・食人食

2023.2.10寄稿

昨年の12月3日の新聞の死亡欄に2人の著名人の名が並んだ。死んだ日は違うのだが、知らせが同じ日に出た訳だ。先に亡くなったのは11月18日にアメリカカルフォルニアの自宅で亡くなったノンフィクション作家の「ドウス•昌代」で84歳。もう一人は11月24日に死んだ作家の「佐川一政」(佐川一政)で73歳。 続きを読む 第443回「イサムノグチと李紅蘭」佐川一政・食人食

第442回  ”いかがわしい論客”

2023.01.11寄稿

前前回、つまりの(2022年12月号)の最後の方で、こう書いた。『〜それにしても、アベ、小池、そして最近の山際と、平気の平気の平左衛門で嘘をつき続ける人間が引きもきらずとは如何なる訳だろう。
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第441 死刑制度 少年法を考える

2022.12.23寄稿

フランスのマクロンは、別にプーチンに向けて言った訳ではなかろうが、「核は使わない」などと要らぬ発言をするetcで優れた政治家とは思えない状況が続いているが、 続きを読む 第441 死刑制度 少年法を考える